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January 2009

January 31, 2009

日経MJ新製品週間ランキング1/30をカバー率から見る!

   ここ最近、日経MJ新製品ランキングが低迷気味である。最新の1/30の数字を見てもNo.1は森永乳業、ビヒダスプレーンヨーグルト脂肪0(ゼロ)500gであり、金額PI値は323円(1人当たり0.323円)である。323円は金額PI値の評価としては、Bランクであり、以前はAランク500円を超える新製品が数品はあった。しかも、今週Bランンクはこの1品のみであり、Cランクの200円を超える新製品もわずか3品という状況であり、明らかに、ここへきて新製品が低迷気味で推移しているといえよう。そこで、今回は、ランキングの金額PI値にこだわらず、カバー率という観点から、どれだけ、対象の食品スーパーマーケット45チェーン、250店舗のバイヤーに受け入れられたかをもとに見てみたい。

   日経MJ新製品週間ランキングの金額PI値は導入店舗のみの金額PI値であり、対象全店舗の客数を分母とした総店の金額PI値ではない。したがって、カバー率をみることによって、その金額PI値がどのくらいの重みがあるかがより鮮明になり、導入店のみの金額PI値を活用する時はカバー率は重要な指標のひとつとなる。一般に金額PI値総店=客数PI値×金額PI値導入店であり、客数PI値は導入店の客数÷総店の客数となる。したがって、客数PI値が100%になれば、金額PI値総店と金額PI値導入店は一致するが、100%以下では常に金額PI値導入店の方が高くなるのが通常である。したがって、客数PI値が低い場合はそれなりの考慮が必要であり、注意して数字を判断することがポイントとなる。

   また、カバー率は客数PI値に極めて近い数字ではあるが、微妙にずれるので、カバー率を活用する時はそれなりに注意が必要である。たとえば、客数の多い店舗がカバー率の中に多く含まれた時には、カバー率が低く、少ない店舗数でも金額PI値総店の数字が高めに出たり、逆に、客数が少ない店舗の場合は、小さめに出たりするからである。その意味でカバー率を使う場合はこのようなことを考慮する必要があるので、それをわきまえた上での判断が必要である。

   さて、今週の日経MJ新製品ランキングにおいて、カバー率No.1の新製品であるが、98.0%のカルビー、ポテトチップスコンソメパンチ70gである。ほぼ100%といえ、ここまでカバー率が高い新製品はまれであり、改めて、ポテトチップスのすごさが浮かび上がったといえよう。ポテトチップスはNo.2にもカバー率97.6%でうすしお味70gが入っており、この2品は断トツのカバー率である。ちなみに、ビックパックうすしお味170gもランキングに入っているが、カバー率は60.5%、コンソメパンチ170gは58.1%であり、約40%の対象食品スーパーマーケットで未導入である。さらに、カルビーの新製品のかっぱえびせん紀州の梅75gは、カバー率がわずか28.6%であり、同じメーカーの商品でも、商品により、カバー率は全く違い、食品スーパーマーケットのバイヤーとメーカーの営業マンとの交渉力、どこまで消費者に受け入れらるかの商品力の読みの相違が現れた結果ともいえよう。このカバー率は消費者の声以上に、小売業とメーカー(卸)との駆け引き、交渉力、営業体制など様々な要素が絡んだ結果の数字ともいえる。

   意外に、菓子にはカバー率の高い新製品が比較的多く、明治製菓、チェルシースカッチアソート84gもカバー率が97.2%と極めて高い数字である。これについで、カバー率が高い新製品は、80%台となるが、冷凍食品部門の森永製菓、エスキモー「PARMチョコレートバー」55ml×6本であり、カバー率は81.0%である。もう1品、飲料部門であるが日本コカ・コーラ、コカ・コーラプラス500mlペットボトルが80.2%である。80%以上のカバー率の高い今週の新製品は以上の5品であり、カバー率でみて80%を新製品が超えるのはいかにむずかしいかがわかる。

  では、70%台のものを見てみたい。ランダムにピックアップしてみると、76.6%の日本コカコーラ、ファンンタワールドカリフォルニアグレープフルーツ500mlペットボトル、71.0%のコカ・コーラプラス1.5L、78.6%のネスレコネクショナリー、キットカットミニ紅白パック14枚、71.8%の明治乳業、エッセルスーパーカップストロベリー(チョコチップ入り)200ml、70.2%の明治乳業、ブルガリアヨーグルト白桃&黄桃80g×4個、77.8%の六甲バター、QBBベビーチーズ(プレーン)4個60g、74.2%のQBBアーモンド入りベビー4個60g、77.0%のQBBカマンベール入りベビー4個60g、そして、家庭用品部門から1品、72.6%の花王、ハミングフレアふわっと花咲くエッセンスつめかえ用520mlである。

  このように、カバー率のランキングでみると、金額PI値でのランキングとは一味違った角度から新製品が見えてくることがわかる。今回、ピックアップされたカバー率が70%以上の全新製品を見ると、もともと定番でも強い商品のリミューアル、改良商品が多く、いわゆるブランド力があるものが、70%という大きな壁を越えてくるという特徴があるように思える。カバー率は金額PI値と違い、消費者の評価に加え、メーカーの営業努力がかなり入る余地がある領域でもあり、この数字をいかに引き揚げるかの戦略的な取り組みも重要な営業政策といえよう。当面、新製品ランキングは低迷気味で推移することが予想されるので、今後は、このカバー率などの動きも取り入れ、新製品の動向みてゆきたい。

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January 30, 2009

PLANT、厳しいスタート、2009年9月期、第1四半期決算!

