吉野家、既存店の客単価アップにより売上回復基調!
2/22の日経MJに外食産業30社の1月度の売上速報が掲載された。それによると、既存店売上高では21社が昨年売上を下回る厳しい状況であった。特に、客数が昨年を上回った企業はわずか5社であり、逆に、客単価は大半の企業がわずかではあるが昨年をクリアーしている。外食産業においては、既存店の客数が全体として伸び悩んでいる状況といえる。このような中で、既存店の客数を最も伸ばした企業は日本マクドナルドであり、客数の昨対は106.9%である。残念ながら、客単価が91.4%となってしまったため、売上は昨年を下回ってしまった。売上は客数だけで伸ばしてゆくには限界があり、やはり客単価の改善が大前提である。
このような厳しい状況の中で、吉野家の数字は際立った特徴がある。日本マクドナルドとは全く逆のパターンであり、既存店の客数はややダウンしたが、客単価を大きく引き上げ、既存店の売上をアップさせた。吉野家の既存店の売上は103.6%であり、客数98.2%、客単価105.4%である。全店の売上も103.7%であり、BSE以降、低迷していた数字が回復しはじめたといえよう。もちろん、吉野家の昨年1月度の数字は昨対75.1%であったので、今期103.6%では一昨年の80%弱であるので、BSE以前の数字とはまだ大きく離れているが、業績が回復し始めた傾向はみてとれる。
ちなみに、昨年1月の既存店の売上が75.1%となった時の客数は68.1%、客単価は114.7%であった。吉野屋の牛丼の熱烈な顧客が約30%以上いたことになり、主力商品の欠品は客数ダウンにダイレクトに響くことが実証された数字といえよう。ただ、この時でも吉野家は客単価を114.7%に引き上げており、牛丼以外のメニュー開発によって、客数のダウンを客単価でカバーしようとする戦略が明確である。今年もほぼ同様の傾向であり、客単価はさらに105.4%、昨年の114.7%に上乗せしている。吉野家は、BSE以降、客単価アップ戦略に全力で取組んできた企業である。
では、吉野家の直近の決算数値を確認してみたい。直近の決算は12/28に発表された第3四半期決算である。それによると、売上104.8%、営業利益15.5億円と昨年は赤字決算だったので、黒字に転換した。経常利益も昨年の赤字が、今期は12.5億円の黒字となり、増収総益であった。残念ながら純利益は京樽の厚生年金の返上があり、5.2億円のマイナスとなった。したがって、1月の既存店の回復は売上だけでなく、収益もともなった回復であり、牛丼なき吉野家が牛丼以外の商品開発による客単価アップにより、売上、利益ともに回復基調に入ったといえよう。これで、牛丼が復活すれば、間違いなく経営は改善するものと思われるが、アメリカの状況を見る限り、輸入再開はまだ先になりそうであり、回復基調とはいえ、厳しい状況は当面続きそうである。
では、吉野家が前期の赤字から、黒字に転換したポイントはどこにあったかを決算書でみてみると、粗利が前期59.3%から、今期は62.0%と1.7ポイント改善している。これは原価が40.7%から38.0%に改善されたことが大きい。また販売管理費も前期は61.7%であったが、今期は60.3%と1.4ポイント削減されており、経費削減を徹底したものと思われる。これにより、前期は営業利益が-2.4%であった赤字が、今期は1.7%の黒字となり、収益が黒字転換したことになる。
吉野家の現在の株価は2/22現在、183,000円である。今年のはじめには220,000円前後であった株価が徐々にさがりはじめ、アメリカの牛肉の再開ストップ以降一時大きく値をさげたが、いまは180,000円強で推移している。
このように、非常に厳しい経営環境の中で、吉野家が主力の牛丼なしに、既存店の客単価アップに成功し、売上を回復基調にのせ、さらに、収益まで改善したことは注目に値する。改めて、既存店の客単価アップの重要性を吉野家が示しているといえよう。
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