ヨークベニマルの茨城ドミナント戦略と地元カスミへの影響!
ヨークベニマルの茨城県におけるドミナント戦略は、昨年4/22の赤塚店の出店によりはじまる。その後、7/20に坂東店を出店、9/1には茨城県で18店舗を展開しているスーパーカドヤを株式交換により完全子会社化、そして、9/23には中郷店を出店し、茨城県内で合計21店舗の展開となり、ドミナント体制が固まったといえる。地元福島では54店舗のドミナント展開であるが、茨城県は宮城県の36店舗につぎ、2番目の重要ドミナント地区となり、ついで、栃木県14店舗、山形県12店舗と、ヨークベニマルは現在5県に137店舗を展開している。
さて、このように、わずか、1年で茨城県内に21店舗のドミナント展開を果たしたヨークベニマルの与えた地元食品スーパーマーケット、カスミへの影響はどのくらいのものであったかをみてみたい。結論からいうと、少なくとも、売上の5%程度の影響があったものと推察できる。5%はカスミでは現在の年商が約1,700億円であるので約85億円であり、けっして小さな影響ではない。しかも、今後、ヨークベニマルの茨城でのドミナント化が進めば、影響はさらに大きくなろう。
では、この5%の数字をカスミの月別売上高推移表で検証してみると、4/22に出店したヨークベニマルの赤塚店以後、カスミの5月の売上は既存店売上が96.4%と4月の101.2%、3月の99.6%と比べ落ち込んだ。全体では5月は98.1%と比較的検討しているが、これは、ヨークベニマルの赤塚店オープン前の3/25にフードスクエアカスミ水戸赤塚店をオープンしており、さらに4/28にはフードオフストッカー真岡店をオープンしているためである。続いて、5/25には並木店もオープンし、この時期に新規出店を3店立て続けに行い、既存店の影響を最小限に抑えようとしたものといえよう。
そして、6月のカスミはさらに数字がダウンし、95.1%まで既存店が落ち込んだ。その後、建て直しをはかり、やや数字が上向きはじめた。7/20には、ヨークベニマルが茨城2店舗目となる坂東店をオープンするが、カスミの既存店もやや持ち直して、8月には97%まで回復する。ところが、9/23、ヨークベニマル3店舗となる中郷店がオープンすると10月からはとうとう95%台に落ち込み、以後、1月まで95%台の厳しい数字がつづく。2月はさらに、既存店の数字が下がり92.6%と、この1年間では最も低い数字となった。
その結果、上期合計では97.5%で既存店は推移したが、下期合計は95.2%となり、厳しい既存店の数字が続いている。まさに、ヨークベニマルが茨城に3店舗出店し終え、カドヤも傘下に治めた翌月の10月から95%であることからも、ヨークベニマルの明らかな影響の結果といえよう。すなわち、現時点で約5%、あるいはそれ以上のカスミへの影響といえる。
ちなみに、カスミの全体の売上高は上期は98.6%、下期は99.7%であり、下期の方が既存店とは逆に数字がよくなっているが、これは10月以降、新店が8店舗、改装店舗が2店舗あり、合計10店舗が増加し、この加算された分が既存店の落ち込みをカバーし、全体では99.7%と前半の98.6%よりも、高い数字となったといえる。
ただ、既存店は依然として厳しい状況であり、特に、売上を構成する2大指標である客数、客単価の推移であるが、既存店に関しては、客数も98%、客単価も98%であり、客数、客単価双方ダウンという、厳しい数字である。
ヨークベニマルの茨城への出店はカスミの既存店の客数、客単価双方へ強い影響を与え、約5%の売上影響度が現時点ではあったといえよう。今後カスミとしては新店が順調に展開しているので、全店の数字は大きく落ち込むことはないと思うが、既存店の活性化が急務であり、まず、どこまで客単価アップがはかれるかが当面の課題といえよう。
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Comments
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釈迦に説法ですが、スーパーの商圏は、車社会の北関東でも最大15分程度でしょうか。NSCであっても、基本的にはあまり変わりません。また、茨城のような田舎道でも、平均車速度は時速30km程度ですね。(以上は、あくまで”経験上”ですが・・)
