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February 2006

February 28, 2006

首都圏ネット食品スーパーマーケットの現状!

  首都圏では現在、西友とマルエツの2社が食品スーパーマーケットの本格的な宅配を運営しはじめた。インターネットのみで注文を受け付け、近くの店舗から宅配をする仕組みが基本である。生鮮食品を含め、約3000の品揃えがあり、原則午前中に注文すれば、その日の夕方には宅配されるという仕組みである。西友は1日4便の配送に対し、マルエツは3便の配送があり、配送便を指定できる。送料については、西友は5000円以上購入すると無料であり、それ以下の場合は525円である。マルエツは5000円以上購入し、その日から3日めまでであれば315円、4日め以降の配送であれば無料である。それ以下の場合は当日から3日めまでは525円、4日め以降は315円である。

  食品スーパーマーケットの宅配では10年以上前から三重県のスーパーサンシが先行し、その仕組みを導入している地方の食品スーパーマーケットも多い。また、首都圏の食料品の宅配では、生協のPALシステムでは、すでに70万人が利用しているが、食品スーパーマーケットの中では、首都圏で独自に宅配を本格的に取組んでいる企業は、この2社であろう。そこで、この2社の宅配の現状についてみてみたい。

  まず、宅配エリアであるが、西友は現在、東京23区のうち、渋谷区・世田谷区・杉並区・練馬区・中野区・目黒区・豊島区・板橋区・北区・文京区の全域、足立区・葛飾区・大田区・品川区・新宿区の一部の15区が対象となっている。また、三鷹市・府中市をはじめ近郊の市、さらに埼玉県、神奈川県の一部が対象である。

  これに対してマルエツは東京23区では世田谷区・渋谷区・目黒区・大田区・品川区の全域5区の限定であり、市も町田市のみの限定、それに神奈川県の1部が対象である。マルエツの宅配はまだサービスエリアが限定されており、今後、順次拡大されてゆくものと思う。

  次に品揃えであるが、特にポイントなるのは生鮮であろう。野菜については、西友がよく工夫された内容になっており、はじめによく使う野菜のみの分類があり、中身を見ると大根1/2カット108円、大根1本198円をはじめ、キャベツ、人参、ピーマン、もやしなどいわゆるPI値の高い商品が11品ある。ついでサラダ野菜、薬味野菜、いも・かぼちゃなど8つに小分類が分けられており、全合計70品が購入できる。これに対しマルエツは葉物野菜、根菜、サラダ野菜等6分類に分けられており、75品が購入できる。

  果物については、西友はトロピカルフルーツ、すいか・メロンナド4つに分類されており、18品が購入できる。マルエツは分類は果物1つであり、15品が購入できる。

  鮮魚については、西友は刺身、切身、塩干等11分類であり、41品が購入できる。マルエツは生魚、鮭、冷凍魚等11分類に分けれ、生魚だけでも21品あり、全部で103品という品揃えがあり、鮮魚には力が入っている。

  精肉については、西友は牛肉、黒豚、豚肉など8分類に別れ、60品が購入できる。マルエツは牛肉、豚肉、鶏肉など7つに分類され、63品が購入できる。精肉に関しては両社ともほぼ同じ品揃えである。

  惣菜については、西友は惣菜、弁当の2分類であり、10品であり、まだまだ今後の部門であるといえよう。マルエツは惣菜は和風デイリーに分類され、フライ・コロッケ・唐揚げ、サラダ等6分類であり、24品が購入できるが、やはり、まだまだ今後の課題といえよう。ネット食品スーパーマーケットでは惣菜は難しい部門と見え、今後、いかに充実させるか課題となろう。

  生鮮以外は、両企業とも日配、グロサリー、菓子、雑貨、酒が共通であるが、西友はこれ以外に衣料、ベビー用品等を付加しているのが特徴である。原則、食品スーパーマーケットの店舗で販売しているものはすべて宅配可能な商品となっているといえる。

  このように首都圏における食品スーパーマーケットの宅配事業はまだまだ始まったばかりであり、今後、取り扱い商品とエリアを拡大させながらどこまでビジネスとして売上を伸ばし、利益をあげられるかが課題となる。まちづくり3法が今国会でとおり、中心市街地の活性化がすすめば、首都圏の宅配は食品スーパーマーケットにとっては新たな有望なビジネスとなろう。


February 27, 2006

果物、野菜の相場情報、東京中央卸売市場2月度の状況!

  2月度の果物、野菜の相場状況が出揃った。東京中央卸売市場の週間市況を見ると、全体的に入荷量は昨年並みであるが、相場はやや安値で推移している状況といえる。東京中央卸売市場では相場情報を月間、週間、日別で公開しており、週間の最新は2/26現在、2月の第4週、2/17から2/23までの相場情報である。

  まず、果物の直近の第4週をみると、この時期主力のみかんが果物全入荷量の約25%を占めてトップであり、2番目がいよかんで約15%、3番目がほぼいよかんと同じ約15%の入荷量のりんごである。いちごはまだこの時期、入荷量は少なく、10%強ぐらいである。いちごは3月以降入荷が急激に増えるものと思われる。

  入荷量No.1のみかんの相場であるが、2月は第1週から第4週まで安値相場が続いており、第4週では静岡産の10kgの中値が2700円前後で昨対80%強で取引されている。第3週は10kgの中値が約2500円で75%、第2週は10kgの中値が2200円で75%強、第1週は10kgの中値が2400円で85%弱での取引である。例年の20%~25%安の取引であり、主力商品だけに厳しい安値相場である。

  このような状況においては、みかんにかわる主力としては、いよかんがあるが、そのいよかんが着色遅れから入荷が遅れるなど、みかんにとってかわる旬の果物が不在な状況となっている。しかも、いよかんの入荷量が昨対80%前後になっているにもかかわらず、相場が昨年並みで推移し、これも厳しい状況といえる。

  したがって、果物は旬を先取りし、いちごを有力な主力商品としたいところだが、第4週のいちごの状況をみると、2月のはじめから中旬にかけては入荷量が昨対の80%で推移し、相場の方も昨対約120%で推移するという高値相場となり、思い切った販売ができない状況であった。第4週になってやや落ち着き、入荷量が昨年並みになり、主力のとちおとめの相場も95%弱まで下げたが、人気のあまおうは依然高値相場がつづいている。

  このように2月の果物は旬の訴求商品にこれといったものが打ち出せず、不安定な相場であり、食品スーパーマーケットにとっては第1平台の果物の訴求が中途販売になり、果物に関しては2月は厳しい状況であったといえよう。

  一方、野菜については、直近の第4週をみると、全体の入荷量はほぼ昨年並みで推移したが、相場は全体的には安値相場であったといえよう。主力のトマトは入荷量は昨年並みであるが、相場は約90%、第3週も同様な状況であり、第2週は入荷は約90%、相場は約75%と低く、第1週は入荷は昨年並みであるが、相場が約70%とさらに低めであった。ここのようにトマトは相場安で推移し、厳しい状況であったといえる。トマトと並ぶ主力の食品スーパーマーケットではPI値No.1商品のきゅうりは第1週から第3週までは相場が約120%で推移し、高値相場だったが、第4週に入り、関東産の春物が入荷しはじめ一転約90%という安値相場になった。このように主力のトマト、きゅうりの相場が安定せず、2月度は厳しい状況であったといえよう。

  また、この時期、入荷量のベスト3はキャベツ、大根、白菜であるが、2月、第4週では、キャベツの相場が70%、大根が90%、白菜が60%と安値相場で推移している状況である。第3週以前は大根のみの相場が150%のときもあり、大根は高値相場であったが、キャベツ、白菜は2月いっぱい安値相場が続いており、これはこれで、やはり厳しい状況である。

  にんじん、たまねぎ、じゃがいもについては、じゃがいものみ2月はずっと相場が120%前後の高値相場が続き、厳しい状況であったが、にんじん、たまねぎは逆に80%から90%の安値で推移した。

  このように野菜は大根、じゃがいも等の一部の商品は高値で推移したが、大半は安値相場が続き、平均単価のダウンをPI値でカバーする一方で、大パック売りや箱売りなどお買い得感を出し、平均単価を引き上げる売り方の工夫如何がポイントとなった2月の相場であったといえよう。

February 26, 2006

食品スーパーマーケット、売上ランキング! 2006年1月度!!

  2006年最初の食品スーパーマーケットの売上速報、1月度がまとまった。食品スーパーマーケット上場約50社のうち、売上速報を毎月公表している企業は約20社であるが、この時点(2/25)でまだ2社、マルエツとイズミの公表がなされていないのが残念である。また、先月からこの売上ランキングにアメリカのウォールマートを加えているが、ウォールマートについては昨対114.5%、既存店も102.5%で順調な推移であり、今年も110%の成長で推移しそうな勢いである。

昨対110%以上の企業が4社!
  このような中で、昨対110%以上の食品スーパーマーケットは今月は4社であった。No.1が143.1%の大黒天物産であり、依然として高成長を続けている。既存店の売上も100.9%とわずかではあるが、100%を越えた。残念ながら、客単価は全店、既存店ともに昨年を下回ったが、客数は全店144.8%、既存店101.5%とどちらも100%を越え、全店の客数がよく伸びている。また、客単価の中身である、PI値、平均単価については、PI値が全店、既存店ともにダウンし、平均単価がどちらも101.5%とアップしており、PI値のアップが当面の課題といえよう。

  No.2は九九プラスであり、全体は137.6%であるが、既存店は96.7%である。九九プラスはこの1月も、そして、直近の2月も新店が目白押しであり、まさに新店に支えられた売上である。既存店はここ数ケ月95%前後で推移しており、既存店の活性化が急務である。既存店の回復の遅れはほぼそのまま利益に直結するので、利益面からいっても、九九プラスも既存店の活性化が今年の大きな課題であろう。

  No.3はPLANTである。全体の昨対は121.3%で絶好調であるが、九九プラスと同様、既存店の売上が96.4%と伸び悩んでおり、特に、既存店の客単価よりも客数の落ち込みがやや大きいのが気になるところである。

  No.4はマックスバリュ東海であり、全体は120.4%、既存店も102.3%と上位4社の中では最も安定したバランスのよい売上である。特に、客数は全体、既存店ともに100%を越え、客単価も全体では100.2%、既存店が99.2%とやや下回ったが、PI値は全体、既存店ともに100%を越え、今回の企業の中では理想的な数値で推移しているといえよう。

2006年1月度の注目企業!
  今月の注目企業はヤマザワである。全体、既存店の売上、客数、客単価すべての数字が昨対100%を越えた。まず、売上であるが全体が104.6%、既存店が103.9%と、特に既存店の数字は全企業の中でNo.1である。また、客数の全体は102.4%、既存店は101.7%、客単価の全体は101.4%、既存店も101.4%と客数、客単価ともに全体、既存店バランスよく伸ばし、売上を安定して伸ばしている。新店ではなく、既存店の伸びに支えられた全店の売上であり、既存店の活性化が順調に進んでいるものと思われる。

既存店の客単価アップが今年の最大のテーマ
  全体としては、売上の回復基調が見え、昨対を下回った企業はわずか4社であったが、既存店の売上は逆に昨対を越えた企業が4社であり、新店に支えられた売上であり、既存店の回復までには至っていない。特に、既存店の客単価で昨年を越えた企業はわずか1社であり、既存店においては客数よりも、客単価の回復の遅れがうかがわれる。また、売上速報公開企業約20社のうち、数社がPI値、平均単価まで公表しているが、それによるとPI値の方がやや回復傾向にあり、平均単価の方はまだ回復がみえない状況である。一般的に既存店の活性化のポイントはまず、PI値、そして平均単価のアップが手順である。その意味で、今年前半の最大のテーマは既存店の活性化にあるといえ、そのためにもまずPI値の昨対アップが当面の課題であろう。

February 25, 2006

ウォールマートの海外戦略の現状!

