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November 2005

November 30, 2005

家計調査月報、2005年10月度速報!

  家計調査月報の2005年10月度が11/29、公開された。家計調査月報は総務省統計局が毎月1回公開する統計資料であり、最新情報が翌月の月末に公開される。11/29、本日、10月度の最新統計が公開された。消費支出は、1世帯当たり325,501円であり、前年同月比名目0.4%の増加 、実質1.3%の増加、前月比(季節調整値)実質1.2%の増加となり、若干消費が回復しているという状況である。

  ところで、この家計調査の統計資料はどのように政府に活用されているのだろうか。総務省によれば、主に以下のように活用されているという。内閣府では、我が国経済の分析(経済財政白書、月例経済報告)、国民生活の分析(国民生活白書)、国民経済計算の推計、経済見通しや経済計画の作成、消費者行政の基礎資料、景気動向指数などに使われているという。また、総務省では、情報通信白書に、財務省では、各種税率や所得控除など各種税額控除の検討のための基礎資料などに、厚生労働省では、生活保護基準の算定、各種年金制度の検討、医療費等の各種厚生関係料金の算定、労働経済の分析(労働経済白書)、労働問題調整の基礎資料などに、農林水産省では、農家・非農家の生活水準の比較、生産食料品の需給関係の分析などに、経済産業省では、我が国経済の分析(通商白書)、中小企業への需要分析(中小企業白書)、各種産業ビジョン策定の基礎資料などに、人事院では、標準生計費の算定、給与基準改定、寒冷地手当算定の基礎資料などに、都道府県では、県民経済計算、給与基準の改定などに、大学・研究所では、家計収支の計量経済分析などに、民間会社では、地域別、階層別、商品別などの消費実態の分析及び将来需要の予測などに、そして、労働団体では、賃金算定の資料などに使われているという。

  このように家計調査年報、月報、日報は上記の目的のために膨大な労力をかけ、多額の税金をかけ、統計データとして全国の家計から毎日調査集計されている貴重なデータである。食品スーパーマーケット業界としても、このデータをいかに活用するかが今後の大きなポイントであろう。

  さて、最新の2005年10月度の最新状況であるが、食費は外食を除くと1日約2000円となり、ほぼ食品スーパーマーケットの客単価に相当する。この2000円の中身を見ると、ベスト10は、米の 117円、豚肉の72円、牛肉の53円、牛乳の51円、ビールの41円、弁当の41円、鶏肉の33円、すし(弁当)の30円、果実・野菜ジュースの29円、卵の25円となる。

  さらに食品スーパーマーケットの分類別に見ると、まず、野菜だが、トマトの14円、ねぎの9円、きゅうりの8円、たまねぎの7円、だいこん7円、ほうれんそうの7円、ばれいしょの7円、にんじんの7円、生しいたけの6円、レタスの6円がベスト10である。果物はみかんの17円、りんごの13円、なしの12円、ぶどうの10円、かきの10円がベスト5である。次に食品スーパーマーケットの重要部門である、日配のベスト10は、牛乳の51円、卵の25円、食パンの23円、ヨーグルトの23円、豆腐の16円、中華めんの11円、納豆の11円、チーズの11円、生うどん・そばの9円、油揚げ・がんもどきの9円となる。グロサリーについては、一般食品のベスト10は、米の117円、果実・野菜ジュースの29円、茶飲料の17円、コーヒーの13円、つゆ・たれの11円、コーヒー飲料の10円、緑茶の8円、乾燥ス-プの8円、マヨネーズ・ドレッシングの8円、乳酸菌飲料の7円である。

  これ以外に生鮮3品については、鮮魚のベスト10は、まぐろの15円、さしみ盛合わせの13円、さけの12円、えびの10円、ぶりの9円、さんまの8円、たらこの8円、いかの7円、かつおの5円、塩さけの5円である。精肉は大分類であるが、豚肉の72円、牛肉の53円、鶏肉の33円、ソーセージの22円、ハムの12円がベスト5である。その他の商品としては、惣菜のべスト5は弁当の41円、すし(弁当)の30円、天ぷら・フライの24円、冷凍調理食品の21円、そうざい材料セットの16円、おにぎり・その他の11円である。

  最後に、菓子であるが、ケーキの23円、他の和生菓子の19円、アイスクリーム・シャーベットの18円、他の洋生菓子の14円、チョコレートの12円、スナック菓子の12円、せんべいの11円である。

  このように毎月、月別金額が算出されるので、日別金額に換算した上記金額に1日の来店客数を掛けると、概ね1日の売上金額となる。たとえば、トマトは14円であるので、これに食品スーパーマーケットの平均客数である2000人/日を掛けると28000円となり、これがトマトの日別売上となる。また、これをトマトの平均単価約200円で割れば、140個となり、これが日別の販売目標数量の目安となる。このように、上記、家計調査月報の数字をもとに売上目標と売上数量を算出し、販売計画の策定の参考として活用してゆくことが、本データの活用方法であろう。

  家計調査月報は、概ね、食品スーパーマーケットの客単価に近い数字といえるので、速報としては1ケ月遅れとなるが、実務への活用が十分に可能である。また、この家計調査月報は過去6年間、72ケ月分が公開されているので、来月の販促商品の選定、季節商品の抽出等にも活用の価値が高いものと思う。

参考:総務省統計局家計調査年報のページ

November 29, 2005

スチューレオナルドが近々に4号店をオープン!

 スチューレオナルドが近々に4号店をオープンするという。本日、11/28時点ではまだオープンしていないが、2005年度中ということで、創業が1969年の12月なので、おそらく、来月であろう。スチューレオナルドは現在3店舗で、コネチカット州に2店舗、ダンバリーとノーウォークに、そして、ニューヨーク州のヨンカーズに1店舗である。はじめてスチューレオナルドを見た時、この食品スーパーマーケットがチェーン展開はさすがに難しいだろうと思ったが、すでに3店舗を成功させ、年商300億円近くになり、4店舗目を出店するというので、チェーン展開が軌動に乗りつつあるといえよう。

  アメリカでは食品スーパーマーケットはウォールマートのスーパーセンターとの競争に敗れ、厳しい状況にあるが、スチューレオナルドのような独自固有の長所を極限まで伸ばした業態を開発し、出店戦略を軌動に乗せたことは食品スーパーマーケットの新たな可能性を開くものといえよう。

  スチューレオナルドは入口の店頭の重さ3トンの御影石に彫り刻んだ社訓「Rule 1: The Customer is Always Right」「Rule2:If the Customer is Ever Wrong, Re-Read Rule1」があまりにも有名だが、スチューレオナルド最大のポイントは本ブログでもふれたように、通常の食品スーパーマーケットが約30,000品目の商品の品揃えをしているところを、わずか2,000品目、10分の1以下に絞り込み、しかも、売上が1店舗約100億円という驚異的な数字をあげてしまう点である。私がはじめてスチューレオナルドの売場を見た時の感動はいまでも忘れないが、これこそPI値そのものを実現した売場ではないかと確信したことである。青果(野菜と果物)、日配(牛乳、ヨーグルト、チーズ、パン)、精肉(アメリカでは魚よりも精肉がメイン)主体に売場がつくられ、グロサリーは重点商品のみに絞り込み、ワンウェイコントロールで客単価アップをはかるという、PI値理論の原理原則がいたるところで実現されていたことである。さらに、牛乳は1000頭の牛を実際に飼い、毎日独自に絞りたてを店頭に並べている。しかも、その種類は、Whole Milk、2% Milk、1% Milk、Skim Milk、Low Fat Chocolate Milk、Iced Cappuccino、Dulce de Leche、Lactose Free 100、Soy Milkの9種類である。牛乳のPI値は日本でも最高であるが、アメリカでも恐らく最高のPI値であろう。その品揃えを深く、広く行うという、うわさには聞いていたが、こんな店が現実に存在するのかと心底、驚いたものだ。

  スチューレオナルドがなぜ、出店戦略に踏み出したかは、1987年にCEOが創業者のスチューレオナルド氏から息子のスチューレオナルド-ジュニアにバトンタッチされたことが大きい。初代が約20年かけて、スチューレオナルドの基礎を築き、2代目がそのノウハウをもとにチェーン展開をはかるという理想的な経営の引継ぎができたといえよう。ちなみに、スチューレオナルド-ジュニアはロスアンジェルスのカリフォルニア大学でMBAを取得している。

  さて、スチューレオナルドはこれら2,000品目をどのように商品管理しているのだろうか。スチューレオナルドでは青果部門(ジュース売場もうけもつ)、ミート部門、フィッシュ部門の生鮮3品、デリ部門、キッチン部門、バーベキュー部門、ベイカリー部門、アイスクリーム&コーヒー部門(オリジナル牛乳からつくるアイスクリームにこだわり小さいながらも部門となっている)、デモ部門(試食販売等)のデリカ部門、そして、グロサッリー部門、ガーデンショップ部門(クリスマスチュリーなどの販売)の営業部門に加え、管理部門として、ビルディングサービス部門、フロントエンド部門、レシービング部門(物流、在庫管理等)、セキュリティー部門の全部で15部門で成立っている。

  このように、スチューレオナルドは他の食品スーパーマーケットがけっして真似のできない要素をいくつも持ち合わせているにもかかわらず、基本に忠実な独特な食品スーパーマーケットをつくりあげた。近々オープンするスチューレオナルド4号店に期待したい。


参考:スチューレオナルドのホームページ

November 28, 2005

PI値1%が食品スーパーマーケットの根幹商品

  PI値は、平均単価とともに客単価アップのための根幹指標ですが、その意義は顧客満足度をダイレクトに表す指標といえます。PI値=買上点数÷客数(%)ですので、PI値は顧客一人当りの買上点数を表し、その商品に対する顧客の支持を表している指標のひとつです。したがって、このPI値を食品スーパーマーケットでつきつめてゆけば、それは、人間の命の原点、すなわち、生きて行くのに必要な商品とは何かを知ることになります。いわば、ライフラインの原点の商品が浮かび上がるといってよいと思います。

  いまから約10年以上前、PI値をはじめて食品スーパーマーケットに適用した時の業績アップ方法はPI値で1%以上の商品を売場から選定し、その商品を重点強化商品として、欠品と鮮度管理を徹底することが主な手法でした。そして、その商品の品質と品揃えの充実をはかってゆくことがポイントでした。これはいまでも生きているノウハウのひとつです。そして、その時からいまにいたるまでかわっていない点はPI値が1%以上の商品は食品スーパーマーケットの中には約10000品(SKU)ある商品の中にわずか、150~200品(SKU)しかないという事実です。この10数年間例外がありません。すなわち、このわずか150~200品の中に人間の生活の原点があり、ひいては食品スーパーマーケットの存在理由があるということです。ちなみにPI値1%とは1000人/日の客数で1日10個、2000人/日の客数で1日20個売れる商品のことです。

  本ブログでも食品スーパーマーケットの売上構成比について触れましたが、その時の結論は農産、日配、食品が最重点部門であるということでした。PI値1%の商品を分析すると、当然のことですが、このことを裏付けることができます。PI値1%の150~200品の中で最も数が多い部門が日配であり、約70品ぐらいあります。ついで、農産であり、約50品ぐらいあります。そして、食品が約20品ぐらいになります。残りの部門は10~20品となります。しかも、PI値1%、約200品を合計すると売上構成比は40~50%、PI値合計は何と500%近くになります。食品スーパーマーケットのPI値は約1000%ですので、顧客はPI値1%の商品の中から5点購入し、残りの9800の商品から5点購入するこということです。これは単に顧客にとって大事な商品であるだけなく、企業経営にとっても大事な商品であり、顧客満足度と企業経営が重なる最重要商品群であることがわかります。ちなみにPI値最高の商品は何でしょうか。食品スーパーマーケットでは牛乳、もやし、麺類などが最上位商品であり、ほぼ10%強という数字になります。したがって、この世の中のすべての商品の中で最高のPI値は約10%であり、その頂点に牛乳、もやし、麺類があるということになります。その意味で、食品スーパーマーケットは世の中のPI値最高の商品を扱う小売業と定義することもできます。

  余談ですが、ウォールマートがデータウェアハウスを構築し、在庫データと融合し、自動発注、バイヤー意思決定サポートシステム(BDSS)、メーカー向けリテールリンク、さらには、自動品揃えシステム等をつくった時に、2.3という数字に驚いたというエピソードがあります。2.3とは1週間に平均2.3回、商品が売れるという数字で、逆にいうと、1週間に2.3回しか商品が売れない、すなわち、1週間に4.7日は商品の売上が全くないということです。この事実に気づき、さらに商品販売動向を分析してみると、毎日売れる商品が約5000、1週間で売れる商品が約20000、1ケ月でやっと売れる商品が40000だったそうです。ウォールマートは食品スーパーマーケットとは対極をなす業態ですが、それでも、顧客にとって本当に必要な商品はごくわずかだけであり、その商品が経営の鍵を握っていたという事実です(ウォールマートに学ぶデータウエアハウジング(翔泳社))。

  ついでにもうひとつ余談ですが、アメリカのコネチカット州のスチューレオナルドは商品を約2000品目に絞った、年商約100億円の食品スーパーマーケットですが、これはまさにPI値の高い商品に絞りきれたからこそできたビジネスといえます。現在、スチューレオナルドはCEOもジュニアに代わり、店舗も3店舗となり、年商は300億円を越えたそうです。

 このように、食品スーパーマーケットにとってはPI値1%の商品が根幹といえ、この商品の重点管理が経営の成否を決めるといえます。

November 27, 2005

食品スーパーマーケット、先週の株価状況!

