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June 17, 2008

レシートの世界とIDの世界!

   もう20年近くPOS分析に取り組んできたが、いまだ極めつくせずに、研究をつづけている。まだまだ先が長そうであるが、ほぼ方向性は見えているので、根気よく、取り組んでゆきたい。この研究に時間がかかるひとつの理由は、理論と実践が裏腹の関係にあり、理論の方は知恵を絞れば、比較的構築しやすのだが、実践の方がIT技術の進化、費用対効果の面で中々追いついてこないということがある。約10年前、1998年頃にID-POS分析にはじめて取り組んだ時には、IT技術もまだまだ発展途上であり、ハード、ソフト両面でかなりの設備投資が必要な時代であったが、最近のIT技術の普及は目覚ましいものがあり、いまでは、技術面はほぼ問題ないところまで来ているといえる。

   その意味でいま、POS分析に問われているのは、ID-POSの時代に相応しいマーチャンダイジング理論の構築であり、それを裏づける費用対効果の高い実践事例であるといえよう。通常のPOS分析とID-POS分析はどこが違うのか、どのような関係にあるのかを明確にし、ID-POSでなければならない独自固有の分析手法とその効果を実証し、費用対効果も含めて、ID-POSの導入が本当に小売業の収益の改善に寄与するかを検証することであろう。今後、数年間は、この模索の時代が続くと思うが、私自身にとっても次世代のPOS分析のテーマ、少し気負っていえば、使命として取り組んでゆきたい。

   さて、そのPOS分析であるが、POS分析には客数のとらえ方により、レシート分析とID分析に大きく分かれ、さらに、それぞれが全体客数とセグメント客数に分かれる。この両者は独自の世界を構築し、その世界の中で交わることがなく、完結することができるのが特徴である。どちらも、売上からはじまるのだが、一旦、その世界に入ってしまうと、その世界の中で分析がはじまり、売上が無限の要素に分解されるが、その分解された要素はその世界の中でのみ回っており、売上を起点に表と裏の世界が出現することになるのが特徴である。

   ひとつ例を示せば、売上をレシート分析の主要指標のひとつレシート客数で分解すると、売上=レシート客数×レシート客数当りの金額PI値となる。このレシート客数は全体客数の場合もあれば、セグメントされた客数の場合もあり、セグメント客数を用いた場合は、さらに、売上は、売上=レシート客数×レシート客数PI値×セグメント客数のレシート金額PI値となる。ここで、レシート客数PI値はセグメント客数÷全体レシート客数のことである。したがって、セグメント客数=全体レシート客数となった時は客数PI値=1となり、レシート全体客数の場合はセグメント客数がレシート客数と一致した特殊な場合であることがわかる。

   これに対して、ID客数の場合であるが、売上をID分析の主要指数のひとつであるID客数で分解すると、売上=ID客数×ID金額PI値となり、セグメントIDの場合も売上=ID客数×ID客数PI値×セグメントIDの金額PI値となる。ここで、ID客数PI値はセグメントID客数÷全体ID客数である。

   そして、この2つはどこまで行っても交わることがなく、レシート客数はレシート客数の中で、ID客数はID客数の中で完結し、ぐるぐる回っているに過ぎない。いわば、独自の世界を構築しており、その独自の世界で動いているといえる。問題は、通常、これまで、小売業ではレシート分析の世界でマーチャンダイジングの仮説検証を実施し、そのノウハウを積み重ねてきたため、ID分析でPOSデータが分析された場合、戸惑ってしまい、思考停止か、全く別の世界のこととして理解しようとしてしまうことである。通常、世界観が2つ出現した場合には、新たな世界観の中で新たな世界観を構築するか、または、過去の世界観で構築されたものを、何らかに方法を用いて翻訳し、新たな世界観を理解するかの方法しかないが、現在のPOS分析の現状は、双方がごちゃごちゃになっており、業界全体が戸惑っているのが現状のように思える。

   そこで、歴史的にはレシート分析がはるかに長い歴史があり、マーチャンダイジングについてはこれまで仮説検証が繰り返され、ノウハウの蓄積も厚いものがあり、ひとつはこれをID分析に翻訳することが早道であろう。また、一方で、ID分析でなければ絶対にできない分析もあり、これについては、IDの世界で新たなにマーチャンダイジングを構築するしか方法がないといえよう。逆に、IDの世界はレシート分析では全く見えない新たな世界であるため、レシート分析に翻訳することは全部は不可能な世界だからである。両者の関係は基本的にレシート分析≦ID分析という関係にあるので、レシート分析はすべてのIDに翻訳可能であるが、ID分析はある部分はレシート分析に翻訳不可能なものもある。

   したがって、ID分析が可能になった場合は、ID分析を主体にマーチャンダイジングを確立し、これまでレシート分析の仮説検証により蓄積されてきたノウハウはすべてID分析に翻訳しなおし、さらに、ID分析特有の分析を用いて、仮説検証を行い、新たなノウハウを加えてゆくことが望ましいように思える。その意味でID-POSの時代はこれまでのマーチャンダイジングのノウハウが無駄になるのではなく、新たな観点から再検討し、必要に応じて新たなノウハウを付け足すことがその本質であるといえよう。

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June 17, 2008 in 経済・政治・国際CRM、FSP |

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