  ウォールマートの海外戦略は1991年に始まる。サムズホールセールクラブがメキシコにオープンしたのが最初である。現在、ウォールマートは世界15ケ国に展開するインターナショナル企業となった。その15ケ国とは、アルゼンチン、ブラジル、ニカラグア、プエルトリコ、ホンジャラス、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、メキシコ、カナダ、ドイツ、イギリス、中国、韓国、そして、日本である。

  この中で、日本については次のように紹介されている。2006年1月現在、西友は、スーパーマーケット305店舗、GMS83店舗、LIVIN12店舗、スーパーセンター2店舗、その他6店舗を展開し、アソシエイトは35,426人である。西友は、現在、日本では4番目のスーパーマーケットのチェーンストアであり、1963年4月19日に設立された企業である。2002年5月ウォールマートが6.1%の株式を取得し、その後、2005年12月には西友の53.34%の株式を取得し、ウォールマートの傘下に入った。現在、ローコスト、ロープライスの小売業への改革に取組んでいる。西友の売上は2004年95億ドル(約1兆円)であり、営業利益は460万ドル(約5億円)、純損失は11200万ドル(約120億円)である。現在、西友はウォールマートの最新テクノロジーを導入し、2つの物流センター構築に取り組んでおり、2007年と2008年に稼動の予定である。西友の最新モデル店舗は2005年4月に平塚に2層タイプでオープンプしたスーパーセンターである。このように、2005年12月以降、西友が本格的にウォールマートインターナショナルに組み込まれ、他の14ケ国の企業とともに歩んでゆくことになった。

  では、日本以外のアジアの状況をみると、まず、中国については、1995年にシンセンにスーパーセンターとサムズホールセールクラブを出店したのが最初であり、現在ではウォールマートとスーパーセンターを51店舗、サムズホールセールクラブを3店舗、ネバーフッドマーケット(食品スーパーマーケット)を2店舗展開しているという。アソシエイトは27,000人である。また、逆に、中国からは180億ドル(約2兆円)の輸入をウォールマートが行っているということで、中国は輸入基地としての役割も大きいという。韓国については1998年にビジネスをスタートさせ、現在16店舗のウォールマートとスーパーセンターを展開しているという。このように、まだまだ、アジア戦略は本格的に展開しているとはいえず、今後、日本の西友が基点になって、アジア全域へ出店してゆくことも将来は考えられよう。

  一方、ヨーロッパについては、ウォールマートは1999年にイギリスのアズダを傘下に治め、現在、イギリスの2番目の小売業となった。店舗展開については、ウォールマートのスーパーセンターが21店舗、アズダのスーパーセンターが236店舗、ジョージが10店舗、リビングが5店舗、スモールタウンが43店舗、アソシエイトは140,000人である。ドイツでは1998年にベルトカーフのハイパーマーケットを21店舗合併したのがスタートである。現在、ウォールマート、スーパーセンターをドイツ全土に88店舗展開し、アソシエイトは12,000人である。このように、ヨーロッパはまだドイツとイギリスのみであるが、この2ケ国で成功事例ができつつあり、今後、さらに他の国へ参入してゆくものと思う。

  さて、最後に、北米、南米であるが、まず、ウォールマートインターナショナルのスタートとなったメキシコでは、1991年に地元企業と合弁でスタートし、現在ではウォールマート、スーパーセンターを105店舗、サムズホールセールクラブを69店舗、その他数100店舗を展開している。アソシエイトも112,000人である。カナダには1994年に地元のウールコカナダチェーンを買収し、現在、ウォールマートを272店舗、サムズホールセールクラブを6店舗、アソシエイトは70,000人である。

  一方、南米では、ブラジルが中心であり、1995年にスーパーセンターの出店から始まり、その後地元企業を買収し、現在数100店舗を展開している。アソシエイトは50,000人である。アルゼンチンはまだウォールマート、スーパーセンターは11店舗であり、今後、ブラジルを基点に南米の各国へ展開してゆくことになるものと思う。

  このように、ウォールマートインターナショナルはメキシコ、カナダの北米、ブラジル、アルゼンチン他南米、ドイツ、イギリスのヨーロッパ、そして、日本、中国、韓国のアジアの4大拠点を構築しつつあり、海外戦略も着々と進みつつある。そして、これら海外展開においてもスーパーセンターが主力業態になりつつある状況といえ、当面、ウォールマートの戦略はスーパーセンターを全世界に展開することにあるといえよう。

February 24, 2006

ウォールマート!1月の売上高も順調に推移!!

  ウォールマートの1月度の売上速報が2/2に公表された。速い!アメリカは時間の管理の基本が週別管理であり、年間を52週に分け、さらに四半期を13週にわけ、月度は、4週、4週、5週の13週で管理している。日本のように1/31、2/28、3/31という管理や、20日〆という時間概念は基本的にない。今回のウォールマートも1月度であるが、2006/1/1から2006/1/28までの4週間の数字であり、昨年は27日が土曜日であったので1/27までの4週間との比較である。週の初めは日曜日であり、週の終わりは土曜日で管理している。しかも、1/28〆の数字を2/2に公表するのであるから、正味5日間であり、いかに公表が速いかがわかる。現在、日本の食品スーパーマーケットの1月度の売上速報?の集計をしているが、今日現在(2/23)でマルエツとイズミの数字が公表がなされていない状況であり、日本の食品スーパーマーケットの集計がいかに遅いかがわかる。

  さて、ウォールマートの1月度の数字であるが、昨年対比114.5%、累計109.9%で好調な推移である。その中身は、スーパーセンターを含むウォールマートが110.5%、サムズホールセールクラブは110.0%、そして、海外が好調で130.0%であった。この中には、1月から日本の西友も含まれるということであり、西友はこの月から本格的にウォールマートの一角を占めるようになったといえよう。西友の売上は現在約1兆円であるので、ウォールマートの約3%強の売上構成比となる。また、ウォールマートの既存店は102.5%、累計103.4%であり、既存店も好調に推移した。特に、スーパーセンターを含むウォールマートが103.3%で全体を引っ張っており、サムズホールセールクラブは99.2%でわずかに昨年を下回った。
 
  ウォールマートの1月度の売上は約28億ドル(3.2兆円強)、累計約280億ドル(約32兆円強)となった。しかも、この月は69店舗の新店をオープンさせたという。これは1ケ月の新店オープン店舗数としてはウォールマートの歴代最高記録であるという。日本の食品スーパーマーケットは1月、2月はほとんど新店がなかったことと比較すると対照的な新店戦略である。そして、その69店舗の内訳であるが、スーパーセンターが51店舗、サムズホールセールクラブが10店舗、ディスカウントストアが5店舗、そしてネイバーフッドマーケット(食品スーパーマーケット)が3店舗であった。ウォールマートは2005年、スーパーセンターがディスカウントストアの店舗数を抜き、主力業態が完全にスーパーセンターに移ったが、その勢いは止まらず、この1月度も69店舗のうち、51店舗、70%以上の新規出店がスーパーセンターであり、逆にディスカウントストアの新規出店はわずか5店舗であり、今後、ますます、スーパーセンターがウォールマートの主力業態の地位を固めてゆくことになろう。

  ちなみに、1/5に発表された前月、すなわち、12月度(12/30)までの5週間の売上は昨対106.3%、48週の累計109.5%、既存店の売上昨対は103.2%、48週の累計は103.5%であった。12月度もけっして悪くは無いが、この1月の最新の数字が際立ってよかたったことがわかる。1月は4週間の集計、12月は5週間の集計であり、4週、4週、5週の管理で集計されていることがわかる。

  ウォールマートの2/23現在の株価は45.66ドルであり、1月の売上速報を受けた2月のはじめはやや株価を上げたが、今年に入ってからは46ドル付近でもみ合いが続いている。ハリケーンのカトリーナの時が40ドル付近まで落ち込んだのが、ここ数年では最安値であったが、その後は値を上げ、50ドルを越えた。そして、12月中旬頃からやや値を下げ、1月に入ってからは、現在の46ドル付近で推移している。

  当面、ウォールマートの成長はスーパーセンターが絶好調であり、今年も続くものと思う。さらに、徐々にではあるがネイバーフッドマーケットも出店を増やしはじめており、将来は食品スーパーマーケットに大きくシフトする時期も来る可能性も高く、これが軌道に乗れば、海外戦略と合わせ、あと10年は成長可能な戦略が着々と築かれつつあるといえよう。

February 23, 2006

吉野家、既存店の客単価アップにより売上回復基調!

   2/22の日経MJに外食産業30社の1月度の売上速報が掲載された。それによると、既存店売上高では21社が昨年売上を下回る厳しい状況であった。特に、客数が昨年を上回った企業はわずか5社であり、逆に、客単価は大半の企業がわずかではあるが昨年をクリアーしている。外食産業においては、既存店の客数が全体として伸び悩んでいる状況といえる。このような中で、既存店の客数を最も伸ばした企業は日本マクドナルドであり、客数の昨対は106.9%である。残念ながら、客単価が91.4%となってしまったため、売上は昨年を下回ってしまった。売上は客数だけで伸ばしてゆくには限界があり、やはり客単価の改善が大前提である。

  このような厳しい状況の中で、吉野家の数字は際立った特徴がある。日本マクドナルドとは全く逆のパターンであり、既存店の客数はややダウンしたが、客単価を大きく引き上げ、既存店の売上をアップさせた。吉野家の既存店の売上は103.6%であり、客数98.2%、客単価105.4%である。全店の売上も103.7%であり、BSE以降、低迷していた数字が回復しはじめたといえよう。もちろん、吉野家の昨年1月度の数字は昨対75.1%であったので、今期103.6%では一昨年の80%弱であるので、BSE以前の数字とはまだ大きく離れているが、業績が回復し始めた傾向はみてとれる。

  ちなみに、昨年1月の既存店の売上が75.1%となった時の客数は68.1%、客単価は114.7%であった。吉野屋の牛丼の熱烈な顧客が約30%以上いたことになり、主力商品の欠品は客数ダウンにダイレクトに響くことが実証された数字といえよう。ただ、この時でも吉野家は客単価を114.7%に引き上げており、牛丼以外のメニュー開発によって、客数のダウンを客単価でカバーしようとする戦略が明確である。今年もほぼ同様の傾向であり、客単価はさらに105.4%、昨年の114.7%に上乗せしている。吉野家は、BSE以降、客単価アップ戦略に全力で取組んできた企業である。

  では、吉野家の直近の決算数値を確認してみたい。直近の決算は12/28に発表された第3四半期決算である。それによると、売上104.8%、営業利益15.5億円と昨年は赤字決算だったので、黒字に転換した。経常利益も昨年の赤字が、今期は12.5億円の黒字となり、増収総益であった。残念ながら純利益は京樽の厚生年金の返上があり、5.2億円のマイナスとなった。したがって、1月の既存店の回復は売上だけでなく、収益もともなった回復であり、牛丼なき吉野家が牛丼以外の商品開発による客単価アップにより、売上、利益ともに回復基調に入ったといえよう。これで、牛丼が復活すれば、間違いなく経営は改善するものと思われるが、アメリカの状況を見る限り、輸入再開はまだ先になりそうであり、回復基調とはいえ、厳しい状況は当面続きそうである。

  では、吉野家が前期の赤字から、黒字に転換したポイントはどこにあったかを決算書でみてみると、粗利が前期59.3%から、今期は62.0%と1.7ポイント改善している。これは原価が40.7%から38.0%に改善されたことが大きい。また販売管理費も前期は61.7%であったが、今期は60.3%と1.4ポイント削減されており、経費削減を徹底したものと思われる。これにより、前期は営業利益が-2.4%であった赤字が、今期は1.7%の黒字となり、収益が黒字転換したことになる。

  吉野家の現在の株価は2/22現在、183,000円である。今年のはじめには220,000円前後であった株価が徐々にさがりはじめ、アメリカの牛肉の再開ストップ以降一時大きく値をさげたが、いまは180,000円強で推移している。

  このように、非常に厳しい経営環境の中で、吉野家が主力の牛丼なしに、既存店の客単価アップに成功し、売上を回復基調にのせ、さらに、収益まで改善したことは注目に値する。改めて、既存店の客単価アップの重要性を吉野家が示しているといえよう。

February 22, 2006

山崎製パンにみるパンの現状!

  パンは食品スーパーマーケットにおいて最近重要な商品として育ちつつある。管理部門としては日配に属し、主力商品群は食パン、菓子パン、和・洋菓子に大きく分かれる。客単価は100円近くあり、PI値は50%を優に越える。その中でも客単価の最も高い商品群は菓子パンであり、40円近くあり、ついで食パン30円、その他30円というところであろう。したがって、パンの強化のポイントは菓子パンにあり、ついで食パンの強化がポイントとなる。

  さて、2/21、山崎製パンが決算短信を公表した。それによると、売上7375億円(100%)、営業利益141億円(70.56%)、経常利益158億円(78.8%)、当期利益61億円(75.8%)であった。売上は昨年並みであったが、営業利益、経常利益ともに昨年を大きく下回り、厳しい決算内容であった。特に、食パン、菓子パンの伸び悩みに加え、売上の約8%を占めるコンビニエンス事業が営業損失となり、約3億円強の赤字になったことが大きかった。

  ちなみに、山崎製パンの現在の株価は2/21現在、874円である。昨年12月は950円前後で推移していたが、今年に入り徐々に値を下げている。PBRは0.92倍、ROE3.03%、PER31.63倍、時価総額1925億円である。PBRが1.0倍を切り、厳しい経営状況といえる。早急に資産価値を引き上げるために、ROEの改善が急務であり、そのためには収益率の高い菓子パン、食パンが鍵を握っているといえよう。

  さて、その菓子パン、食パンを含む食品事業の現状であるが、総売上は6782億円と全売上の92%を占め、営業利益も今期138億円を稼ぎ出している。全体の営業利益が141億円であるので、利益のほぼ100%が食品事業であるといえる。その中でも菓子パンは2755億円(100.6%)の売上であり、食品事業の40.6%を占め、トップの売上である。

  一方、食パンの売上は879億円(98.5%)で食品事業の12.9%を占める。ここからもわかるように、いかに菓子パンのウェートが大きいかがわかる。また、菓子パンの比率はほぼ食品スーパーマーケットの比率であるが、食パンは若干低めであることから、菓子パンでは山崎製パンのシェアは高いが、食パンではシェアが充分に取りきれていないといえよう。

  その他の商品では食パンを上回る商品群があり、調理パン・米飯である。売上が990億円(99.5%)で食品事業の14.5%で、わずかに食パンを上回っている。ついで、洋菓子であり、売上732億円(98.2%)で食品事業の10.7%である。そして、和菓子が続き、売上651億円(100.4%)で食品事業の9.5%を占める。最後はその他菓子等であるが、売上772億円(100.8%)であり、食品事業の11.3%である。

  このように、山崎製パンの主力事業は食品事業の40.6%、全社の売上の37.3%を占める菓子パンであり、菓子パンが現在の山崎製パンを引っ張り、かつ、支えている商品群であるといえる。

  実際、山崎製パンの菓子パンにはPI値の高い商品が目白押しであり、高いものだと優にPI値1%を越える商品がある。主な商品はナイススティック、高級つぶあん、コッペパンのジャム&マーガリン、チョココロネ、女峰ジャム&マーガリン、小倉&マーガリン、薄皮つぶあんぱん、ミニスナックゴールド、ホワイトデニッシュショコラ、カレーパン、まるごとソーセージ等であり、他社がなかなか追随できない商品である。またこれに加え、菓子パンのマーチャンダイジングの最大のポイントは品揃えをどこまで拡大できるかであるが、山崎製パンの新商品開発力には定評がある。

  食品スーパーマーケットでもパンの決め手は菓子パンのマーチャンダイジングが鍵を握り始めた現在、山崎製パンとしても、再度、企業の根幹の菓子パンの再構築が今後の業績改善の鍵を握っているといえよう。

February 21, 2006

原信、第3四半期決算、増収増益!!