   1/27、PLANTの2009年9月期の第1四半期決算が公表された。PLANTは現在、売上は好調に推移し、この12月度は全体が113.9%、内、スーパーセンターは114.0%である。その好調な売上が利益にどう結びつているかが問われた決算である。結果は売上高210.86億円(112.1%)、営業利益0.10億円(7.0%:売上対比0.04%)、経常利益-1.45億円、当期純利益-0.81億円と増収大幅減益、経常利益、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。ただ、通期予想は、売上高900.00億円(108.3%)、営業利益11.00億円(109.2%:売上対比1.2%)、経常利益10.00億円(212.4%:売上対比1.1%)、当期純利益5.00億円(187.0%:売上対比0.5%)と、売上対比はなお厳しいものがあるが、増収増益となる決算予想であり、この第1四半期決算は特別に厳しい決算となったともとれる。

   これについて、PLANTは、棚卸資産の評価に関する会計基準が適用され、棚卸資産評価損が0.87億円発生したことが、営業利益を圧迫したとのことである。また、営業外費用にシンジケートローンの手数料1.17億円が発生し、経常損失、当期純利益の損失となったとのことである。したがって、棚卸資産の評価方法が今後とも適用されるので、営業利益への影響は続くと思われるが、シンジケートローンの手数料は一括であれば、今後は発生しないので、収益への影響はなくなるといえ、これを見込んでの、通期利益の予想といえよう。

   そのシンジケートローンであるが、昨年10/9に総額190億円の規模であり、タームローン170億円、コミットメントライン極度20億円の内容である。幹事行は地元福井銀行であり、福邦銀行、北國銀行の地方銀行に加え、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行など都市銀行など10行からなるシンジケートローンである。これにより、PLANTは既存借入金の返済や運転資金に機動的に対応でき、資金繰りの長期安定化を図るという。

   では、PLANTの現在の財務状況はどうかを見てみたい。この第1四半期の自己資本比率は14.9%であり、2008年9月期の決算時が16.4%であり、かなり厳しい状況であり、負債に大きく依存する経営状況であることがわかる。その負債の中身であるが、長短借入金の合計が208.67億円(2008年9月決算時188.84億円)であり、わずか、3ケ月で約20億円増加しており、総資産が395.48億円であるので、52.7%と大半を占めており、厳しい状況である。

   PLANTの現在の売上好調な要因は新規出店にあり、大熊店(PLANT4)、福知山店(PLANT3)、鏡野店(PLANT5)の新店が寄与している。PLANTのこれら新店を含めた出店にかかわる資産、建物、土地、その他の合計は205.35億円であり、これは総資産の51.9%となり、自己資本比率14.9%を大きく上回り、差し引き、出店余力は-37.0%となる。出店にかかわる大半を負債に依存する構造となっており、しかも、営業利益が厳しい状況であり、財務的には厳しい状況である。

   したがって、キャッシュフローに関しても、今期は営業キャッシュフローが3.80億円とはなったが、その大半は減価償却費の3.99億円に負うところが大きく、当期純利益は純損失が発生したため、その貢献がなく厳しい状況であった。投資キャッシュフローは-3.37億円であり、その大半は定期預金への3.25億円であり、新規出店等への投資は0.68億円とほとんどできない状況である。したがって、フリーキャッシュフローは0.43億円とわずかなプラスにとどまった。これに財務キャッシュフローであるが、長短借入金を152.16億円返済しているが、新たに長期借入金を172.00億円借り入れており、結果、長期借入金が約20億円増加し、借入依存度が上昇している。その結果、財務キャッシュフローは19.26億円のプラスになり、トータルのキャッシュフローは19.69億円とはなったが、借入金がさらに増加していることが気になるところである。

   PLANTはこのように財務的には借入依存度をさらに増し、厳しい財務状況といえるが、その財務状況を改善してゆくにはひとえに、営業利益を増加させる以外にはない。その営業利益の状況であるが、今期のPLANTの原価は81.53%であり、昨年が81.23%であるので、0.3ポイント上昇しており、結果、売上総利益は18.46%(昨年18.75%)となった。一方、販売費及び一般管理費であるが18.41%(昨年17.99%)と約0.4ポイント上昇している。したがって、減価、経費双方が昨年よりも上昇しており、営業利益が0.05%(昨年0.76%)となり、営業利益が極めて厳しい状況になった。PLANTは本来、日本独自のスーパーセンターを目指し、経費比率を極めて低く抑え、利益を生み出す新業態を目指し、当初は15%前後の経費比率であった。ところが、ここ最近は、今期の数字を見ても18%強へと大きく増加しており、利益を生み出すにはかなり厳しい水準になっているといえよう。

   このように、PLANTの今期はじめてとなる2009年9月期の第1四半期の決算が公表されたが、かなり、深刻な決算結果といえ、売上は極めて好調な推移であるが、財務状況は極めて厳しい状況である。この厳しい財務状況を改善するには、マーチャンダイジング力を改善するしか方法はなく、棚卸資産の評価に関する会計基準の適用がなさる中、原価の上昇は避けられず、いかに、年々上昇気味の経費をコントロールできるかが課題といえよう。次の中間決算までに、どこまで経費比率が改善され、営業利益がプラスとなるか、まったなしの経営が続くといえよう。

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January 29, 2009

売上速報、食品スーパーマーケット、2008年12月、堅調!

   今月は、食品スーパーマーケットの売上速報の公表が遅くなってしまった。大黒天物産の公表をまっていたからであるが、残念ながら、1/27現在、まだ公表がないので、今回は大黒天物産なしでの2008年12月度の食品スーパーマーケットの売上集計である。結果は24社約2,000店舗の集計であるが、104.0%と堅調な数字となった。11月度106.2%。10月度103.9%、9月度103.5%、8月度104.7%、・・であるので、ほぼこれまでの伸び率に近い数字であり、堅調な数字といえよう。

   現在、未曾有の経済危機に突入しはじめたといえる厳しい消費環境の中ではあるが、食品スーパーマーケットはコンビニと並び、比較的堅調な伸びを示しており、この12月度も落ち込むことなく、売上数字を伸ばしたといえよう。今回集計した食品スーパーマーケットは上場企業の中で月次売上を公表している24社であるが、この12月度昨対を下回った食品スーパーマーケットはわずか4社であり、20社が昨対を超え、110%以上が3社、105%以上が9社、合計12社の半数が昨対を105%上回っており、堅調というよりも、好調といっても良い状況といえよう。これは、食品スーパーマーケットが家計の節約志向、内食需要をとらえ、その追い風に乗ったということも大きな要因であるといえよう。

   このような中で、この12月度110%を超えた3社であるが、No.1はPLANTであり、何と114.3%である。昨年、改正まちづくり3法施行前に申請したPLANTの新店2店舗の貢献が大きく、売上を大きく伸ばしている。ただ、既存店も100.5%と堅調な伸びであり、PLANTがここへきて、売上が回復しつつあるといえよう。No.2はマックスバリュ西日本であり、111.8%である。既存店も104.2%と順調に推移しており、特に、既存店の客数が103.5%とよく伸びている。そして、No.3がここへきて積極的な新店戦略を打ち出したスーパーバリューであり、110.4%である。昨対は99.8%とわずかに下がったが、新店効果により、売上は順調に推移している。

