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December 09, 2006

過剰在庫、過小在庫を徹底排除せよ!

  12/8の日経に、「トイザらス赤字25億円、今期単独最終」、「過剰在庫の評価損計上」という記事が載った。最近、PI値も客単価アップへの活用だけでなく、在庫PI値を算出し、在庫削減にも取り組みはじめているので、この記事が気になってじっくり読んでみた。内容を見てみると、トイザらスの2007年1月度の単独最終損益が25億円の赤字になるという見通しであり、その理由は過剰在庫の棚卸し資産評価損を20億円特別損失に計上することにあるという。過剰在庫の中でも、今回の評価損に計上する在庫は、不稼働在庫のことで、今後、一定期間に販売が見込めないと判断した玩具に適用し、来期以降値下げ販売するという。金融機関でいえば、不良債権のことであり、一定期間内に回収見込みがたたない債権と同じことであり、今回のトイザらスの在庫はまさに、金融機関における不良債権といえよう。ちなみに、トイザらスは前期も長期借入金の前倒し返済に伴なう清算金を約15億円を計上し、最終損益が赤字になっており、2期連続の赤字という、厳しい決算予想といえよう。

  さて、今回のトイザらスの事例のように、過剰在庫は、最終的には評価損を計上せざるをえなくなり、特別損失が発生し、営業利益、経常利益が好調であっても、最終利益が圧迫され、あまりに過剰な場合は、今回のトイザらスのように、赤字になってしまう場合もある。過剰在庫はできるだけ速く見つけ出し、速く手をうつことが経営にとっては最優先課題のひとつといえよう。また、過剰在庫は、一定期間、資金が、商品販売によって回収されないまま、寝てしまうため、資金繰りの点から見ても、経営を圧迫することになる。今回の、トイザらスの事例では赤字は25億円であるが、過剰在庫の資産評価損はその内の20億円であるといい、この20億円が、本来、販売されれば、資金として使えるキャッシュであるが、これが寝てしまうわけであり、20億円はけっして小さい額ではない。このように、過剰在庫は、利益面から見ても、資金繰り面からみても問題であり、古くて新しい重要な経営課題のひとつといえよう。

  今回のトイザらスの事例は過剰在庫の問題であり、評価損という形で表面化し、それが特別損失に計上され、最終赤字という厳しい結果となり、過剰在庫が経営問題として認識された。しかし、在庫問題はもうひとつあり、過小在庫という問題も実は存在する。これは評価する仕組みがほとんどなく、表面化することがないため、経営への影響も不明確であり、実際問題として手が打たれることがほとんどないのが実態といえよう。仮に、過小在庫を測定できたとすると、これも過剰在庫と同様、経営に深刻な影響を与えていることが容易に想像できる。たとえば、過小在庫は、端的にいえば欠品を引き起こし、それが客単価ダウンにつながり、さらには、その商品の購入者が減り、客数ダウンをもたらすことになるといえよう。過剰在庫は評価損いくらと算定できるが、過小在庫は、客単価ダウンいくら、客数減何人、最終的に売上減いくらと評価できるのであれば、すべきであろう。今回、トイザらスの過剰在庫の評価損の金額が20億円であり、これは年商約2,000億円の1%にあたるので、過小在庫は過剰在庫の裏腹の関係であるので、年商の1%はあると推測できる。このように、本来、在庫管理は、過剰在庫だけでなく、過小在庫も同時に手をつけることがのぞましいといえよう。

  では、過剰在庫、過小在庫をどのような基準で判断したらよいだろうか。それが、まだ取り組み始めたばかりであるが、在庫PI値という指標でみるとわかりやすい。この在庫PI値で単品ごとに基準値をつくることにより、過剰在庫と過小在庫を同時に徹底的に排除してゆくことが可能となる。在庫PI値とは店内在庫÷客数のことであり、単品、小分類ごとに算出する。そして、この在庫PI値の全店平均をもとめ、在庫PI値が全店平均よりも異常に高い店舗は過剰在庫と見なし、即在庫削減を実施し、逆に、全店平均よりも異常に低い店舗は過小在庫と見なし、在庫を増やすように促してゆく。これを一定期間ごとに行うことによって、全店平均に在庫PI値を近づけてゆく。そして、ある程度の方向性が見えた段階で、今度は全店平均の在庫PI値の削減目標をつくり、在庫PI値の平均そのものも徐々にさげてゆけば、全店の在庫PI値も下がり、より、過剰在庫、過小在庫が減ってゆくことになる。また、この在庫PI値の良いところは、基準値が全店平均値をもとに決めれば、各店は各自、電卓ひとつで自分の店舗が過剰在庫か過小在庫かが在庫を数えて、客数で割ればわかることになり、過剰在庫の場合は削減のためのアクションプランをつくればよい。逆に過小在庫の場合は、発注を増やせばよいのであり、各自が単品ごとに適正在庫へのアクションが可能となる。

  実務上は細かい点が多々あるが、概ね、このように在庫PI値で単品ごとに過剰在庫か過小在庫かを各自が各店で見てゆけば、自然、過剰在庫も過小在庫も排除されてくるものといえよう。仮に現在、在庫を把握する仕組みがない場合は重点商品だけでも、各店から報告してもらい、その一覧表をつくり、在庫PI値で基準を示すだけでも、各店は過剰在庫、過小在庫対策が打ち易くなり、会社全体の過剰在庫、過小在庫を減らしてゆけるはずである。ちなみに、粗利PI値=在庫PI値×交叉比率であるので、粗利率が一定であれば、在庫PI値が減れば、理論的には交叉比率は上昇するので、在庫効率は格段とよくなるはずである。PI値もここへきて、やっと在庫管理への活用が見えてきたといえる。

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