客単価3D分析の視点について
客単価3D分析を実施するには、大前提としてレシート分析が必要である。レシート分析により、はじめて、単品ごとの客数が把握でき、これまでのPOS分析ですでに把握可能な単品ごとの売上金額、売上数量に加え、購入客数の把握が可能となり、金額、数量分析の2次元分析に加え、新たに客数という1次元が加わり、客単価が単品ごとに3次元で分析できるようになる。しかし、現在のPOSシステムでは中々ここまで分析できるようにはなってなく、しかも、客単価3D分析用の分析フォーマットが一般化していないため、仮に、レシート分析が可能であっても、客単価を3次元で分析し、マーチャンダイジングに活かすという食品スーパーマーケットはまだまだ少ないのが実態である。そこで、ここでは客単価3D分析の視点から見ると、これまでの分析と比べ、どのような違いがあるのかを、現在、活用可能な公開データで体感してみたい。
まず、だれでも、自店のPOSデータで分析可能であれば、それに越したことはないが、残念ながら、現段階のPOSシステムで客単価3D分析ができる体制にはなっておらず、様々な工夫が必要となる。そこで、ここでは誰でも客単価3D分析が可能な公開データを活用することにする。これまで、本ブログでも取り上げてきた、家計調査データと日経MJの新製品週間ランキングである。この2つのデータは家計調査データは毎月、総務庁統計局から公開されている。また、日経MJの新製品週間ランキングは毎週金曜日にデータが公開されるので、誰でも活用することが可能である。
では家計調査データに客単価3D分析の視点を加える方法であるが、家計調査データには10,000分比という購入世帯数の割合がすべての項目ごとに算出されている。これを活用すると、それぞれの購入世帯の割合がわかり、ここから、客単価3D分析を行うことができる。たとえば、直近の10月度の米の1世帯当りの家計消費額は4,125円であるが、これは米を購入している世帯も、していない世帯も含めての平均消費額である。したがって、ここに米の10,000分比5,511世帯を適用すると、この数字は5,511/10,000=55.1%の消費額であることがわかる。したがって、購入世帯のみでみた米の消費額は4,125円÷55.1%=7,486円である。このように、米の消費額=客単価に相当は、実は2種類あり、ひとつは米の購入世帯、未購入世帯を含めた平均1世帯当りの消費額であり、もうひとつは、米の購入世帯のみの消費額である。もちろん、対象全世帯が米を購入すればこれらは一致する。直近の米は、米の購入世帯が約50%であるため、4,125円と7,486円とになった。
そして、ここから、4,125円=7,486円×55.1%という公式、すなわち、客単価=客単価PPI×客数PI値が成立し、米の客単価が4,125円をアップさせるめには、米の購入世帯の消費額、客単価PPIを上げるか、米の購入世帯を増やすかという課題が見えてくるのである。
一方、日経MJについては、前回のブログもぜひ、参照して欲しいが、カバー率を活用することによって、現状の客単価を家計調査データと同様に、新製品の導入店舗と未導入店舗の平均客単価と導入店舗のみの客単価に分けて算出することが可能となる。ひとつ、12/8の直近のデータで示すと、飲料トップの新製品はヤクルト本社のヤクルト65ml×10本であり、客単価289円である。この289円の客単価はヤクルトの導入店舗も見導入店舗も含めての客単価である。他方、この新製品のカバー率を見ると46.7%であり、導入店舗のみでの客単価は289円÷46.7%=618.8円であり、このヤクルトの新製品の導入店舗のみでみた客単価は618.8円であることが計算できる。これは、客単価=客単価PPI×客数PI値の応用であり、ここからヤクルトの客単価289円を上げることは、導入店舗のみの客単価、客単価PPIを引きあげるか、カバー率を引き上げればよいことがわかる。また、この応用としては、チェーンストアであれば、全店の客数と導入店舗のみの客数を分けてみることにより、客単価を全体と導入店舗のみで分けて見ることも可能となる。
このように、これら2つの公開データは現段階では客単価3D分析の数字は示されていないが、電卓で確認することが可能であり、このデータをさらに時間軸で比較すると、客単価があがった理由が、購入世帯のみの客単価があがったのか、購入世帯が増えたのかがわかり、これまでの全体客単価よりも深く、顧客の購買行動を把握することが可能となり、マーチャンダイジングへの様々な仮説を立てることが可能となる。日経MJは毎週、家計調査データは毎月データが更新されるので、是非、電卓で計算し、客単価3D分析を体感して欲しいと思う。
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