   また、110%にはわずかに届かなかったが、109.9%となった食品スーパーマーケットが2社ある。1社はマックスバリュ東海であり、109.9%、既存店は100.0%である。客数と客単価をみると、全体、既存店ともに客数が伸びており、全体の客数は116.3%。既存店も102.5%と伸びており、客単価は逆に全体が94.6%、既存店も97.5%と厳しい状況であり、客数アップ政策が売上を大きく伸ばす結果となった。特に、8/1にシーズンセレクトを吸収合併したことが全体の数字を押し上げた要因である。そして、もう1社はハローズであり、109.9%、既存店は97.0%と苦戦気味であるが、新店戦略が功を奏し、全体を大きく押し上げたといえよう。

   以上がこの12月度110%以上、あるいは、ほぼ110%の力強い売上の伸びを示した食品スーパーマーケットであるが、いずれも、積極的な新店政策に支えられた売上の伸びといえ、攻めの経営がここに来て、明暗を分けているともいえよう。食品スーパーマーケットの成長が改めて新店戦略にあることが明確になったともいえる。

   ついで、105%以上の食品スーパーマーケットを見てみたい。No.6は九九プラスであり、107.5%であり、既存店も102.7%と堅調な伸びを示している。ローソンとの業務提携も着々と進み、節約志向の追い風にものり、既存店も含め、堅調な伸びといえよう。No.7はマックスバリュ東北である。106.8%であり、既存店も101.1%という伸びである。マックスバリュは、西日本、東海、東北の3社が好調といえ、この12月度は中部(101.2%)、北海道(92.5%)と、この2社は伸び悩んだといえよう。特に、マックスバリュ北海道は既存店が89.1%となる深刻な数字となり、今後、抜本的な改革が必要といえよう。

   続いて、105%以上の食品スーパーマーケットであるが、No.8はイズミであり、106.5%である。先月の新店オープン効果の117%台からは大きく後退したが、堅調な伸びが続いている。No.9はオオゼキ、106.4%であり、以前として、新店がない中、既存店だけの数字であるが、106.4%は高い伸びであり、今回の全食品スーパーマーケットの中で最高の既存店の数字である。No.10はダイイチであり、105.8%、既存店は99.3%とやや厳しい数字であるが、新店が寄与したといえよう。No.11はヤオコーであり105.8%、既存店も101.8%と
堅調な数字であった。そして、No.12がユニバースであり、105.1%、既存店も102.0%であった。

   以上がこの12月度105%以上の食品スーパーマーケットであったが、逆に、100%を下回ったのは、先ほどもあげたマックスバリュ北海道92.5%、エコス96.8%、Olympic97.6%、トーホー99.0%の4社のみであった。

   このように、この12月度も食品スーパーマーケットは売上が堅調に推移しており、昨対を下回る企業はわずか4社であり、改めて食品スーパーマーケットの好調さを示したといえよう。ただ、経済情勢は日々悪化し、消費環境も予断を許さない状況となり、家計は節約志向から、家計のリストラへとむかいつつあり、生活設計そのものの見直しに入りはじめたといえよう。したがって、昨年のように、節約志向の追い風に乗った売上の確保はより、厳しくなることが予想され、今期は厳しい状況に追い込まれることもないとはいえない。次の1月、そして、2月の数字がどのように推移するか注意深く見守ってゆく必要があろう。

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January 28, 2009

アークス、マクスバリュ北海道、第3四半期、明暗!

   現在、北海道では、食品スーパーマーケットが三つ巴の激しいシェア争いを繰り広げている。アークスグループ、イオングループ、そして、生協グループである。ここへきて、その趨勢、優勝劣敗が明らかになりつつあるが、ここでは、この第3四半期のアークスとイオングループの食品スーパーマーケットの中核、マックスバリュ北海道の決算数字を比較し、今後の動向をうらなってみたい。

   まず、アークスが1/6に公表した2009年2月期の第3四半期決算の結果であるが、売上高1,891.91億円(105.6%)、営業利益60.52億円(107.7%:売上対比3.2%)、経常利益66.68億円(109.0%:売上対比3.5%)、当期純利益38.20億円(108.8%:売上対比2.0%)と増収増益となる好決算であった。一方、マックスバリュ北海道が12/15に公表した2009年1月期の第3四半期決算であるが、営業収益570.78億円、営業利益-2.38億円、経常利益-1.98億円、当期純利益2.41億円(営業収益比0.4%)と赤字決算となり、厳しい経営状況となった。なお、マックスバリュ北海道は今期決算変更があったため、昨年対比がないため、今期のみの決算の公表となった。

   両食品スーパーマーケット、同じ、北海道での激しいシェア争いの結果、対照的な決算となったといえ、アークスが優位に立ち、その差を確実に広げつつあるといえよう。これは財務状況を見ると、より、明らかであり、今回の第3四半期決算の結果が一過性のことではなく、これまでに積み重ねられてきた経営の結果を反映しているといえ、マックスバリュバリュ北海道は極めて厳しい状況に追い込まれつつあるといえよう。

   その財務状況であるが、まず、自己資本比率はアークスが57.2%と50%を超え、食品スーパーマーケットではトップクラスであるのに対し、マックスバリュ北海道は24.8%と厳しい状況となり、負債に大きく依存する、いわゆるレバレッジ経営となっている状況であり、営業収益の厳しさが、より、自己資本比率を厳しいものにしつつある。

   今期のマックスバリュ北海道のキャッシュフローを見ると、それは明らかであり、営業キャッシュフローが-3.66億円となり、投資キャッシュフローは-15.08億円となり、合計、フリーキャッシュフローは-18.74億円と大幅なマイナスとなり、逆流の極めて厳しいキャッシュフローの流れである。特に、投資キャッシュフローの大半は有形固定資産の取得-14.81億円であり、新規出店へ向けての投資と思われる。したがって、このマイナスをカバーすべく、財務キャッシュフローであるが、長短借入金を大きく増加させ、18.78億円となり、結果、トータルではわずかなプラスとなったが、負債が大きく増加しており、一層財務状況が悪化している。

   特に長短借入金の合計は85.27億円となり、本決算時の44.71億円と比べ、倍増しており、総資産268.81億円の31.7%とかなりの比率に上っており、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金・保証金の合計は130.49億円、総資産の48.5%であるので、自己資本比率―出店にかかわる資産である出店余力は-23.7%と大きくマイナスとなり、その大半を負債に負う出店構造であり、厳しい財務状況である。
 
   一方、アークスであるが、増収増益という好決算であったこともあり、営業キャッシュフローは67.00億円となった。また、投資キャッシュフローであるが、-35.20億円となり、その大半は新店投資と思われる有形固定資産への投資30.88億円であり、結果、フリーキャッシュフローは31.8億円のプラスとなり、典型的な順流のキャッシュフローの流れである。これに財務キャッシュフローが-10.23億円となり、トータル20.65億円となり、営業キャッシュフローの範囲内で投資、財務キャッシュフローを賄っており、好決算がキャッシュフローの好循環をもたらしているといえよう。
 