  原信の第3四半期決算数字が2/1、発表された。それによると、売上106.9%、営業利益115.3%、経常利益105.3%、当期利益91.6%と経常利益ベースでは増収増益であった。当期利益が若干下がった理由は、子会社化した企業の株式売買による税金支払い等であり、今期最終決算の当期利益は増収の予定である。今回の第3四半期決算においては、特に、決算時期が4/1から12/31までの数字であるので、新潟の厳しい積雪、PLANT、ベイシア、ウオロクをはじめ地元食品スーパーマーケットとの激しい競合状況の中での増収総益であり、原信の強さを改めて実証した数字といえよう。

  この4月からはナルスとの合併による原信ナルスホールディングになり、原信としては最後の決算であり、今期は好決算が期待できそうである。現時点での今期予想も売上高756億円(103.4%)、営業利益27億円(118.5%)、純利益14億円(147.8%)であり、増収大幅増益の予想である。

  この第3四半期の好決算を支えた原信の営業数字であるが、最も注目すべきは既存店の売上高が昨年対比で105.9%になったことである。特に、既存店の客数が105.5%、客単価もわずかながらであるが100.4%アップしたことである。特に、平均単価は96.3%とややダウンしたが、PI値が104.1%とアップし、客単価をアップさせたことは、顧客からの強い支持を既存店が勝ち得たということであり、食品スーパーマーケットとしては注目すべき数字である。現在、多くの食品スーパーマーケットが既存店の売上、客数、客単価が昨年を上回れない状況である中、原信の経営理念である「判断基準はお客さま」がまさに実現された数字といえよう。

  原信のこの営業数値の強さのポイントは青果、惣菜、グロサリーの強さにある。一般の食品スーパーマーケットと比べ、生鮮・惣菜では青果と惣菜の構成比にウェートがおかれており、青果11.7%、惣菜10.9%(インストアベイカリー含む)であり、精肉の10.2%、鮮魚の9.5%を越え、この2部門が店舗全体をリードいている部門となっている。特に、惣菜の10.9%は通常の食品スーパーマーケットが約8%ぐらいである点を考えると、ヤオコーの12.9%、ヨークベニマルの13.5%には及ばないが、かなり高い数字である。また、グロサリーも他の食品スーパーマーケットと比べた場合はそれほど高いとはいえないが、全体の構成比の中では高めの、26.2%である。この3部門が原信の営業力の強さとなり、既存店の数字改善につながったといえよう。

  これらを踏まえ、原信の第3四半期の粗利率は28.4%であり、第1四半期の27.3%、第2四半期の27.1%と比べ粗利率が改善されてきている。また、販売管理費についても、第1四半期の23.7%、第2四半期の24.1%に比べ第3四半期は23.0%と下がっている。したがって、営業利益は第1四半期3.6%、第2四半期3.0%であったが、第3四半期は大きく改善し5.4%となった。着実に第3四半期の数字が改善されており、食品スーパーマーケットとしては理想的な営業数値といえる。

  残念ながら、これだけの経営数値であるにもかかわらず、2/20現在の株価は1630円であり、昨年12月には1900円前後の株価が1月に入りやや値を下げ2月以降1600円~1700円で推移している。PBR1.85倍、ROE6.44%、PER23.6倍、時価総額284億円であり、特に、PER23.6倍は食品スーパーマーケットの平均と比べてもやや低めであり、現在株価1630円は低めの評価といえよう。

February 20, 2006

食品スーパーマーケット!新店情報!!(2006/1,2)

 今年に入って、ようやく、食品スーパーマーケットの新店がオープンしはじめた。昨年は勢いのあったスーパーセンターの出店も、今期はまだ出店がなく、ベイシア、PLANT、イズミ、バロー、オオクワ等についての動きは現段階ではない。また、食品スーパーマーケットにおけるスーパーセンターの対抗業態であるNSCについても、今期はまだ数店であり、本格的な新店は春以降となろう。ただし、NSCについては、新しい動きがあり、本ブログでも取り上げたエコスが医療モールを融合させた新タイプの開発に取組む一方、ヨークベニマルがNSC開発プロジェクトを開発室内に新設するなど、今後の食品スーパーマーケットの主力業態の地位が各社で確立されつつある状況といえよう。

  さて、まだ、今期、数少ないNSCの新店であるが、カスミが2/13に千葉県銚子市にNSCの南小川店をオープンさせた。スーパードラックストアのカワチ薬品を併設してのNSCであり、店舗面積も約700坪、年商18億円を目指すという。商圏もNSCだけあって、車で10分、半径3kmを目指し、駐車場も約500台という。カスミにとっては、119店舗目の店舗であり、今後、NSCを核に茨城だけでなく、千葉、埼玉へと出店エリアを広げてゆくものと思う。すでに、千葉県には17店舗、埼玉県にも16店舗を出店しており、茨城県につぐサブドミナント地区となりつつある。

  食品スーパーマーケットについては、この時期においては、まだ、数社の新規オープンあった。1/24、ヤオコーが84店舗目の店舗となる上福岡駒林店を埼玉県ふじみ野市にオープンさせた。店舗面積約600坪で、年商約17億円の目標である。

  同じく、1/24には大黒天物産がラ・ムー南茨木店を大阪府茨木市にオープンさせた。ラ・ムーとしては8店舗目となる。さらに、2/7にもラ・ムー9店舗目の泉南店を大阪府泉南市にオープンさせ、これで全店では28店舗となった。どちらも、24時間オープンである。

  1/28にはサミットが千歳台店を東京都世田谷区にオープンさせた。売場面積約300坪、年商約14億円の目標であり、サミットとしては78店舗目の店舗である。半径1kmに商圏を絞り、来店頻度の高い都市型食品スーパーマーケットを目指すという。そのため、特に青果の品揃えの強化に加え、デイリーの個食対応等小商圏強化型の店舗である。

  1/27にはマックスバリュ富士宮宮原店が静岡県富士宮市にオープンした。売場面積約600坪、年商約20億円目標の店舗であり、24時間オープンである。マックスバリュ東海52店舗目の店舗である。この店舗は敷地面積を有効利用するため、1階を駐車場としたピロティタイプの店舗であり、雨でも買い物しやすく、夜間でも安心できるような配慮がなされているという。

  そして、現在、日本の食品スーパーマーケットの中で最多の新店を出店しているSHOP99は1月、2月とも順調に出店を続け、1月11店舗、2月も既に7店舗が新規出店している。2月の新店は、2/9に東京都江東区に住吉駅前店、2/10に大阪府茨城市に茨城玉櫛店、同じく2/10に愛知県名古屋市に如意店、同じく東京都立川市に立川錦町店、2/16に東京都大田区に蒲田西口店、2/17に大阪府堺市に堺向陵中町店、2/18に東京都足立区に足立大谷田店をオープンさせている。SHOP99はこのように現在、東京、大阪、名古屋の3地区を出店重点地区としており、この3地区でのドミナント展開に力を入れている。

  このように、この1月、2月の食品スーパーマーケットの新店はまだ少なく、春から夏にかけて新規出店が増えてくるものと思う。また、今年は、各食品スーパーマーケット企業がNSCに力を入れており、各社のNSC新店が今期の注目店舗となろう。

February 19, 2006

西友、2005年12月度の決算を発表(2/17)

  西友の2/17の株価が急落した。前日比35円(-12.73%)安の240円で引けた。この日は西友の2005年12月度の決算発表があり、売上高9,971億円(-3.3%)、営業利益12億円(-87.3%)、経常利益-61億円、当期利益-177億円であり、減収大幅減益となった。株価はこの結果をダイレクトに反映したといえる。西友の株価は1/17に年初来高値の397円をつけて以来、徐々に値を下げ、一時、上昇に転じたが、2月に入り、また、下降線を辿り、2/17の決算発表まで株価を下げ続けていた。

  大幅減収になった主な原因を西友は、値替による差益率の悪化であると分析している。値替えとは販売価格を強化するための割引価格への変更のことであり、これが定番価格とのバランスが崩れ、粗利コントロールがうまくゆかなかったということであろう。また、もうひとつの原因として、大型プロモーション、特に「大創業祭」にともなう販売管理費が予想以上に増加したことによるという。

  実際のP/Lでこの事実を見てみると、粗利率は、売上総利益で見る限り、昨年24.6%、今年も24.6%であり、粗利率の悪化はない。むしろ、これに不動産収入等の営業収入を加えた営業総利益は28.1%から28.4%へと上昇しており、粗利率はわずかであるが、改善している。したがって、数字からは西友が指摘しているほど、値替えによる差益率の悪化は見られないが、部門によってははそのようなことがあったのかもしれない。一方、販売管理費であるが、これは昨年が27.2%、今年が28.2%と1ポイント上昇した。この1ポイントの上昇分がほぼ粗利率とイコールになり、営業利益がほぼ0になった。そのため、昨年とほぼ同じ雑損失約100億円をカバーできなくなり、経常利益が-61億円になったといえる。したがって、昨年との違いは販売管理費の上昇分1%であり、これが、今期に関しては収益悪化の最大の原因であったといえよう。

  西友は来期、既存店約65店舗の改装を最重点課題としており、これが成功すれば、販売管理費の固定費が相対的に下がり、販売管理費比率は今期よりも下がる可能性があり、来期予想の経常利益0%は可能な数値ではあろう。ただし、来期からは減損会計が適用されるため、特別損失の450億円をカバーすることは難しい。今後、西友がさらに利益を出してゆくには、もう一歩踏み込んだ既存店の活性化に加え、採算の合わない店舗の閉鎖、収益構造の高い新規業態であるスーパーセンターの大量出店による業態転換が必要と思われる。本家のウォールマートは10年かけて、ディスカウントストアを主力業態とした企業から、スーパーセンターを主力業態にした企業への劇的な転換を遂げた。西友も今期から5年で劇的な業態転換を行うことが急務といえよう。

  今期から、西友の経営陣も一新され、11人の取締役の内、6人がウォールマートからの取締役である。これまでよりは意志決定が格段に早まることとなろう。また、その総指揮をとるCEOのカレジェッスキー氏はウォールマートの食品スーパーマーケットを立ち上げた実績をもっており、食品スーパーマーケットに関しては専門家である。また、既存店改装プロジェクトの「新ビジネス開発プロジェクト」とそれを補完する「地域MD活性化プロジェクト」も立ち上がる。前者はウォールマート側から、後者は西友側から人選されるという。さらに、新たにサプライチェーン総括本部も設置し、ウォールマートから専門家が派遣され、商品本部もウォールマートインターナショナルのトップが就任するという。今期の西友は完全にウォールマートが経営、営業の主導権を握ってのスタートであり、ウォールマートが今後、日本市場で成功するか否かの真価が問われる1年となろう。

February 18, 2006

医療モール併設型NSCをエコスが展開!