  先週の食品スーパーマーケットの株価は軟調だった。11/25の株価騰落率をみると、上場約50社の平均が-0.04%と下がってしまった。この日は小売業上場企業約400社も0.32%と微増であり、小売業界全体の株価が鈍い動きだった。その中で、上昇率トップがフジ(1963円:2.23%)、であり、ついで、ライフコーポレーション(1749円:2.10%)、バロー(3690円:1.65%)、MV東海(3170円:1.60%)、イオン九州(1779円:1.54%)、アークランド(2080円:1.46%)、CFS(770円:1.31%)、東武ストア( 351:1.15%)、OLYMPIC(1084円:1.11%)、マルヤ(842円:1.08%)、ポスフール(572:1.06%)等であり、あとはすべて1%以下の株価騰落率であった。ちなみに、この日、小売業界トップは大戸屋であり、1235円、12.78%の株価上昇率であった。大戸屋は11月に入ってから株価が急上昇し、小売業全体が低迷したこの日も10%以上の値がついた。

収益性の高い企業に買いが集中!
 ここ最近の食品スーパーマーケットの株価上昇企業を移動平均乖離率の25日、13週、26週の中期トレンドでみると、マルキョが図抜けており、25日(28.57%)、13週(38.28%)、26週(44.96%)の高い上昇率を示している。ついで、ヤオコーの25日(9.39%)、13週(14.66%)、26週(20.15%)で、平和堂の25日(9.06%)、13週(13.11%)、26週(19.06%)、オークワの25日(8.53%)、13週(14.61%)、26週(19.15%)と続く。これに続く企業がアークス、サンエー、バロー、大黒天物産であり、これら8社が現在、食品スーパーマーケットの株価を中期的に引っ張っているといえる。これら8社と上場食品スーパーマーケット約50社の経営数字を比較しみると、売上高伸び率が全社平均が約4%に対し、8社平均は約5%であるが(大黒天物産140%は図抜けているので、これを入れると10%強になる)、経常利益は何と全社平均2.48%に対し、4.07%と2倍近い数字である。また、PER、PBRは大きな違いがない。現在、株価が伸びている企業はいかに収益性が高いかがわかる。

 これに対し、11/25の週末に株価が2%以上下落した企業はドミ-(620円: -8.33%)、ヤマナカ(1200円:-4.76%)、サンエー(4320円:-2.70%)、アークス(1851円:-2.37%)、の4社であった。この内、サンエーとアークスは中期トレンドが先にも上げたように上昇基調であり、中期トレンドが下降基調な株価が移動平均乖離率でみると、ドミー、25日(-8.33%)、13週(-5.90%)、26週(-6.05%)、ヤマナカが、25日(-1.63%)、13週(-1.07%)、26週(-1.55%)の2社が大きい。さらに中期トレンドで下落率が高い企業は、3社あり、PLANTが、25日(-6.99%)、13週(-15.14%)、26週(-22.65%)、マルエツが25日(-0.24%)、13週(-8.38%)、26週(-14.07%)、そして、カウボーイが25日(-3.57%)、13週(-5.89%)、26週(-6.14%)である。これらの企業は経常利益率がドミー(1.76%)を除き1%を切り、収益性が低い企業である。また、特に、PLANT、ドミー、ヤマナカは時価総額が約70億円と、上場食品スーパーマーケット業界平均の約400億円に比べ、著しく低い状況にある。

 全体的には先週の食品スーパーマーケットの株価は以上のような軟調な相場状況であり、今週の株価がどのように推移してゆくのか見守ってゆきたい。

November 26, 2005

注目株!! サンエーが上場来高値更新!

  サンエーの株が9月中旬以降、右上がりで上昇している。11月に入り、少し値を下げたが、11月の中旬以降また上昇に転じ、11/24にはとうとう上場来最高値を更新し、4490円となった。通常は1万株から2万株の取引が、この日は6万株を越え、大商いだった。11/25は、前日比120円安(-2.7%)とやや値を下げたが、25週の移動平均乖離率(32.8%)、13週(17.32%)、25日(6.22%)、5日(1.40%)と上場食品スーパーマーケットの中で高水準となっている。ちなみに、食品スーパーマーケットの中で現在トップの移動平均乖離率はマルキョウであり、25週(44.96%)、13週(38.28%)、25日(28.57%)、5日(4.65%)であり、現在株価は1080円である。現在25週で10%以上を越える食品スーパーマーケットはサンエー、マルキョウ以外に大黒天物産、アークス、バロー、ヤオコー、オークワ、平和堂、イズミ、ライフコーポ、MV東海、ヨークベニマル、アオキスーパー、アークランドと12社ある。

PERが16.50倍!
 サンエーは上場食品スーパーマーケットの中では抜群の収益率であり、経常利益が6.6%とオオゼキの7.93%についで2位である。この数年約6%の経常利益がつづいており、抜群の収益性である。株価は、現在4320円と上場食品スーパーマーケットの中では、九九プラスは別格として、大黒天物産の5500円についで2位と高めである。しかし、PERが16.50倍と低く、上場食品スーパーマーケットの平均30倍と比べ半分である。現在株価が3000円を越える食品スーパーマーケットは九九プラスの39000円は除き、大黒天物産(5500円)、サンエー(4320円)、バロー(3690円)、ヨークベニマル(3620円)、イズミ(3550円)、MV東海(3170円)、オオゼキ(3050円)と7社であるが、この中でPERが15倍前後の企業はサンエーの16.50倍、オオゼキの14.7倍、MV東海の18.00倍といずれも収益性が極めて高い企業である。また、サンエーの売上は1112億円、粗利は32.7%、販管費26.0%であり、営業利益も6.7%である。食品売上構成比約50%強を武器に、衣料15%弱、住関連30%弱でSC、NSC、食品スーパーマーケットを主体に沖縄商圏で確実にシェアを伸ばしている。売上も過去2002年2月(104.6%)、2003年2月(106.5%)、2004年2月(110.3%)、2005年2月(102.5%)そして今期は103.2%を目指している。

サンエーの収益力を支える強さのポイント
 サンエーの強みは、沖縄という独特な商圏の中で、食品スーパーマーケットのみの展開だけはなく、全商圏対応型の業態を揃えている点である、ショッピングセンターはもちろん、最近ではヨークベニマルが最も力を入れているNSC(近隣型ショッピングセンター)の出店も意欲的であり、大商圏、中商圏、小商圏への出店をバランスよく行っている点である。そして、既存店の活性化を経営の方針にすえ、大商圏対応型のショッピングセンターをオープンする前には、小商圏対応型の食品スーパーマーケットの改装、活性化を実施し、既存店への影響を最小限にとどめながらの出店戦略をとっていることである。11/24の本ブログでも触れたとおり、現状の食品スーパーマーケットの既存店売上は平均95%であるが、このような政策により、サンエーは中間決算でも101%を越える既存店の売上を確保したという。もうひとつのサンエーの強みは物流センターである。沖縄に約80店舗弱展開するサンエーへのきめ細かな物流を自社でまかない、しかも、DCだけではなく、PC、食品工場まで併設し、徹底的なローコスト、高粗利の仕組みづくりに取組んでいる点である。サンエーの高収益の源泉がこの物流センターの活用によるところが大きいといえよう。さらに商品政策としては、オオクワ、平和堂、ライフ、ヤマザワ等が加盟する日本流通産業(株)、ニチリュウへも加盟しており、収益性の高い独自ブランドを販売するなど、商品力強化にも取組んでいる。

  このように、サンエーは沖縄という独特な商圏の中で流通業のトップとなり、食品スーパーマーケット業界の中で、際立った収益力をもつ企業である。既存店の活性化にも積極的に取り組み、さらに、今後の食品スーパーマーケットの主力業態のひとつとなるNSCへの取り組みにも意欲的であり、高い収益性をともなった成長が今後も期待できるといえよう。

November 25, 2005

売上構成比から見た食品スーパーマーケットの現状

 食品スーパーマーケットの主要企業8社の売上構成比を見ると各企業の戦略が浮かび上がってくる。今回対象にした企業は、ベルク、エコス、オオゼキ、マックスバリュ東海、大黒天物産、ハローズ、ヨークベニマル、ヤマザワである。各社商品分類がまちまちであるので、一概に比較することは難しい面もあるが、できるだけ共通なものをもとに比較を試みた。

  売上構成比については、本ブログでも11/23に掲載した、来期決算からはじまる知的資産経営報告書でも、第2項目に「選択と集中」があり、その中で各企業が主力事業をどこに置き、その売上比、利益比、利益率を見ることにより、その企業の主力事業の優位性を確認することができ、そのことを経営者、従業員はもちろん、株主、取引先、債権者、地域社会等が共通に認識することが、その企業の知的資産経営を確立し、ひいては安定した利益、成長をもたらすことになるという。そして、主力事業はおおむね売上高の20%以上を生み出す事業部門と考えられるという注意書きがある。ちなみに、今回の対象企業の中で、主要部門の売上比、利益比、利益率、全てを公開している企業はヤマザワ1社であり、他の企業は売上比のみであった。

  さて、このような観点から食品スーパーマーケットの売上構成比をみた場合は、食品スーパーマーケットの主力事業は、対象8社の平均をとると、食品の約30%、日配の約20%、青果の約15%の3つといえる。青果は精肉、鮮魚を合わせた生鮮3品では約35%となり、大きく見れば、生鮮、食品、日配といえる。この3大商品群の中で、生鮮強化型の典型的な企業がオオゼキであり、何と47.1%の売上構成比である。もっとも低い企業が30.9%と同率で大黒天物産とマックスバリュ東海である。特にオオゼキは、青果の売上構成比が20.7%と主要企業の中でもずば抜けており、青果を生鮮の主力商品にすえていることがわかる。

  一方、グロサリー強化型の典型的な企業が大黒天物産であり、マックスバリュ東海となる。ただ、グロサリーについては、日配とグロサリーの境界線が各社違うため、単純に公表数字で比較するのは難しいといえる。ちなみに、グロサリーの売上構成比が最も低い企業はヨークベニマルであり、24.5%である。ヨークベニマルは日配+惣菜の売上構成比は対象企業の中でNo.1であり、特に、惣菜が何と13.5%という圧倒的な数字である。各社平均は8%強であるので、13.5%は主力事業といってもよい数字であり、改めて、ヨークベニマルの強さと収益力は惣菜にあるといえよう。

  その他企業の特徴としては、ベルクが生鮮の中で鮮魚を強化しており、青果と並び13.1%の売上構成比である。また、雑貨が8.5%と対象企業の中でNo.1であり、ベルクの収益力は鮮魚と雑貨が大きく貢献しているものといえる。エコスは対象企業の平均値に近く、明確な主力部門がないが、バランスのよい売上構成比といえよう。最近、600坪タイプのSSMの出店を強化したハローズもエコスと同じく、対象企業の平均に近い売上構成比であるが、生鮮の中では精肉が12.4%とNo.1で、青果よりも、鮮魚よりも精肉の強い生鮮部門を確立している。ヤマザワも対象企業の平均に近い売上構成比である。ヤマザワについては、先にも触れたように、唯一荒利を公表している企業であり、それを見ると生鮮が27.8%、日配が28.9%、グロサリーが21.2%、トータル25.5%であるので、日配、生鮮が利益の牽引役であることがわかる。また、最近、急激に導入は進んでいる酒については今回の対象企業のうち、分離して公表している企業は3社であるが、平均売上構成比は5%であり、エコスの6.3%、オオゼキの6.3%、ハローズの2.3%が現状の売上構成比である。

  今回の対象企業は8社であったが、この8社の中でも各社の特徴がはっきり出ており、どの部門を主力部門にすえて取組むかが、今後の食品スーパーマーケットの成長と収益の確保の鍵を握っていることが改めて明確になったといえよう。

November 24, 2005

売上速報!! 食品スーパーマーケット 2005年10月度

客単価アップが当面の最優先課題!
 食品スーパーマーケットの2005年10月度(11/23現在)の売上速報が出揃った。現在、売上速報を公開している企業は食品スーパーマーケット上場企業約50社の内、約20社(2000店舗弱)である。2005年10月度の売上は昨年対比105.8%、内訳は客数が111.1%、客単価が95.4%(客数、客単価まで公開している企業は約10社)となり、先月と比べ、売上が1ポイントダウン、客数の伸びはほぼ同じだが、客単価が1ポイント強ダウンした。
 客数で昨年対比を下回る企業はほとんどないが、客単価で昨年対比を越えた企業は前月同様0であった。各企業とも客単価アップに苦戦している状況といえる。さらに既存店に関しては、売上が95%、客数は昨年対比ぎりぎりであるが、客単価は全体とほぼ同じ95%強である。既存店に関しては客数も苦戦している状況であり、出店競争による競合店の影響が大きいといえよう。また、このうち7社が客単価=PI値×平均単価にもとづき、PI値、平均単価を公開している企業があるが、その平均はPI値99.5%、平均単価95.8%であり、既存店はPI値が102.0%と100%越えているが、平均単価が95%であり、価格を下げた分をPI値でカバーできず、客単価が95%にとどまった。

  全体として、各社とも激しい出店競争の中で、既存店では価格訴求をかけ、PI値アップに取組んだが、客単価を押上げるまでにはいたらなかったといえる。さらに、売上をカバーするために新店を積極的に出店して、客数は何とかアップしたが、客単価が思うように伸びず、新店の客数アップにささえられ、売上は何とか105%にまとめたといえる。

  このように、現状は大変厳しい競争の中にあり、たとえ客数を新店の出店により、105%まで伸ばしても、客単価が95%で伸び悩んでいるため、売上は昨年対比100%を超えられない状況がつづいており、客単価アップ政策が当面の食品スーパーマーケット業界の最重要戦略となった。

新規出店が寄与し、売上110%を超える企業が6社
 このような中で2005年10月度も昨年対比の売上が110%以上になった企業が6社あった。九九プラス、大黒天物産、プラント、マックスバリュ東海、アークランドサカモト、ハローズである。特に九九プラスは、新規出店により、この数ケ月140%以上の伸びである。ただ、既存店は95%強と競争激化がつづいている。大黒天物産はここにきて126%と、この数ケ月間約140%の伸び率であったが、はじめて120%台となった。プラント、マックスバリュ東海はどちらも出店戦略が順調に進み、プラントは120%弱、マックスバリュ東海は114%と安定した伸び率を示している。特に、マックスバリュ東海はPI値も全店、既存店とも100%を越え、既存店の客数も先月同様、100%を越えた。アークランドサカモトはスーパーセンタームサシが寄与し既存店も102.7%と好調である。ハローズは600坪対応のニューフォーマットの新店が寄与し、既存店は厳しい状況ではあるが、全体としては110%と前月同様クリアーした。このように、新規出店戦略が順調に推移している企業は昨年対比110%以上であった。

ヨークベニマルvsカスミ
 注目される北関東の茨城商圏であるが、カスミのドミナント商圏である茨城地区に新規参入し、既に3店舗のNSCを出店したヨークベニマルの影響が今月数字になってあらわれた。カスミの先月は100.3%の売上であったが、今月は98.1%とダウン、さらに既存店は95.8%と先月と比べ2ポイントもダウンした。ただ、ヨークベニマルもNSCの新規出店により客数は105%弱アップしたが、客単価が95%と落ち込み、先月は104.1%であった売上が100.1%と厳しい状況である。地元福島をはじめ、宮城、山形等で既存店の激戦が厳しい状況にあったといえよう。

105%前後の企業が5社
 今月、約105%で推移した企業は5社である。107%のオオゼキ、105%のヤマザワ、105%のヤオコー、104%のバロー、103%のエコスである。この中でもヤマザワは既存店の売上も先月に続き、101.7%と、既存店の活性化も起動にのりはじめた。ただ、客単価は96.2%と先月よりも1ポイント強ダウンし、客数アップによる売上増である。オオゼキは既存店が95.9%と厳しい状況であったが、客数を114.9%と伸ばし、売上を107.3%と先月よりも2ポイントアップした。ヤオコーも先月同様105.1%で安定した推移であるが、客単価が先月よりも2ポイント落ち96.2%と、特にPI値が伸び悩んだことが大きかった。バロー、エコスはほぼ同じ傾向で104.1%、103.3%であった。特にエコスは、この月、既存店に価格訴求をかけ、平均単価が89.8%と10ポイント以上下げ、PI値を105.8%までもっていったが、客単価が価格訴求をかけた割にはアップせず95.1%となったが、その分、客数が102.1%増え、売上を先月よりも1ポイント以上改善した。

7社が昨年対比割れ
 上記以外の7社は残念ながら、昨年対比を下回った。特に、オリンピック、ミスターマーックス等の非食品の強い企業が厳しい傾向であった。また、いなげやが先月96.3%、今月92.9%、既存店は91.3%と厳しい状況である。特に、いなげやはエコス同様、既存店の平均単価を10%下げ、PI値を108%までもっていったが、エコスと違い、客数が94.5%と伸び悩み、厳しい月となった。

参照:2005年10月度詳細データ

November 23, 2005

客単価が正式に知的資産経営報告書の根幹指標に!