   アークスの負債の主要項目である長短借入金の合計であるが、今期は128.04億円と総資産1,020.35億円の12.5%であり、昨年の153.90億円と比べ、約25億円削減が進んだ。したがって、出店余力であるが、土地、建物、敷金保証金の合計が742.66億円と総資産の72.7%であるので、自己資本比率57.2%から差し引くと-15.0%となり、ほぼ、長短借入金の分をそっくり依存する出店構造となっている。アークスは通常の食品スーパーマーケットよりも、NSC化、店舗の大型化が進んでいる分、出店にかかわる資産構造が重いといえるが、負債依存度はマックスバリュ北海道と比べても、軽いといえ、長短借入金の返済も進んでおり、出店余力は増しつつあるといえよう。

   このように、北海道市場で直接競合する両食品スーパーマーケットの直近の第3四半期の決算を見てみたが、対照的な決算となり、アークスは営業内容も財務内容も健全な状況といえるが、マックスバリュ北海道は、営業内容も財務内容も厳しい状況に追い込まれつつあるといえる。今年は、日本全体の消費が節約志向から家計のリストラに入る可能性も高くなり、北海道はさらに厳しい消費環境が予想される。その中で、この2社の決算結果を見る限り、アークスが大きく先行したといえる状況といえ、今後、北海道はこのアークスがどこまでシェアを増すかが注目といえよう。この好決算の流れを受け、来期アークスがどのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。

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January 27, 2009

ID-POS時代のMD評価表とは?

   MD評価表とは、POS分析におけるマーチャンダイジング(MD)を評価するための基本フォーマットである。通常、POS分析では商品1品1品を金額PI値=PI値×平均単価に分解し、この商品を小分類、中分類、大分類などにまとめ、マーチャンダイジング改善の仮説を立ててゆくことになる。この時、マーチャンダイジングの仮説を立てやすくするために、一目でわかりやすくまとめた一覧表がMD評価表である。当然、評価をすることになるが、金額PI値=PI値×平均単価であるので、評価は金額PI値で評価される。その際、金額PI値がアップする場合がPI値だけ、平均単価だけ、双方となるので3パターン、ダウンする場合もPI値だけ、平均単価だけ、双方となるので、3パターン、合わせて6パターンとなる。
  
   これが通常のPOS分析におけるMD評価表であり、基本は商品を評価することがポイントとなる。では、ID-POSの場合はどうか。ID-POS分析の場合はIDが主体となり、客数は以前、本ブログでも解説したように6パターンある。会員、非会員、そして、この会員が購入会員、未購入会員に分かれ3パターン、さらに、会員は購入、未購入がID、レシートに分かれ、非会員が購入、未購入に分かれ、全部で6パターンである。したがって、ID-POS分析を行う場合は、客数が基本6パターンとなり、しかも、IDが把握できる会員とIDが把握できない非会員とに分かれる。通常のPOS分析が原則、客数は総レシート枚数のみであったことを考えると、客数が6パターンあり、金額PI値ひとつとっても様々な金額PI値が存在し、よく整理して活用しないと、袋小路に陥ってしまい、収集がつかなくなってしまうので、気をつけける必要がある。
  
   ただ、基本方程式はひとつであり、通常のPOS分析が金額PI値=PI値×平均単価であるのに対し、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値のみである。もちろん、金額PI値=PI値×平均単価であるので、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値=ID客数PI値×PI値×平均単価となる。さらに、ID客数PI値×PI値=IDPI値であるので、IDPI値を付けくわえても良い。ちなみに、粗利まで把握するのであれば、金額PI値×粗利率=粗利PI値となるので、ID客数PI値×粗利PI値=ID粗利PI値ともなり、これらを必要に応じて追加し、マーチャンダイジングを売上面だけでなく、粗利面からの評価を入れても良い。
   
   さて、ここからが本論であるが、この基本方程式、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値をもとに作成されるマーチャンダイジングの評価表がID-POS分析におけるMD評価表である。基本はこの式だけであるので、あとは、縦軸、横軸、そして、客数変換が新たに加わり、ID-POSのMD評価表ができあがる。

   まず、基本フォーマットであるが、縦軸がID、横軸がID金額PI値、ID客数PI値、金額PI値となる。これが基本形である。あとは応用で、金額PI値の次に、PI値、平均単価、粗利率、粗利PI値、ID客数PI値などの関連指標をつけておくと便利である。さらに、その指標のもととなった、総ID数、総レシート枚数、売上金額、売上数量、粗利高、売上構成比、ID構成比などをつけておくとさらに、活用しやくなろう。
  
   そして、客数変換であるが、これは、まず、全体の会員を基本にしたもの、購入IDのみに絞ったもの、特定IDに絞ったものなど、様々な客数を分母にしたものが考えられるので、これは目的に応じて客数を自由に変換すれば良い。通常は、ID-POS分析であるので、購入IDを基本形にした方が良いかもしれない。たとえば、青果でいえば、青果購入IDであり、バナナであれば、バナナの購入IDである。
  
   ここまでできれば、あとは縦軸であり、この縦軸がもうひとつのID-POS分析ならでの軸となる。まず、基本はID分類となる。分類ができなければ、全IDをそのまま縦一直線に並べれば良い。1,000行でも、2,000行でも、10,000行でも、100,000行でも並べれば良い。そして、これを様々な角度から顧客分類を考え、3パターン、5パターン、10パターン、100パターン等に分類し、意味のある顧客グループをつくることがポイントである。
  
   統計学的には因子分析をもとにデンドログラムをつくるなどもひとつの方法である。あるいは、単純に年齢別、男女別、地域別、家族構成などで分類してみることも良いと思う。さらには、各指標で分類し、ID金額PI値の高いグループ、低いグループ、ID客数PI値の高いグループ、低いグループなどである。これ以外にも、RFM分類、単純な売上金額によるデシル分類など様々な分類が考えられる。そして、もう一点、この縦軸を商品分類とすることもありである。これは、通常のPOS分析の応用系であり、縦軸を顧客分類で見るのではなく、商品分類に転換して見てみることである。
  
   このように、ID-POS分析におけるMD評価表はダイナミックに変化するフォーマットであり、客数によるパターン、縦軸を顧客IDにしたパターン、商品分類にしたパターンなど同じフォーマットが次々に七変化してゆき、ひとつのフォーマットでマーチャンダイジングが判断されるわけではなく、様々な変化の中でマーチャンダイジングの仮説をつくことがポイントであるといえよう。まずは、縦ID、横指標、客数は購入IDでつくり、様々な商品のMD評価表をじっくり見てみることからはじめると良いと思う。それだけでも、これまでのマーチャンダイジングの固定観念が大きく変わり、思いがけない発見があると思う。

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January 26, 2009

スーパーバリュー、2009年2月第3四半期、増収減益!