  日経新聞2/17に、「医療モールを併設、エコスが小型SC展開」という記事が載った。いよいよ、NSCも新たな段階に入り、これまでの、ドラックストア、ホームセンター、カジュアルウェア、100円ショップ等との併設に加え、医療モールも加わる時代にはいったといえる。

  記事では、エコスが今期出店するNSC5店舗の大半に医療モールが併設されるという。医療モールを展開するのは、これまで独自に医療モールを展開してきたアイロムであり、今回、エコスと業務提携することが決まった。アイロムは東証1部上場企業であり、医療機関への様々なサポート業務に加え、もうひとつの事業の柱が複合型医療施設をつくり、クリニック開業へのサポート事業である。

  両者の業務提携は2/17、ホームページで公開されたが、それによると、エコスとアイロムの提携内容は4つの柱からなっている。1つ目はエコスの展開する店舗内または隣接地でのクリニックモールの開設である。今後、新店だけでなく、既存店についても、地域ニーズに応じてクリニックモールを開設するという。

  2つ目はエコスの展開する店舗内または隣接地でのドラックストアまたは薬局の誘致・開設である。アイロムには都内に38店舗のドラックスストアを運営する子会社もあり、ここが中心となってドラックストアの出店ノウハウの提供や薬剤師の派遣を行うという。

  3つ目はオーガニック商材・特定保健用食品・健康食品等、PB食品の共同開発及び販売を行うという。まさに、医食同根が実現されることになり、今後、エコスの商品構成の中に、オーガニック商品や健康食品がPBとして品揃えされることになる。

  そして、4つ目が販売ネットワークの相互利用である。これはアイロムグループのドラックストアとエコスの展開する店舗を相互に活用し、両者が保管しあいながら販売ネットワークの拡大を図ってゆくという。

  以上、4つが業務提携の具体的な内容であり、今後、NSCへの医療モールの出店だけでなく、オーガニック商品や健康食品の共同開発も含まれており、食品スーパーマーケット業界として、はじめての本格的な医療のノウハウの導入となる。

  アイロムについては、食品スーパーマーケット業界とは、これまで接点があまりなく、ほとんど知られていなかった企業である。そこで、平成18年3月期の第3四半期決算をもとに企業概要をみてみたい。売上は71.81億円であり、昨年対比171.7%の急成長である。昨年3月の通期の売上が57.73億円であるので、この時点で昨年通期の売上を越えている。経常利益は1.43億円であり、昨年対比-63.7%であり、大幅増収、大幅減益であった。大幅減益になった理由は、M&Aを積極的に展開したため、予想以上の費用がかっかってしまったことに加え、SMO事業(治験のサポート)を早期に全国展開し、販売管理費等がかかりすぎ、収益改善が遅れたためという。アイロムは現在4つの事業の柱があり、SMO(治験のサポート)事業約17億円、医療モールを展開するメディカルサポート事業約4億円強、人材コンサルティング事業約4億円、医薬品等の販売事業約35億円である。

  今後、エコスに限らず、このような医療分野と食品スーパーマーケットの融合はますます密接になり、小売業同士だけのNSCから、異業種を加えた、様々なNSCが全国で展開されてくるものと思う。

February 17, 2006

仮説づくりの難しさ!!

  先日、まだ雪深い東北の食品スーパーマーケットで、PI値にもとづく仮説づくりに挑戦した。この日は久しぶりに暖かい日であり、街中に高く積もった雪も大分とけはじめていた。この地区は日本でも有数の激戦地区であり、イオンのスーパーセンター、地元スーパーセンター、イオンの24時間マックスバリュ、地元SSM、さらに地元食品スーパーマーケット数店舗が乱立している状況である。当然、これら競合店舗と直接、間接に影響を受けるため、バイヤー、店長も必死である。

  そのような中で、今回、取組んだ商品は、日配、鮮魚、精肉、惣菜、青果から重点商品を数品選定し、バイヤー、店長双方が討論しながら、仮説づくりに取組んだ。タイミングよく、3月の食品商業の最新号に発注マネジメント特集が組まれているが、まさに、仮説にもとづく発注数量の確定が最大のポイントである。

  今回仮説づくりに使用したデータは3つである。ひとつ目は先週の客数、重点商品の販売数量、PI値、2つ目は過去4週間の重点商品の販売数量、PI値、そして、3つ目が全店の過去1ケ月間の重点商品のMD評価表である。この3つのデータを参考に来週1週間の発注数量を仮説にもとづき確定した。発注数量確定にあたって最も時間をかけ、気をつけたポイントは来週の週間予想PI値である。ここに最大の時間をかけ、充分に議論した。そして、そのために、各重点商品の全店の平均PI値、取組む店舗の先週の平均PI値、最高PI値、最低PI値を考慮し、予想される販売状況に応じて来週の週間平均PI値を算出した。

  そして、慎重に決めた週間平均PI値にもとづき、来週の販売状況を検討し、1週間の各曜日別のPI値を決め、店長が予想する曜日別客数に掛け合わせて、発注数量を確定していった。当初はかなりの時間がかかったが、慣れると、1つの商品が数10秒でできるようになり、各部門の重点商品の仮説にもとづく発注数量の確定が30分以内にできるようになった。従来、この企業では、発注は当然、現場が忙しい作業の中で締め切り時間に追われながら、ぎりぎりの中で行われていた。しかも、重点商品もその他の商品も一緒に発注数量を決めざるをえず、毎日、ほとんど7個づつの発注が繰りかえされるなど、結果として欠品、過剰在庫が頻繁に発生していた状況といえる。今回、このように、とりあえず、重点商品だけは週間発注数量案を本部が立案し、現場が修正するだけでよいという流れをつくったことにより、少なくとも、これまでのように、とりあえず重点商品に関しは欠品、過剰在庫は改善されるものと思う。まず、この流れを時間をかけてもしっかり確立し、次へつなげてゆければと思う。

  さて、ほぼ、今回、このような仕組みがこの企業においては動きはじめたわけだが、この仕組みづくりで、最も課題になったことはバイヤー、店長の仮説に関する思考方法であった。バイヤーも店長も現場上がりであるため、どうしても、仮説を立てる際、自らの経験に縛られ、その思考方法がぬけず、先週の数字にとらわれてしまい、先週の数字+αの発注数量をまず考え、それに天候、時間、ちらし、現場の状況等を考慮し、きめ細かな予測をしようとしてしまう。これでは、先週の数字を越えることは難しく、また、時間がどんなにあっても発注数量がなかなか決まりにくい。

  仮説とは自分の経験から導くのではなく、実はひらめきが最も重要な要素であり、自分の経験よりも他人の経験である全店の数字の方がはるかに重要な数字である。また、先週の数字よりは過去数週間の数字の方がより重要な重みをもつ。したがって、仮説づくりの最大のポイントは一旦自分の経験を捨て、全店および過去数週間のデータを睨み、そこからひらめきに応じて来週のPI値を独断で確定することである。そして、そのひらめきによって得られたPI値を再度、先週のデータと照合し、来週の数値を予測し、あとは、様々な状況を考慮し、数値を確定すればよい。

  今回、あらためて仮説づくりのポイントは、ものごとの本質的な考え方にその答えがあることがわかった。自らの経験にもとづく仮説をつくっていては、いつまでたっても自分を越えることはできない。自分を越えるには、過去最高の数字を踏まえ、全店最高の数字を目指した時にはじめて越えることができるのである。

February 16, 2006

PLANT依然として厳しい業績が続く!

  まちづくり3法の改正案「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案」が2/8、国会に提出された。この法案は10,000㎡以上の小売業の新規出店に規制をかける法律であり、PLANT3以上のPLANT4、PLANT5、PLANT6が規制対象となり、PLANTにとっては今後の経営戦略を再考せざるをえない厳しい法案である。

  さて、12/16、PLANTの2005年度9月期の決算広告が発表された。また、この1/20には、2006年度の第1四半期の決算も公表された。それによると、まず、2005年度の決算数字は売上114.8%、経常利益81.7%と増収減益であった。減益になった理由は、粗利率が17.5%と昨年の16.4%と比べ0.9ポイント上昇したにもかかわらず、販売管理費が15.7%から17.1%と大幅に上昇し、この5年間では最高の経費比率となったことによる。経費比率が大幅に上がった理由は新店の出店によるコストの上昇に加え、既存店の伸び率が前期を下回ったためである。

  また、この1/20に公表された第1四半期の数字を見ると、売上は120.7%、営業利益は83.6%、経常利益は99.2%であった。特に、営業利益が83.6%になった要因は、粗利率が0.4%アップの17.4%であったのに対し、販売管理費が0.6%アップし、16.9%となったためである。販売管理費がアップした理由は前期同様、新店の出店にともなう賃借料、減価償却費、消耗品費、広告宣伝費等がアップしたためである。また、財政状況については、短期借入れ金が前期の第1四半期と比べ15億円増加し、長期借入金も24億円増加し、長短借入れ金は約40億円の増加で、合計100億円を越えた。新店が経営に重くのしかかっている構図といえる。現在の売上が約600億円強であるので、100億円の借入れはけっして小さくはない。

  PLANTの12月、1月の売上状況は121.6%、120.2%と好調であるが、既存店が94.6%、95.9%と厳しい状況で推移しており、既存店の変動費はともかく、固定費が5%圧迫され、経費比率がさらにアップする厳しい状況といえる。ただし、客単価の上昇基調がここ数ケ月見えるので、客数の減少が今後の課題といえよう。

  これにともない、PLANTの株価も1000円強で横ばいをつづけている。特に、PBRが1.0倍を割り、0.95倍となり、ROE4.28%、PER22.51倍、時価総額68億円と厳しい状況である。

  今後4/22には福島県にPLANT5の大玉店の開業が控えており、売上は順調に推移するものといえるが、収益性が低いために借入れで出店せざるをえず、財務がさらに悪化する可能性があり、財務改善が急務の状況である。そして、そのためにも、既存店の回復が大きな課題である。

  まちづくり3法の今国会で改正案が成立すれば、来年から法案が施行され、5年間は見直さない方針という。PLANTにとっては大変厳しい法案といえ、現在の売上をささえている新規出店が今後5年間抑制される可能性が高く、既存店の底上げが今期最大の課題といえよう。

February 15, 2006

菱食に見る食品卸売業の現状!!

  日本の食品スーパーマーケットに大きくかかわっている食品卸売業の年商5000億円以上の企業は6社である。No.1が国分の約1兆3000億円、No.2が菱食の約1兆2000億円、No.3が日本アクセスの約8000億円、No.4伊藤忠食品、No.5三井食品、No.6加藤産業で、この3社はほぼ5000億円という年商である。この内、No.1の国分、No.3の日本アクセス、No.5の三井食品は非上場である。

  そこで、ここでは食品スーパーマーケットと特に関係の深い菱食について、その現状を菱食の最新経営数字である第3四半期の決算数字でみてみたい。菱食の食品スーパーマーケットの売上構成比は卸売業界の中でも高く、約40%を占め、圧倒的なシェアである。過去3年間の推移も39.6%、40.0%、41.7%と年々少しづつであるが、シェアが拡大している。2番目がコンビニエンスストアで13.0%で、過去3年間の推移は13.3%、13.0%、13.0%とほぼ横倍である。そして、3番目がGMSであり、8.8%である。そして、シェアは小さいが、ドラックストアが過去3年間3.5%、3.7%、4.3%と伸びているのが現状である。このように、菱食の経営の根幹は食品スーパーマーケットとの取引といってよく、年商1兆2000億円の約40%、約5000億円の取り引きである。

  一方、菱食の主力商品群を見てみると、No.1が酒類であり、25.1%を占める。過去、3年間は28.3%、25.8%、25.1%であるので、ほぼ横ばいである。No.2は冷凍・チルドであり、21.1%である。この冷凍・チルドについては3年前は9.7%であったが、昨年21.1%、そして、今年21.4%と昨年から急激に数字を伸ばした商品群である。今後、菱食は冷凍・チルドにも力を入れてゆくことになろう。そして、No.3が嗜好品・飲料類であり、17.5%であり、No.4が調味料で14.2%、No.5が麺・乾物で10.5%となる。この5つで、全体の90%越える。

  食品スーパーマーケットのシェアが約40%であるが、取り扱いシェアを見ても、食品スーパーマーケットでいう加工食品にあたる嗜好品・飲料類の17.5%、調味料類の14.2%、麺・乾物類の10.5%を合計すると42.2%となり、食品スーパーマーケットの加工食品への卸売業が経営の柱といえる。ついで、冷凍・チルドの、酒、菓子が続き、いわゆる、食品スーパーマーケットのレイアウトの外周の生鮮に対して、内側の雑貨を除く、すべての商品群に対応した、食品スーパーマーケットの売上の約50%を菱食の取り扱い商品でまかなえることになる。

  このような食品スーパーマーケットへの卸売業を経営の根幹にすえた菱食の最新の経営数値を直近の第3四半期決算で見てみると、売上は101.1%、営業利益105.9%、経常利益105.4%、純利益107.1%で、増収増益である。また、通期も増収増益予想であり、2005年12月期は好決算が期待できそうである。菱食は卸売業であるので、食品スーパーマーケットとは経営構造が大きく違い、売上が1兆円を越えるが、粗利率は8%、販売管理費率は7.5%、営業利益率は0.5%という文字通り薄利多売の世界である。また、菱食の直近の株価の推移を見てみてみると、ここ数年ほぼ株価は横ばいであり、この数ヶ月は3300円前後で推移している。ちなみに、菱食のPBRは2.33倍、ROEは8.22%、PERは22.8倍、時価総額1342億円である。

February 14, 2006

サミットに見る販売促進の実情!!

