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June 30, 2007

スティールパートナーズの買収防衛策への差し止め申請を却下!

   ブルドックソースに対してTOBを実施しているスティールパートナーズがブルドックソースの買収防衛策の差し止めを求めていた仮処分に対する決定が6/28、東京地裁で下され、却下された。スティールパートナーズは即時抗告したが、これで、先の株主総会に続き、法廷闘争も厳しい状況となり、ブルドックソースに有利な情勢となった。日経新聞6/27によると、判決理由の中で、東京地裁の鹿子裁判長は「現経営陣と買収者のどちらに経営を委ねるべきかは、双方の提案などを踏まえながら最終的に株主が判断する」と判じ、さらに、「特定の買収者による経営権支配権の取得が企業価値を損なう恐れがあり、対抗手段が必要との判断は総会に委ねられるべき」とした。今回、ブルドックソースは株主総会の特別決議での2/3の賛成での買収防衛策の決定であり、株主の判断であると見なしたといえよう。ただ、一方で、「特別決議による対抗手段でも、経営支配権の取得を妨げる目的を超えて、買収者の利益を損なうことは許されない」ともしており、特別決議であっても、一定の歯止めをかけた判決であるといえよう。

    このように、今回の件は、株主の意思が尊重された東京地裁の判決であり、今後のM&Aに対しての買収防衛策を考える上でいかに株主からの支持を得られるかが重要な課題となったといえよう。特に今回、ブルドックソースは買収防衛策と同時に、経営計画を公表し、株主に判断を仰いでいるが、スティールパートナーズは、ブルドックソース買収後の経営計画を示すことなくTOBに突入しており、この点も東京地裁は考慮したようであり、「ブルドックソースの株主が企業価値を損なうとの疑念を抱くのは無理もない」としている。買収防衛策は一歩間違えば経営者の保身と取られかねないテーマであるが、今回のブルドックソースは、この点を、株主価値を引きあげる経営計画を提示し、株主総会の2/3の賛成を必要とする特別決議にかけたことで、株主の賛同を勝ち取ったといえよう。

   逆に考えると、今後の企業経営にとって重要な経営課題は株主の2/3の賛成を得られる株主価値の向上を前提としたしっかりした経営計画をつくりあげることであるといえる。そして、その経営計画が着実に実行され、株主にとって目の見える形で還元されることが、企業買収への最大の対抗策であるといえよう。

   ひるがえって、食品スーパーマーケット業界を見た場合、ここ最近、徐々にM&Aの動きも出始めている。アークス、原信ナルスホールディングスはもちろん、フェニックスキャピタルの名鉄パレ、近商ストアへの投資、丸紅インベストメントのマルエツ、東武ストアへの投資等の投資ファンドの動きも活発化しはじめており、今後は、同業種、投資ファンド、そして、異業種からのM&Aがいつおこっても不思議ではない。これまで、食品スーパーマーケット業界はどちかというと、営業面を重視し、売上、利益、経費、そして営業利益を重視した経営がなされ、経営計画についても、新規出店戦略、既存店の活性化計画、仕入れ改善、物流改善、IT投資などが主な課題であったが、今後は、株主にとって直結するROE、自己資本比率、そして、ROA、さらには、ROE、PER、そして、PBR等の指標の向上を裏付ける経営計画をいかに策定するかも重要な課題となろう。

   実際、今期の食品スーパーマーケット各社の目標とする経営指標を見ても、明確にROE、ROAを掲げ、その具体的な向上策を示している企業は少なく、まだまだ、営業利益率、経常利益率を掲げる食品スーパーマーケットも多い。ROA=自己資本比率×ROE、PBR=PER×ROEであるので、株主資本利益率であるROEは、最終的にはROA、PBRの向上策に結びつく指標でもあるので、ROE(株主資本利益率)の向上を前提とした、ROA(総資産の利益率)の向上、PBR(株価純資産倍率)の向上を示した経営計画の策定も、M&Aの時代においては食品スーパーマーケットにとっても重要な経営計画策定上のテーマであろう。

   このように、今回のブルドックソースへ対してのスティールパートナーズのTOBは、食品スーパーマーケット業界にとって、M&Aの時代に入りつつある現状を考えた場合、いつ、同様なことが起こっても不思議ではなく、そのためにも、これまでの営業重視の計画から株主重視の財務面を考慮した経営計画の策定が急務といえよう。その意味で、今回の件は、食品スーパーマーケット業界にとっても、経営そのものを再点検する良い機会であるといえよう。

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