 本ブログで11/2に取り上げた経済産業省が提唱していた知的資産経営報告書策定にあたってのガイドラインが、実は、先月、正式に公表されていた。年末かと思っていたが、意外に早い公表だった。6月の中間報告段階では51の指標が公表され、今回、35の指標に絞り込まれたが、その中の重要指標として客単価の変化が正式に取り上げられた。客単価の変化以外にも小売業界として関係の深い指標としては、新規顧客売上高比率及び新規顧客会員数の対前年伸び率もあり、来期の決算から、財務諸表とともに上場企業をはじめ、非上場企業にも知的資産経営報告書の公開を促してゆくという。

  知的資産経営の開示ガイドラインでは知的資産経営を次のように定義している。すなわち、「知的資産経営は、経営の一側面というよりも経営そのものであり、利益の追求を基本としつつ、多くのステークホルダーを視野に入れ、自らの有する固有の能力を活かして持続的な利益の発展を目指すことにより、企業価値を高める経営のやり方である」とし、知的資産経営=経営そのものという考え方である。今後、この知的資産経営報告書が様々な企業で公表されることにより、財務諸表のみでは表現できない知的資産や知的資産経営の内容を知ることができるようになるものと思う。また、このガイドラインでは知的資産経営報告を行う目的として、①企業が将来に向けて持続的に利益を生み、企業価値を向上させるための活動を経営者がステークホルダーにわかりやすいストーリーで伝え、②企業とステークホルダーとの間での認識を共有することにあるとしている。ここでいうステークホルダーとは株主だけではなく、従業員、取引先、債権者、地域社会等のことを指している。

 さて、肝心の客単価の変化について、ガイドラインでは次のように指標解説がなされている。「同一の購買顧客や販売取引先との間で、繰り返し取引がある場合、その取引先の満足度が高ければ、次の購買における単価は増大する可能性がある。逆であれば、より安く買おうとする可能性が高いので、減少する可能性が高い。また、それによって取引先が変わる場合には、新規の取引先の購買単価の方が高い可能性は低いので、この場合にも客単価は下落するであろう。したがって1回当りの購買単価(いわゆる客単価)が増大していることは、継続的な顧客への説得力が増加しているか、極めて高い信頼を寄せてくれる新規取引先・顧客を開拓したことを示唆する。」と客単価をこのように知的資産経営の重要指標であると定義している。また、指標解説では、平均単価が外的要因により下がった場合には一定の補正を行う必要があるともいっているので、客単価=PI値×平均単価を意識していると見えるが、その場合は、一般にはPI値がアップし、客単価が大きく落ちることはないのが現状であるので、平均単価のみで客単価をとらえるには少し無理があるが、客単価を慎重に評価しようという配慮がされている。

  このように今後、知的資産経営報告書を作成する際には、客単価の変化の指標が必然的に公開されることになり、小売業界はもちろんであるが、各企業が客単価を知的資産経営の管理指標として位置づけることになるものと思う。来期は決算書とともに知的資産経営報告書が各企業で公開されてくるものと思うが、是非、小売業界では進んで公開して欲しいと願う。

 今回、11/10に久しぶりに産業構造審議会、新成長政策部会、経営・知的資産小委員会が開かれたが、その会議の席で、日本政策投資銀行が作成した「サステナブルな社会づくりレポート社会環境・知的資産報告2005」が公表された。その中で、報告書をつくる上において苦労した点と良かった点は何かという質問に対し、「苦労した点として、行内で知的資産に対する認識ギャップがあったこと、積極的に「強み」をPRしていくことに慣れていないこと、知的資産を数値で裏付けることが難しいことがある。一方、良かった点として、行内を中心に反響が大きかったこと、CSR報告書や環境報告書を作成している人にとって、それらを広い視点で捉える上で知的資産という概念が一助になっているとの回答があった。また、知的資産経営報告は、企業と投資家との情報ギャップを埋める働きがあるので、間接金融を通じて社会貢献する際に大いに役立つとの意見があった。」とのことである。

  まだまだ、スタートしたばかりの知的資産経営報告書であるが、徐々に各企業に浸透してゆくものと思う。この委員会は傍聴もゆるされ、議事録、資料等すべて公開であるので、もし、時間がゆるせば、次回の委員会は来年早々ということでもあるので、傍聴にいってみようかと思う。

November 22, 2005

注目株!! アークスが上場来最高値更新!

  アークスが11/21、上場小売業トップの16.82%のストップ高の株価上昇率となり、上場来最高値をつけ、2090円でひけた。ここ最近3万株程度の売買高だったが、11/21は何と約10倍の30万株を越える大商いとなった。アークスの株価はここ数ケ月間は1500円前後で推移していたが、10/17頃から緩やかに上昇をはじめ、11月に入り1700円強で横ばいとなり、11/16頃からまた緩やに上昇しはじめた。そして、11/21、前日比301円(16.82%)と大暴騰した。現在のPERは57.3倍、PBR2.01倍と上場食品スーパーマーケットの中では高めではあるが、連結PERは21.7倍と、平均の約30倍と比べると若干低めといえる。

  ここ数年の業績も過去5年間の売上は1247億円、1370億円、1548億円、1873億円、2045億円と順調に伸ばし、経常利益も34億円、37億円、47億円、58億円、69億円と5年間増収増益を続けている。そして、来期は売上2260億円、経常利益は73億円(売上対比3.2%)と増収増益の予定である。売上高2000億円は北海道の小売りグループの中ではトップクラスであり、イオングループ、生協グループと並び、食品市場の3大グループの一角を占め、文字通り北海道の食品流通を牽引する企業となった。

  ここまで企業が成長し、収益性をたかめた背景は大きく2つあり、ひとつは、そもそものアークス誕生を含めM&Aにより企業規模を拡大させてきたことである。そして、もうひとつは、ビックハウスという食品スーパーマーケットとしての強力なディスカウント業態を北海道で軌道に乗せたことによる。

  アークスの歴史は、平成14年に、ラルズ(札幌)と福原(釧路)が経営統合し、純粋持株会社をつくり、株式交換により、M&Aを実施したことにはじまる。そして、平成16年のふじ(旭川)もやはり株式交換により吸収し、現在10の子会社の共同持ち株会社となった。最近の食品スーパーマーケットのM&Aはほとんどこの株式交換による完全子会社化であり、つい最近でもヨークベニマルが茨城のカドヤを株式交換で子会社化している。アークスはこのM&Aの仕組みを最大限に活用し、直接競合しない北海道の地域の食品スーパーマーケットを次々に傘下にいれ、規模の経済を追求し、ここへきて、2000億円の大台を超え、北海道の中でも最大規模の食品スーパーマーケットとなった。もともと、ラルズも福原も食品スーパーマーケット最大のボランタリーチェーンのCGCグループの会員であり、今回アークスに加盟したふじもCGCグループである。その意味で、アークスは北海道のCGCグループから生まれた企業集団といってもよい。なお、北海道のCGCには、(株)ホームストア 、(株)ラルズ、(株)道東ラルズ、(株)道北ラルズ、(株)道南ラルズ、(株)福原、(株)丸しめ志賀商店、(株)ホクノー 、ピュア食品(株)、(株)ふじ 、(株)中央スーパー、北雄ラッキー(株)の 12社が加盟しており、この内、ホームストア(7店舗)、(株)ラルズ(49店舗)、(株)道東ラルズ(13店舗)、(株)道北ラルズ(9店舗)、(株)道南ラルズ(18店舗)、(株)福原(43店舗)、(株)ふじ(22店舗)の7社に加え、酒、医薬品のイワイ(61店舗)、ライフポート(66店舗)が加わり、総店舗数は約300店舗、そのうち、食品スーパーマーケットは約170店舗となった。

  一方、アークスはビックハウスという強力な食品ディスカウント店を主力業態としており、ビックハウスがアークスの成長性を支えているといえよう。最近の新店もBig House深川店(10/28)、Big House白石店(9/29)、Big House野幌店(4/28)、Big House岩見沢店(3/3)とビックハウス主体の新店戦略であり、すでに約30店舗となった。ビックハウスの最大の特徴は販管費率が13%台という、驚異的な数字が示すとおり、徹底的なローコスト経営がなされている点である。この販管費率がディスカウントをもたらし、荒利16%強という低荒利でも約3%の経常利益をもたらしている。マーチャンダイジングも独特な手法を用い、業界では有名な1物3価の価格政策を採用し、ばら売り、まとめ売り、箱売りの価格がだんだん安くなるという値付けをあらゆる商品に採用している点である。これに加え、商品が徹底的に絞り込まれ、単品量販の売場を作り上げ、商品管理の作業コストを極端に少なくしている。さらに、荒利16%強にささえられた強力なディスカウント価格で対応するため、販売促進費も極端に省く点である。店舗にもほとんどコストをかけず、最近は新規出店もあるが、当初はほとんどが居抜き出店であり、出店コストも極力抑えた出店をはかっている。このような仕組みに支えられたビックハウスの平均売上は約30億円といわれており、このディスカウント政策が強力な武器となって、驚異的な集客をもたらしているといえる。

  今後、北海道にはイオングループのスーパーセンター、西友ウォールマートのスーパーセンター等の出店競争が予想されるが、アークスのビックハウスがどこまで対抗できるかが今後の鍵を握るといえよう。

November 21, 2005

トマトは野菜の客単価No.1商品!

  野菜の中でも客単価トップをほこるのはトマトである。トマトはまさに青果部門の最重要商品群のひとつだ。しかも、年間を通じて客単価の高い商品であり、かつ、粗利もかせぐ商品である。旬は5月前後であり、3月から客単価が上昇し、5月にピークを迎え、7月ごろまで続く。その後は客単価は落ちるものの、青果の中では、常に客単価上位をキープする。青果以外の食品スーパーマーケットの商品群の中でもトマトは常にトップクラスの客単価を誇る。ほぼ、客単価20円は狙え、PI値は10%以上の支持の獲得が可能だ。直近の家計調査月報(9月度)でみても、トマトの1日当りの全国平均の支出金額は18.2円で野菜の中でトップである。ただし、都道府県別のデータでみると最高29円から12円までバラツキがあるので、地域特性を見たうえでの目標設定が必要である。全国No.1は京都市の29円、2位が千葉市の27円、3位がさいたま市、東京都区部、横浜市で26円である。ワーストは青森市、和歌山市、那覇市で12円である。

  では、トマトの客単価アップのポイントは何か。それは、次の4点に集約できる。品揃え、商品管理、アップグレード、そして一箇所集中販売である。

  第1の品揃えのポイントはバラとパックを同時強化することと、必ず、大袋、場合によっては箱売りを投入することだ。客単価グラフでみると、○の商品(右下)、○○○の商品(真ん中)、そして○○(左上)の最低3つの品揃えを実践することである。よくある失敗事例は、バラのみ強化した事例で、これはPI値は極限までアップするが、平均単価が極限まで下がり、結果として客単価がアップしない結果となる。トマトは、PI値アップも大事な戦略だが、実は、それ以上に大切な戦略が平均単価アップである。トマトは唯一野菜の中で平均単価200円を越える商品である。野菜の平均単価はほぼ100円前後であるので、トマトは野菜というよりも、むしろ、果物に似た傾向を示す。これは3番目のポイントのグレードアップにもかかわってくるが、トマトは通常の野菜と違い、生でそのまま食べることがほとんどなので、食べた瞬間、その品質を一瞬のうちに顧客が判断する。したがって、おいしいか、鮮度がよいかが購入の決め手となり、時には価格(安さ)さへ越えてしまう。したがって、より、付加価値、グレードの高いトマトの投入が客単価アップには大きなポイントとなる。

  2番目の商品管理は、PI値の高いバラで欠品をださないことはもちろんだが、もうひとつ大事な課題は、品質のバラツキを安定させることがポイントとなる。特にPI値のアップはこれで決まるといってもよく、PI値がアップするかどうかは、より沢山の顧客に買っていただくことも大事だが、一人一人の顧客が継続的にリピートしてもらえるか、また、バラからパックへそして箱へと購入単位をアップしてもらえるかが決め手となる。そして、そのためには品質のバラツキが少なく、いつ、買ってもおいしく、そして鮮度のよい商品管理ができているかが問われるのだ。これが特に、PI値はもちろん、平均単価アップにもつながってゆく。

  3番目はアップグレードだが、これは既に述べたように、同じバラでも、少し高いが、おいしいトマトを投入できるか、そして、そのパック(まとめ売り)への対応ができるかが、決め手となる。これによって、新しい顧客を獲得し、PI値アップへつながるだけでなく、平均単価アップにもつながり、トマト全体の客単価アップに貢献することとなる。したがって、最低限のトマトの品揃えは、通常のトマト3つ+ワングレードアップのとまと2つの合計5つは欲しいところだ。

  また、よくある売場づくりの間違いとして、4番目のポイントとなるが、トマトのバラのみ別の場所で販売するとか、特売商品のみ別の場所で販売するとかを見るが、トマトに限らず、各商品は比較購買されてはじめて全体の数字がアップするので、原則、トマトは一箇所集中販売が客単価アップの決め手となる。

  以上4つの原則を実践すれば、必ず、トマトは野菜NO.1の商品へ育ち、結果として、青果全体、ひいては店舗全体の客単価アップにつながってゆくものと思う。

参考HP:KAGOMEのトマト大学

November 20, 2005

注目株!! オオクワが年初来高値を更新!

