客単価3D分析の最先端をゆく大リーグのデータ管理、分析!
以前、本ブログで得点圏打率について取り上げ、得点圏打率は客単価3D分析の応用のひとつであることを示した。得点圏打率は理論面からアプローチして、指標をつくったのではなく、選手個々人を正当に評価するという観点からつくられた指標であるため、充分に理論展開ができていない面もあり、重要な指標が活用されていない面もある。それでも、現状の小売業界の様々なデータ分析と比べてみると一歩リードしているのが現状といえよう。小売業の分析の中には得点圏打率のような指標はいまのところ明確ではないし、また、活用されているという事例は聞かない。
では、大リーグでよく使われる得点圏打率が小売業界の分析手法と比べすぐれている理由は何か。それは小売業界ではまだ充分に活用されていないIDをフルに活用している点である。IDを活用すると何が違ってくるのかであるが、根本的な違いは数式そのものが違ってくる。IDを活用しない客単価の数式は客単価=客数PI値×PPI×平均単価であり、ここまでが限度である。しかし、ここにIDが入ると、客単価は特定IDの客単価=特定条件の下での(客数PI値×PPI×平均単価)+特定条件の下でない場合の(客数PI値×PPI×平均単価)まで分析が可能となり、特定IDにおける、ある条件のもとでの客単価を導き出すことができるようになる。得点圏打率はまさに特定IDの味方が2塁、3塁に出塁している時のヒット率のことであり、ここには、特定IDと特定条件の時という限定が加えられた打率を算出し、通常の打率と区別して活用している。
得点圏打率では本来この数式にもとづいて計算し、正当に選手個々人を評価するのが主な目的であると思われるが、得点圏打率のみに目がいってしまい、残りの要素を切り捨ててしまっている点が残念である。また、本来ヒット率だけではなく、まさに打点率という客単価の平均単価にあたる要素、得点圏打点率などを加味すると、さらに個々人の正当な評価にもつながるのであるが、この点も充分な分析ができていないのがもったいないと思う。
現状の得点圏打率を客単価3D分析の数式で表現すると、打率=得点圏における打席率×得点圏打率+得点圏以外の打席率×得点圏以外の打率となり、得点圏打率とは打率の中身を得点圏における打率のみに注目して、チャンスに強い打者を全選手の中から抽出し、チャンスの場面で、効果的な起用をすることにより、得点率をあげようとする目的であるといえる。したがって、そのためには、得点圏打率とペアとなっている得点圏打席率が鍵を握っており、得点圏打席率の高い打順に得点圏打率の高い選手を配置した時、すなわち、得点圏における代打か、3番以降が最適な打順となり、長打、ホームラン等が多い場合は、3、4、5番優先、ヒットが多い場合は6、7番当りが最適打順となろう。
では、このように大リーグで客単価3D分析の活用がなぜ可能となったのかであるが、いくつかの偶然が重なったものと思われる。それは、野球はチームプレーであり、選手個々人の特徴を正当に評価し、適材適所の人材配置(打順、選手起用)が勝利の決め手となるが、それを実現するためには正確なデータとその分析が不可欠である。小売業界ではこれらのデータは莫大な商品データと顧客データとなってしまう。どちらも膨大であり、この数10年かけてやっと商品データの方はバーコード管理ができ、目処がつきはじめたが、顧客の方はほとんど手つかずの状態といえる。これが、大リーグでは選手も相手も原則9人であり、しかも綿密なデータを記録する仕組みとしてスコアブック(小売業のPOS)が早くから存在していた。これが決定的な違いとなり、あとはその分析手法を開発すれば、選手個々人を正当に評価し、適材適所の配置が可能となる仕組みをつくることができたのであろう。大リーグをはじめ野球界がデータ管理を重視したのはこのような背景があったものと思う。
したがって、今後、小売業がより戦略的に経営を行ってゆくためには、顧客IDを管理し、この分野では先行している大リーグのデータ活用方法を学び、さらに新しい分析手法を開発してゆくことが、厳しい競合状況の中で生き残ってゆくための今後の大きな課題といえよう。
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