セブンイレブン 弁当の欠品問題に本腰!
11/7の日経MJによると、セブンイレブンがこの11月から弁当の欠品問題に本格的にメスを入れたという。その目的は夕食時間帯の弁当の客単価アップにあるという。従来の弁当の発注体制では、この時間帯の欠品、品薄が発生し、表面的には廃棄が減っても、機会ロスが発生し、客単価が落ちるだけでなく、客数減にもつながりかねなかったという。本部としては、店舗に粘り強く、説得を試みたが、思うような成果が得られず、仕組みをかえることによって、強制的に夕食時間帯の弁当売り場を充実させ、客単価アップをはかることにしたとのことだ。
ちなみに、セブンイレブンでは年間約17億個の米飯を販売し、そのうち10億個がおにぎりである。おにぎりの平均単価を120円、弁当等の平均単価を300円とすると、総売上はおにぎり10億個×120円=1200億円、弁当7億個×300円=2100億円、合計売上が3300億円、平均単価は3300億円÷17億個で約200円となる。また、セブンイレブンの客数は1店舗約1000人であるので、約10000店舗で1日1000万人、年間では約36億人が来店している。したがって、PI値理論の根幹のMD方程式を適用すれば、米飯は売上3300億円=PI値約50%(17億個÷36億人)×平均単価約200円×客数36億人となり、客単価=PI値×平均単価なので、50%×200円で100円となる。セブンイレブンの年商は2.5兆円なので、店舗全体の客単価は2.5兆円÷36億人=約700円であるので、米飯の構成比は100円÷700円で約15%弱であることを考えると、米飯はコンビニエンスの中核商品であり、しかも、そこに機会ロスがあるとすれば、経営の根幹を揺るがす大きな問題であったことがわかる。仮に、今回の仕組みの変更により客単価が1円アップし、米飯の客単価が101円となった場合は、客数が年間36億人であるので、米飯のみで36億円の売上アップが期待できる。恐らく、今回の狙いは10%以上は改善したいと思われるので、米飯の客単価100円の10%アップを見込み10円のアップ、すなわち、10円×36億人で360億円以上の改善効果を期待しているのではないかと思う。
では、どのように仕組みを変更したのか。ひとことで言えば、補充発注から仮説発注へ変えたといってよい。これまでは夕食時間帯へ配送する3便(15:00~18:00配送)の発注が当日の10:00でよかったので、1便(21:00~24:00配送)の米飯の売れ行き、2便(8:00~11:00配送)の搬入状況をみて、発注ができた。したがって、売場の在庫(1便の売れ残りと2便の入荷状況)を見て、3便の夕方時間帯の発注数量を確定できたので、廃棄ロスを最小にし、利益率をアップさせようという政策であったといえる。反面、機会ロス、品薄感が発生し、この時間帯の客単価は恐らくかなり低かったのではないかと創造される。
これに対して今回の政策は発注を1便、2便、3便ともに前日の午前11:00の1回のみにし、しかも配送時間も1便を1:00~5:00、2便を8:00~11:00、3便を14:00~17:00と変更した。従来の発注のように、1便の売れ残り状況、2便の入荷状況はみることができず、在庫情報なしに、前日の11時に翌日の夕方時間帯の米飯の発注をするのである。100%仮説にもとづく発注をせざるをないといえる。しかも、従来のように3便の15:00~18:00、1便の21:00~24:00というその差が最短3時間であった夕食時間帯の時間間隔が、今回は、3便14:00~17:00、1便1:00~5:00と最短でも8時間と広がることにより、3便の発注数量を増やさない限り、8時間も欠品、品薄状態が続く可能性があり、いやでも、夕食時間帯の米飯の発注を増やさざるを得なくなる仕組みの改善である。日経MJの記事では北海道などの一部の地域で新方式を実験し、「自ら仮説を立てて高精度な発注をする店が増え、売上は伸びる」といっているが、まさに仮説立案能力が発注担当者に問われることになる。何も考えない人材はセブンイレブンにはいらない。自らの能力アップをはかりたいという、意欲ある人材が欲しいということであろう。
セブンイレブンがここまで踏み切った背景には、単品管理に象徴される仮説立案能力をささえるシステムと教育、そして本部のフォロー体制、店舗の受け入れ態勢が整ったとの判断があるものと思われる。その意味で今後の発注は補充発注型から仮説発注型への転換を意味し、セブンイレブンに限らず、小売業界全体が取組まざるをない大きなテーマである。そして、その仕組みとフォロー体制をつくりえた企業のみが伸びてゆくのではないかと予感させる。
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