客単価が経営の根幹指標へ
経済産業省の産業構造審議会の新成長政策部会において、経営・知的資産小委員会が立ち上がった。すでに、5回の委員会が開かれ、6月には中間報告がなされた。来春には本報告がまとまめられる予定だ。この委員会では、今後の企業経営のあり方は、従来の規模の経済や、価格競争による利益の確保は限界であるという認識のもとに、新たな利益の確保は知的資産に裏づけされた他社との差別化にもとめるべきだということがベースになっている。そして、この知的資産経営を実現させ、国内企業の活性化はもとより、日本の企業が国際的にも持続的な利益の確保ができる強い企業を目指そうという目的である。実はこの流れは、すでに国際的にははじまっており、昨年(2004年)の5月のOECDの理事会で、日本も提案国として「知的資産と価値創造プロジェクト」が立ち上がっており、この秋にはシンポジウムが開かれ、その後、ガイドラインが作成される予定である。したがって、その主導権を日本が握る意味でも、今回の経営・知的資産小委員会の中間報告は重要な意味をもっている。これまで、国際会計基準等で国際的には後塵を配した感のある日本ではあったが、この知的資産経営に関しては、日本の最も得意とするところであり、今後の動向が注目される。
さて、その中身だが、すでに中間報告と同時に開示ガイドライン案が公開されているが、全部で51の指標の開示を前提に、知的資産経営のストーリーを現在、過去、未来に渡って示すことが求められている。この51の指標を事前に投資家にアンケート調査をしたところ、何と客単価の変化が評価No.1となった。したがって、今後、知的資産報告書の最重要指標として、客単価の変化が各企業から公表されると同時に、各企業には客単価の管理が求められることになる。すでに、東証は、これまでの財務諸表を中心としたIRに加え、この知的資産報告書も公表する方向で検討しているというので、早ければ、来春には一部の企業が公開に踏み切る可能性がある。小売業では客単価は客数と並ぶ、企業経営の根幹の指標であるので、小売業界にとっては、これを機に、知的資産報告書を先駆けて作成、公開して欲しいものだ。残念ながら、食品スーパーマーケット上場企業50社の中でもまだ10社程度しか客単価の変化を公開していないのが残念である。ちなみに、51の指標の中には、新規顧客の売上比率、会員数の伸び率もある。
肝心の51の指標だが、大きく7つに分れている。①経営スタンス/リーダーシップ、②選択と集中(ビジネスモデルの評価)、③対外交渉力/リレーションシップ、④知識の創造/イノベーション/スピード、⑤チームワーク/組織知、⑥リスク管理/ガバナンス、⑦社会との共生の7つである。客単価の変化はこの中で3番目の対外交渉力のひとつである。
今後、知的資産経営は今後の企業経営の根幹をなすものであり、自社の将来にわたっての収益を確保する上において重要な課題といえよう。その意味で、知的資産報告書が国内的にも国際的にも早く認知されることを望みたい。
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