食品スーパーマーケット、借入金比率、銀行比率は?
12/10の日経に「資金繰り銀行シフト、社債やCP、市場調達困難に、東芝・第一三共・日通など」という記事が掲載された。内容は、大企業の資金調達が銀行借り入れにシフトしているという記事であり、東芝が5,000億円の借入枠を設けたほか、第一三共も2,100億円を銀行から調達するという。現在、金融市場の混乱が続いており、コマーシャルペーパーの発行難がしばらく続くとのことで、間接金融による資金確保に転換する動きが目立つという。したがって、この動きが強まると、結果として、中小企業へ資金が行き渡りにくくなる恐れもあり、年末に向け、資金繰り不安が広がる可能性があるという。
そこで、食品スーパーマーケット業界はどのような資金調達を行っているのかを、この中間決算の数字で確認してみたい。代表的な食品スーパーマーケット10社、平和堂、オークワ、マックスバリュ東海、マルエツ、ライフコーポレーション、サンエー、イズミヤ、ベルク、ヤオコー、関西スーパーマーケットの状況を見てみたい。まず、総資産の平均であるが、1,256.26億円であり、この10社の中で最も総資産の大きい食品スーパーマーケットは2,618.84億円のイズミヤであり、ついで、2,507.42億円の平和堂である。逆に、総資産の少ない食品スーパーマーケットは、ベルクの510.47億円、関西スーパーマーケットの517.93億円である。
この内、平均何%が長短借入金等で賄われているかを見ると、21.1%であり、金額では343.49億円である。最も借入依存度の高い食品スーパーマーケットは資産規模に比例するようにイズミヤ37.1%、平和堂36.6%であり、逆に低い食品スーパーマーケットは2.0%のマックスバリュ東海、4.0%のサンエーである。ここから見ると、食品スーパーマーケット業界はほぼ資産の20%を借入に依存した商売をしているといえ、その金額は約350億円ということになる。
そこで、次に、この内、直接金融はどのくらいであるかを調べてみると、借入金合計の割合で見ると、何とわずか平均3.5%、32.63億円である。しかも、10社の内、わずか2社のみのであり、平和堂の17.4%、160億円、イズミヤの17.1%、166.34億円である。資産規模が大きく、借入依存度の高い2社が銀行借り入れではなく、独自の資金調達を行っており、残りの8社はすべて、銀行借り入れのみであることがわかる。ちなみに、短期と長期ではどちらが大きいかであるが、10社平均の短期は154.70億円、長期は156.15億円とほぼ半々であり、バランスが取れている状況である。
したがって、食品スーパーマーケットのほとんどは直接金融ではなく、間接金融の銀行借り入れに依存した資金調達を行っており、今後、大企業の資金調達が雪崩をうって間接金融の銀行借り入れにシフトしてくると、食品スーパーマーケットの資金調達に支障をきたす恐れがあるといえ、借入依存度の高い食品スーパーマーケット、特に、短期借入金の大きな企業は資金繰りが苦しくなる可能性があり、今期は厳しい経営を余儀なくされる可能性が高まってきたといえよう。今回の10社の中で、短期借入金の高い食品スーパーマーケットを見てみると、平和堂441.54億円、イズミヤ380.90億円、ライフコーポレーション378.20億円、オークワ220.66億円などが短期依存型である。
参考に、イオンとセブン&アイホールディングスの数字を見てみると、総資産はイオン、3兆7,081.02億円、セブン&アイホールディングス3兆9,858.12億円であり、借入依存度は27.8%、22.0%であり、イオンは1兆290.17億円、セブン&アイホールディングスは8,749.28億円である。この内、資金調達の状況を見てみると、イオンは22.0%、2,262.64億円、セブン&アイホールディングスは30.5%、2,670.67億円が直接金融であり、食品スーパーマーケットと比べると、直接金融の比率がやや大きいのが特徴といえよう。ただ、それでも22.0%と30.5%であるので、大部分は間接金融、銀行借り入れであり、直接金融の割合は低いといえよう。ちなみに、借り入れ金の中で短期と長期の状況であるが、イオンは長期の方が多く、短期2,570.97億円に対し、長期5,456.56億円であるのに対し、セブン&アイホールディンスは短期3,291.87億円であるのに対し、長期2,786.74億円と短期が多いのが特徴である。
日経の記事の内容では、この11月度の社債発行額は前年同期比で45%減となり、機関投資家はかつてないほど信用リスクに敏感になっているという。したがって、この反動で企業の資金調達が思うようにできなくなり、銀行に駆け込む状況となっているという。食品スーパーマーケットについては、上記に見たように、その大半が銀行借入に依存している構図であるので、この状況をみる限り、今期の資金繰りはかなり厳しい状況が予想される。
このように、代表的な食品スーパーマーケット10社、これに加え、イオンとセブン&アイホールディングスの借入金の状況を見てみたが、小売業界は大半が間接金融の銀行借り入れに依存している財務状況であるといえる。今後、この資金調達が大企業の銀行シフトに押されるようであると、最も資金需要が必要な年末年始、そして、決算時期である来年2月、3月はかなり厳しい資金繰り難が予想され、借入依存度の高い食品スーパーマーケットほど厳しい財務状況となろう。今期の年末年始は例年になく、食品スーパーマーケット業界にとっては、厳しさが予想される状況となろう。
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