 オオクワが11/18、年初来高値を更新した。この数ケ月1500円弱で推移していた株価が、10月に入り、じりじり株価を上げ、1600円前後まで値を上げた。その後、しばらく、横バイで推移していたが、11/16から上昇に転じ、11/17は1700円弱まで値を上げ、11/18、とうとう年初来高値を更新し、1736円で引けた。上場来、最高値は3830円 (1991/06/14)であるが、過去5年間では最高の株価である。現在のPERは20.60倍、PBRは1.27倍と食品スーパーマーケットの平均PERの約30倍と比べまだまだ低く、またPBRも食品スーパーマーケットの平均約1.5倍に比べ低い。その意味で、現状の株価は高いとはいえない。

 オオクワ以外にも、11/18の株価はヨークベニマルが7.87%と食品スーパーマーケットトップの株価上昇率で、3560円の値をつけた。上場小売業約400社の中でも3位の株価上昇率であり、ヨークベニマルが小売業の中でも注目企業となりつつある。また、11/18はイズミヤがヨークベニマルについで食品スーパーマーケットの中で株価上昇率が2位と、4.10%上げ、887円となった。11/23に待望の2号店目となるスーパーセンターのオープンをひかえ、今後、スーパーセンターの新規出店が続き、業績に寄与するものとの期待感が大きかったのでのではないかと思う。これ以外の今週の食品スーパーマーケットの株価は軟調であり、3位以下は2%台の株価上昇率であり、全体平均も1.04%と低調の週であった。小売業全体の株価上昇率の平均も0.48%であり、全体的に小売業も低調な相場であった。

 さて、オオクワの業績だが、ここ数年、売上は101%強で推移し、2005/02の売上は2281億円強であり、経常利益率は昨年は3%を越えたが、今期は、2.5%強で、減益であった。しかし、来期の予想は、売上103%強、経常利益も3%弱と増収増益の予想である。食品スーパーマーケット上場企業の平均売上が昨年対比103%強、経常利益率が2.5%強であるので、ほぼ平均に近い数値である。オオクワは財務管理指標の中でも営業利益率を重視する経営方針であり、2005年度の単体の損益計算書を見ると、粗利が25.9%(連結:26.5%)に不動産収入等の3.3%(連結:3.8%)が加わり、29.2%(連結:30.3%)、販売管理費が26.5%(連結:27.7%)、営業利益が2.7%(連結:2.6%)と当面の目標の4.0%にはまだ届いていない。

 オオクワは和歌山県(売上構成比:43.0%)を地盤とする食品スーパーマーケットであり、現在、奈良(22.0%)、大阪(18.6%)、三重(16.5%)にも出店を広げ、128店舗を展開している。業態もSSM、SM、SCに加え、最近では、「スーパーセンターオークワ南紀店」を創業の地、和歌山県新宮市に、次世代の主力業態としての1号店を出店した。その後、最新店舗のスーパーセンターオークワコスタモール二色の浜店を大阪1号店としてオープンし、現在、スーパーセンターは4店舗となった。一方、競争の厳しい既存店については、直近では伊勢二見店、伊勢馬瀬店など6店舗をプライスカットのディスカウントストアへ転換するなど、新業態の開発にも力を入れている。既存のSSMについても、泉佐野松風台店、和歌山中の島店など3店舗を新規出店した。また、商品供給も日配などの自社食品工場や加工センターをもち、商品開発から自社の物流センターを経由しての店舗への一貫した物流体制の整備にも努めている。これに加え、平和堂、ライフ、ヤマザワ等が加盟している日本流通産業(株)、ニチリュウのPB商品も販売し、商品力の強化をはかっている。

  このように、オオクワは、他県への新規出店、新業態開発、商品政策等様々な手を打ってはいるが、現状ではまだ成長軌道に乗っているとはいえず、今後、成長性、収益性の高い企業に転換するためには、現在の多種多様な業態を整理し、成長性、収益性の高い業態に経営資源を集中し、新規出店戦略を明確にすることが大きな課題となろう。その意味で、直近で4店舗になったスーパーセンターの動向が今後の鍵を握るものと思う。

November 19, 2005

客単価とは何か?

  客単価というと一般的には、店舗全体の客単価、たとえば、2000円とか、2500円が思い浮かぶ。ほとんどの場合、そこで話が終ってしまい、ではどのように客単価をアップさせるかということになると、なかなか話がすすまないのが実情である。本来、客単価が1500円であれば2000円に、2000円であれば2500円にするためにどのように客単価をアップさせたらよいかの具体的な政策を明確にし、それを実行に移すことが客単価1500円、2000円を把握した時点で問われるはずなのに、それが中々できない。

  なぜか。その最大の理由は、客単価とは何かが、その本質にさかのぼって理解されていないからである。では、客単価の本質とは何か。それは「客単価とは商品1品1品から始まる」という認識である。商品1品1品に客単価があるのかと思われるかもしれないが、客単価は商品1品1品に存在し、その1品1品すべての商品の客単価を足したものが、店舗全体の客単価であり、これが2000円、2500円となるのである。したがって、客単価をあげるということは、商品1品1品にまでさかもどり、どの商品にメスを入れるかがつかめない限り、客単価アップは絶対に不可能なことなのである。

 では、商品1品1品に客単価が存在するとはどういうことか。これを理解するには、売上の基本公式にさかのぼる必要がある。
 売上=客数×客単価
    =客数×(売上÷客数)
この式は小売業で一般的に用いられている売上の基本公式だが、客数で割ってしまえば、売上=売上なので、売上にあえて客数という概念を導入し、因数分解し、客単価という新たな指標を導き出していることがわかる。したがって、客単価とはお客様一人当りの売上であり、これは商品1品1品から存在し、当然、店舗全体にも存在することがわかる。売上を商品1品1品で見るか、店舗全体で見るかの違いである。1例をあげれば、トマトの1日当りの売上が40000円だったとすると、客数が2000人であれば、40000円÷2000人で20円ということになる。すなわち、トマトの客単価は20円である。このように、売上の基本公式の中に、客単価は店舗全体だけではなく、商品1品1品に存在することが実は示されているのである。客単価は商品1品1品から始まるといえる。

  では、客単価をあげるとはどう考えたらよいだろうか。それには、この売上の基本公式をさらに深めて、客単価を因数分解することが必要となる。売上を上げるためには、先の公式が示すように客数か客単価を上げればよいが、客単価をあげるにはどうすればよいか。それは客単価を因数分解して新しい指標をつくることがポイントとなる。客単価=売上÷客数なので、この中の売上を分解し、その原点の指標である買上点数と平均単価に分けて考えるとよい。すなわち、
 客単価=売上÷客数
      =(買上点数×平均単価)÷客数
となり、客単価の分解が一歩進んだことにことになる。さらに、順番を並びかえると、
     =(買上点数÷客数)×平均単価
となり、(買上点数÷客数)=PI値(Perchase Index)とおけば、
     =PI値×平均単価
となり、客単価がPI値と平均単価に分解され、客単価アップの基本公式ができあがる。すなわち、客単価を結果とすれば、PI値、平均単価は原因であり、客単価を目標とすれば、PI値、平均単価は手段となり、客単価アップをはかるためには、PI値と平均単価に着目することがポイントとなる。これが客単価の基本公式である。

  この客単価の基本公式が成り立つことによって、客単価をあげるためには、商品1品1品のPI値と平均単価に着目し、PI値か平均単価、ないしは双方を改善することにより、商品1品1品の客単価はもちろん、結果として、店舗全体の客単価をもアップさせることができるようになる。これが客単価の本質である。

  最近は小売業の上場企業が増え、現在、約400社弱、食品スーパーマーケットは約50社となった。そして、その多くの企業で業績のフラッシュと題して、月次で売上速報を公表している。その中で、目を引いた速報がある。ヤオコーのものだ。月間売上速報を、客数と客単価に分け、さらに、その客単価をPI値と平均単価に分けて公開している。おそらく、食品スーパーマーケット業界でははじめてのことであろう。客単価までは公表する企業は最近増えてきたが、その最重要指標であるPI値までを公表する企業ははじめてみた。客単価の本質を理解し、商品1品1品にまでさかもどって、客単価アップを、PI値と平均単価を用いて、仮説検証しながら取組んでいるのでないかと思う。この事例のように、徐々にだが、食品スーパーマーケット業界でも客単価の本質が解明されつつあり、実務への活用がはじりつつあるといえよう。余談だが、PI値を買上点数と混同し、ホームページで月次売上速報として公表している企業を数社見つけた。PI値は買上点数を客数で割ったものであり、平均単価と掛け合わせて、客単価を導く、最重要指標であるので、買上点数としてしまうと、平均単価をかけた場合、売上に戻ってしまい、客単価にはならない。論理矛盾である。この点もヤオコーのホームページにはしっかり解説が補足としてつけられているので、確認しておいて欲しい。

ヤオコーのホームページの月次売上速報

November 18, 2005

注目株!! 大黒天物産が上場来最高値更新!

  大黒天物産が上場来最高値を11/17に更新し、5590円の値をつけた。10/28をピークに11月に入り、やや値を下げていたが、11/7以降じりじり値を上げ、11/17、5590となった。本ブログでも10/31に取り上げた時には上場来高値は2004/04/14の5540円であったので、今回50円の更新といえる。5590円は上場している食品スーパーマーケットの株価の中ではSHOP99の367000円を除けば、断トツのNo.1であり、2位のサンエーの4000円を大きく上回っている。しかも、PBRが何と6.1倍と食品スーパーマーケットの平均PBRが約1.5倍であり、SHOP99の7.2倍についで2位であり、3位は丸久の3.8倍であるので、如何に資産価値が高いかがわかる。ちなみに、PERは約30倍であるので、ほぼ食品スーパーマーケットの平均であり、この株価でも高すぎるとはいえない状況といえよう。

  大黒天物産の来期の予想は、売上高は416億円(144.2%)、営業利益、経常利益とも23.4億円(127.7%)であり、売上高営業利益率、経常利益率は5.6%である。この成長と収益を支える戦略が出店であり、現在、大黒天物産は24時間営業のスーパーディスカウントストアのディオ16店舗とメガディスカウントランドのラ・ムーを6店舗展開している。今期2005年度はすでに、ディオを3店舗、ラ・ムーを2店舗の計5店舗の出店をした。

  大黒天物産の特徴は、スーパーディスカウントストア、ディオの24時間営業の実現により、“エブリーデー・ロープライス”から“エブリータイム・ロープライス”を実現したことにある。もともとが物産の社名が示すように卸売業からスタートしている企業であるため、メーカー、一次卸からの1品大量仕入れをはじめ独自の仕入れルートを持っているため、ロープライスを可能にしている。さらに、最近では、現在、200点を越えるという自社PBの「D-PRICE」を開発したことも大きい。また、ロープライスで荒利が22.4%と一般の食品スーパーマーケットに比べ低めであるが、徹底的なローコスト経営にも徹しており、販管比率は何と16%である。そのため、経常利益率も今期は6.3%ときわめて収益性の高い企業をつくりあげた。経費16%の中身は、人件費率が福利厚生費も含め、荒利高の約30%強、売上高の約7%強に抑えられている点と、宣伝広告費が何と0.4%と極めて低い点である。通常の食品スーパーマーケットでは荒利高人件費比率で約35%、宣伝広告費で約2%はかけているので、この2つだけでも、約6%も違うのであるから、その分ロープライス政策をとることができる。すなわち、独自の仕入れで原価を抑え、独自のマネジメントで経費を抑え、収益を極限まで高める経営が実践されているといえよう。また、短期の1年以内に返済予定の長期借入れ金は約3億円弱とほぼ横バイであるが、長期借入金が昨年は約6億円あったが、今期は約半分圧縮し、3億円強となり、財務体質も改善が進んでいる。

  ただ、これだけ財務内容がよい大黒天物産であるが、既存店の活性化には苦労しているのが現状で、直近の10月度の数字を見ると、既存店の売上は96.4%であり、客数は横バイであるが、特に、客単価が95.2%と落ち込んでいる点である。PI値、平均単価ともに約97%であるので、既存店の活性化が今後の大きな課題である。特に大黒天物産では、生鮮構成比が約30%、グロサリー構成比が約70%と通常の食品スーパーマーケットと比べ、極端にグロサリー構成比が高い。これは企業の創業が卸売りからはじまったということもあり、グロサリー最優先のロープライス政策をとっているためといえよう。今後、いかに、生鮮構成比を上げうるかが既存店を含めた、全店の客単価アップのポイントとなろう。

November 17, 2005

ヨークベニマル、NSCに戦略転換!

  ヨークベニマルのNSC戦略の原点は1998年11月オープンの福島県白川市のメガステージといえよう。ちなみに、NSCとはネバーフッドショッピングセンターの略で、中商圏対応型の近隣型ショッピングセンターのことである。白川市にはもともと、市街地にイトーヨカー堂、郊外に約20年前にオープンしたヨークベニマル昭和町店があっただけだったが、98年にヨークベニマルのメガステージが国道289号線沿いにオープン、地元ホームセンターのダイユーエイトに加え、ユニクロ、マツキヨ、ヤマヤ、ゼビオ、サイゼリアなど約20業種が集結する一大NSCが出現した。しかし、そのわずか2年後の99年10月にはイオンのSCがすぐ近隣にオープンし、激戦となった。

  この激しい競争の中で、着実に、力をつけたヨークベニマルは2000年11月に郡山のイオンのSCのすぐ近くにダイソー、マツキヨ、ユニクロ等と八山田店を核としたヨークタウンNSCをオープンさせた。この年、福島に浪江店、宮城に若柳店のNSCをオープンさせている。ところが、先にオープンした福島県白川市のヨークベニマルNSCのメガステージでは、2001年1月にベイシアがカインズとともに、同じ国道289号線のハス迎えの至近距離(徒歩で移動できる)の場所にオープンした。わずか3年で白川では商圏構造が激変し、3つ巴の激しい競争が現在でも行われている。この時、すでに4店舗のNSCがオープンし、NSCのノウハウを確立したヨークベニマルは、その後、2002年から、NSCへ大きく舵を切り、怒涛の出店がはじまる。

   2002年2月には宮城県に柴田店、3月には山形県に成沢店、6月には宮城県に岩沼西店、南吉成店、9月には宮城県に古川南店、山形県に成島店、10月には栃木県に石橋店、福島県に飯寺店、そして、11月には泉将監店と9店舗のNSCを出店、この年はフリースタンディングの店舗は、福島県の吉倉店のわずか1店と、NSCが主力業態になった年である。

  2003年には3月に栃木県に泉が丘店、宮城に山田鈎取店、5月に宮城県に名取西店、7月に福島県にメガステージ矢吹店、11月に福島県に大槻店、本宮インター店と6店舗のNSCをオープンさせた。この年もフリースタンディングの店舗は福島県の新小原田店のみである。

  2004年には、7月に栃木県に簗瀬店、山形県に河北店、10月に福島県に勿来江栗店、宮城県に白石店、11月に福島県に野田店、宮城県に新田東店と6店舗をオープンさせた。この年もフリースタンディングは宮城県に遠見塚店1店舗のみである。

  そして、今年、2005年度は4月に、茨城県初となる赤塚店、7月に茨城県に坂東店、9月に茨城県に中郷店、10月には福島県に西若松店をフリースタンディングからNSCに改装オープン、11月には宮城県に大河原店、福島県にメガステージ石川店と6店のNSCをオープンさせた。

  このように、この5年間で約30店舗のNSCを新規オープンさせている。今後は毎年10店舗以上の新店をオープンさせ、その中心はNSCであるという。すでに、現在、ヨークベニマルはNSCを主力業態とする食品スーパーマーケットといえ、5年後はNSCがフリースタンディングを上回る企業となるものと思う。ウォールマートも10年でディスカウントストアからスーパーセンターへ業態を劇的に展開したが、ヨークベニマルも食品スーパーマーケットからNSCへの業態転換を今後5年ではかるのではないかという勢いである。スーパーセンターの時代が目前に迫ったいま、NSCは食品スーパーマーケットの新たな成長戦略といえよう。

