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October 11, 2008

セブン&アイ、イオンのマーチャンダイジング力を見る!

   前回のブログでイオンとセブン&アイホールディングスの2009年2月期の中間決算の内容を取り上げた。特に、両企業のキャッシュフローの違いに注目し、イオンが逆流のキャッシュフロー、すなわち、営業キャッシュフローの範囲を超えた投資キャッシュフローとなっており、これを財務キャッシュフローで埋める構造となっていることを分析した。逆に、セブン&アイホールディングスは順流のキャッシュフローとなっており、営業キャッシュフローの範囲内での投資にとどめ、さらに、その余剰資金で財務キャッシュフロー、特に、自社株買いを行い、結果的に株主還元を行っていることを示した。キャッシュフローは小売業はもちろん、企業経営では最も重要な数値であり、これが順流であれば、企業の成長は安定的に継続できるが、逆流になるとやがては成長はストップし、企業の存続にもかかわるテーマとなる。そこで、今回はこのキャッシュフローを生み出す、大本、営業利益に注目し、セブン&アイホールディングスとイオンのマーチャンダイジング力を比べてみたい。

   マーチャンダイジング力とは、本ブログ独特の指標であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた、商品売買から得られる利益から経費を引いた数値であり、この数値が強いほど、マーチャンダイジング力が強いと判断し、マーチャンダイジング力と名づけている。一般に食品スーパーマーケットはプラスになるが、GMS、SC等はマイナスとなりがちであり、そのマイナス分を営業収入であるテナント収入、物流収入等で埋め、営業利益をプラスにしている場合が多いのが実態である。食品スーパーマーケット業態でも、GMS、SC等を主力業態にしている場合はマーチャンダイジ力はマイナスとなり、営業収入で営業利益をプラスにもっていっている場合が多い。通常の損益計算書ではこの数字が表されていないので、マーチャンダイジング力を見る場合は電卓で計算しないと算出できない指標である。

   さて、セブン&アイホールディングスとイオンのマーチャンダイジング力であるが、イオンの原価は71.5%(昨年71.1%)と0.4ポイントの原価の上昇がみられる。結果、売上総利益は28.5%(昨年28.9%)となり、0.4ポイント下がっており、いわゆる粗利が下がっている。イオンは現在、PB戦略を激しい勢いで進めており、この中間期は1,683億円(昨対138.0%)という伸び率で推移しており、イオン本体(小売業)の売上の10.0%の構成比にまでなった。当然、粗利の改善にインパクトがあるはずであるが、相乗積から見ると、3%の粗利改善でも0.3ポイント、5%の粗利改善でも0.5ポイント、10%の改善で1.0ポイントであるが、今期の売上総利益を見る限り、それ以上に、残り90%の既存商品の原価上昇が大きく、結果、粗利の改善にはつながらなかったようである。ただ、今回算出しているマーチャンダイジング力はイオン全体の数字であるので、それでPB比率を計算するとまだ、数%にとどまっており、小売本体の数字が30%ぐらいにならいないと、全体へのインパクトは表れてこないといえよう。

   これに対し、セブン&アイホールディングスの原価であるが、74.7%(昨年73.7%)と何と1.0ポイントも原価が上昇しており、結果、売上総利益は25.3%(昨年26.3%)と1.0ポイントと大幅にダウンした。この数字を見る限り、イオンの方が、原価上昇率は低く、PBの貢献度はかなりあったとも推測できる。また、販売費及び一般管理費であるが30.4%(昨年31.1%)と0.7ポイントと大幅に改善しているが、原価上昇分の1.0ポイントまでは改善できず、結果、粗利差、マーチャンダイジング力は-5.1%(昨年-4.8%)と-5.0%を超えてしまった。これに不動産収入等の営業利益が加わるが、セブン&アイホールディングスは何と10.8%(昨年10.4%)もあり、結果、営業利益は5.7%(昨年5.6%)と逆転、一転、営業利益率がプラスに転じ、今期、好決算をもたらすこととなった。原価の上昇を経費の削減と不動産収入等で補い、営業利益率をプラスに持っていった構図である。ただ、マーチャンダイジング力は-5.1%であるので、今後、この面の改善が大きな経営課題となろう。

   一方、イオンであるが、販売費及び一般管理費は36.9%(昨年37.1%)と0.2ポイント改善し、結果、マーチャンダイジング力は-8.4%(昨年-8.2%)とやはり、原価上昇分をカバーできず、何と、-8.4%とセブン&アイホールディングスの-5.1%と比べても大きなマイナスである。これに不動産収入等の10.9%(昨年11.2%)が加わり、結果、営業利益は36.9%(昨年37.1%)となり、残念ながら、営業利益率を落としてしまった。原価の上昇分を経費の削減と営業収入でのカバーを目指したが、経費は改善したが、売上総利益が下がってしまい、結果、営業利益率が昨年を下回り、減益となった構図である。

   こう見ると、やはり、マーチャンダイジング力、すなわち、原価を引き下げ、経費を引き下げる力、結果、商品力を引きあげる力が強くないと、それ以外の収益でカバーしても結果、本業である商品から得られるキャッシュフローが弱くなり、企業のパワーを落とすことになる。この中間決算ではマーチャンダイジング力を比較すると、イオン-8.4%に対し、セブン&アイホールディングスは-5.1%であり、ここの差がキャッシュフローの差そのものを支える根幹といえ、この面でも両企業の差は明暗が分かれたといえよう。残された数ケ月、本決算でイオンのマーチャンダイジング力がどこまで改善するかに注目したい。また、セブン&アイホールディングスも、キャッシュフローを生み出すには、さらにマーチャンダイジング力を高める必要があるといえ、今後、どこまで、数字が改善されるかに注目したい。

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