キョウデンという企業、長崎屋、前倒しで経営再建!
6/21、キョウデンのホームページに「更正会社(株)長崎屋の会社更生手続の集結に関するお知らせ」という記事が掲載された。その冒頭に、「当社子会社の(株)長崎屋は、このたび、東京地方裁判所より更正計画変更の認可を受け、平成14年6月30日の更正計画認可決定以来、当初計画より12年繰上げ、平成18年7月上旬をもって会社更生手続きを集結できる見通しとなりましたので、お知らせします。」とある。会社更生手続きが決定した時点では約700億円あった長崎屋の債権残高が、本来の計画であれば平成30年までであったものが、わずか4年での弁済という異例の速さである。しかも、その親会社は流通業を本業とする企業ではなく、半導体などのエレクトロニクスのプリント基板を製造するキョウデンという会社である。
キョウデンは、東証2部に上場している企業であり、平成18年度3月期の連結決算は、売上が3042億円(110.9%)、営業利益が35億円(116.8%)、経常利益が38億円(122.0%)、当期利益が8億円(50.6%)と営業段階では増収増益を達成している。そして、この売上の中身であるが、約2602億円が流通関連の売上であり、本体のプリント基板の売上は375億円、その他64億円という構成である。85%が流通関連の売上であり、その内、長崎屋が50%強を占める。そして、残りが、何と、九九プラスである。キョウデンは長崎屋だけでなく、九九プラスも傘下に治めるという流通業に特化したプリント基盤企業という異色な経営を実践している。九九プラスに関しては、今年の3/31の株式保有率は48.05%であり、連結対象となる筆頭株主である。
ただ、キョウデンの経営戦略を見ると、あながち、流通業とは無縁とはいえず、むしろ、根底で合い通じるものがあるように思える。キョウデンをひとことで表現するとプリント基板のアスクルといってもよく、通常プリント基板の試作品を作るとなると、数週間はかかってしまうところを、キョウデンは明日にでも納品するという、恐らく世界最高の速さで対応する仕組みをつくったといえよう。社名もアスクルが明日来るからとったように、キョウデンも今日から電気屋が社名の由来といい、社名のつけ方も何となく似ている。これがプリント基板の試作品需要を開拓し、この分野では業界トップ企業となったという。ではなぜ、こんなことができるのか、それはいつ入ってくるかわからない需要に対し、24時間以内に対応しなければならないため、9シフトのフレックスタイムを採用し、臨機応変に対応できる工程管理を行い、需要に応じた人の配置を行っていることにあるという。これは、まさに、小売業の需要対応、顧客第一主義、The Customer is Always Right!の理念そのものの具現化であり、流通業の本質そのものであるといえる。
キョウデンでは5日間が標準コースだそうだが、さらに、特急、超特急、マッハ、ミラクルというコースまであるといい、最短だと朝10時までに注文を受ければ翌日の10時に発送するともいう。仮に、この考え方を流通業のバックヤード、物流体制などに応用できれば飛躍的な収益改善につながる可能性が高く、今回の長崎屋の再建にも考え方としてキョウデンのこの強い信念が反映されたといってよいと思う。
長崎屋再建にあたってはさらに、キョウデンは大手流通業界の経験者ではなく、住友銀行出身で、中古車販売業のジャックホールディングスの元社長、上山健二氏をスカウトし、業界の常識にとらわれない発想での再建に取り組む体制をつくった。その結果、2006年2月期の長崎屋の決算は売上こそ昨年を下回ったが、これまでの赤字から営業、経常、当期利益すべて黒字に転換し、財務状況も大きく好転し、12年前倒しという快挙を達成した。
このように長崎屋の経営再建の背景を見るとキョウデンのプリント基板事業でなしえた経営理念なくしては、これほど速く達成されることがなかったと思える。今後の長崎屋の動向にあらためて注目したい。
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