  以前からサミットの販売促進にはユニークな取組みが多く、しかも、顧客の購買行動を的確にとらえた企画がタイミングよく打ち出されるのが特徴である。特に、最近ではポイントカードの活用も定着し、販売促進の幅が広がったといえよう。

  サミットの最新のちらしは、2/11(土)から2/14(火)の4日間のちらしであり、まさに今、このちらしにもとづく販売促進が実践されている最中である。特に今回のちらしは、1/28に新規オープンした千歳台店のオープンセール第5弾も兼ねており、通常のちらしよりも、力の入った内容となっている。

  サミット千歳台店は店舗面積が約300坪と小さめであるが、住宅の密集した団地商圏であり、女性店長を中心に小商圏対応型のきめ細かいマーチャンダイジングを実践する店舗を目指すという。青果ではトマトで特に差別化をはかり、品揃えも374SKU揃えるという充実ぶりであり、卵の4個、6個入り、食パンの2枚、3枚入り等の小パックを充実させたり、子供菓子として駄菓子を品揃えするなど、商圏状況に応じたマーチャンダイジングが展開されるという。年商は13.8億円の予定であり、この千歳台店のオープンでサミットは78店舗となる。

  さて、そのちらしであるが、2/11(土)、2/12(日)はいちご298円、ほうれん草98円を筆頭に、刺身7点盛980円、うなぎ蒲焼き298円。牛サーロインステーキ半額、焼肉盛合せ1380円と土、日の週末とあって、付加価値の高い生鮮の価格訴求がメインである。グロサリーの日替わりはどんべい、UFOが68円、純正こうじみそ168円、明治乳業フェアでチーズ関係が168円と絞っている。また、2/11は自慢の菓子が全品1割引、2/12はパンが全品1割引となる。ちなみに、菓子の全品1割引は毎月第2、第4土曜日に、パンの全品1割引きは毎月12日に定期的に実施されるという。さらに、裏面では期間通して、生鮮3品と日配は各4品、惣菜は5品、グロサリーは9品、日雑が5品掲載され、それ以外に、旨さ太鼓判という企画で黒毛和牛、明太子など10品以上が特集されるという内容である。

  また、2/13(月)は平日であるので、店舗の最重点商品であるトマト1個58円を筆頭に、みかん298円、国産豚かた切り落とし98円、さんま大1尾58円の生鮮に加え、まるちゃん焼きそば98円をはじめ日配、グロサリーが数品訴求される。そして、最終日の2/14(火)は生キングサーモン198円、生しいたけ128円、オーストラリア産ステーキ用ブロック100g98円の生鮮に加え、ロールパン118円とグロサリー数品が訴求されるというちらしである。さらに、このちらしに加え、ポイントカード販促も併用し、千歳台店に関しては毎週土曜日はポイント5倍、毎週日曜日は9時から13時までポイント5倍で時間帯でのポイント販促も活用し、新店を軌道に乗せるべく、販促ミックスがかけられている。

  このように、サミットのちらしは、ポイントカードと併用し、週末に特に焦点を当てたちらしとなっており、週末の客数をいかにアップさせるかが販促の最大のポイントといえよう。そのため、ちらしにはほとんど日配の価格訴求商品が0に近く、以前、本ブログでもとりあげたベイシアのちらしによく似ているちらしである。

  では日配の最重点商品である、牛乳、豆腐等はどのように訴求されているかというと、これら日配の重点商品のほとんどは月金サービスと称して、ちらしには一切掲載せず、売場のみでのEDLP戦略で訴求しているのがサミットの最大の特徴といってもよい。月金サービスでは、冷蔵庫に揃えておくと何かと便利な商品を毎週月曜日と金曜日の2回お買い得価格で訴求するというやり方であり、ここに日配の最重点商品の1Lの牛乳、10個入りの卵、豆腐、納豆、3食やきそばをはじめ、塩干のさけ、たらこ、めんたいこ、精肉のひき肉、ハム・ソーセージが全品割引で訴求される。

  したがって、この月金サービスでPI値の高い商品を訴求し、平日の来店頻度のアップをはかり、週末、土日のちらしで付加価値の高い生鮮の価格訴求を中心に新規顧客の来店を促し、さらにポイントカードで固定客化をはかるという客数アップに焦点を当てた販促ミックスがみごとに組まれている内容である。サミットのちらしは、今後の食品スーパーマーケットの販促を考える上において、改めてちらしの大切さを提起しているといえよう。

February 13, 2006

収益から競争部門に移った日配部門の現状!!

  前回のブログで食品スーパーマーケットにおける今後の日配について述べたが、今回は現状の食品スーパーマーケットにおける日配の現状について見てみたい。日配は現在、食品スーパーマーケットの最重点部門となりつつあり、特に、ここ最近、スーパーセンターが日配を戦略商品に活用しはじめ、いまや、日配の主力商品の価格が劇的に下落するなど、収益面でも大きな課題となってきている。

  ちなみに、スーパーセンター最大手のベイシアの日配の主力商品の価格であるが、豆腐が300g38円、こんにゃく300g58円、油揚げ3枚38円、納豆3連68円、中華麺38円、牛乳1000g148円、ヨーグルト500g138円と通常の食品スーパーマーケットの約50%から30%でEDLPを展開し、さらにそれぞれのカテゴリーは圧倒的といってもよい品揃えである。これが、グロサリーのEDLPと連動してスーパーセンター、ベイシアの競争力を作り出しているといえる。日配はことスーパーセンターにとっては競争力の源泉といってもよく、競合対策、集客商品と位置づけられているといっても過言ではない。

  では、上場食品スーパーマーケットの日配の平均的な売上構成比はどのくらいであろうか。マックスバリュ東海の日配の売上構成比は23.4%で業界では最高水準である。ついで、エコスの22.9%、マルエツの21.1%、ハローの20.3%、オオゼキの19.6%と続く。生鮮、惣菜の強い、ヨークベニマルは20.9%、ヤオコーは19.7%である。また、日配は前回のブログでも商品構成が発展途上であり、各企業がどこまで日配として扱うかが若干違うため、グロサリー部門に通常の日配の商品群を入れている場合、売上構成比は低くなる傾向があると述べた。代表的な企業はベルクであり、ベルクの日配は15.9%で業界の中では極めて低い数字であるが、その分、菓子の売上構成比が13.7%もあり、ここにかなりの日配部門が入っているものと思う。通常の食品スーパーマーケットの菓子は5~7%ぐらいであり、その差を足せば、ベルクの日配も20%は優に越える数字となるからである。

  このように、食品スーパーマーケットの日配の売上構成比は20%~25%ぐらいが平均であり、日配は生鮮食品、グロサリー以上の戦略部門といってもよい商品群といえる。しかも、この日配部門の粗利率もこれまでは高かったため、収益部門でもあった。それがスーパーセンターの出現により、低価格、低粗利の集客部門になりつつある。その意味でも、食品スーパーマーケットにおける日配は戦略的な構造改革に取組む段階に入ったといえよう。

  さて、その日配の具体的な商品群を最新の家計調査月報から見てみたい。最新の家計調査月報の数字は2005年12月が最新であり、若干、年末の異常値が入るので、異常値を抜いた数字で見てみると、1日当りの売上金額(食品スーパーマーケットの客単価に相当)でNo.1部門は牛乳の44.1円である。44.1円は全食品スーパーマーケットのカテゴリーの中でもトップであり、牛乳は食品スーパーマーケットの最重点商品群といえる。ついで、この時期特有のケーキ37.3円、そして、卵25.8円、食パン22.7円、ヨーグルト20.4円と続く。洋日配が多いのが特徴で、和日配では、やはりこの時期特有のかまぼこが20.1円、そして、豆腐が15.9円、生うどんそばが14.1円であり、生うどん・そばの順位は9番目である。最近、一部の食品スーパーマーケットで日配に扱われるようになった、冷凍調理食品は18.1円で7番目、アイスクリームは12.9円でちょうど10番目である。この時期でもアイスクリームの客単価は高いのが特徴である。

  家計調査月報の日配分類の総合計は479.8円となり、食品スーパーマーケットの平均客単価2000円で割るとちょうど24.0%となり、ほぼ食品スーパーマーケットの客単価と一致しているといえ、家計調査月報の数字は実際の食品スーパーマーケットの客単価に近い、実務的に精度の高い数字といえよう。このように、現状の食品スーパーマーケットの日配は、収益部門から集客部門へと大きな転換点にきており、取り扱いの範囲、品揃えの拡大、価格政策の見直し、販売促進政策の強化、新商品開発への取組み、ITの導入によるシステム化への対応(コストダウン)など大変革期を迎えた最重点改善部門となりつつあるといえる。


February 12, 2006

日配は食品スーパーマーケットの将来の中核部門!!

  食品スーパーマーケットにおける日配の位置づけは極めて重い。一般には日配といってもピンとこないと思うが、食品スーパーマーケット業界では日配というと、和日配、洋日配、その他の3つに分かれ、売上の20%~30%を担う中核部門である。日配とは毎日配送される商品からきた呼び名であり、和日配の代表的な商品は豆腐、卵、こんにゃく、納豆、漬け者、麺類、練製品である。練製品は企業によっては鮮魚部門の管轄となることもある。洋日配の主な商品は牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、パンである。そして、その他はアイスクリーム、冷凍食品等であり、これらは企業によってはグロサリー部門の管理となることもある。

  食品スーパーマーケットの商品分類は様々な角度からくくることができるが、商品管理上からくくるのであれば大きく2つに分類することができる。2つとは商品を店内加工して売場に出す商品とメーカーで加工された商品をそのまま売場に出す商品である。前者はいわゆる生鮮、惣菜がこれに当り、後者は日配、グロサリーがこれにあたる。生鮮は農産物、畜産物、水産物の3つに別れ、惣菜は、生鮮を火と水と調味料等を用いて加工する部門である。また、日配とグロサリーの大きな違いは鮮度の差といえ、日配は文字通り、1日か数日しかもたない商品であるのに対し、グロサリーは1ケ月から1年も保存が可能な商品である。ここからも分るように、日配は生鮮、惣菜とグロサリーの真ん中に位置する商品といえ、両極の商品からラインロビングを行い、取り扱い商品を拡大してきた総合部門ともいえる。したがって、食品スーパーマーケットの歴史をたどれば、もとは日配部門そのものが存在していなかった時期があり、いまでも、練製品は鮮魚部門、豆腐、こんにゃく、漬物は青果部門、卵は精肉部門、パン、アイスクリームは菓子部門、冷凍食品は一般食品部門という企業は多い。その意味で、日配は食品スーパーマーケットのあらゆる部門から様々な商品群を吸収し、部門を確立してきた歴史といえる。

  将来的に日配とはどうなってゆくか。大胆に日配の将来像を予測すると、日配部門は商品加工以外のすべての商品群を一手に取り扱い、鮮度により2つの部門(1週間以内で管理する商品と1週間以上で管理する商品)を持ち、ITを駆使し、自動発注と仮説検証の仕組みにもとづくマーチャンダイジングをもとに、顧客とのCRM、メーカーとのSCMを担う食品スーパーマーケットの中核部門になってゆくものと思う。

  現実に生鮮部門で加工と発注商品が混在して商品管理をした場合、必ずといってよいほど、付加価値が高い生鮮の商品加工に重点が置かれ、発注商品の管理が疎かになり、欠品しても気にしない生鮮担当者が多いのが実情である。そこに社長がたまたま視察に来た時には必ずといってよいほど生鮮の担当者がしかられるが、そもそも、商品加工と発注商品をいっしょに管理させる企業の商品管理の仕方に問題があるわけであり、生鮮担当者の責任ではない。生鮮担当者はいかに商品加工技術学び、早く、美しく加工ができ、粗利もしっかりとれる付加価値の高い商品化に時間と労力を注ぐような商品管理体制に専念させるべきであり、発注商品のマーチャンダイジングを考えさせてはいけない。

  この領域は日配部門が責任をもって担うべきであり、そのような組織を食品スーパーマーケットは1日も早く作るべきであろう。残念ながら、この領域はいまや、ドラックストア、ホームセンター等が担い始めており、食品スーパーマーケットの方が、遅れを取り始めたといえる。鮮魚の練り製品はもちろん、塩干の大部分、精肉の加工肉、青果の果物のバナナ、かんきつ類等、野菜のもやし、水煮、カット野菜等は日配が担うべき商品であり、日配部門がパートさんを教育研修し、発注とマーチャンダイジングの技術を身につけさせ、パートさんに担当させた方が、欠品が確実になくなり、数字改善も大きく進むものと思う。

  このように、日配は今後の食品スーパーマーケットの中核を担う中心部門といえ、現状の商品管理体制を大胆に見直し、商品分類の変更とITを駆使し、発注とマーチャンダイジングのスペシャリストを養成する組織づくりに入る時が来たように思う。

February 11, 2006

マックスバリュ東海の富士宮宮原店が深夜0時にオープン!

