スーパーセンターとNSCが激突!!
12/8、ベイシアスーパーセンター21番目となる「ベイシア スーパーセンター富里店」が千葉県富里市にオ-プンする。また、12/14には、イズミヤがスーパーセンター3番目となる「スーパーセンター イズミヤ堅田店」を滋賀県大津市にオープンする。スーパーセンターの出店がここへきてますます加速しつつある。この勢いで各社のスーパーセンターの出店が続くと、既存の食品スーパーマーケットとの競合が本格化し、各地で激しい競合状況に陥ることは必至である。すでに、数地区で直接競合がおこりはじめ、特に、食品スーパーマーケットの次世代業態であるNSCとスーパーセンターが激しくぶつかりはじめた。
2001年から約5年間、直接競合がつづいている福島県白河市のヨークベニマルのNSCとベイシア、今年6月に直接競合となった埼玉県鶴ヶ島市のヤオコーNSC(SC)とベイシアは、まさに今後、各地で発生するであろう本格的なスーパーセンターとNSCとの競合時代の前哨戦といえる。いずれも、先にNSCがオープンし、その後、スーパーセンターがオープンするというパターンであり、スーパーセンターがNSCによって確立された新しい市場に、EDLPを武器に価格訴求で顧客を強引に奪うという構図である。
福島県白河市に約5年前にオープンしたヨークベニマルのNSCに異変が起きた。ヨークベニマルと並び2核を形成していた地元福島県のホームセンターのダイユー8が撤退、その跡地に100円ショップのダイソーが新規オープンした。ホームセンターが5年以内に撤退することは異例であり、いかに競合するベイシア スーパーセンターのもう一方の核であるホームセンターのカインズとの競合が厳しかったかが推し量られる。NSCの最大の弱点は食品スーパーマーケットではなく、テナント群であることが浮き彫りになった出来事だ。NSCは中商圏対応型の業態であるため、特に、ホームセンターのように中商圏から大商圏対応型の業態と直接競合した場合には規模の差を埋めることが難しいといえる。ただ、今回は、逆にダイソーが入ったことで、近隣からの集客力はむしろ増したようで、他のテナントのユニクロ、マツモトキヨシ、ヤマヤ等との相性もよく、中~小商圏対応のパワーは強くなった。ヨークベニマルはベイシアに対抗するため、ベイシアのEDLPの日配の核商品である豆腐、納豆、コンニャク等に加え、冷食、アイスクリーム等のグロサリーの価格をミートないしは可能な限り店舗独自の価格訴求をかけて対抗している。一方、価格訴求の効きにくい生鮮、惣菜については、徹底的な鮮度管理、アップグレード、品揃えの強化をはかっている。特に、品薄、品枯れ、欠品しやすい夕方から夜にかけての生鮮、惣菜の充実は圧巻であり、ベイシアをはるかに凌ぐ売場がオープン以来維持されている。文字通り、日配、グロサリーの徹底的なEDLPを武器にした価格訴求をかけるスーパーセンターと生鮮と惣菜に重点をおく食品スーパーマーケットの対照的な戦略が真正面からぶつかっているのが、この白川の状況である。
一方、埼玉県鶴ヶ島市のヤオコーのNSCは、NSCを越え、SCに近い業態(テナントが約50店舗)となったため、テナントの競合問題はほとんどなく、食品スーパーマーケット部門のみがベイシアと競合状況にあるといえる。ところが、ベイシアは立地が充分に確保できなかったとみえ、駐車場が全く足りない状況であり、ベイシアとしては珍しく、2階を駐車場にせざるをえなくなった。そのため、コスト重視のスーパーセンターがはじめから高コスト店舗での運営となってしまった。それに加え、カインズと同一敷地内で店舗展開することができなかったとみえ、カインズは少し離れた場所に先に立地しているので、スーパーセンターとしての強さがかなり削がれた感のある立地戦略となった。したがって、食品スーパーマーケット部門がヤオコーのNSCと対抗する最重点部門となり、これまでのベイシア スーパーセンターとは少し競争力が弱い業態でのスタートである。EDLP商品については豆腐が28円等、日配、グロサリーは他のベイシア スーパーセンターと同様、強力な価格訴求で集客をはかろうとしている。これに対し、ヤオコーはヨークベニマルよりも、さらに徹底した生鮮・惣菜強化型の店舗をつくりあげ、ベイシアの価格訴求とは一線を画す戦略で対応している。豆腐にしても、ちらしでも78円と28円を意識した価格はつけず、より生鮮、惣菜の強化に徹する売場づくりである。
このように、まだ、はじまったばかりのNSCとスーパーセンターとの競合であるが、この2つの事例が示唆することは、食品スーパーマーケットがNSCとして成功してゆくためには、スーパーセンターのホームセンター部門と対抗するのではなく、中商圏よりも、小商圏に強い、来店頻度がアップするテナントを集結することがポイントであろう。それに加え、食品スーパーマーケットの本質である生鮮と惣菜の強力な売場づくりができるか否かが、日配、グロサリーのEDLPを武器にした価格訴求に対抗する方法であるといえる。
今後、食品スーパーマーケットは競合がNSCであるか否かを問わず、ますますその本質である生鮮と惣菜の強化が、最も重要な戦略となろう。
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