   スーパーバリュ-が、2009年2月期の第3四半期決算を1/8公表した。結果は、売上高271.75億円(101.6%)、営業利益7.86億円(93.7%:売上対比2.9%)、経常利益6.63億円(95.3%:売上対比2.4%)、 当期純利益3.96億円(97.7%:売上対比1.4%)となる増収減益となった。増収幅も今期はわずかではあったが、この11月に川口前川店を新規出店し、12月にも入間春日町店を新規出店し、店舗数は現在、合計8店舗となったため、通期ではこの新店2店舗も寄与し、好決算が期待されよう。実際、通期予想では、売上高372.50億円(103.9%)、営業利益11.90億円(106.5%:売上対比3.2%)、経常利益10.00億円(108.1%:売上対比2.7%)、当期純利益5.80億円(107.8%:売上対比1.5%)と増収増益予想である。

   スーパーバリューは食品スーパーマーケットにホームセンターを併設した業態であり、これにより、通常の食品スーパーマーケットでは不可能な圧倒的な集客力を増すことが可能となり、全体の客数を増やし、食品スーパーマーケットの2倍以上の売上を達成することが可能となる新業態ともいえよう。店舗フォーマットとしては、食品主体のスーパーセンターがイメージに近いといえよう。

   実際、この第3四半期のSM事業部の売上高は183.60億円(102.5%)、HC事業部の売上高は88.15億円(99.8%)となり、SMの売上構成比は67.5%であることから、通期予想に11月以降の新店2店舗を合わせて半期分組み入れ、6.5店舗で計算すると、1店舗57.3億円となる。SM事業の構成比は67.5%であるので、38.6億円となり、通常の食品スーパーマーケットの2倍以上の売上となる。また、HC部門の構成比が32.5%であるので、ほぼ2対1の割合でSMの構成比が高く、SM主体の業態であることがわかる。その意味で、スーパーバリューはNSCとも一線を画し、本格的なスーパーセンターとも違い、独特な食品スーパーマーケットを主体にした新業態と位置づけられる。

   では、もう少し、スーパーバリューのマーチャンダイジングを掘り下げてみたい。まず、売上面であるが、スーパバリューは部門をSM部門とHC部門に分け、さらに、SM部門を生鮮とグロサリー、HC部門を第1グループから今期新設になった第4グループ、そして、その他とに分けている。HC部門の第1グループは、日曜大工用品、園芸用品、エクステリア用品、第2グループはカー用品、レジャー用品、ペット用品、第3グループは家電製品、対面(時計、カメラ)、インテリア用品、家庭・日用雑貨、文具・玩具、ドラッグ、そして、第4グループがリフォームである。

   この中で売上構成比で見ると、グロサリー34.1%、生鮮食品33.4%が突出しており、ついで、第3グループ17.1%、第2グループ8.5%、第1グループ6.1%、新設の第4グループはまだ0.2%というところである。そして、これを粗利率(売買差益)で見ると、第1グループが25.9%、生鮮食品が23.5%、第2グループが22.0%、第3グループが20.2%、グロサリーが19.7%、第4グループが7.5%となり、第1グループが生鮮食品を抜き、トップとなる。

   こう見ると、粗利面から見る限り、SM部門で集客を図り、HC部門で利益を取るという構造になっており、HC部門を広域集客の手段として位置付けているというよりは、周辺のSM以外の商品の需要創造と、SM強化による来店頻度をひきあげることにより、近隣商圏の来店密度を最大にするマーチャンダイジング政策ととらえることができよう。スーパーバリューが草加、越谷、戸田、練馬大泉、春日部武里、南船橋、杉並高井戸、上尾愛宕という比較的人口密集地に出店し、平均年商約60億円弱、食品SMで40億円近い通常の食品スーパーマーケットの2倍以上の数字を達成しているのを見ても、広域集客というよりも、来店頻度、来店密度を同時に引きあげた新業態であるといえよう。

   では、粗利構成比、すなわち、相乗積はどうかを見てみたい。全体のこの第3四半期決算の数字は粗利(売買差益)が20.4%であった。この中で、最も粗利貢献度の高い、すなわち、相乗積の高い分類は生鮮食品の7.9%、ついで、グロサリーの5.5%であり、粗利率が低くとも、売上構成比の高いこの2分類がトップ2である。合わせて、13.3%となり、粗利全体の65.2%となり、売上構成比にほぼ比例している。ついで、第3グループの3.4%、第2グループの1.9%、第1グループの1.6%となり、新設の第4グループはまだ0.0%である。その他が0.2%となるが、HCグループは合計7.1%となる。

   このように、この第3四半期のスーパーバリューの決算は増収減益となったが、今後、新たに11月以降2店舗の新店が加わり、8店舗体制になり、通期は増収増益となる予想である。ただ、ひとつ気になるのは、今回、深く言及しなかったが、自己資本比率である。今期12.9%であり、昨年の8.9%と比べると改善はしているが、今後、新たな新店を出すのにはかなり厳しい財務状況であり、負債に大きく依存する出店構造であることである。今後、この財務面の改善をどうはかるかが、最大の経営課題といえよう。スーパーバリューとしての、新業態のマーチャンダイジングは8店舗体制となり、かたまりつつあるので、来期は財務面での改善を期待したいところである。

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January 25, 2009

コンビニ、2008年12月度売上、依然好調108.5%!