  食品スーパーマーケットの1月度の新店は例年少ないのが実情ではあるが、今年も主な上場企業の新店はわずかであった。年間で最も新店が多いのが8月前の3ケ月、12月前の3ケ月であり、食品スーパーマーケットにとっては年間最高の客数のお盆と年末前に新店をオープンさせ、いち早く軌道に乗せようという意図があるものと思われる。

  さて、1月の数少ない新店であるが、マックスバリュ東海の富士宮宮原店が1/28の午前0時にオープンした。24時間営業の店であるので、深夜0時オープンであった。今から10年ぐらい前のことであるが、アメリカ西海岸でセイフェイのオープンの日に視察したことがあった。その時、オープン日だというのにさほど店が込んでいず、静かなオープンであったので、店長に何時にオープンしたのかを聞いたら、今日の真夜中0時だということでびっくりしたことがあった。何で真夜中0時なのかと続けて聞いたところ、10時、11時のオープンではお客さまが込み合ってしまい、ご迷惑をかけるので、静かにオープンしたといっていたのを思い出す。日本でも、深夜0時に新店をオープンする時代になったと感慨深い。

  さて、マックスバリュ富士宮宮原店であるが、マックスバリュ東海52店舗目の店舗であり、今期10店舗目である。マックバリュ東海は最新の1月度の売上速報では昨年対比120.4%であり、今期最高の伸び率であった。既存店も102.3%と順調な成長率である。

  前回の食品スーパーマーケット売上速報では、1/27にやっと12月の売上速報が公開され、本ブログの集計には残念ながら入らなかったが、1月の売上速報は何と2月上旬に公開されるという速さであり、IRの改善が大きく図られた。ただ、残念なのは、公開データが売上高、客数、客単価、平均単価、買上点数となっており、本来、客単価=PI値×平均単価であるので、買上点数を公開する意味がどこにあるか疑問である。平均単価×買上点数=売上となってしまうため、買上点数を最後にもってくる公表の仕方はあまり意味がない。売上=客数×客単価までは良いが、客単価=平均単価×買上点数とはならないので違和感がある。ヤオコーの公開データのように、売上=客数×客単価、客単価=平均単価×買上点数(PI値)であれば論理的にすっきりするが、この買上点数の公開の仕方は再検討の余地があろう。

  話をもとにもどすと、マックスバリュ富士宮宮原店は約600坪の店舗であり、年商20億円を目指すという。マックスバリュ東海の強さは青果と日配とグロサリーにあり、この3部門が他の食品スーパーマーケットと比べ極めて強いのが特徴である。まさに、PI値の強い部門が強化されており、お客さまのニーズをよく理解している企業といえよう。それゆえ、買上点数ではなくPI値をもっと勉強すると、さらに強い企業になるものと思う。また、店舗の特徴としては、バラと個食販売にこだわる品揃えが強化されており、週末にはバラと個食に加え、ジャンボパックが強化されるなど、メリハリの効いた売場が展開されるという。さらに、24時間のオペレーションの強みを活かした時間帯別品揃えを実施するなど、きめ細かいマーチャンダイジングも実践されているという。

  ちなみに、マックスバリュ東海のPBRは1.44倍、ROEは12.7%、PERは20倍、時価総額約400億円である。売上約115%、経常利益率も約5%弱と食品スーパーマーケットとしては、すばらしい経営数値である。ただ、PER20倍は食品スーパーマーケット業界平均の約30倍と比べ、低めであり、現状の株価3440円はどうみても低い評価である。今後の、さらなる成長に加え、株価も期待できそうである。

February 10, 2006

既存店活性化が食品スーパーマーケットの当面の課題!!

  2/7の日経に「九九プラス、今期純利益24%減、既存店の低迷長引く」という記事が掲載された。記事の内容は、2006年3月期の九九プラスの連結純利益が前期比24%減の7億円になる見通しであり、その原因として、食品スーパーマーケットが安売りを強化した影響で主婦を中心に来店客が減少したという。大量出店で増収は確保するが、店舗採算が良い既存店売上高の長期低迷が響くということである。また、九九プラスは年末には全店舗の1/5に当たる170店舗を改装したが、想定した売上の回復にはとどいていないもようだという。新規出店に関しては約300店舗の計画で、今期末には800店舗強になる予定という。

  このように、九九プラスは新規大量出店による売上にささえられており、これほどの大量出店にもかかわらず、純利益が24%も減少してしまうのは、既存店の数字が低迷しているからに他ならない。実際、既存店の売上が伸びた場合は経費の変動費は売上に応じてかかるが、固定費がその分かからず、企業全体の収益は改善することになる。逆に、既存店の売上が下がった場合には、固定費が利益を圧迫し、企業全体の収益を悪化させることになる。したがって、小売業の収益確保の最大のテーマは既存店の売上改善であり、そのためには既存店の客単価アップが最大のテーマとなる。

  実際、昨年12月度の九九プラスの既存店売上は95.8%であり、全店は136.7%であるので、非常に厳しい既存店の数字であり、その瞬間に、企業全体の収益性は厳しいものとなってしまう。他の食品スーパーマーケットの既存店の数字に注目してみると、PLANTはさらに厳しい数字であり、94.8%である。PLANTも全店は123.2%であるので、九九プラスとよく似た状況といえる。さらに既存店95%前後の企業を見てみると、カスミが95.4%、ダイイチが96.7%、オリンピックが96.7%、マックスバリュ西日本が97.3%である。これらの企業は全体の数字も100%強であるので、収益的にはかなり厳しい状況にあるといえよう。小売業の場合は収益の数字をみなくとも、既存店の売上数字をみれば大体その企業の収益性がわかってしまう。

  反対に、既存店が105%近くまで回復した食品スーパーマーケットもある。イズミ、ヤマザワの2社がこの12月度は、ほぼ105%弱となり、全体も同様、105%近い数字である。102%から103%の企業はマックスバリュ東海102.7%、バロー102.4%、の2社であり、現状の食品スーパーマーケット業界ではまだまだ既存店の回復まではできていないのが現状といえよう。

  このように、現状の食品スーパーマーケットの既存店が回復基調にある企業はまだまだごく僅かであり、大部分の食品スーパーマーケットは新店により、既存店をカバーし、昨対の売上を支えており、収益性はけっしてよいとはいえない。収益性を改善するためにも、今年の食品スーパーマーケットの大きなテーマは既存店の昨年対比105%以上が急務であろう。ちなみに、食品スーパーマーケット業界で既存店の昨年対比がトップクラスの企業はオーケーストアであり、本部ブログでも触れたが、既存店108.6%で現状走っている。したがって収益性も高く、売上119.9%に対し、経常利益は138.5%であり、まさに、既存店の数字が収益にも大きく跳ね返った結果といえよう。

February 09, 2006

まちづくり3法が閣議決定される!!

  2/6、まちづくり3法が閣議決定された。早ければ、今週、遅くとも今月中には国会に法案が提出される予定である。今回の第164回、通常国会は6/18までの150日間であるので、充分に衆議院、参議院双方で可決される公算が高い。法案が可決されれば、来年からの施行になる予定という。

  閣議決定では、まちづくり3法のうち、中心市街地活性化法と都市計画法のみの改正であり、大規模小売店舗立地法については改正しない方針であるという。また、法案には施行後5年で見直しの必要があるかどうかを検討することも盛り込んだという。したがって、2007年施行で、見直しは2012年になる予定であり、今後、5年間郊外への大型店の規制が続き、逆に、街の中心部は急ピッチで活性化が進むことになろう。
 
  さて、2/4、2/6の本ブログで中心市街地活性化法について解説したので、今回はもうひとつの法律である都市計画法の改正案の骨子が明らかになったので、そのポイントをまとめてみたい。今回の改正案では、都市計画法だけでなく、建築基準法についても一部改正が行われる予定という。

  まず、今回の都市計画法の目的であるが、人口減少、超高齢化社会にふさわしいまちづくりを実現するための法改正であることをうたっている。そして、そのための最大のポイントが大規模集客施設を規制し、地域の判断を反映した適切な立地確保を目指すことにあるという。ここで、大規模集客施設の定義であるが、床面積が1万㎡超(約3,000坪)の店舗、映画館、アミューズメント施設、展示場などのことである。小売業界にとっては、3,000坪以上の店舗ということになり、既存業態ではショッピングセンター、ビックストア、大型スーパーセンター等がこれに該当することになろう。

  改正のポイントは全部で6点である。第1点は市街化区域、用途地域における立地規制である。これは現行法案では原則制限がなかった地域であった第ニ種居住地域、準住居地域、工業地域に規制がかかることになり、これまでの6地域自由から上記3地域が規制されることになる。ほぼ、これまでどおり制限なしの残り3地域は近隣商業地域、商業地域、準工業地域である。

  2点目は非線引き白地地域等における立地規制であり、具体的には非線引き都市計画区域、準都市計画区域の白地では大規模集積施設は原則立地不可となる厳しい規制である。

  3点目はこの1点目、2点目の厳しい規制をやや緩和することがポイントであり、具体的には用途を緩和する地区計画制度を新たに創設し、1点目、2点目で強化される用途地域や非線引き都市計画区域内の白地内に大規模集客施設の立地も認めうる開発整備促進区を設けるというものである。

  4点目は準都市計画区域制度の拡充であり、これにより、農地を含む土地利用の整序が必要な区域等に広く指定できるようにするという。ただし、今後、指定権者は都道府県になるという。

  5点目は都市計画手続きの円滑化と広域調整手続きの充実である。これにより、一定の開発業者が都市計画提案が行い易くなるという。また、広域調整については都道府県知事が市町村の都市計画決定等に対する協議同意を行う際に、関係市町村から意見聴取をできるようにするという。

  6点目は開発許可制度の見直しであり、これまでの大規模開発許可の基準を廃止し、病院、福祉施設、学校、庁舎等の公共公益施設に対しても開発許可の対象とするという。

  このように、今回の都市計画法は1万㎡以上の大規模集客施設の郊外出店を大きく規制するものであり、小売業だけでなく、あらゆる大規模施設の郊外立地に制限が加わるため、中心市街地活性化をめざすための、歯止めとしての強力な郊外規制のための法改正といえる。これにより、特に小売業界はこの法案が来年から施行される予定であり、新規出店戦略、新業態開発戦略を大きく見直さざるをえず、今後の中長期戦略に大きな影響がでるものといえよう。

February 08, 2006

惣菜強化に取り組む食品スーパーマーケットの現状!

  オリジン東秀へのTOBがドン・キホーテとイオンから同時にかかる中、改めて惣菜が注目されつつある。ドン・キホーテは次世代コンビニエンスストア構想の中核部門としてオリジン東秀との新業態を構築し、惣菜で既存のコンビニエンスストアと決定的な差別化をはかる計画であったという。一方、イオンは惣菜強化が現状の課題ととらえ、オリジン東秀を傘下に治めることにより、他社と惣菜での差別化がはかれるものととらえているといえよう。このように、惣菜の強さは、今後の食品を扱う小売業にとっては、業態の如何をとわず、決定的な差別化につながる可能性を秘めた部門であるといえる。
 
  一般的に食品スーパーマーケットの惣菜の構成比は売上対比で8~10%であるのが実情である。たとえば、マルエツは10.0%、エコスは8.6%、マックスバリュ東海は8.6%、ハローは8.4%という数字である。

  では食品スーパーマーケットで惣菜を強化したらどのくらまであがるのだろうか。日本の食品スーパーマーケットの中でも極めて惣菜が強いヤオコーとヨークベニマルの惣菜の売上構成比を見てみると、ヤオコーが12.9%、ヨークベニマルが13.5%であり、この2社がずば抜けて高いことがわかる。特に、ヤオコーは生鮮3品の中で最も売上構成比の高い青果の12.8%を抜き、惣菜が生鮮4品の中ではNo.1部門となった。また、ヨークベニマルは生鮮3品個々の売上構成比を公開してはいないが、生鮮3品の合計が33.8%であるので、恐らく、惣菜が生鮮4品の中ではNo.1の部門であろう。

  このように、惣菜を本当に強化すると青果、鮮魚、精肉よりも売上が高くなることが食品スーパーマーケットでは実証されたといってもよく、ここまで来ると、惣菜が食品スーパーマーケットの差別化の大きなポイントであるといえよう。この2社以外は、まだまだ、12%~13%という、生鮮3品を越える企業は少ないが、ここまで惣菜を伸ばした両企業は惣菜が圧倒的な差別化部門であり、青果と並ぶ集客部門でもある。しかも、惣菜の粗利は、一般惣菜で約40%、寿司で約50%、インストアベイカリーで約50%と粗利も高いため、食品スーパーマーケットの中では圧倒的な収益部門でもある。

  では惣菜の重点商品とは何であるかを、直近の家計調査月報でみてみたい。家計調査月報は1世帯当り1ケ月の数字での消費金額であるので、これを1日当りに換算して、ちょうど食品スーパーマーケットの客単価に近い数字でみてみると、ベスト3は、すし39.6円、弁当37.7円、天ぷら・フライ30.4円であり、いずれも30円を越える超重点商品である。オリジン東秀が弁当と惣菜に特化した業態開発を行い、ここまで急成長した背景にはこの数字の高さがあったといえよう。この3つを合計すると100円を越えるので、2000人/日の食品スーパーマーケットでは、この3部門だけで、1日20万円は越える計算であり、実際、この3部門は食品スーパーマーケットの惣菜の中核部門となっている。この3部門についで高い商品群はおにぎり他10.0円、サラダ8.8円、ぎょうざ6.3円であり、ついで、やきとり5.8円、コロッケ5.2円、うなぎのかば焼き5.1円、カツレツ4.5円、しゅうまい2.8円、ハンバーグ2.6円と続く。実際、食品スーパーマーケットの惣菜売場をみても、これらの商品は天ぷら・揚物の次に配置され、強化されている商品であり、特に、サラダは他の冷惣菜と合わせ、いまや食品スーパーマーケットの最強化部門といえよう。

  これらすべてを合計すると、約150円となり、これに加え、その他の惣菜、インストアベイカリーを入れると200円を優に越え、食品スーパーマーケットの客単価約2000円の10%強となる。このように、食品スーパーマーケットでは惣菜の売上構成比が年々上がっており、ヤオコー、ヨークベニマルに限らず、近い将来、惣菜が生鮮4品のNo.1部門になる可能性は極めて高い超有望商品群であるといえよう。

February 07, 2006

ホームセンター業界の現状!!