  余談だが、ヨークベニマルはこのNSCの怒涛の出店に際し、この5年間、長短借入金0、無借金経営を貫いている。自己資本で毎年10店舗の新店をオープンさせる財務体質をつくりあげたといえる。現在100店舗を優に越え、年商2800億円、経常利益118億円(4.2%)、税引後の純利益が65億円あり、現預金が200億円と、借り入れなしで出店ができる財務状況といえよう。ちなみに株価は11/15現在3,320円、時価総額1,681億円、PER24.7倍、PBR1.69倍である。食品スーパーマーケットの中ではPBRは平均以上であるが、若干PERが低いのが気になるところだ。

  このように出店戦略をささえる財務体質がしっかりしているので、今後、5年間でヨークベニマルはより食品スーパーマーケットの中でも成長性、収益性の高いNSCを主力業態とした食品スーパーマーケットになってゆくものと思う。

November 16, 2005

新店情報! 直近の食品スーパーマーケットの出店状況 

  この数ケ月の主な食品スーパーマーケットの新店は目白押しである。特に、スーパーセンター、NSCの出店が増えているのが特徴といえる。NSCとはネバーフッドショッピングセンターのことで、対スーパーセンター対抗の新業態といえ、最近のヨークベニマルの新店はほとんどがこのタイプである。

  スーパーセンターの代表各であるベイシアは、直近では、11/9にベイシアフードセンター旭飯岡店(3,027㎡)を千葉に、10/20にはベイシアフードセンター磐田豊岡店(2,860㎡)を静岡に、9/15にはベイシアスーパーセンター栗橋店(10,050㎡)を埼玉に、9/2にはベイシアフードセンター長野東店(4300㎡)を長野にオープンした。これ以外にも、7/2、ベイシアスーパーセンター彦根店、5/6、ベイシアフードマーケット本庄店、5/6、ベイシアスーパーセンター鶴ヶ島店、5/6、ベイシアフードセンター大町店、5/5、ベイシアフードセンター上里本庄店、5/4、ベイシアフードマーケット上田店、5/4、ベイシアスーパーセンター寄居北店、5/3、名古屋市初出店のベイシアフードセンター名古屋とこの数ケ月で12店舗と快調に関東周辺、そして、初の名古屋、初の関西へと全国展開を視野にいれはじめた怒涛の出店がはじまったといえよう。
 
  岐阜では、バローがはじめてのスーパーセンター戸田店(2,314㎡、全体10,127㎡)を10/20、オープンし、年商37億円を目標としている。バローは通常の食品スーパーマーケットも11/10にバロー内田橋店(15,78.75㎡)、年商目標16億円、10/27にはバロー大桑店(2,016㎡)、 年商目標20億円をオープンさせた。 
             
  一方、NSCではヤオコーが10/6、千葉にヤオコー牧の原モア店(751坪、SC全体で8,335坪)、初年度22億円目標(直営)をオープンさせた。8/24には埼玉にヤオコー秩父大野原店(716坪)、初年度17億円目標の食品スーパーマーケットをオープンした。

  さらにNSCではヨークベニマルが11/18、福島にヨークベニマルメガステージ石川店(712坪)、年商18億円目標、11/3には宮城にヨークベニマル大河原店(932坪)、年商23億円目標、10/14には福島にヨークベニマル西若松店(847坪)、年商24億円目標、9/23には茨城3店舗めのヨークベニマル中郷店(738坪)、年商20億円目標をオープンさせ、これ以外にも10/28には食品スーパーマーケットを仙台に、ヨークベニマル福田町店(648坪)年商22億円目標でオープンさせた。

  このように、独自で住関連部門のノウハウをもたない食品スーパーマーケットはNSCをスーパーセンターの対抗業種としての出店の強化をはじめたといえる。

  また、食品スーパーマーケットの出店も直近では、オオゼキが相模原中央店(神奈川)をオープンした。ベルクが毛呂山店(埼玉)と秩父影森店の2店舗をここ最近ではオープンしている。今後3年間で30店舗を計画しているマックスバリュ東海も平塚四之宮店、沼津北店、西尾店、浜松和田店、浜北店、清水興津店と直近で6店舗をオープンさせた。ハローズは水呑店、駅家モール店の2店舗をオープンさせた。SHOP99は11月に入って、台東根岸店、京急井土ヶ谷店、奈良八条店、東中野1丁目店の既に4店舗をオープンし、ついに700店舗を越えた。カスミはヨークベニマルと競合状態に入り、10月度は売上で昨年対比を下回ったが、FOOD OFF ストッカ-下館(しもだて)店、フ-ドマ-ケットカスミみどりの駅前店、フ-ドマ-ケットカスミ境(さかい)店と3店舗がオープンした。この他、Olympicがハイパーマーケット武蔵浦和店、ハイパーストア中村橋店を、いなげやが大和高座渋谷店を、そして、大黒天物産がラ・ムー安来店をオープンさせた。

  このように食品スーパーマーケット業界ではスーパーセンターが徐々にシェアを伸ばしつつあり、それに対抗する形でNSCの展開がはじまったといえる。また、既存の食品スーパーマーケットも出店は旺盛であるが、逆に新期出店ができない企業は非常に厳しい状況にあるといえる。

November 15, 2005

西友、自動補充システムに本格着手! 

  本ブログでは発注と在庫管理に関するテーマを優先的に取り上げているが、11/14の日経MJに「西友、自動補充100店舗拡大」という記事が掲載された。自動補充システムの最大のポイントは物流センターであり、西友は埼玉県三郷に来年稼動の物流センター、その2年後には東京都府中の物流センターを完成させる予定である。いずれも24時間稼動である。この物流センターがウォールマートの最新ノウハウを取り入れたものであり、はじめから、今回の自動補充システムを前提として構築されている。この2つの物流センターが稼動すると、関東全域の物流網ができあがることになり、既存店はもちろん、今後、出店加速するであろうスーパーセンターへの自動補充システムが可能となる。

  MJの記事によれば、すでに150店舗で試験運用しており、その効果が確認できたので、埼玉県三郷の物流センターの稼動に合わせ、100店舗増やし、関東、中部、西日本の全店約250店舗への自動補充システムの導入をはかるという。対象となる商品は菓子、調味料、飲料などの加工食品に加え、洗剤やベビー用品などの日用品、肌着、靴下などの衣料品の合計60カテゴリー、10,000品目になるという。これはおおよそ発注業務の1割程度が自動補充に切り替わる予定となり、最終的にはトータル物流コストを30%以上削減してゆく方針という。

  この自動補充システムについては、ウォーマートが巨大なデータウェアハウスを構築した時に、投資利益の改善効果の高いアプリケーションNo.1として、自動補充システムが取り上げられた。当時約200億円の投資改善効果を見積もったシステムである。当時の自動補充システムは次のような仕組みで動いていたという。

  毎朝6時に商品注文リスト案が店舗に到着し、店舗の部門責任者が削除したり、修正したりする。もし、お昼までに修正がなければそのまま自動発注される。この商品注文リストは、各商品ごとに発注見直し点が売上推移やリードタイムによって決められ、その発注見直し点に到達したら、自動的に商品注文リストが店舗ごとに作成されるというものである。この背景には、データウェアハウスにより、POSデータと在庫データの融合が可能となったことがあり、ウォールマートはこの自動補充システムにいたる過程で、BDSS(バイヤー デシジョン サポート システム)をバイヤー向けに、そして、リテールリンクをメーカー向けにスタートしている。さらに、これらデータを駆使し、その次のステップとしては自動品揃えシステムも構築している。これは、店舗トレイト、商品トレイトという店舗の特徴をたとえば駅前立地、郊外立地、ドラックストアと競合等、数千分類に分けて分類する一方、商品の特徴も同様に駅前立地で売れるか売れないか、郊外立地でよく売れるか等、やはり数千項目に特徴を分け、店舗ごとに、どの商品を品揃えすればよいかを自動的に判別し、その在庫までを確定するという仕組みである。このような仕組みが背後に動いたていたからこそ、スーパーセンターを今期は約300店舗の新規出店、この10年でも約150店舗から約1700店舗へという急成長ができたものと思う。

  したがって、西友の今回の仕組みも、すでに、リテールリンクは動きはじめているので、次は自動品揃えシステムも稼動させる予定であり、2008年以降はスーパーセンターの本格出店となろう。

  小売業界もPOSシステムからデータウェアハウスの時代に入りつつあり、その決め手がPOSデータに在庫データを組み込んだ自動補充システムであり、さらにそれを発展させた自動品揃えシステムであるといえよう。

参考文献:ウォールマートに学ぶデータウェアハウジング(翔泳社)

November 14, 2005

経常利益率5%が食品スーパーマーケットの緊急の課題!!

  小売業の上場企業は約350社、その内、食品スーパーマーケットは約50社である。では、食品スーパーマーケットは小売業の中でどのような位置を占めているのだろうか。直近の11/11時点の相場を参考にみてみたい。

  まず、株価だが、高額の株価を省き、単純平均で見た場合、小売業全体は約3000円であるが、食品スーパーマーケットは約1500円と半値である。時価総額も小売業全体では約800億円であるが、食品スーパーマーケットは約400億円と半分であり、企業価値が小売業の中では低く評価されているといえよう。11/11時点の株価騰落率を見ると、小売業全体が0.56%であるのに対し、食品スーパーマーケットは0.31%と低く、小売業全体も高くはないが、食品スーパーマーケットはさらに低い上げ幅である。では、PERとPBRはどうか。小売業全体の異常値を抜いた平均PERは約30倍、PBRは3.0倍弱であるが、食品スーパーマーケットのPERは約30倍と同じであるが、PBRは株価同様、1.5倍と半分であり、資産価値が小売業と比べ低く評価されているといえる。したがって、食品スーパーマーケット業界としては、資産価値をあげる政策が現時点では最優先課題といえよう。

  一方、成長性、収益性をみてみると、小売業全体の売上高伸び率は異常値を抜いた単純平均では7%弱であるのに対し、食品スーパーマーケットは5%弱と若干低い。また、経常利益率は、小売業全体が5%弱に対し、食品スーパーマーケットは約2.5%と半分である。この経常利益率が小売業全体平均の半分という点が食品スーパーマーケットの株価および資産形成に影響しているものといえ、資産価値を上げ、株価を上げるためには、食品スーパーマーケット業界としては経常利益率をあげ、収益性の高い企業をつくれるか否かが、今後の大きな課題といえよう。

  では、この観点から、小売業および食品スーパーマーケットの注目企業をみてみたい。経常利益率の高い小売業ベスト50の中に、残念ながら食品スーパーマーケットは1社も入らない。約60番目ぐらいのところに、食品スーパーマーケットNo.1、経常利益率7.93%のオオゼキが入る。No.2のサンエーは約80番目で6.67%、No.3の大黒天物産がなんと約100番目で5.63%である。小売業の中のベスト100に食品スーパーマーケットは3社しか入っていない。この3社のPBRはオオゼキ2.29倍、サンエー1.84倍、大黒天物産6.02倍と小売業平均の約3.0倍を超えるのは大黒天物産1社のみである。

  それでは、小売業の中で経常利益率の高い企業をいくつか見てみたい。まず、今期の経常利益率が20.09%、来期予想は22.94%のABCマートである。売上は現在550億円で昨年対比116.9%、来期も120.7%の予想である。業種は全国に約200店舗展開するシューズ専門店である。次に、ポイントであるが、今期経常利益率19.8%、来期予想も18.43%、売上は約370億円で135.7%の成長率である。来期も114.8%の見込みである。ポイントは約250店舗のカジュアル衣料専門店であり、女性向け「ローリーズファーム」を開発し、SPAに転換した製造小売業種である。もう数社見てみたい。日本レストランシステムは、洋麺屋五右衛門(スパゲティ)を主力業態に約300店舗展開する外食産業である。特に、製造加工から店舗までの一貫したシステムをつくりあげた。いわば、ポイント同様、SPAの外食版といえよう。今期の経常利益率は19.61%、来期予想も20.09%であり、売上も約260億円であり、今期106.9%、来期予想も107.2%である。コンビニのローソンも今期16.64%の経常利益率であり、来期も16.17%の予想である。本部売上は約2500億円であり、103.6%アップ、来期も105.7%を見込んでいる。紳士服専門店の青山商事も今期の経常利益は10.56%であり、来期も12.68%と、ここ最近、年々収益率をアップしてきている。売上も2000億円目前であり、今期105.1%、来期102.6%を見込んでいる。もう1社、島忠は約50店舗の家具専門店であり、今期の経常利益率は10.10%、来期も9.85%である。売上は約1200億円であり、105.2%、来期も115.1%を見込んでいる。

  このように食品スーパーマーケットNo.1の経常利益率を誇るオオゼキをはるかに越える小売業が50社以上ある。その中で、現在、経常利益率10%以上の小売業は約40社であり、15%以上が約10社である。食品スーパーマーケット業界は今後、いかに経常利益率を引き上げられるかが課題であり、当面は約5%が目標となろう。


November 13, 2005

注目株!! マルキョウの株価が今週、急騰!

  マルキョウの株価が今週、急騰した。この数ケ月間700円強で推移していた株価が、11月に入り、急騰、11/11には年初来高値をつけ、910円となった。910円は食品スーパーマーケットの平均株価が約1500円であるので、むしろ、低い株価であるが、この1週間で約130%の伸び率であり、急上昇といえる。売買高も約60,000株を越え、この数ケ月は通常10,000株前後での取引であったので、11月に入ってから加熱気味である。マルキョウのここ数年の業績は売上が900億円強で推移し、経常利益は約2%、純利益1%強であり、今期予想も売上はややアップであるが、経常利益はほぼ横バイである。また、PERは16倍と上場食品スーパーマーケットの平均30倍と比べ半分と低く、PBRは何と0.36倍、平均の1.5倍を下回るだけでなく、1.0倍を大きく下回り、企業価値を問われかねない異常な低さである。ちなみに、現在、食品スーパーマーケットでPBRが1.0%以下の企業は約10社ある。カウボーイ(0.41)、MR MAX(0.63)、ダイイチ(0.69)、ポスフール(0.69)、ユーストア(0.73)、OLYMPIC(0.75)、マルヤ(0.78)、ジョイス(0.79)、イズミヤ(0.79)、天満屋ストア(0.87)、関西スーパー(0.95)、ヤマザワ(0.96)である。これらを見ても、マルキョウの0.36倍はPBRが上場食品スーパーマーケットの中でワーストであり、いかに低いかがわかる。

  マルキョウは福岡を中心に約100店舗展開する食品スーパーマーケットであり、内分けは福岡55、長崎17、佐賀14、熊本3、大分7、山口1と商圏を徐々に九州広域に拡大しつつある。店舗面積は平均約300坪、年商が約900億円であるので、1店舗当り年商10億円弱となる。直近の決算予想は、売上940億円、経常利益22億円(2.3%)である。ただ、昨年度のBSを見ると、土地(280億円)、建物(156億円)の不動産が多いのが気になるところだ。

  マルキョウは、今後、高業績が見込めれば、PBRを上場食品スーパーマーケットの平均1.5倍は無理でも1.0倍の現状910円から2000円になっても決しておかしくはない数字だが、現状の業績を見る限り、高業績になるとはいえず、今週の株価急騰はTOBがかかったかのような加熱ぶりである。ちなみに、現在のマルキョウの時価総額は143億円であり、上場食品スーパーマーケットの平均が約400億円であるので、下位グループである。来週以降、どう動くか予断を許さない。

  さて、これ以外の11/11の食品スーパーマーケット上場約50社の株価はあまり大きな動きはなかった。この日の株価上昇率No.1はヤマナカの4.95%、それについで、No.2は今回取り上げたマルキョウの4.59%であり、3位以下は2%台、ベスト10で1%を切り、全体の平均は0.31%と低調であった。No.1のヤマナカは11/11現在の株価が1,249円、ここのところ業績低迷が続き、2000年頃は約2,000円弱で推移していた株価だが、この数年、下がり続け、2003年からは1,200円前後で現在までほとんど変化がない状況である。11/11の売買高も600株と少なく、今後、大きく動く株価ではなさそうである。

November 12, 2005

オーケー、仮説発注に挑戦!!