   1/20、日本フランチャイズチェーン協会が2008年12月度のコンビニエンスストアの売上速報を公表した。結果は全店ベースで108.5%、既存店では106.1%と依然として、好調な伸びであった。全店は18ケ月連続プラス、既存店は8ケ月連続プラスという状況であり、改めて、taspo効果のコンビニへの影響が鮮明となった。taspoの導入が本格化したのは、昨年4月頃からであるが、まさに、この頃からコンビニの売上、特に既存店の売上が上昇に転じ、一時は昨対112%まで売上を伸ばした時期もあり、その後も安定した既存店の伸びに支えられ、ほぼ110%前後で推移している。taspoはそれだけ、コンビニの既存店を活性化させたといえ、たばこがコンビニにとっていかに影響の大きい商品であるかがわかる。

   今回のtaspo効果は、一部のコンビニだけでなく、日本全国の津々浦々のコンビニまでプラス効果があらわれている。この日本フランチャイズチェーン協会が公表した売上集計の対象企業は、エーエム・ピーエム・ジャパン、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの11社41,714店舗の集計結果であり、サンプリング結果ではなく、全店の集計であり、ほぼ日本のコンビニ全体を網羅しているといえよう。その中での今回の結果であり、すごい数字である。

   1/23の日経MJではコンビニと百貨店のこの10年間の売上高の比較グラフが掲載されているが、2008年度、はじめてコンビニが百貨店の売上をうわ回ったが、まさに、このtaspo効果が今年一気に百貨店の売上を追い抜いた原動力になったといえよう。グラフを見ると10年前は百貨店が9兆円を超え、コンビニは5兆円強とダブルスコアぐらいの差があったが、コンビニはその後、急激に売上を右上がりに伸ばし、百貨店は逆に、右上がりに売上を落とし、ここ数年はいつxデーが来てもおかしくない状況であった。ちょうど、この未曽有の不況に突入し、百貨店が売上を急激に落しはじめ、逆にコンビニはtaspo効果により急激に売上を伸ばし、これが決定打となり、2008年はじめて逆転という状況になったといえよう。

   ただ、今後、数ケ月後にはtaspo導入1年を迎えるので、コンビニの急成長はとまる可能性が高いので、コンビニが今後とも急成長が続くかどうかは、わからない状況であるが、当面は、コンビニは好調な売上を続けるので、その差はますます広がる可能性が高いといえよう。

   さて、ここで、家計調査データから、たばこの消費はこの数ケ月どのような状況であったのかを見てみたい。たばこは、家計調査データではその他の消費支出に分類され、たばこのみ独立して、集計されている。現在、直近のデータは2008年11月度のデータであるが、これを見ると、1世帯1日当たり34.33円(108.5%)、消費世帯のみの金額は221.79円(104.0%)、消費世帯の割合は15.5%(104.3%)という数字である。たばこは11月度は数字が伸びており、しかも、約15%とごく限られた世帯の商品であることがわかる。さらに、数字をさかのぼってみると、10月度34.10円(106.0%)、9月度33.29円(101.6%)、8月度37.61円(107.7%)、7月度37.58円(106.5%)、6月度34.33円(98.1%)、5月度35.77円(106.2%)、4月度32.00円(92.7%)、3月度31.55円(94.3%)、2月度32.69円(96.5%)、そして、1月度30.32円(92.5%)という状況である。

   意外や意外、taspo導入が本格する4月前後までは昨対を割っていたたばこの消費額が、5月以降、6月はやや伸び悩んだが、その後、順調に消費額を増加させ、直近の11月まで堅調な伸びとなっていることである。コンビニの売上とほぼ同じ傾向を示しており、コンビニが家計のたばこの消費まで押し上げたといってもよいといえよう。当初はtaspo効果でコンビニが自動販売機やたばこ店からたばこのシェアを奪い、たばこの家計での消費全体は大きな変化がないのではと思っていたが、この数字を見る限り、コンビニがたばこのシェアを上げたのはもちろんだが、それに加え、たばこ全体の市場も広げたといえる家計調査データのtaspo導入後のたばこの伸び率である。

   また、今回の日本フランチャイズチェーン協会の公表データの中には部門別の売上の伸び率もあるが、これを見ると、たばこの属する部門の非食品が125.3%で伸びているが、同時に、日配食品も101.4%、加工食品も102.9%と伸びている。サービスは97.3%と伸び悩んだが売上構成比が5.1%であるので、全体への影響はわずかであり、この結果をみる限り、たばこの売上だけでなく、他の商品への波及効果もあり、コンビニ全体が活性化しているといえよう。

   このように、依然として、taspo効果はコンビニでは鮮明であり、コンビニ全体への波及効果も大きく、さらに、家計調査データを見る限りでは、たばこそのものの消費も増加させたともとれる数字である。その結果、予想よりも早めに、百貨店の年間売上をコンビニが抜き去るという歴史的な1年ともなり、改めて、taspoは今期のコンビニとたばこの救世主であったといえよう。

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January 24, 2009

SK-Ⅱ、金額PI値がなぜ高いか?

   昨年9月のブログの一節であるが、「9/26、恒例の日経MJ新製品週間ランキングが公表された。今週金額PI値No.1となったのは家庭用品部門の化粧品、マックスファクター、SK-Ⅱサインズリンクルセラム30gが初登場で金額PI値Aランクの561円となり、全新製品の中でトップとなった。ただし、カバー率は14.4%であり、対象45チェーン、250店舗の中ではわずか36店舗と、限られた店舗での数字である。化粧品は一般的に食品スーパーマーケットでは限られた店舗での販売となることが多い。それは、このSK-Ⅱでもそうだが、平均単価が12,966円と高額になるためである、・・」という内容である。今週、1/23、恒例の日経MJ新製品週間ランキングが公表されたが、残念ながら、先週同様、厳しい数字となり、金額PI値Aランク500円以上0、Bランク300円以上がたた1品、Cランク200円以上6品という状況であった。

   したがって、このSK-Ⅱが当時、全新製品の中でNo.1となり、金額PI値がAランクの500円を超える数字であったのが、以前から不思議であった。しかも、平均単価は12,966円と高額である点もびっくりであった。もちろん、これだけの高額商品であるので、カバー率は14.4%と低い数字ではあるが、それでも、その14.4%の店舗の顧客が金額PI値561円という高い支持をしめしたことに驚いたものである。その後、なぜ、化粧品が時として、これだけ、高い金額PI値となるかがわからなかったが、1/23の日経MJでたまたま、SK-Ⅱの特集記事が掲載されており、これを読んで、少しその理由が理解できたように思う。

   この特集記事はヒットを狙えというテーマの連載記事であり、今回のテーマは女性用乳液、見出しは、「「SK-Ⅱ」強さ浸透、マックスファクター、抗加齢効果前面に独走」、「勝利の方程式、若年層も取り込む、手入れ好きに訴求、試用で新規つかむ」であり、金額シェアベスト10の一覧表も掲載されている。この表を見ると、やはり、SK-Ⅱサインズトリートメントトータリティが金額シェア14.2%で2位の資生堂エクシールシュペリエルホワイトCEエマルジョンⅡの2.9%を圧倒し、断トツのNo.1となっている。