確かに、ベニマルの店舗からカスミの店舗までの距離を測れば前記の競合状況になりますが、その間には地元SMとかベニマル以外のSMがいくつかありますよね。まったく、影響がないとは言えないでしょうが、強引に結論付けるのはどうかと思います。GISでも検証できますが、実際に車で走られると良く分かりますよ。ちょうどこれからのシーズン、茨城県北部はブドウとナシが美味しくなりますね。
Posted by: つっしー | September 06, 2006 04:48 PM
ヨークベニマルのホームページを見ました。「ショッピングセンター『ヨークタウンひたちなか』は、当店のほか、「マツモトキヨシ」「ダイソー」「ブックエース(ツタヤ)」で構成されており、同日、グランドオープンします」
PI研鈴木さんは、これを車で10-15分かけて出掛ける値打ちのある「中商圏業態」と考えたのですか。ドラッグや100円ショッピングと組めばうまくいくのであれば苦労はない。みんなそうする。
Posted by: PIA | September 03, 2006 06:08 PM
今回のヨークベニマルの新店は地域密着型の食品スーパーマーケットではなく、幹線道路沿いに出店するNSC(郊外型ショッピングセンター)であるため、小商圏ではなく、中商圏業態と考え、車で10~15分圏も商圏に入ると考え、可能性のある店舗をピックアップしました。
通常の地域密着型の食品スーパーマーケットの場合は、徒歩、自転車、車等の交通手段を用いて5~10分、都心部であれば、5分圏が食品スーパーマーケットの商圏設定になると思います。
また、距離はあくまでも目安であり、重点は時間の方がポイントであると思います。
Posted by: PI研 | September 03, 2006 11:52 AM
PI研鈴木さんが言う「一般的に車で10~15分圏(茨城商圏では距離で10~15km)を競合と考えた場合、、」のくだりは、前提が間違っているため、それ以下の商圏についての記述に説得性はないと思う。
地域密着型の食品スーパーで直径30㎞を商圏に設定することの是非と、車での移動を平均時速60㎞で考える根拠をお示しいただきたい。
文章をたくさん書いていることには頭が下がるが、乱暴な議論につきあわされる読者はたまったものではない。
Posted by: PIA | September 03, 2006 11:07 AM
皆さん、コメントありがとうございます。
食品スーパーマーケットにおける既存店ダウンは競合店出店による影響、自店競合など様々な要因があり、ご指摘のように一義的に、これと断定することは難しいのが実情かと思います。
今回のテーマはヨークベニマルの新店3店舗の出店がカスミの既存店にどのくらいの影響があったのかということです。数字を見る限り、因果関係が強いと見て取れるのですが、それが本当にヨークベニマルの新規出店の影響なのか、それ以外の要因なのか、あるいは複合要因なのかが明確に検証できていないために議論が大きく分かれたと思います。
そこで、実際の競合状況ですが、一般的に車で10~15分圏(茨城商圏では距離で10~15km)を競合と考えた場合、ヨークベニマルの新店3店舗とカスミとの競合状況は以下のようになるかと思います。
ヨークベニマル赤塚店と競合する可能性の高いカスミ:
カスミフードスクエア水戸見川店、カスミフードスクエア友部店、カスミ友部スクエア店、カスミ元吉田店、カスミ梅園店、カスミ姫子店、カスミ渡里店、カスミ笠間店の8店舗。また、この店舗はカスミの新店フードスクエアカスミ水戸赤塚店とも自店競合する可能性が高い店舗かと思います。
ヨークベニマル坂東店と競合する可能性の高いカスミ:
カスミ谷和原店、カスミ境店、カスミ守谷店、カスミ岩井店の4店舗。
ヨークベニマル中郷店と競合する可能性の高いカスミ:
カスミ大津店、カスミ日立豊浦店、カスミ高萩店、カスミ田尻店の4店舗。
ちなみに、今回の対象期間ではありませんが、ヨークベニマルひたちなか店と競合する可能性の高いカスミ:
カスミ勝田駅前店、カスミ津田店、カスミサンモリノ那珂店、カスミ東海店、カスミ佐和店、カスミ勝田店、カスミ那珂湊店の7店舗。
なお、カドヤは、スーパーカドヤ佐和店、スーパーカドヤ田彦西店、スーパーカドヤ百合が丘店、スーパーカドヤ田彦店、スーパーカドヤ那珂湊店の5店舗。
独自の視点で選びましたので、異論はあるかと思います。もちろん、実際には検証が必要ですが、これらの店舗が仮に競合しているとすると、相当程度の影響度があった可能性が高いと思います。
Posted by: PI研 | September 01, 2006 04:03 AM
