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December 10, 2008

パート比率、食品スーパーマーケットの現状を見る!

   ここ最近、派遣労働者の解雇問題が深刻な状況となっている。現在は輸出産業を中心とした自動車、家電等の特に海外の大幅な売上不振に対応するため、経費削減が避けて通れない経営課題となり、その中でも最も大きい費用項目である人件費の削減に踏み込まざるをえなくなったためであるといえよう。つい最近までは、食品スーパーマーケットのパート従業員が集まらず、食品スーパーマーケットではパートの採用に苦労していた。その背景には、自動車、家電などの時給の高い工場へパート社員が流れていったことが大きな要因のひとつであったといえるが、今度は、一転、その工場から大量のパート社員、派遣労働者が解雇されるという事態となり、この数ケ月で全く逆の労働市場の流れとなった。

   一般に食品スーパーマーケットは大量のパート社員で事業が成り立つ産業であり、メーカーとは労働環境が正反対の構造である。たとえば、トヨタは非正規雇用比率が17.7%であり、その内分けは全従業員86,881人に対し、非正規雇用者15,378人、正規雇用者71,503人である。これに対し、典型的な食品スーパーマーケットであるマックスバリュ東海はパート比率が80.9%であり、全従業員5,226に対し、パート社員4,226人、従業員1,000人という状況である。雇用に関する事業構造は全く逆である。

   したがって、現在、食品スーパーマーケットは比較的業績が好調であり、成長性の高い企業はパート社員が確保しやすい環境となり、これまでの採用難が一気に解消されつつある状況にはなった。ただ、今後、急激な消費の落ち込みが起こり、成長が難しくなった場合は、食品スーパーマーケットとしても、パート社員から解雇せざるを得ない経営状況にいつなってもおかしくないといえ、よく経営環境を見渡し、慎重に行動することが必要といえよう。

   ここで、現状の食品スーパーマーケットのパート比率をもう数社、代表的な企業でみてみたい。なお、参考に、労働分配率(人件費÷総経費)も合わせてみてみる。パート比率の高い順に見てみると、カスミ78.2%(労働分配率46.5%)、ヤオコー76.7%(46.9%)、ヤマザワ74.1%(46.1%)、原信ナルスホールディングス72.0%(54.9%)、いなげや71.3%(49.0%)、平和堂69.0%(44.8%)、ベルク 68.7%(38.5%)、関西スーパー66.7%(48.1%)という状況である。パート比率は約80%から60%強という数字であり、平均では70%前後といえよう。食品スーパーマーケットはその意味で、日本の産業の中でも最もパート比率、すなわち、非正規雇用が高いといえ、現在、起こっている労働問題を解決する上においても、今後、食品スーパーマーケットは少なからぬ貢献ができるのではないかと思う。

   ただ、見方を変えれば、それだけ生産性が低いともいえ、これはこれで今後、食品スーパーマーケットにとっては構造改革を行わなければならない産業でもあるといえる。上記データの労働分配率をみても、パート比率が70%前後でも労働分配率が50%近い数字、あるいは、50%を超える食品スーパーマーケットもあり、これはこれで、いますぐに、経営構造の転換が必要な状況といえよう。また、ベルクのように38.5%という理想的な数字の食品スーパーマーケットもあり、まさに、高いパート比率が労働分配率を引き下げ、安定した経営を確保しているともいえよう。

   もう1社、例外的な食品スーパーマーケットを見てみたい。オオゼキである。残念ながら、直近のデータ、2009年中間決算では確認できなかったので、2008年2月期の本決算で見てみると、オオゼキのパート比率はメーカー並みの33.2%であり、労働分配率は58.4%と極めて高い数字である。それにも関わらず、経費比率は18.2%であり、これは驚異的な数字である。ちなみに、営業利益率は7.7%と食品スーパーマーケットではトップクラスの高収益企業である。一般にはオオゼキは正社員比率が異常に高いので、人件費を極めて低く抑えているのではと思われているが、上記に見るように、労働分配率は58.4%と食品スーパーマーケットの中でもトップクラスであり、人件費を抑えているわけではない。日本の上場食品スーパーマーケットの中でも、これだけ高い、メーカー並みの正社員比率を出せる企業はオオゼキぐらいであり、食品スーパーマーケット業界の中では独特な経営手法といえよう。

   オオゼキがここまで、正社員比率を高め、同時に労働分配率を高めているにもかかわらず、高収益となる理由は、それ以外の経費を相対的に激減させるだけの、営業効率、すなわち、坪効率を達成しているためであり、年間1,300万円/坪と通常の食品スーパーマーケットの約3倍の数字を達成しているためである。

   このように、オオゼキのように例外的な食品スーパーマーケットもあるが、ほとんどの食品スーパーマーケットのパート比率は約70%前後といえ、食品スーパーマーケットが成長をしてゆくためには大量のパート社員、非正規雇用が必要といえ、今回、輸出産業を中心に大量の非正規雇用の解雇が発生しているが、食品スーパーマーケットがこの雇用吸収に貢献できるとすると、それは成長により、パート社員を増やすことであるといえよう。ただし、トヨタの社員は通常の食品スーパーマーケットの10社分に当たるので、大メーカーが大量解雇となった場合は難しいが、ゆるやかな解雇であれば、内需拡大により、かなり雇用が吸収できるといえ、今後、ますます食品スーパーマーケットの社会的な役割は重みが増すといえよう。

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