   冒頭の以前取り上げたブログの記事でもそうであるが、SK-Ⅱは他を圧倒する支持を受けており、現在も、今回の特集記事のように定番になっても他を圧倒しており、すごい商品であるといえよう。記事のはじめに、No.1のSK-Ⅱサインズトリートメントトータリティの商品解説があり、そこで、「酵母が作り出す成分「ピテラ」などをカプセルに入れ、肌の内部まで成分が浸透しやすい。しわなどの加齢現象に対応する、・・」という解説があった。ヒットの理由のひとつは、アンチエイジング(抗加齢)効果を前面に出した乳液である点であるという。これが、若年層をも引き込み、しかも、一昨年9月発売の商品であるにもかかわらず、昨対104%で伸び続けているという。

   この背景には、新規顧客をたえず取り込む仕組みがあることに加え、リピート顧客が多いことも大きいといえよう。この記事では単純POS分析のみのデータだけでの分析結果となっているが、これに、ID-POS分析を加え、時間軸を6ケ月、1年でとってみると、非常に興味深い内容がさらに明らかになったのではないかと思う。たとえば、6ケ月と1年間の顧客を購入顧客のみの分析を行い、その間、新規顧客が何人生じたか、6ケ月間の購入顧客の内、どのくらいがリピートにつながり、その来店頻度はどのくらいだったか、さらに、その顧客が他の乳液と併売しているのかや、ブランドスイッチしたままの顧客はどのくらいいるのかなどを分析してみると、なぜ、SK-Ⅱの金額PI値が高くなるかの要因がより深く理解できるのはないかと思う。

   記事の中では、勝利の方程式として、若年層も取り込む以外に、手入れ好きに訴求、試用で新規つかむという理由もあげている。特に興味深いのはSK-Ⅱは乳液なのにマッサージに使えるゲル状に仕上がっている点もヒットの要因のひとつだという。また、2週間分のサンプリングを入れて化粧品と一緒に渡すと、かなりの割合で通常サイズの商品を購入する客が続出したという。まさにこれは、新規顧客獲得の王道であり、食品スーパーマーケットでも試食は新規顧客獲得の最高の手段ともいえる方法であり、SK-Ⅱもまさに試供が新規顧客獲得にぴったりはまったといえよう。

   このように、今回No.1の金額シェアとなったSK-Ⅱサインズトリートメントトータリティは発売以来、高い支持をうけ、新規顧客を絶えず獲得し、リピート購入も高い商品となり、わずか、1年強で圧倒的な乳液のシェアを獲得した特異な商品である。日経MJの週間ランキングにこのシリーズが新製品と登場した時もいきなり、金額PI値Aランクの500円を優に超え、全新製品No.1となったが、今回、この特集記事を読み、その一端が垣間見えたように思える。乳液という非常に身近な商品の中にもヒットの背景には、ヒットするだけの理由があり、しかも、それが1万円を超える高額商品でも食品スーパーマーケットで金額PI値がトップクラスになることもあることがわかり、商品とは改めて奥が深いと感じた。

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January 23, 2009

薬の家計調査データを見る!

   家計調査データは実に興味深い消費動向を示す貴重な資料である。本ブログでは主に食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングへの活用を目的として、この家計調査データを用いているが、家計調査データは、食品だけでなく、国民の生活全般の消費を網羅したデータとなっており、食品以外にも様々なデータが公表されている。ざっと見ても、食料(外食を含む)、住居、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費となり、まさに、生活のすべてが網羅されている。そこで、ここでは、この中の保健医療、特に薬に焦点を当ててみたい。特に、この分野は、今後、食品スーパーマーケットとしても、改正薬事法の施行が、この6月という、まじかに迫っており、今後、注目の商品カテゴリーとなるものと予想される。
  
   本ブログでは、家計調査データを食品スーパーマーケットの金額PI値と比較しやすいように、1日当りの数字に変換し、さらに、購入世帯のみの数字と購入世帯の割合に分けて分析しているので、この保健医療、特に薬につても同様の数字で見てみたい。また、現在の家計調査データの最新は2008年11月度であるので、ここでもこのデータで見てみる。なお、2008年12月度は来週末、1月の末に公表予定である。 
  
   まず、保健医療全体の2008年11月度の数字であるが、454.73円(昨対97.5%)であり、購入世帯のみの数字は497.08円(昨対97.9%)、購入世帯の割合91.5%(昨対99.6%)である。ただ、これは大きく4つに分かれており、医薬品58.73円(昨対99.0%)、健康保持用摂取品32.97円(85.3%)、保健医療用品・器具77.83円(116.1%)、保健医療サービス285.20円(94.6%)である。この中で、改正薬事法がらみの部門は医薬品58.73円(昨対99.0%)であるので、保健医療全体の約10%強である。最も大きいのは何とっても保健医療サービス285.20円(94.6%)であり、保健医療全体の60%強をしめ、その中でも大きな構成比を占めるのが、医科診療代112.90円(85.5%)、歯科診療代50.07円(96.0%)である。歯科診療代の約2倍が医療診療代であり、いかに、医療診療代が大きいかがわかる。
  
   そこで、本テーマの医薬品58.73円(昨対99.0%)であるが、この58.76円は食品スーパーマーケットでいうと、食品(外食を除く)が食品2,019.07円(102.9%)であるので、約3%ぐらいの数字となる。ちなみに、医薬品の購入世帯の割合は56.2%(100.6%)であるので、家計の半分強が1ケ月に1回は購入するといえ、これに近い傾向を示す食品スーパーマーケットの商品群は酒類の64.7%(101.5%)であり、薬の消費傾向は食品スーパーマーケットでは極めて酒に近いといえよう。食品スーパーマーケットでは酒以外の部門の消費世帯の割合はほぼ100%であり、酒だけが約60%強という限られた消費者向けの典型的な商品であるが、今後、薬が食品スーパーマーケットに入ることにより、酒と同様、限られた消費者向けの商品群が登場することになる。その意味で、食品スーパーマーケットにとって薬は酒とほぼ同様なマーチャンダイジング政策が活性化の決め手となるのではないかと想定される。
   
   もう少し、薬を掘り下げてみたい。医薬品58.73円(昨対99.0%)の内訳であるが、感冒薬7.80円(90.0%)、消費世帯のみ53.57円(95.5%)、消費世帯の割合14.6%(94.2%)、胃腸薬2.80円(82.4%)、52.34円(105.6%)、5.4%(78.0%)、栄養剤12.07円(77.7%)、73.94円(82.6%)、16.3%(94.1%)、外傷・皮膚病薬円1.90円(82.6%)、32.99円(91.5%)、5.8%(90.3%)、他の外用薬6.27円(91.3%)、35.79円(101.2%)、17.5%(90.2%)、他の医薬品27.90円(123.8%)、93.81円(100.5%)、29.7%(123.1%)という状況である。
   