  この11月から弁当の仮説発注に切り替えたセブンイレブンに続き、この12月に食品スーパーマーケットのオーケーが青果物の仮説自動発注に取組むと、日経MJ11/9に掲載された。オーケーは既に日配、グロサリーの自動補充発注には取組んでいるが、仮説自動発注は初の試みといえる。青果を含め生鮮食品は基本的に売り切ってしまう商品であるため、在庫をみて発注するということはもともと難しい商品である。そのため、日配、グロサリーで可能な在庫情報を組み込んでの補充発注には不向きであり、自動発注を目指すのであれば、自然、仮説発注にならざるをえず、いかに需要予測の精度を上げられるかが課題となる。

  オーケーはこの課題を克服するため、直近13週間の販売データをもとに、曜日別平均値を割り出し、今後の1週間の納品個数をコンピュータに計算させ、仲卸に自動発注するという仕組みである。狙いは、廃棄ロスの削減と鮮度向上、すなわち、荒利率のアップと客単価アップにあるといえよう。オーケーには現在、自動発注を統括するMD(マーチャンダイジング)室があり、ここでは20代の若い女性が大活躍をしている。全店の自動発注データを精査し、異常値のチェック、季節のニーズや販売動向により修正をかけたりしながら自動発注の検証を通じて、発注精度の向上につとめている。今回の青果の仮説発注においては、このMD室が成功の鍵を握っているといってもよい。

  オーケーは現在、年商1,000億円を越え、店舗数も40店舗となり、1店舗25億円、客数は約3000人である。中期目標は2,000億円を掲げ、当面100店舗の展開が目標という。オーケーの強みは何といってもウォールマートを意識した経費比率15%というマネジメントの強さであり、荒利率約20%弱、経常利益率4%強をめざした経営が実践されていることである。自動発注はそのための最大の武器であり、この仕組みが企業全体の経費削減に大きく寄与している。また、自動発注による精度を安定させるために基本的にEDLPを採用し、販売数量のブレを少なくすと同時に地域一番の低価格の実現をめざしている。これについてもウォールマートと全く同じといってよい仕組みといえる。ウォールーマートもPOSデータ分析をもとに在庫データと融合させ、バイヤーサポートシステムをつくり、それをメーカーに公開するリテールリンクにつなげ、その後、補充発注にもとづく自動発注の仕組みを開発した経緯によく似ている。経費比率15%の経営目標、EDLPの採用も含め、ウォールマートを意識した、それに負けない仕組みづくりに挑戦しているとえいよう。そして、今回、青果の仮説自動発注ができあがれば、セブンイレブンを越え、世界ではじめてといってよい発注の仕組みが実現することになる。

  時代は補充発注から仮説発注へ大きく動きはじめたといえる。今後の小売業はいかに仮説能力をアップさせるかだけでなく、そのための仕組みをいち早く構築したところが収益を拡大し、競争に打ち勝ってゆくことになろう。

November 11, 2005

PLANT、新店開発が経営に重くのしかかる!

  ここにきてPLANTの利益が限りなく0に近づいている。直近の平成17年度9月期の決算短信が10/28に発表されたが、財務状況を見ると経常利益が売上対比0.7%となった。中間決算では0.9%であったので、厳しい数字である。ちなみに、昨年は0.9%であったので、昨年と比べても数字の改善がはかられていない。しかも、荒利率は17.5%で昨年の16.4%と1ポイント増加しているにもかかわらず、経費が予想以上に大きくかかり、昨年の15.7%から17.1%となり、収益に大きく響いたといえる。経費の中でも大きく増加した項目は人件費、水道高熱費、消耗品費、リース料、減価償却費等である。いずれも出店にかかわる費用である。PLANTは2年前の2003年までは経常利益率が3~4%であり、充分な収益がでていたことを考えると、2004年度0.93%、そして、今期の0.7%は急激な経営の悪化といえる。反面、売上は絶好調であり、2000年度から2005年度まで115%前後の成長を続け、特に、昨年は120%以上、今期も約115%となった。ただし、既存店はマイナスであり、新店に支えられた増収であることがわかる。新店については、昨年、新潟にPLANT5刈羽店、今期、岐阜にPLANT6瑞穂店、来期、新潟にPLANT5横腰店、福島にPLANT5大玉店、そして、福井にPLANT3清水店のオープンをはじめ、中期的には現在の約600億円の売上を5倍の3,000億円まで目指すという。現在約10店舗であるので、あと40店舗の新店をつくる計算となる。

  これらの数字は明かに新店が経営に重くのしかかっている構図であり、しかも、BSを見ると、新店にともなう商品と建物(土地ではない)が急激に膨らみ、それを利益でカバーすることが全くできず、短期および長期の借入金でカバーしている状況である。その額、約100億円である。

   IT企業であれば株価を上げ、時価総額を増やし、多額の資本を調達し、営業拡大をしてゆくところであろうが、直近の株価は1140円(11/10)であり、食品スーパーマーケットの平均が約1500円であるので、株価は低く、時価総額は77億円と食品スーパーマーケットの中ではワーストクラスである。ちなみに、現在時価総額の全小売業の中でNo.1は7&Iホールディングズ(イトーヨーカ堂グループ)の56,144億円であり、2位がイオンの18,679億円、3位がヤマダ電機の9,718億円である。食品スーパーマーケットではイズミの2,124億円、ヨークベニマルの1,711億円、ナフコの1,192億円がベスト3である。食品スーパーマーケット上場企業約50社の平均時価総額は約400億円であるので、PLANTの時価総額はかなり低く、資金調達が厳しい株価である。また、株価の推移をみると、上場来高値の3,030円(2000/07/05)をつけて以来、2005/10/26に上場来最安値の1012円をつけたが、ここ数日少し値を戻し、現在1,140円(11/10)であるが、依然として厳しい株価が続いている。

  ちなみに、来期2006年度の予想は新店戦略により、売上げは120%前後を目指しているが、経常利益は依然として0.7%前後の予想であり、今期同様厳しい数字となりそうである。

  当初、PLANTはウォールマートの日本版といわれ、現在でもベイシアと並び日本型スーパーセンターのトップを走っている小売業と一般には思われているが、2003年頃からのPLANT4(4,000坪)、PLANT5(5,000坪)の超大型店の出店が経営バランスを崩し、今期、そして来期もこのバランスがもとにもどらない状況が続く。本家本元のウォールマートはこの10年間、売上は115%前後で成長を続けながらも、経費、荒利は若干アップしたが、利益は4.5%前後で一定に保ち続け、スーパーセンターを約150店舗から1,700店舗に増やすという経営を続けた。その意味で、PLANTが中期経営目標3,000億円をかかげるには、まだ、PLANTとしてのフォーマットが充分に固まっているとはいえない状況であることを上記の数字は物語っている。このまま経営のバランスがとれない状況での出店を続けるのは、今後の資金調達ひとつをとってみても厳しいものと思われる。PLANTの商品構成比は現在食品が60%を越えるということをみても、まず、食品のマーチャンダイジングを核とした収益モデルの確立が急務であるといえよう。

November 10, 2005

家計調査年報にびっくり!

  はるか昔のことだが、大学を卒業して経営コンサルタントとして駆け出しの頃、はじめて家計調査年報にであった。当時、分厚い冊子で値段も高かったため、会社には1冊しかなく、各部署で奪い合い、中々自由に使うことができずに苦労した。そこで、私は思い切って身銭を切って家計調査年報を購入した覚えがある。そして、そのデータをよく徹夜でパソコンに打込み、商圏調査、販売計画づくりのレポートにまとめたものである。
  さて、先程、総務庁統計局のホームページで家計調査年報を調べてみたら、何と全データがExcelで公開されていて、びっくりした。当時は考えられなかったことである。しかも、いま、9月度の速報をみているが、日別支出まで公開されている。ちなみに、月報は翌月の末に公開されるので、11月現在では9月が最新データである。最近は詳細なPOSデータをもとに商圏調査や販売計画を作成していたので、家計調査年報や月報を使う機会がなかったが、ここまでデータが整備され、しかも、速報性があるので、今後はPOSデータに加え、家計調査年報、月報、日報も活用してゆこうと思う。
  そこで、改めて、9月度の家計調査月報をみると、以前はなかったと記憶しているが、1世帯当りの消費支出額に加え、購入数量、平均単価、そして100世帯当りの購入頻度が食料品はもちろん、以下の大分類の中で約600項目に渡って公表されている。
  食料(非耐久財、サービス)、住居(耐久財、半耐久財、サービス)、家具・家事用品(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)、被服及び履物(半耐久財、サービス)、保健医療(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)、交通・通信(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)、教育(非耐久財、サービス)、教養娯楽(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)、諸雑費(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)、教養娯楽関係費(耐久財)、他の教養娯楽関係費(読書、聴視・観覧、旅行、スポーツ、月謝、会費・つきあい費、その他の教養娯楽)。
この中で食品スーパーマーケットに関係する食料をみてみるとほぼ通常の食品スーパーマーケットに近い分類である。具体的には、1.1穀類、1.2魚介類、1.3肉類、1.4乳卵類、1.5野菜・海藻、1.6果物、1.7油脂・調味料、1.8菓子類、1.9調理食品、1.10、飲料、1.11酒類、と11分類であり、それをさらに約200の小分類に分けてデータが公開されている。小分類ではまぐろ、みかん、はくさい、牛肉、卵、牛乳、食パン、みそ、しょうゆ、チョコレート、せんべいなど、食品スーパーマーケットの重点分類はほぼ網羅されている。
  そこで、この9月の特徴だが、食料を1世帯当り1日でみた(客単価に相当)総支出は1997.2円であり、ほぼ、食品スーパーマーケットの平均客単価に近い数字である。また、購入頻度から逆算すると、1日平均6.5回の買い物が行われ、約350円の購入が行われていることがわかる。以外に買い物回数が多いのに驚く。
  食料のベスト10は米(3,353円)、豚肉(1,865円)、牛乳(1,675円)、牛肉(1,636円)、他のパン(1,467円)、ビール(1,390円)、弁当(1,067円)、すし(965円)、なし(892円)、鶏肉(850円)である。また、購入頻度別にみると、5日に1回以上が牛乳、1週間に1回以上が豚肉、豆腐、10日に1回以上が食パン、果実・野菜ジュース、ヨーグルト、ほぼ2週間に1回以上が納豆、鶏肉、天ぷら・フライ、きゅうり、アイスクリーム・シャーベット、トマト、茶飲料、油揚げ・がんもどき、バナナ、牛肉等である。さらに、家計調査日報を分析し、日別のグラフを作ってみると、食料品支出の動きは土日の週末、祭日ごとに跳ね上がることがわかる。これとほぼ同様の動きを示す項目を探すと、米、刺身盛合せ、ビール、牛肉などが見事にシンクロする。
  今後は、家計調査年報、月報、日報の分析をもとに食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングにかかわるデータを本ブログでも公開してゆく予定である。

*総務庁、統計局のホームページ

November 09, 2005

みちのく通信にみるPI値の実践的活用方法

 私が発行している携帯メルマガの「PI値!実践道場」に掲載している「みちのく通信」が好評の内に終了しました。全22回と特別号1回の計23回に渡っての、みちのくのトマQさんの長期連載です。PI値の実践手法を理解する上で大変参考になりますので、本ブログでも紹介します。第1回のみちのく通信を以下に掲載しますので、ご興味のある方は上記リンクをクリックすると残りの連載記事を読むことができます。また、下記アドレスを携帯にブックマークしていただければ、いつでもどこでも携帯でPI値を勉強することができます。
URL:http://www.picspics.net/pi/pi.html

みちのく通信 

第1回:みちのくのナッパヤがPI値を学ぶ

 私達は、みちのく郡山の地で、12年前からPI値に基づく青果専門店を経営してまいりました。なんの変わり映えもしない田舎の八百屋(みちのく郡山ではナッパヤと言います)が、今では、20坪で日販90万円、坪当たり4.5万円(年間約1600万円)の店にまで成長いたしました。よその店については、寡聞にして多くは知りませんが、多分福島県一、東北でも有数な店に数えられるだろうと思います。
 当初鈴木先生からご指導戴きましたときは、なかなか咀嚼できず、ようやくPI値管理が軌道に乗るようになるには5年かかりました。また、PI値発注法が身につき、安定して粗利益率が25%~27%とれるようになるのに、更に3年かかりました。いま振り返ってみると、技術的な要素よりもPI値理論を信じることができるかどうかという精神的なものの方が、進歩を妨げる要素として大きかったように思います。これからPI値を学ぶ皆さんのために、私達の12年を振り返り、成功失敗の重要なポイントを書き残すことは、皆さんの人生にお役に立つのではないかと思いたちました。もし、仮に私達の試行錯誤の12年を3年でマスターすることができれば、9年間の人生を得することになります。このように考えて、鈴木先生への恩返しの意味もこめて、PI値12年の歩みを、みちのく郡山の地から発信することにしました。皆さまのご商売や人生に少しでもプラスになれば幸いです。
 これからお話することは、みちのく郡山の地でのPI値理論の実践です。また過去12年間におきた事柄です。従って、他地域やこれからの未来に向かって、必ずしもそのまま当てはまるかどうかはわかりません。皆さんが参考にされるときには、地域特性と時代環境をふまえて判断していただければ幸いです。また、文章が拙いので、体系的に書くことができません。その時々のポイントを重点的に通信いたしますので、それぞれの立場で整理分類して下さるようにお願いします。

November 08, 2005

セブンイレブン 弁当の欠品問題に本腰!

