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October 10, 2008

イオン、2009年2月期中間決算、キャッシュフロー逆流!

   流通業界の本命、イオンとセブン&アイホールディングスの2009年2月期、中間決算が10/8、10/9、あいついで公表された。その結果であるが、イオンは、営業収益2兆6,069.25億円(103.2%)、営業利益586.61億円(86.6%:営業収益比2.25%)、経常利益597.59億円(79.6%:営業収益比2.29%)、当期純利益(-160.14億円)となり、増収減益、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。一方、セブン&アイホールディングスは、営業収益2兆8,610.34億円(101.6%)、営業利益1,480.09億円(102.8%:営業収益比5.17%)、経常利益1,479.81億円(101.8%:営業収益比5.17%)、当期純利益675.03億円(97.6%:営業収益比2.35%)となる営業、経常段階では増収増益であったが、当期純利益は若干の減益となった。両企業、明暗が分かれた中間決算の結果といえよう。

   今回の中間決算の流通業界の最大のポイントはアメリカ発の金融不安が世界中に広まり、結果、いずれ、日本の経済、特に消費環境に影響を与えることは必至の情勢となり、財務の健全性が問われる決算となったことにあるといえよう。特に、ここ最近の倒産の状況を見てみると資金ショートによる倒産が増え、バランスシートの結果よりもキャッシュフローが回っているか、すなわち、キャッシュフローの健全性が問われる状況といえよう。小売業の成長は新店開発にあり、新店を開発してゆくには多額の資産の取得が必要となり、そのためにはキャッシュフローを生み出すマーチャンダイジング力が鍵となる。さらに、可能な限り借入に頼らない、自己資本の範囲内での新規出店体制の構築がポイントとなる。

   そこで、この中間決算期のイオンの出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金の合計を見てみると、1兆5,139.96億円(昨年1兆4,157.21億円)であり、昨年よりも約1,000億円増加し、総資産3兆7,081.02億円の40.8%となった。これをグループ全部のGMS、食品スーパーマーケット、コンビニ、専門店、外食等の合計店舗数11,569店舗で割ると1.30億円となる。さらに、多額の資産がかかるGMS、食品スーパーマーケット、スーパーセンター、ホームセンター等のみの合計2,015店舗で割ると、7.5億円となる。イオンが新規出店による成長を維持するには、少なくとも1店舗5億円以上は必要といえ、これをいかに自己資本の範囲内で賄っていけるかが、財務の健全性を維持するポイントであるといえよう。

   イオンの今期の自己資本比率は22.7%(昨年25.6%)であり、出店にかかわる資産40.8%を大きく下回っており、結果、負債に依存する出店構造となっている。ちなみに、セブン&アイホールディングスは自己資本比率46.2%(昨年49.8%)であり、出店にかかわる資産の合計は1兆5,437.64億円であり、総資産3兆9,859.12億円の38.7%と自己資本の範囲内に収まった出店構造となっている。したがって、負債の主要項目である長短借入金の合計もイオンは1兆1,309.55億円(昨年1兆290.17億円)と1兆円を超え、総資産の30.49%となるが、セブン&アイホールディングスは8,749.28億円(昨年7,714.69億円)と総資産の21.95%にとどまる。結果、イオンは自己資本の範囲内では出店ができず、借入に大きく依存する出店構造となっているのに対し、セブン&アイホールディングスは借入金なしでも自己資本の範囲内で新規出店が可能な財務構造である。
   
   そして、それ以上に今回の中間決算で気になるのは、キャッシュフローの状況であり、イオンとセブン&アイホールディンスの状況を一緒に見てみると、営業キャッシュフロー、イオン1,136.71億円(7&I:2,393.27億円)、投資活動キャッシュフロー、イオン-1,646.47億円(7&I:-882.87億円)、そして、財務活動キャッシュフロー、イオン710.86億円(7&I:-825.72億円)、結果、増減、イオン201.10億円(7&I:684.68億円)と、対象的な結果である。セブン&アイホールディンスは営業キャッシュフローの範囲内での投資活動を行い、しかも、余剰キャッシュフローで財務キャッシュフローもカバーし、キャッシュフローを648.68億円プラスにしているのに対し、イオンは営業キャッシュフローで投資活動をカバーできず、結果、財務キャッシュフローで穴埋めし、キャッシュフローを201.10億円のプラスにもっていっている点である。イオンは完全にキャッシュフローの逆流が起こっており、これが続けば、1兆円を超えた長短借入金が減らず、自己資本比率がさらに低下し、今後の成長余力がいまでも苦しいところが、さらに厳しい状況に追い込まれるという構図になっていっていることである。
   
   小売業はスタート時点から現金商売が運命づけられており、日々の1円1円の現金回収が事業構造すべてを支えており、キャッシュフローが最も重視されるビジネスモデルといえよう。理想的には日々の1円1円のキャッシュの積み重ねで、成長のための投資を行い、借入金0で、キャッシュを株主へ可能な限り還元することが理想といえよう。実際、この中間期で、セブン&アイホールディングスは株価にも気を使い、株主対策もキャッシュフローの範囲内で行っており、今期、1,580.93億円の自社株買いを財務キャッシュフローの中で行い、株価対策を通じて株主への還元を行った。
   
   このように、今回はまだ2009年度の中間段階であるが、イオンの数字を見る限り、営業キャッシュフローを生み出すパワーが弱まっており、投資キャッシュフローを財務キャッシュフローで補わざるをえない逆流の経営になっており、この逆流を止めない限り、今後、ますます厳しい経営環境が予想される中、イオンの経営そのものが苦しい状況となろう。今後、残された後期の間にどのような、思い切った経営改革を打ち出し、キャッシュフローの逆流を止めるられるのかに注目したい。

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