  2/3の日経新聞に「ホームセンター攻勢鈍る」という見出しで、来年度の大手の出店計画が減少し、郊外型モデルが転機に入ったという記事が掲載された。特に、現在195店舗を関西地区に展開するコーナン商事はこれまで年間30店舗前後のペースで出店してきたが、2005年度は当初計画の30店舗を下回る20店舗程度であり、さらに2006年は13店舗へ新規出店を減らすという。また、関東を中心に187店舗を展開するケーヨーの来年度の出店計画は2~3店にとどまる見込みという。その他の大手ホームセンターものきなみ出店ペースが鈍る見込みであるという。

  日経の記事ではその原因として、3つの事情があるという。1つはこれまで新規出店戦略中心に急成長をしてきたため、初期の店舗が立替時期に入り、既存店の活性化、場合によってはスクラップ&ビルドをせざるをえない状況にあることである。2つ目は食品スーパーマーケットを中心にNSC(ネバーフッドショッピングセンター:近隣対応型SC)に消費者の人気が移り、ワンストップショッピングを満たせないホームセンターに陰りが見え始めたことである。3つ目はまちづくり3法の改正案の動きに見られるがごとく、中心市街地活性化が今後の小売業界の重要テーマとなる中、都市部へのホームセンターの展開に乗り遅れていることである。これら3つの要因により、日経の記事ではホームセターの攻勢がにぶり始めたという内容である。

  実際、小売業界の中でもホームセンター業界の上場企業は約20社であり、食品スーパーマーケットの約50社、ドラックストアの約30社と比べても少なく、寡占化された業態となっているのが現状である。しかも、この20社が好業績企業と経営悪化企業に2極化しているのが特徴である。今年9月にはDCMジャパンホールディングスとして、経営統合する予定のカーマ、ダイキ、ホーマックのように業績のよい企業通しの統合や、7&IホルディングスがホームセンターをM&Aするという報道もなされるなど、ホームセンター業界は大きな転機に入ったといえよう。

  では、ホームセンター業界で業績のよい企業について見てみたい。売上高が約110%で伸びている企業は、ハンズマン(113.8%)、クロガネヤ(113.3%)、コーナン商事(113.2%)、ドン・キホーテ(110.3%)、ダイユーエイト(108.6%)、コメリー(108.2%)、アークランドサカモト(108.2%)の7社である。経常利益が5%を越える企業はナフコ(6.59%)、コメリ(6.41%)、ドン・キホーテ(53.95%)、カーマ(5.92%)、アークランドサカモト(5.59%)である。成長性は高いコーナン商事の経常利益率は1.78%であり、収益性は低い点が課題である。また、PBRはドン・キホーテが段トツの4.35倍、ROE15.24%、PER27.3倍、時価総額2267億円でトップである。ついで、PBR3.16倍のコメリーが2位であり、特にコメリーは時価総額がホームセンター業界No.1の2503億円であり、ROE7.98%、PER35.7倍と極めて高い指標である。No.3はPBR2.63倍のカーマであり、ROE4.48%、PER33.7倍、時価総額1265億円である。ついで、PBR2.48倍のダイユーエイト、2.08倍のホーマック、2.00倍のナフコと続く。

  一方、業績の悪化している企業はのきなみ株価が低く、2/3現在、200円代の企業が228円のカンセキ、235円のナカイ、243円のダイヤ通商、290円のジュンテンドーと4社あり、PBRが1.00倍を切るいわゆる解散価値の極めて低い企業が8社ある。ナカイ(0.35倍)、ジュンテンドー(0.52倍)、セキチュー(0.56倍)、ダイヤ通商(0.63倍)、サンワドー(0.70倍)、カンセキ(0.82倍)、クロガネヤ(0.82倍)、エンチョー(0.96倍)である。これらの企業の時価総額は約50億円前後であり、さらに厳しい企業は30億円を下回っている。

  このようにホームセンター業界は完全に2極化しており、食品スーパーマーケットのNSCや成長著しいドラックストアの動きに加え、まちづくり3法の改正案の施行により、さらに厳しい状況になるといえ、今後、DCMジャパンホールディングスのようにM&A等により、寡占化、再編がさらに進むものといえよう。

February 06, 2006

経済産業省、まちづくり3法への支援措置固まる!!

  2/3のブログで国土交通省のまちうづくり3法の改正案の内容を取り上げたが、今回、経済産業省の中心市街地支援措置が明らかになったので、取り上げてみたい。経済産業省は主に商業活性化事業への支援が重点的である。内容は大きく3つに分れ、予算措置、税制支援、財政投融資のそれぞれの面から中心市街地を活性化してゆく方針である。

  まず、予算措置であるが、政府原案では70.60億円になる予定であり、4つの事業に対し、予算がつけられる予定である。1つ目は、戦略的中心市街地商業等活性化事業であり、ここに70.60億円の大部分が配分され、59.05億円の予算となる予定である。具体的にはまちぐりみで商業活性化にかかわる事業への予算である。例としては、集客核施設の設置や地域コミュニティとの連携事業等に対する支援があげられる。これは商店街はもちろん、商業者、民間事業者が地権者等の幅広い参画を期待している事業が対象となる。2つ目は実効性確保・診断サポート事業への支援であり、5.24億円の予算がつけられる予定である。具体的には中心市街地活性化協議会が行うタウン・マネジメント活動に対して専門家による診断・助言等を実施し、まちづくり体制をバックアップすることが目的である。3つ目は中心市街地商業活性化アドバイザリー派遣事業への支援であり、予算としては1.42億円の予定である。アドバイザリーとしては中小企業診断士や大手小売業のOBなど商業機能強化に有為なアドバイザーを派遣し、商業活性化を支援するという。そして、4つ目は中心市街地商業等活性化支援委託事業への支援であり、予算としては4.89億円の予定である。これは地域のリーダーとなる人材育成、ノウハウの蓄積を支援し、成功事例の水平展開を推進することが目的である。

  このように、2つ目から4つ目までは、コンサルティング事業への支援といえ、中心市街地の活性化を商店街、商業者、民間事業者、地権者の当事者をフォローする専門家の支援体制にも今回は力を入れてゆうという方針である。

  次に、税制支援措置であるが、これは3つに大きくわかれ、1つ目は中小小売商業高度化事業に協力する地権者等の財産評価の適正化であり、具体的には空き店舗の活用での協力に対し、地権者の土地の財産評価を適切に反映するための措置である。2つ目は中小売商業高度化事業による土地の譲渡所得の特別控除であり、商業活性化の取組みに供する土地譲渡所得に関しては1500万円までを特別控除する税制措置である。そして、3つ目は地方税の不均一課税実施に対する減収補填措置であり、今回に事業にかかわる不動産取得税、固定資産税の軽減を地方公共団体が行った場合に、減収分の一部を国が負担する措置を実施するという。

  このように、中心市街地活性化にかかわる、特に地権者に対しての税制支援措置を強く打ち出しており、これにより空き店舗、空き地はもちろん、現在使用している既存の土地についても、商業施設を誘致する上において地権者からの積極的な協力が得られるような税制措置を充実させてゆく方針といえよう。

  そして、最後の財政投融資であるが、これは、特に小売業界にとって重要な措置であり、中心市街地、商店街に出店・事業を行う商業者等の設備投資資金に対する低利融資を実施するといことであり、これにより、既に、老朽化した街中の店舗の改装費用、新たに、中心市街地へ出店する場合の設備投資費用を低利で調達できることになるという。

  以上が、経済産業省の中心市街地活性化支援策の骨子であるが、小売業界にとっては、3番目の財政投融資がポイントといえ、既存のビックストア、食品スーパーマーケット等にとっては再投資するチャンスであり、また、今後、中心市街地に出店しようとする新規参入も容易になり、食品スーパーマーケット、コンビニはもちろん、他の業種にとっても新たなビジネスチャンスが到来したといえよう。

February 05, 2006

食品スーパーマーケット(20050203)、先週の株価情報!!

  2月度に入ってはじめての株式相場が終了した。ライブドアショックも一段落という状況で、株価は大分もどしつつあるが、2/3の上場食品スーパーマーケット約50社の株価は全体の株価騰落率が0.00%と、全体としては低調であった。この日は、上場小売業全400社弱の株価の騰落率も0.08%で低調であり、日経平均も16,659.64 円(-50.91円)とやや下げて終った。

  このような低調な株価の中でオオゼキの株価が6.41%の上昇となり、3650円で引けた。6.41%は小売業全体の中でも4番目の上昇率であり、2位のユーストア990円(3.01%)、3位の九十九プラス401000円(1.77%)と比べても断トツの上昇率であった。ちなみに、小売業のベスト3は、No.1がドラックストアのミドリ薬品769000円(14.94%)、No.2がダイエー4530円(11.24%)、No.3が松坂屋1100円(9.34%)である。No.1のミドリ薬品は2/2にマツモトキヨシとの資本業務提携が発表され、それが好感され、買いが殺到し、株価が急騰した。No.2のダイエーはファーストリテーリングとの本格的な業務提携がはじまり、今後カジュアル衣料での改善が進み、ダイエー本体への好影響も期待されての買いといえる。No.3の松坂屋は大株主の村上ファンドがMBOを提案するなど、資産価値をあげるアクションがとられるのではないかという期待感からの買いといえよう。

  このような中で、オオゼキが全小売業界No.4の株価上昇率となり、食品スーパーマーケット業界の中で投資家から注目を集めている。オオゼキの株価はライブドアショックで一旦3000円近くまで値を下げたが、1/27以降急上昇し、その後も値を上げ続け、現在3650円である。ボリュームレシオ(売買高の優先度合い)も139.57%と高めであり、5日間の移動平均乖離率も2.58%とマルエツの8.66%、ヤマナカの3.25%についで食品スーパーマーケット業界では第3位である。

  オオゼキは1/13に発表した第3四半期決算数字でも、売上106.4%と好調であり、営業利益97.7%、経常利益97.4%とやや下げたが、純利益率は104.1%であり、好決算であった。特に、経常利益率は売上対比6.97%と上場食品スーパーマーケット平均が約2.5%であるので、ずば抜けた収益性を誇る点からも評価が高まっているといえる。PBRも2.74倍、特にROEが15.71%と、食品スーパーマーケットのトップであり、極めて高い収益性であることがわかる。ただし、PERが17.6倍と上場食品スーパーマーケットの平均約30倍と比べ、半分であり、PERから見る限りでは、現状の株価3650円は低めといえる。サンエーの5180円、バローの4630円、ヨークベニマルの4200円等と比べてもまだ低いといえ、今後の株価が期待されての買いといえよう。

  なお、4位以下はハローズ1870円(1.35%)、ヤオコー2870円(1.05%)、ベルク1328円(0.98%)、カウボーイ389円(0.77%)、いなげや929円(0.75%)、マックスバリュ西日本1850円(0.54%)、ヨークベニマル4200円(0.47%)であり、ここまでがベスト10であった。

  逆に、この日株価を下げた企業はマックスバリュ東北1220円(-3.17%)、丸久718円(-2.31%)、原信1665円(-2.05%)、イズミ4410円(-2.00%)、関西スーパーマーケット804円(-1.34%)であり、ワースト5であった。
 早ければ来週には164回、通常国会にまちづくり3法の改正案が提出される見込みであり、今後、小売業界はもちろん、食品スーパーマーケットにとっても中心市街地への出店、特に空き店舗への出店戦略が大きな課題となり、各社がどのような出店戦略を示すかが注目される。

February 04, 2006

まちづくり3法、中心市街地活性化法の改正案の詳細が明らかに!!