  11/7の日経MJによると、セブンイレブンがこの11月から弁当の欠品問題に本格的にメスを入れたという。その目的は夕食時間帯の弁当の客単価アップにあるという。従来の弁当の発注体制では、この時間帯の欠品、品薄が発生し、表面的には廃棄が減っても、機会ロスが発生し、客単価が落ちるだけでなく、客数減にもつながりかねなかったという。本部としては、店舗に粘り強く、説得を試みたが、思うような成果が得られず、仕組みをかえることによって、強制的に夕食時間帯の弁当売り場を充実させ、客単価アップをはかることにしたとのことだ。
  
  ちなみに、セブンイレブンでは年間約17億個の米飯を販売し、そのうち10億個がおにぎりである。おにぎりの平均単価を120円、弁当等の平均単価を300円とすると、総売上はおにぎり10億個×120円=1200億円、弁当7億個×300円=2100億円、合計売上が3300億円、平均単価は3300億円÷17億個で約200円となる。また、セブンイレブンの客数は1店舗約1000人であるので、約10000店舗で1日1000万人、年間では約36億人が来店している。したがって、PI値理論の根幹のMD方程式を適用すれば、米飯は売上3300億円=PI値約50%(17億個÷36億人)×平均単価約200円×客数36億人となり、客単価=PI値×平均単価なので、50%×200円で100円となる。セブンイレブンの年商は2.5兆円なので、店舗全体の客単価は2.5兆円÷36億人=約700円であるので、米飯の構成比は100円÷700円で約15%弱であることを考えると、米飯はコンビニエンスの中核商品であり、しかも、そこに機会ロスがあるとすれば、経営の根幹を揺るがす大きな問題であったことがわかる。仮に、今回の仕組みの変更により客単価が1円アップし、米飯の客単価が101円となった場合は、客数が年間36億人であるので、米飯のみで36億円の売上アップが期待できる。恐らく、今回の狙いは10%以上は改善したいと思われるので、米飯の客単価100円の10%アップを見込み10円のアップ、すなわち、10円×36億人で360億円以上の改善効果を期待しているのではないかと思う。
  
  では、どのように仕組みを変更したのか。ひとことで言えば、補充発注から仮説発注へ変えたといってよい。これまでは夕食時間帯へ配送する3便(15:00~18:00配送)の発注が当日の10:00でよかったので、1便(21:00~24:00配送)の米飯の売れ行き、2便(8:00~11:00配送)の搬入状況をみて、発注ができた。したがって、売場の在庫(1便の売れ残りと2便の入荷状況)を見て、3便の夕方時間帯の発注数量を確定できたので、廃棄ロスを最小にし、利益率をアップさせようという政策であったといえる。反面、機会ロス、品薄感が発生し、この時間帯の客単価は恐らくかなり低かったのではないかと創造される。

  これに対して今回の政策は発注を1便、2便、3便ともに前日の午前11:00の1回のみにし、しかも配送時間も1便を1:00~5:00、2便を8:00~11:00、3便を14:00~17:00と変更した。従来の発注のように、1便の売れ残り状況、2便の入荷状況はみることができず、在庫情報なしに、前日の11時に翌日の夕方時間帯の米飯の発注をするのである。100%仮説にもとづく発注をせざるをないといえる。しかも、従来のように3便の15:00~18:00、1便の21:00~24:00というその差が最短3時間であった夕食時間帯の時間間隔が、今回は、3便14:00~17:00、1便1:00~5:00と最短でも8時間と広がることにより、3便の発注数量を増やさない限り、8時間も欠品、品薄状態が続く可能性があり、いやでも、夕食時間帯の米飯の発注を増やさざるを得なくなる仕組みの改善である。日経MJの記事では北海道などの一部の地域で新方式を実験し、「自ら仮説を立てて高精度な発注をする店が増え、売上は伸びる」といっているが、まさに仮説立案能力が発注担当者に問われることになる。何も考えない人材はセブンイレブンにはいらない。自らの能力アップをはかりたいという、意欲ある人材が欲しいということであろう。

  セブンイレブンがここまで踏み切った背景には、単品管理に象徴される仮説立案能力をささえるシステムと教育、そして本部のフォロー体制、店舗の受け入れ態勢が整ったとの判断があるものと思われる。その意味で今後の発注は補充発注型から仮説発注型への転換を意味し、セブンイレブンに限らず、小売業界全体が取組まざるをない大きなテーマである。そして、その仕組みとフォロー体制をつくりえた企業のみが伸びてゆくのではないかと予感させる。

November 07, 2005

野菜ビジネススクールがPPI論議で盛り上がる!

  以下は㈱野菜ビジネス主催の野菜ビジネススクールの機関紙に掲載したPPIの実践事例についてまとめたものです。PPIを理解する上において大変参考になると思いますので、先方の許可をいただきましたので、本ブログでも公開します。

  野菜ビジネススクールがスタートして、もう少しで1年をむかえるが、PI値もほぼ定着し、毎回の講座でMD評価表をもとに前月の検証と来月の仮説づくりを参加メンバーで議論できるようになってきた。今回、その議論の中で、特に注目を集めたのが、PPIの活用であった。PPIとは次世代PI値のことであり、PostPI値、PersonalPI値、PartialPI値のPをつけてPPIと呼んでいる。通常のPI値は買上点数を客数で割って算出するが、PPIはその客数を細分化して、部分客数で算出、すなわちPartialPI値となる。これをさらに細分化すると個人個人のPI値となり、文字通りPersonalPI値になる。また、客数概念を拡張すると初回購買客数やリピート購買客数でPPIを算出することもできるようになり、これは商売の原点であるリピート購買に注目したPI値の活用へとつながってゆく。

  さて、今回、議論になったPPIは、実はこれまで流通業界ではごく自然に活用してきた指標である支持率に注目したことから始まった。一般的に支持率とはPI値とは違い、客数を客数で割って算出する。青果でいえば青果のみを購入した客数を店舗全体の来店客数で割って算出する。野菜ビジネスでいえば野菜の支持率は野菜の購入客数を店舗全体の客数で割って算出し、果物の支持率も同様に、果物の購入客数を店舗全体の客数で割って算出する。PI値理論では、PI値と混同しないように、この支持率を客数PI値として定義している。流通業界ではこれらがよく混在して使われ、支持率というとPI値なのか客数PI値なのかが曖昧につかわれることがしばしばある。また、支持率=客数PI値は実はこれだけでは不完全な指標であり、本来は、PPIと連動してはじめて意味をなすのであるが、なぜか、これについても流通業界では明確になっていない。PI値理論では、支持率=客数PI値は、PI値=客数PI値×PPIとして定義し、支持率=客数PI値はPI値アップのための最重要指標として位置づけている。すなわち、支持率=客数PI値をあげることはPI値アップに直結することであるが、PPI次第では、支持率=客数PI値をあげてもPI値はダウンすることもある。PI値アップのためには客数PI値をアップさせるか、PPIをアップさせるか、双方をアップさせるかの3択問題をうまく解くことがポイントであることが、ここからわかる。では、なぜ、PI値=客数PI値×PPIとなるのか。それは、PI値=買上点数÷全体客数であり、客数PI値=部分客数÷全体客数、PPI=買上点数÷部分客数なので、客数PI値×PPI=(部分客数÷全体客数)×(買上点数÷部分客数)=買上点数÷全体客数=PI値となるからである。

  そこで、この考え方を青果ビジネスに当てはめてみたとき、今回、注目すべき数値が浮かび上がり、議論が大いに盛り上がったのである。今回の事例では、野菜の支持率=客数PI値はほとんどが約85%前後であったのだが、PPIが千差万別で最低300%から最高550%までばらついた。また、果物は逆に支持率=客数PI値が最低30%から最高60%までばらついたのに対し、PPIはほぼ200%で、ほとんどばらつきがなかった。これは当たり前のことではあるが、野菜と果物は全く別のMD戦略が必要であることを示し、レイアウト、棚割り、品揃え、販売促進等において根本的に区別しない限り、売上アップは望めないということが数値で理解でき、この数値をめぐって議論が盛り上がったのである。どういうことかというと、野菜はPPIにより差がつく商品であり、顧客が300%=3点買ってくれるか、550%=5.5点買ってくれるかという大きな差がでるということは、品揃えと棚割りが極めて重要な決め手となり、品揃えが弱く、買いにくい野菜売場では売上アップは望めないことを意味している。とまとの一箇所集中はその意味で極めて理にかなった政策である。逆に、果物はPPIでは差がなく、客数PI値で差がつき、30%の顧客が果物を買うか、60%の顧客が果物を買うかで差がでるので、これはレイアウトと販売促進=プレゼンテーションが決めてとなり、旬の商品をはじめに確実に買ってもらえるか否かが決め手になるといってもよい。野球でいえば一番打者ということになろう。PPIが約200%であるので、あと、もう1品年間商品であるバナナかりんごなどを1品買って終了ということになる。

  まとめると、野菜はPPIアップ戦略が、果物は客数PI値アップ戦略が第一優先課題であり、そのための具体的政策を重点商品1品1品のレイアウト、棚割り、品揃え、販売促進等をつめてゆくことがポイントとなる。このように、PI値はもちろん、PPI、客数PI値にも焦点をあてることにより、青果ビジネスはさらに顧客満足度の高い確固たるビジネスとして確立することができるという確信がもて、今回は有意義な議論となった。


November 06, 2005

注目株!! マックスバリュ東海 年初来高値目前!

 マックスバリュ東海の株価が上昇中である。9月前半までは2,700円前後で揉み合っていた株価が中旬以降上昇しはじめ、3,000円越えが目前となった。特に11/4はそれまでやや売られ気味だった株が一気に買われ、145円アップの3,000円ジャストの値を着け、株価上昇率も、上場食品スーパーマーケット約50社の中で4番目と検討した。ただし、売買高は11,500株と、通常とあまり大きく変わらず、大商いではなかった。年初来高値は3,030円(10/05)であり、年初来高値更新も真近といえる。

PER、PBRともに低い!
 マックスバリュ東海の注目ポイントは株価が3,000円と上場食品スーパーマーケットの中でベスト10に入るにもかかわらず、PER、PBRともに平均以下である点である。ちなみに、現在、株価は九九プラスの391,000円は別格として、No.1は大黒天物産の5,160円、No.2はサンエーの4,150であり、3,000円台の企業がナフコ、イズミ、ヨークベニマル、バロー、オオゼキと続き、その次がマックバリュ東海である。PERは17.0倍と上場食品スーパーマーケットの中では下位グループであり、トップクラスの50倍前後の企業、平均の約30倍と比べても低すぎるといえよう。また、PBRは1.23倍と平均の1.5倍以下であり、トップクラスの3.0倍前後の企業と比べても低い状況である。では、成長性、収益率はどうかというと、今期の売上高伸び率は115.4%と上場食品スーパーマーケット約50社の中でベスト5に入る。また、経常利益率も4.6%とベスト10に入り、ヨークベニマルの4.2%、ヤオコーの4.1%をしのぐ収益率である。企業業績が食品スーパーマーケットの中では極めてよいにもかかわらず、PER、PBR共に低い点からから考えると、現在の3,000円の株価は決して高いとはいえない。

ヤオハンからイオンへ
 マックスバリュ東海の前身は1948年創業の八百半百貨店であり、1986年東証1部に上場したが、1997年、中国事業で失敗し、会社更生法を申請した。その後、イオンが100%子会社化し、会社再建に着手。2002年会社更生手続きが終了し、社名がマックスバリュ東海と変わり、2004年7月に東証2部へ上場したばかりの企業である。現在は、イオングループの東海地区の中核企業であり、48店舗を静岡(39)、神奈川(6)、愛知(1)、山梨(2)へ出店している。

マックスバリュ東海のマーチャンダイジングの強さ
 マックスバリュ東海は今期を含め今後3年間に30店舗の新規出店を計画しており、少なくとも今後3年間は急成長が見込める。特に、イオングループではあっても、地域密着型のマーチャンダイジングに徹しており、年間7000件の顧客からの提案も加味し、従業員の提案にもとづく品揃え等が実施され、特に、青果、グロサリー等において地場商品の導入に積極的である。また、生鮮、惣菜強化策としても「ワンデイ ファイブサイクル」というきめ細かな製造体制に取り組み、できたて、作りたての商品展開や少量パック、バラ販売にも積極的に取り組み、顧客重視の商品政策を目指している。商品構成比も生鮮の中では青果13.9%と鮮魚の9.5%、精肉の7.5%に比べ青果重視の政策であり、さらに、日配の23.4%に加え、グロサリーが何と27.8%と高く、今期全部門で最高の伸び率123.0%となった。マックスバリュ東海のマーチャンダイジングはグロサリーを戦略商品にすえ、日配と青果重視のPI値アップ戦略が確立されつつあるといえる。

November 05, 2005

注目株!! 11/4、オオゼキが大商い!