茨城県でのカスミとヨークベニマルの戦い、興味深く拝見しました。フードオフストッカー真岡店ですが、栃木県真岡市のカスミ真岡店でしたら、最近の改装はないようです。時期的には、茨城県のカスミ真壁店の業態変更ではないでしょうか?カスミのフードオフストッカーに関する記事を見ると、この業態の新店での出店はないようですね。あくまで、不振既存店の対策のようです。カスミさんの業態変更、このところ多いですね。効果の程は分かりませんが、明らかに客層が変わってきているようです。
本文の記述ですが、時系列的に見ると昨対割れとヨークベニマルの出店時期が一致しますが、出店場所を見ると商圏的に直接競合していないようです。水戸赤塚では隣り合って、明らかに四つ相撲ですが、北茨城の中郷や坂東市にはカスミの既存店はありません。多少影響があるように思われるのは、ひたちなか市でしょうか。先のコメントにもありましたが、ひたちなか市ではむしろヨークベニマルの新店とカドヤの既存店との自社競合が強いようです。同時期のSM各社をみると、昨対割れの企業が多いですね。不振の原因がひとつの事象に求められれば対策も容易なのでしょうが、実際はいろんな原因がありますね。
Posted by: つっしー | August 31, 2006 09:41 AM
・フードオフストッカー真岡は新店。
・前年度、カスミは12店を新規開業し、5店を閉鎖しています。これだけ出入りが激しいと「既存店」の集計対象が大きくぶれますので、カスミの競争力を前年度も存在した店舗の売上増減を中心に推し量ろうとすることは無理が生じやすいと思います。カスミの既存店売上低下の時期とヨークベニマルの出店エリア拡大の時期が重なったので短絡的な結論ありきの分析となったのでしょう。
・記載の時期には、大店立地法の届け出を見ると、ヨークベニマルの純新規出店のほかエコスが3店、サンユーが2店とりせんが3店出店しています。ただ、茨城県内に一番たくさん出店したのは実はカスミ(6店)で、既存店のマイナスは自社競合覚悟のドミナント戦略の結果と見る方が正しいと思います。また、カスミの出店エリアは本拠地の茨城のほか、他の北関東エリアに40店余り展開しています。ベニマルの3-4店の茨城出店だけで120店余のカスミの既存店が大きくマイナスになったというのなら、それはビックリするレベルの話です。赤塚駅南の2店を見に行きましたが、どう見てもカスミの売上が多いでしょう。ベニマルは冷や汗を流しているのではないでしょうか。
・ベニマルの勿来の関所越えは、以前からある競合激化の延長線上のハナシであって、従来の地元スーパーやマルエツ、ヨーカ堂やジャスコなどとの競合先に強力なライバルが追加なったという評価で良いと思います。
・カスミの決算説明会資料では、単位面積当たりの売上は増加していますので、競争力が低下しているというのは拙速な見方でしょう。PI研さんは、ベニマルひたちなか店オープンに言及していますが、実は一番影響度合が大きいのは市内に4店を構える(ベニマルが買収した!)カドヤだと見ています。
Posted by: Candy | August 30, 2006 04:27 PM
カドヤ18店舗は既存店ですので、それほどカスミには影響はないと思いますが、ヨークベニマル新店の3店舗は、年商目標の合計が71億円ですので、明らかにカスミ既存店への影響があったものと思います。ただし、数字で見る限り、確かに5%程度の影響がカスミにありそうですが、それがすべて、ヨークベニマルの新店とはいいきれないのは確かです。
ご指摘の通り、ヤオコー他(イオンの水戸内原店はオープンが11月初旬かと思いますので、それ以降ですが)他の食品スーパーマーケットの影響も当然あると思います。ただ、それらを勘案しても、ヨークベニマル新店のカスミ既存店への影響は相当なものがあったと月次売上の推移と出店の経緯からも明らかであると思います。
また、この3月には、茨城4店舗となる年商24億円目標のヨークベニマルのひたちなか店も出店しましたので、さらに、茨城商圏は厳しい状況になったかと思います。
Posted by: PI研 | August 30, 2006 01:26 PM
フードオフストッカー真岡は新店ではなく業態変更では? また、スーパーカドヤの株主変更と茨城県内の食品スーパーの店舗数に関係はなく、ヨークベニマルが(傘下企業を含め)21店を保有していることが理由でカスミの既存店売上が低迷しているという論調には納得できません。とりせんやヤオコーの進出、ジャスコ内原店開店はなぜ捨象しているのでしょうか。
Posted by: NT | August 30, 2006 10:48 AM