イオン、三菱商事との包括業務提携を公表、真の狙いは?
12/6に日経新聞が報道して以来、くすぶっていたイオンと三菱商事との包括業務提携の内容が12/16公表された。初報道から10日目のことであり、しかも、日経新聞で事前に大きく取り上げられていた割には、かなりあっさりした内容である。実際、公表された内容は、以下の4点である。(1) 流通機構の近代化と合理化に資する取組み、・効率的、合理的なグローバルサプライチェーンの構築によるコストダウン等の追求、(2) お客様が満足する品質・価格の商品を調達するシステム作り・グローバルネットワークを活用した原材料・商品並びに資機材などの開発及び調達、(3) 消費者利便の極大化を目的とした金融、I T、マーケティング事業の取組み・金融、IT、メディア・コンシューマー事業(4) その他、両社で合意した事業である。
この内容を見る限り、(1)はコストダウンであり、(2)は商品調達であり、(3)は非物販の事業のことであり、(4)はその他であるので、今回の包括提携がイオンにとってどのような意義があり、目的は何かが現時点ではよく見えない内容である。また、株式に関しても、三菱商事がイオンの発行済み株式の5.05%を市場で取得するとのことであり、イオンに資金が入ることでもなく、三菱商事が経営権を握るわけでもなく、微妙な比率であるといえよう。
12/17の日経新聞では、イオン、三菱商事、両社長の一問一答が掲載されているが、これを見ると、記者も疑問をもっているようであり、様々な質問をしている。「5%という比率は中途半端ではないか。」という質問に対し、三菱商事の小島社長は、「信頼関係を深めるために意味のある数字。・・」と答えている。また、「提携はイオンの改革にどうつながるのか。」という質問に対し、岡田社長は、「商品調達力の強化やアジア各国で出店を加速するには大きな味方になってもらえる。」と答えている。イオンの現在の経営課題は国内問題にあるといえ、そこがどのように今回の三菱商事と提携することによる意義があるかが、いまひとつ明確さにかけるといえる。どうも、イオンも三菱商事も、反応がいまいちはっきりしない状況であり、わかりにくい内容である。
ちなみに、12/17のイオンと三菱商事の株価であるが、イオンは847円(+7円、+0.83%)で、ほぼ横ばいであり、ここ数日の動きも12/8の日経で報じられた後のはじめての株式売買日に一時900円を超え、907円となり、売買高も通常の倍の800万株近くまで買われたが、その後、株価、売買高ともに下がり、850円前後で推移している。投資家の反応は鈍いといえよう。一方、三菱商事の株価は、12/17現在、1,210円 (0.0%、 0.00%)という状況であり、変化がなかった。また、ここ数日も1,200円前後で大きな変動がなく、今回のイオンとの包括提携への投資家の反応は鈍いといえよう。
また、今回、日経新聞でも図面入りで丸紅と関係も示されているが、岡田社長は、「他の商社との関係はかわらない」と述べているが、直接の株式は1%未満の取引であるが、三菱商事以上の関係が深い状況いといえ、今後、丸紅との関係も気になるところである。現在、イオンと丸紅との関係は、マルエツについてはイオン33%、丸紅30%と株式を持ち合っており、合計50%を超える関係である。ダイエーについても、イオン20%、丸紅30%とこれも合計50%という関係である。そして、PB開発子会社はイオン85%、丸紅15%、商品調達子会社はイオン85%、丸紅15%という関係でもあり、丸紅とは深い絆があり、お互い協力して、経営に当たらなければならないマルエツ、ダイエーという状況である。こう見ると、やはり、三菱商事との包括提携は今後これら丸紅との関係もどう位置づけられるかが読みにくいところである。
特に、食品スーパーマーケットの部分だけでみても、イオンのマックスバリュグループと丸紅と関係の深いマルエツ、そして、三菱商事と関係の深いライフコーポレーションとの関係はどうなるのか。これが仮に、業務提携に入ると、1兆円を超える食品スーパーマーケットグループが誕生することになり、食品スーパーマーケットの合従連衡がいっきに進むことになる。ただ、今回の包括提携では、食品スーパーマーケットに関しては一切触れられていなかったので、現時点はこのような提携は難しいであろう。また、コンビニでも三菱商事系列のローソンとイオンの子会社、ミニストップとの連携も考えられることであるが、岡田社長は、「協力について真剣に話し合ったことはないが、・・」とコメントしており、食品スーパーマーケットに限らず、さらに現実性の高いコンビニに関しても連携の話があいまいであるといえよう。
このように、イオンと三菱商事との包括提携が12/16締結されたというが、どうも、わかりにくい内容であり、市場の反応、新聞報道もにぶい反応であり、真の狙いがつかみにくい包括提携といえよう。もう少し、時間をおけば、次のアクションが起こり、今回の包括提携の真の狙いが明確になるのではと思うが、現時点では、きわめてわかりにくい業務提携であるといえよう。
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