今週の食品スーパーマーケットの注目株は何といってもオオゼキである。来週以降の株価から眼が離せない。

11/4、株価上昇率、食品スーパーマーケットNo.1のオオゼキ
 オオゼキの株が11/4、大きく動いた。前日比275円高の3,270円となり、9.18%の株価上昇率で食品スーパーマーケットの中でNo.1となった。ちなみに、2位はイズミの5.61%、3位はオオクワの5.08%、4位はマックスバリュ東海で5.07%であり、5位以下は2%台と、11/4は、この4社に買いが集中した。オオゼキはひさびさの大商いであり、通常は20,000株前後の取引だが、11/4は59,200株とおおきく買われた。年初来高値の3,430円を6/10につけて以来、徐々に株価が落ち込んでいたが、10月下旬に入り、ゆるやかに上昇に転じ、11/4、一気に跳ね上がった。

スーパーマーケット業界最高の収益率をほこるオオゼキ
 オオゼキは食品スーパーマーケット業界の中で断トツNo.1の収益率の高い企業であり、経常利益率が何と7.9%、業界平均が2%強であることを考えると驚異的な数字である。ヨークベニマルが4.2%、大黒天物産が5.2%であり、いかに高収益かがわかる。ちなみに、以前注目されたPLANTは今期は不振で経常利益率は0.7%である。この収益率の高さに加え、成長率も昨年対比109.3%の伸びである。また、PBRは2.45倍と高めであるが、PERは15.8倍と食品スーパーマーケットの中では高いとはいえず、今後、年初来高値を越える可能性もある。

オオゼキの高収益を支える背後の仕組みと戦略
 オオゼキの食品スーパーマーケットとしての特徴は、高収益にも係わらず、正社員比率が約70%と高く、通常の食品スーパーマーケットがパート比率約70%と比べ、全く逆の構造になっている。それにもかかわらず、収益率が高い理由は集客力の高さであり、通常の食品スーパーマーケットが平均2,000人/日の客数が4,000人/日と約2倍あり、しかも、平均店舗面積が200坪前後と小さく、圧倒的な坪効率にささえられているため、高人件費を粗利額で充分に補ってしまうからである。ちなみに、直近の年間の坪効率は優に1000万円/坪を越えており、業界平均の約3倍近い数字である。また、当然、正社員比率70%の強みをいかした仕組みが背後にはある。それは、通常の食品スーパーマーケットが採用している仕入れと販売を本部と店舗に分けて機能分担するチェーンオペレーションを廃し、仕入れと販売を一体化させ、店舗に仕入れ権限を与え、生鮮商品の仕入れはもちろん、グロサリーの品揃えまで店舗が責任をもつという、いわば、商いの原点を追及した仕組みを作り上げたことだ。これは首都圏の人口密集地にドミナント展開するという戦略に徹しているからこそできたオオゼキ独特の仕組みといえよう。そのため商品戦略も明確で、オオゼキのトップ3は青果、日配、一般食品であり、いずれも20%の売上構成比である。鮮魚、精肉が10%強であることを考えると、生鮮食品の中でも青果の強い商品戦略がとられている。これはPI値理論から見ても、全く理にかなったことであり、オオゼキの客数の多さの理由は立地にもあるが、それ以上にPI値の高い3大商品を正社員のもとで徹底強化する戦略に支えられているともいえる。また、オオゼキのもうひとつの特徴としてキャッシュバックカードがあり、何と現在70万枚弱発行されている。店舗数が25店舗であるので、1店舗当たり、3万枚弱、買上比率も約90%とキャッシュバックカードを通じての顧客との関係を強める仕組みも確実に定着している。

November 04, 2005

PI値で見た食品スーパーマーケットの本質

  食品スーパーマーケットの本質とは何か。どのような特徴があるのか。そして、売上の決め手はいったい何かを考えてみたい。そのためには食品スーパーマーケットの商品構成を明確にし、それぞれの商品群と売上との関係を明かにすることがスタートである。

  小売業界が一般的に活用している売上の方程式は売上=客数×客単価であるが、私は、この客単価をさらに分解して、客単価=PI値×平均単価を用いている。客単価は売上÷客数、売上は一方で買上点数×平均単価でもあるので、客単価=(買上点数×平均単価)÷客数となり、買上点数÷客数=PI値とすれば、客単価はPI値×平均単価となるからである。ちなみに、この売上方程式、売上=PI値×平均単価×客数のことを、小売業のマーチャンダイジングの根幹の方程式ととらえ、MD方程式と呼んでいる。特にPI値は式からもわかるように顧客の支持率を表し、顧客の声を代弁する最重要指標といってもよい。

  そこで、売上の根幹である、このMD方程式の客単価に着目し、客単価=PI値×平均単価でみた時、食品スーパーマーケットはどのように見えるかを考えてみたい。ちなみに、一般的には客単価は店舗全体の客単価として認識されているが、この式が示すとおり、客単価はPI値×平均単価で表されるので、店舗全体はもちろん、大分類、中分類、小分類、単品にも客単価が存在する。店舗全体の客単価アップをめざすには、小分類、単品の客単価に着目することが実は最重要課題である。

  さて、食品スーパーマーケットはおおよそ10ぐらいの大分類に分けることができる。主な分類は農産、畜産、水産、惣菜、日配(豆腐、牛乳など)、食品(調味料、乾物、飲料・・)、・・である。この大分類を客単価分析するとそれぞれの特徴が明確に浮かび上がり、食品スーパーマーケットの本質、特徴、売上アップの戦略がはっきりとつかめる。客単価分析とは横軸にPI値、縦軸に平均単価(逆でも良い)を取り、それぞれの大分類をグラフに配置することである。ちなみに、食品スーパーマーケットの平均PI値は約1000%(1人平均10個購入)なので、10分類であれば平均PI値は約100%(1人1個購入)、平均単価は約200円であり、1分類当たりの客単価は掛けて200円となる。したがって、客単価分析のグラフの中心はPI値100%、平均単価200円となる。

  実際に各大分類の客単価グラフを作ってみると、興味深い、特徴的なグラフになる。ほぼきれいに約10の大分類がPI値100%、平均単価200円を通る双曲線上に並ぶのである。y=1/xのグラフである。右下(PI値の高い領域)の典型的な商品が日配(豆腐、牛乳など)、農産、食品(調味料、乾物、飲料・・)の3つであり、左上(平均単価の高い領域)の典型的な商品が水産と畜産の2つである。あとの惣菜、菓子等の商品はおおよそ中心付近にくる。

  実はここに食品スーパーマーケットの本質があり、このグラフこそ食品スーパーマーケットの最大の特徴といえる。右下のトップを走るPI値No.1の商品は日配(豆腐、牛乳など)である。何とPI値が300%(1人平均3点購入)という断トツの商品である。No.2がほぼ同じPI値約200%(1人平均2点購入)の農産と食品(調味料、乾物、飲料・・)である。これに対し、平均単価No.1商品はほぼ同じ300円強の平均単価の水産と畜産である。ちなみに、PI値はどちらも100%弱となる。この数字から食品スーパーマーケットの本質が浮かび上がる。すなわち、人間が生きてゆくのに絶対必要なライフラインとなる商品は日配(豆腐、牛乳など)であり、農産であり、食品(調味料、乾物、飲料・・)であり、その補強商品が水産か畜産のどちらかであるという事実である。食品スーパーマーケットはまさに人間の生命維持に必要なものを販売している小売業であることがわかる。

  では、この客単価グラフから、食品スーパーマーケットの売上アップの決め手は何かを考えてみたい。それはPI値No.1の日配(豆腐、牛乳など)、No.2の農産、食品(調味料、乾物、飲料・・)のPI値を極限までアップさせることである。そのためには、品揃えを充実させ、絶対に欠品を出さないことであり、さらに、お客さまの買い易い場所で販売することである。しかも、この商品こそ、ライフラインの根幹の商品であるので、限界まで価格を下げることもポイントである。スーパーセンターのベイシアがこれらの商品を極限までEDLP戦略をとったことはその意味で理にかなっている。また、これとは逆に平均単価No.1の水産、畜産に関しては平均単価を限界までアップさせることである。これは値上げをすることではなく、容量とグレードのアップを極限まではかることである。実際にこの商品群を100店舗ぐらいで調べてみると、平均単価の高い店舗ほどPI値も高いことがわかる。最終的には、右下、左上の商品群全体を右上にもってゆくような流れを作れたとき、食品スーパーマーケットはバランスよく顧客の支持を得ながら売上を上げてゆくことができる。

  このように、PI値で見ると食品スーパーマーケットの本質と活性化の方向がくっきり浮かびあがる。

November 03, 2005

SHOP99の新店戦略を見る!

 食品スーパーマーケットの上場企業約50社の中で売上昨年対比No.1企業はショップ99である。9月度のデータでは146.6%と昨年対比を大きく上回った。しかも、この10月には総計700店舗を越えた。店舗数が少ない場合は、伸び率を大きくするこはできても、700店舗近いチェーンストアで140%を越えることは至難の業だ。近年、昨年対比をクリアーすることも難しい小売業の中で断トツの伸び率である。
 では、なぜ、昨年対比140%以上の数字が出せるのか。それは、明確な新店戦略が確立されているからといえる。なぜなら、SHOP99の9月度の既存店売上昨年対比は96.9%であり、146.6%は明かに新店による売上アップであるからである。そこで、この数ケ月の新店状況を見てみると、以下のようになる。
 10月度は以下の24店舗が新規オープン。10/29、福生南田園店(東京)、10/29、茅ヶ崎円蔵店(神奈川)、10/29、枚方村野駅前店(大阪)、10/28、生駒東菜畑店(奈良)、10/28、原町田5丁目店(東京)、10/27、青葉台駅前店(神奈川)、10/26、知多新知店(愛知)、10/26、大島1丁目店(東京)、10/26、西永福店(東京)、10/25、古千谷本町店(東京)、10/22、下高井戸5丁目店(東京)、10/22、八尾志紀駅前店(大阪)、10/21、白楽駅前店(神奈川)、10/20、上水戸店(茨城)、10/20、南大塚店(東京)、10/20、摂津昭和園店(大阪)、10/19、半田南成岩店(愛知)、10/18、名東西里店(愛知)、10/14、奈良大宮店(奈良)、10/14、大谷静大前店(静岡)、10/12、品川小山店(東京)、10/08、武蔵境1丁目店(東京)、10/07、桜新町1丁目店(東京)、10/05、上水本町店(東京)、
 9月度は以下の17店舗が新規オープン。 09/30、江南団地店(愛知)、09/30、読売ランド前店(神奈川)、09/29、犬山店(愛知)、09/29、奈良もちいど(奈良)、09/28、西宮上田中町店(兵庫)、09/28、野田山崎店(千葉)、09/28、駿河敷地店(静岡)、09/27、伊勢原店(神奈川)、09/24、浅草寿店(東京)、09/22、妙典駅前店(千葉)、09/22、西荻北店(東京)、09/21、横浜吉野町店(神奈川)、09/21、東住吉住道矢田店(大阪)、09/13、大泉学園町店(東京)、09/09、長野栗田店(長野)、09/03、川崎野川店(神奈川)、09/02、八柱店(千葉)
 と、この2ケ月足らずで、41店舗の新規オープンである。しかも、東京だけではなく、大阪、愛知、静岡と東海道沿線に幅広く新規出店しているのが特徴である。チェーンストアにとっての売上アップの最大のポイントが新規出店戦略であることがこの事例からも一目瞭然である。ちなみに、アメリカでもウォールマートは今期約300店舗のスーパーセンターを新規出店していることを見ても、新規出店がチェーンストアの生命線であることがわかる。
 チェーンストアの成長戦略は新規出店にありといえよう。


November 02, 2005

客単価が経営の根幹指標へ

 経済産業省の産業構造審議会の新成長政策部会において、経営・知的資産小委員会が立ち上がった。すでに、5回の委員会が開かれ、6月には中間報告がなされた。来春には本報告がまとまめられる予定だ。この委員会では、今後の企業経営のあり方は、従来の規模の経済や、価格競争による利益の確保は限界であるという認識のもとに、新たな利益の確保は知的資産に裏づけされた他社との差別化にもとめるべきだということがベースになっている。そして、この知的資産経営を実現させ、国内企業の活性化はもとより、日本の企業が国際的にも持続的な利益の確保ができる強い企業を目指そうという目的である。実はこの流れは、すでに国際的にははじまっており、昨年(2004年)の5月のOECDの理事会で、日本も提案国として「知的資産と価値創造プロジェクト」が立ち上がっており、この秋にはシンポジウムが開かれ、その後、ガイドラインが作成される予定である。したがって、その主導権を日本が握る意味でも、今回の経営・知的資産小委員会の中間報告は重要な意味をもっている。これまで、国際会計基準等で国際的には後塵を配した感のある日本ではあったが、この知的資産経営に関しては、日本の最も得意とするところであり、今後の動向が注目される。

 さて、その中身だが、すでに中間報告と同時に開示ガイドライン案が公開されているが、全部で51の指標の開示を前提に、知的資産経営のストーリーを現在、過去、未来に渡って示すことが求められている。この51の指標を事前に投資家にアンケート調査をしたところ、何と客単価の変化が評価No.1となった。したがって、今後、知的資産報告書の最重要指標として、客単価の変化が各企業から公表されると同時に、各企業には客単価の管理が求められることになる。すでに、東証は、これまでの財務諸表を中心としたIRに加え、この知的資産報告書も公表する方向で検討しているというので、早ければ、来春には一部の企業が公開に踏み切る可能性がある。小売業では客単価は客数と並ぶ、企業経営の根幹の指標であるので、小売業界にとっては、これを機に、知的資産報告書を先駆けて作成、公開して欲しいものだ。残念ながら、食品スーパーマーケット上場企業50社の中でもまだ10社程度しか客単価の変化を公開していないのが残念である。ちなみに、51の指標の中には、新規顧客の売上比率、会員数の伸び率もある。

 肝心の51の指標だが、大きく7つに分れている。①経営スタンス/リーダーシップ、②選択と集中(ビジネスモデルの評価)、③対外交渉力/リレーションシップ、④知識の創造/イノベーション/スピード、⑤チームワーク/組織知、⑥リスク管理/ガバナンス、⑦社会との共生の7つである。客単価の変化はこの中で3番目の対外交渉力のひとつである。

 今後、知的資産経営は今後の企業経営の根幹をなすものであり、自社の将来にわたっての収益を確保する上において重要な課題といえよう。その意味で、知的資産報告書が国内的にも国際的にも早く認知されることを望みたい。

November 01, 2005

ウォールマート スーパーセンターが主力業態に!!

 2005年のウォールマートの年次報告書を見ると、ついにウォールマートの主力業態がディスカウントストアからスーパーセンターに入れ替わった。スーパーセンターが1713店舗になり、ディスカウントストアの店舗数1353店舗を約350店舗、上回ったのである。2004年はスーパーセンター1471店舗に対し、ディスカウントストア1478店舗であり、わずかにディカウントストアが多かったのであるが、今年大逆転を果たしたことになる。この時点で、既に、ウォールマートはディスカウント業態ではなく、スーパーセンターを主力業態とする小売業に生まれ変わったといえる。

  一般にウォールマートはトヨタ、GMを抜き、年商約30兆円という世界最大の超安定企業と思われているが、この10年間の軌跡を見ると、ディスカウントストストアからスーパーセンターへの業態展開の苦闘の歴史といってよい。いまから10年前の1995年にはディスカウントストアは何と1985店舗あったが、毎年毎年、5%前後のリストラを繰り返し、先程の数字のように2005年は1353店舗となったのである。これとは反対に、スーパーセンターは1995年にはわずか147店舗であった。まさに、スーパーセンター草創期といえる時期であり、この後、毎年約120%の成長を続け、2005年には1713店舗となり、ディスカウントストアを歴史上はじめて逆転したのである。

  しかも、ウォールマートのすごいところは、企業全体の成長率はこの10年間ほぼ110%を維持し、さらに荒利は22%前後、経費は18%前後、最終利益は3.5%前後を維持しつづけるというマネジメントの強さである。通常なら、これだけ、内部で激しく業態転換が起こっているので、マネジメントがブレてしまいがちだが、それがブレずに10年間続けてきた。経営陣の精神力の強さを感じさせる冷徹な数字管理である。

  ちなみに、ウォールマート経営陣はさらに次の10年後の布石もうちはじめた。食品スーパーマーケットの本格的な開発展開に入りはじたことである。6年前の1999年には、わずか4店舗でスタートした食品スーパーマーケットを慎重に開発展開をはじめ、翌年の2000年7店舗、2001年19店舗と店舗数を徐々に増やし、2005年には85店舗となった。今後、M&Aも含め、10年後は、スーパーセンターに変わる柱にしょうという意図が感じとれる。ウォールマートの成長はどこまで続くのか、この冷徹なマネジメント力をもつ経営陣がいる限り、あと10年は続きそうである。

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