  第164回、通常国会が1/20に開会された。6/18までの150日間の会期である。今国会には流通業界注目のまちづくり3法の改正案が提出される予定であるが、2/3現在、まだ法案は提出されていない。法案が国会に提出され次第、内容、審議状況等を本ブログでは同時進行で取り上げて行く予定である。本ブログでは、まちづくり3法については、昨年の12/20、12/28に取り上げたが、今国会へ提出される予定のまちづくり3法の1つである中心市街地活性化法の改正案の骨子が国土交通省から、明らかになったので取り上げてみたい。

  改正の骨子は5つのポイントがある。1つ目は、題名変更である。これまでの法案名は「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」であったが、今回の改正案では「中心市街地の活性化に関する法律」と簡潔な題名となる予定である。

  2つ目は、基本理念と責務規定を創設することである。今回の法案の趣旨は都市機能の増進と経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進することが求められる法律であるため、基本理念を明確にすることが必要とのことから、基本理念が新たに創設されることになる。また、国の役割、地方公共団体や事業者の役割や責任を明確にするため、責務規定を創設することになるという。

  3つ目のポイントは、国による「選択と集中」の仕組みを導入することである。具体的には、中心市街地活性化本部を内閣総理大臣を本部長として創設し、中心市街地活性化の基本方針案の作成、施策の総合調整や事業実施状況のチェックとレビューを行うという。また、中心市街地活性化の基本計画は内閣総理大臣の認定制度となり、認定された計画には法律、税制の特例、補助事業の重点実施等が施されることになるという。

  4つ目のポイントは多様な関係者参画を得た取組みの推進である。中心市街地の活性化の主体は各市町村および民間業者であることから、これらの推進機関として、中心市街地活性化協議会の法制化を行い、官民一体となって取組む体制をつくってゆくという。

  そして、5つ目のポイントは支援措置の大幅な拡充である。主な支援措置としては、都市機能の集積促進、街なか居住の推進、商業等の活性化、その他であるが、これらには予算、税制措置がなされる予定である。

  具体的には、まちづくり交付金として2380億円の国費が当てられ、各市町村の中心市街地活性化に取組む提案事業枠を拡大してゆくという。また、都市機能の集積促進に関しては、暮らしにぎわい再生事業に国費90億円を当て、病院、文化施設のまちなかへの立地支援および空きビル再生支援を実施するという。民間都市開発事業の支援には国費60億円を当てるという。さらに、街中の居住の推進には、共同住宅の供給支援に52億円の国費、民間の住宅供給事業を出資により支援するために25億円の再生ファンドをつくるという。土地の整備、集約には、都市再生区画整理事業として、特に教育文化施設、医療施設等の立地促進のために34億円の国費を当て、同時に、土地の有効利用に伴う土地交換等には税制の特例措置も拡充するという。

  また、特に小売業界に関しては、空き店舗への大型小売店舗出店時の規制緩和措置、戦略的中心市街地商業活性化支援事業の拡充、商業活性化空き店舗活用事業に対する税制等の拡充がなされるという。

  このように、この中心市街地活性化法案が今国会で可決されれば、内閣総理大臣を本部長として、各市町村と民間業者と一体となった中心市街地活性化協議会が各地で立ち上がり、街づくりが推進されてゆくことになる。そして、それに伴い、小売業界も中心市街地の特に空き店舗への出店に関しては、戦略的な取組みが求められることになる。今後とも今国会の審議には注目してゆきたい。

February 03, 2006

いちごの季節に突入!食品スーパーマーケットの最重点商品!!

  いよいよ、いちごの季節に突入した。いちごは食品スーパーマーケットにとってはこの時期の最重点商品であり、いちごの売上は果物全体の30%近くにもなり、いちごのマーチャンダイジングの成否が果物はもちろん、食品スーパーマーケットの経営にかかわるといっても過言ではない。いちごには様々な品種があり、どの品種を主力にすえ、いくらの価格を打ち出すかが、いちごのマーチャンダイジングを左右するので、食品スーパーマーケットではこの時期、最も気をつかう商品のひとつといえる。

  現在、いちごの相場は、東京都中央卸売市場の1/20から1/26の第3週では、ほぼ昨年並みの相場である。とちおとめが0.3kg当り約330円、おまおうが468円、さがほのかが368円で取引されている。全国No.1の生産額を誇るとちおとめに比べ、最近人気の高いあまおうが4割ほど高値で取引されているのが実情である。

  では、いちごの消費額は毎月どのような動きを示すかをみてみたい。昨年の1月から5月および12月の家計調査月報をもとにいちごの1世帯1日当りのデータ(食品スーパーマーケットの客単価に相当)を追ってみると、12月は12.1円、1月は19.4円、2月は23.9円、3月は25.5円、4月は26.1円、5月は11.5円という推移であり、12月から4月まで消費額が上がり続け、5月でほぼ終了となる。いちごは6ケ月間というロングランの商品であり、3月、4月が旬のピークとなる商品であることがわかる。

  食品スーパーマーケットのいちごの実際の客単価もほぼ同様な動きとなり、3月、4月がピークとなり、この時、いちごの強い企業では客単価が40円から50円ぐらいにまで跳ね上がる。平均単価は400円を切り、ピーク時はPI値が10%を越え、超重点商品となる。食品スーパーマーケットの全商品の平均単価は約200円であるので、400円は2倍の価格であり、それにもかかわらず、PI値が10%となる商品は食品スーパーマーケットではいちご以外にありえない商品である。ここまで来ると、いちごに1人担当をつけてもよいくらいである。仮に客単価50円でみた場合、食品スーパーマーケット約2000人/日の場合、1日の売上が10万円となり、いちごマネージャーをつけても充分にみあう金額である。

  最近の食品スーパーマーケットのいちごは、東は「とちおとめ」、西は「とよのか」、それに最近の人気上昇中の福岡の「あまおう」が割って入り、その他、さちのか、さがほのか、章姫など品種が豊富で、2月以降、続々と店頭に並ぶものと思う。

  ここで、いちごの全国の消費額を見てみたい。昨年の家計調査月報のいちごのピーク月である4月度のデータで見てみると、全国のベスト10は、千葉市(39.9円)、京都市(39.5円)、北九州市(38.2円)、東京都区部(37.8円)、川崎市(35.9円)、山形市(37.0円)岡山市(35.6円)、鳥取市(35.0円)、福島市(34.5円)、松江市(34.2円)である。全国ほぼ満遍なくいちごが食べられていることがわかる。ただ、いちごの2大産地、栃木県(27番:28.3円)と福岡県(29番:29.7円)がベスト10に入っておらず、真ん中の30番少し手前のランキングである。

  ちなみに、ワースト5を見てみると、徳島市(21.5円)、熊本市(21.4円)、和歌山市(20.0円)、高知市(19.8円)、那覇市(12.4円)である。九州、四国は気候の関係でわかるが和歌山県が以外に消費額が少ないのが特徴である。

  このように、いちごはほぼ全国的に普及した商品であり、12月から5月まで食品スーパーマーケットの最重点商品となる。今年は相場も現状では落ち着いているので、今月から様々な品種のいちごが食品スーパーマーケットの店頭をにぎわすことになろう。

February 02, 2006

家計調査月報で見るクリスマスイブと年末!!

  1/31、昨年12月度の家計調査月報が総務省統計局から公表された。通常、毎月28日には公表されるはずが、今月は少し、公表が遅れたようだ。これで、2005年度は1月から12月まで公開され、現在、平成12年(2000年)から平成17年(2005年)までの6年、72ケ月のデータをホームページでみることができる。

  さて、今回は12月ということもあり、クリスマスイブ(12/24)と年末(12/31)の消費傾向をみてみたい。この2日は年間の中でも特別な日といえ、食品スーパーマーケットでも様々なこの日特有のイベントが催される。特に、年末は年末商戦ともいわれ、年間365日でNo.1の売上を稼ぐ日でもあり、28日頃から、各食品スーパーマーケットでは年末の売場作りがはじまり、31日にはピークを迎える。

  実際、この2日は12月平均の1日当りの消費金額(食品スーパーマーケットの客単価に相当)2478円に比べ、クリスマスイブ(12/24)は3712円と約150%、年末(12/31)は5901円と約200%であり、明らかに突出している金額である。衣食住遊すべての家計消費はクリスマスイブ114.3%、年末が125.0%であるので、食料品の支出がこの2日間は特に大きいといえる。

  ではいったい、何がここまで消費を押上げているのかを具体的な商品でみてみたい。まず、クリスマスイブであるが、この日No.1の伸び率の商品はケーキである。何と12月平均消費金額56.1円の約11倍の618.1円であり、この618.1円はこの日の全食料品の金額の中でもトップである。2位はぶどう酒(ワイン)の424%で平均11.5円に対し、48.6円である。これ以外に、約3倍以上跳ね上がる商品は、第3位、すし(弁当)321%(127.3円)、第4位、炭酸飲料316%(24.5円)、第5位、いちご294%(34.6円)、第6位、サラダ293%(25.8円)、第7位、レタス288%(14.6%)である。以上が12月平均の消費金額の約3倍跳ね上がる商品である。これ以外にもいくつか特徴のある商品を上げると、アイスクリーム256%(35.9円)、天ぷら・フライ252%(76.5円)、刺身盛合せ221%(43.5円)、チーズ196%(22.9円)等である。特徴的には菓子、酒、飲料、果物等の嗜好品関連が高い数字を示すといえよう。

  次に、年間最高の売上となる年末であるが、No.1の伸び率の商品は刺身盛合せであり、12月平均消費金額19.6円の約8.5倍の165.1円である。ちなみに、金額でみると、牛肉の363円(442.0%)、ビールの205.1円(314.7%)についで3位である。伸び率2位はたいの585.9%(20.6円)、3位はかに535.4%(152.5円)、第4位はまんじゅう519.2%(19.9円)、第5位はぶり509.8%(85.2円)、第6位はまぐろ480.8%(113.7円)、第7位はたこ464.3%(27.3%)、第8位はすし(弁当)459.3%(182円)である。以上が12月平均の消費金額約5倍跳ね上がる商品である。さらに、年末の特徴的な商品をあげると、かまぼこ400%(88円)、生うどん・そば363.4%(56円)、清酒355.9%(134.2円)、もち355.8%(105.0円)、乾うどん・そば321.8%(19.3円)等である。年末の特徴としては、鮮魚、精肉の生鮮品や惣菜のすし(弁当)、うどん・そばなど主食的な商品の伸び率が高いといえよう。ちなみに、クリスマスイブNo.1のケーキは67.7%(38円)である。

  このように、家計調査月報も日別に落とすと、週末の動向や祝日、祭事の時の特徴をつかむことができる。特に、日別の1世帯当りの消費金額は食品スーパーマーケットのほぼ客単価に相当するので、自社の数字を検証したり、過去のデータにもとづき、仮説をたてるなど大いに参考になろう。

February 01, 2006

オリジン東秀、イオンの公開買い付け始まる!

  1/30、オリジン東秀とイオンから株式の公開買い付けに関する発表があった。オリジン東秀は現在、ドンキホーテから株式の公開買い付けをされている真っ最中である。1/16から始まったドンキホーテのオリジン東秀に対する公開買付けは、来週、2/9には終了する予定であった。そこに突如として、イオンが割って入り、しかも、ドンキホーテの買い付け価格1株2800円を上回る、1株3100円を提示し、1/31から3/1まで30日間、実施するという。さらに、ドンキホーテが既に約30%を取得している株式の保有に加え、約20%分までの限定公開買い付けであるのに対し、イオンは無制限に公開買い付けを実施するとのことで、最大100%もあり、オリジン東秀の上場廃止もありうるという。

  これに対し、ドンキホーテは、1/30、内要を充分に精査し、対応を検討し、決定次第、発表するというコメントを出した。1/31、現在、まだ対応策は発表されていない。今後、どのような展開になるか予断を許さない状況といえる。

  これを受けて、1/31のオリジン東秀の株価は400円高のストップ高、3070円(14.98%)で引けた。既に、ドンキホーテの公開買付け価格2800円を優に越え、イオンの公開買付け価格、3100円に迫る勢いである。しかも、買い残が9,530,100株もあり、今回の買い付け予定株式は8,900,000株(所有比率50.01%)であるが、1/31時点で、オリジン東秀の発行株式数の50%以上の買いが入ったことになり、異常な買い気配である。1/31の売買高は281,600株であるので、売却株の約30倍の買注文が入りストップ高になったといえる。ちなみに、1/31のドンキホーテの株価は370円安の9760円(-3.65%)であり、イオンの株価は3090円で変わらずであった。明日以降の3社の株価が注目される。

  さて、ここまで話しがもつれた背景には、ドンキホーテが強引にオリジン東秀を買収しようとしたことにあったようだ。そもそもの発端は、昨年8/11に突如として、ドンキホーテがオリジン東秀の株式を創業者一族から取得したことにある。その後、ドンキホーテの次世代コンビニエンスストア構想実現にむけての両者の協議が続き、ドンキホーテのピカソでの実証実験等も進んでいた。ところが、1/16、ドンキホーテがオリジン東秀の取締役の賛同を得ずに公開買い付けを開始し、両者は決定的な敵対関係に入った。公開買い付けは1/16から2/9までの25日間であり、あと10日というタイミングで、1/30、オリジン東秀とイオンとの合意がなされ、イオンのオリジン東秀に対する公開買い付けが発表された。この公開買い付けに対しては、オリジン東秀の取締役会も了承し、しかも、労働組合も賛同している。1/30のオリジン東秀の公式コメントの最後は、「当社は、ドン・キホーテ公開買付けに反対し、イオン公開買付けに賛同することといたしました。株主の皆様におかれては、イオン公開買付けに応募して頂くとともに、ドン・キホーテ公開買付けには応募なさらないようお願い申し上げます」という言葉で結ばれている。

  日本の小売業界は、オリジン東秀のように創業家一族が大株主である場合が多く、何らかの理由により、その株が同業他社や外資に渡った場合には、今回のような経営陣の意に反する敵対的買収が起こる可能性があり、今回のケースはこと小売業界に関する限りはけっして異例とはいえない。今後、このような敵対的買収、あるいは双方合意の上での友好的な買収が小売業界にも起こる可能性が充分に考えられ、小売業界も本格的なM&Aの時代に入ったといえよう。

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