   これを見ると、まさに、酒の小分類に良く似ており、数字だけ見ると、酒と言われてもわからないくらいである。この中で、この11月度を見ると、伸びているのは他の医薬品27.90円(123.8%)のみであり、その他は軒並み厳しい状況である。また、栄養剤が突出している数字であり、ついで、感冒が大きいといえ、この部門がその他関連を除けば、2大部門といえる。さらに、医薬品全体では消費世帯の割合が56.2%であったが、小分類になると20%弱となり、少ないものでは数%という数字であり、薬がいかに月間では限られたごくわずかな家計の商品であるかがわかる。
   
   こう考えると、今後、食品スーパーマーケットが薬を取扱い商品群に加え、マーチャンダイジングを強化してゆくには、生鮮食品、日配などのノウハウだけでは全く歯がたたない新部門であり、酒のマーチャンダイジング、特に、ワイン、焼酎、ウィスキーに近いマーチャンダイジング政策が必要であることがわかる。
   
   この6月にはまったなしの改正薬事法が施行され、薬の一部が確実に食品スーパーマーケットで販売資格者をおけば販売できるようになる。すでに、各都道府県で資格試験が施行され、70%から80%の合格率で数万人が資格を獲得しており、今後、数年で、人員体制も整い、本格的な競争が始まるものと予想される。また、マーチャンダイジング政策としては、これまでの延長ではなく、薬特有のノウハウを蓄積してゆくことが必要といえ、ただ品揃えするだけではなく、顧客へのきめ細かなマーチャンダイジング政策が求められるといえよう。今後、本ブログでも新マーチャンダイジング政策とからめ、薬のマーチャンダイジングについても様々な角度から取り上げてゆきたい。

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January 22, 2009

大黒天物産、2009年5月中間、増収増益、絶好調!

   大黒天物産が2009年5月期の通期予想を、1/14、上方修正した。売上5.5%、営業利益12.4%、経常利益12.1%、当期純利益14.9%、そして、配当15.7%の121.40円という大幅な上方修正である。その結果、通期決算予想は、売上高710.00億円(110.3%)、営業利益32.60億円(118.1%:売上対比4.6%)、経常利益32.00億円(117.8%:売上対比4.5%)、当期純利益17.00億円(120.6%:売上対比2.4%)となる大幅な増収増益となる。同じ、1/14に公表した2009年5月期の中間決算は、売上高347.79億円(113.9%)、営業利益17.28億円(185.8%:売上対比5.0)、経常利益16.99億円(188.3%:売上対比4.9%)、当期純利益8.96億円(190.6%:売上対比2.6%)となり、同様に大幅な増収増益であるので、現在、大黒天物産は絶好調であるといえよう。

   この好業績について、大黒天物産は、「「生活応援宣言セール」により、多くのお客様のご支持をいただき、来店客数が増加した結果、売上高が好調に推移いたしました。また、エリアマネージャー制の導入及び「Weekly Management」により、週単位で店舗の業績管理を徹底いたしましたことにより経営効率が向上いたしました。」とコメントしており、消費者の節約志向に合致した低価格政策が消費者の強い支持を受けたといえよう。直近の公表売上の2008年11月度を見てみると、売上が110.2%であるが、その中身は既存店が107.5%と異常値となっており、しかも、客単価100.8%に対し、客数が106.1%と既存店の客数が堅調な伸びを示しており、既存店が活性化していることが鮮明である。

   これを受けて、ここ最近の大黒天物産の株価の推移であるが、絵にかいたような右上がりのチャートとなっており、昨年10月頃は1,000円前後であった株価が、ここ最近は1,800円を超え、急激な株価の上昇となっている。1/14の通期予想の上方修正があった後の株価の推移を見てみると、1/14(1,690円)、1/15(1,562円)、1/16(1,709円)、1/17(1,780円)、1/20(1,780円)、1/21(1,860円)という推移であり、1/15はやや株価が下がったが、その後は順調に株価を上げており、明らかな上昇傾向での推移である。これは、5日移動平均4.46%、25日12.23%、13週21.08%、26週37.02%とすべてのトレンドがプラスで、しかも長期トレンドが大きくプラスになっていることからも、勢いのある株価であることがわかる。

   では、大黒天物産の原価、粗利、経費、営業利益の状況を見てみたい。今期の原価は76.9%(昨年77.2%)と、この原価上昇の中、0.3ポイント下がっており、結果、売上総利益は23.1%(昨年22.8%)と改善した。一方、販売費及び一般管理費であるが、18.1%(昨年19.8%)と何と1.7ポイントと大幅に削減された。今期決算の上方修正の時のコメントにもあったように、「Weekly Management」により、週単位で店舗の業績管理を徹底の貢献もあったとみえ、顕著な数字改善効果である。その結果、営業利益(=マーチャンダイジング力)は5.0%(昨年3.0%)と2.0ポイントと大きくプラスとなった。粗利も経費も改善するという好循環が起きており、大黒天物産の営業数値はまさに絶好調といえよう。

   次に、この第3四半期の財務面を見てみたい。まず、自己資本比率であるが、50.7%(昨年48.1%)と上昇している。これは、負債の主要項目である長短借入金の合計が30.43億円(昨年の本決算時36.5%)と昨年の本決算時と比べ、6億円強削減されてはいるが、総資産196.40億円の15.4%となり、それほど大きな負担ではないが、やや自己資本を圧迫しているといえよう。現在、大黒天物産の出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金の合計は86.3億円であり、これは総資産の43.9%であり、これを自己資本比率50.7%から引いた出店余力は6.8%のプラスとなり、自己資本の範囲内で新規出店が可能な財務構造といえる。現在、大黒天物産は既存の好調さによる売上増であるが、この数字をみる限り、出店余力も十分であり、今後、新規出店を加味した大幅な成長戦略も期待できよう。

   一方、この好調な決算を受けて、大黒天物産のキャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローは11.1億円であり、投資キャッシュフローが-19.0億円となり、フリーキャッシュフローが-7.9億円となり、逆流となった。これは定期預金の預け入れが15.0億円と多額になったことに加え、約3億円強有形固定資産を増加させたためである。そして、財務キャッシュフローであるが、長期借入金の返済4.4億円、自己株式の取得1.1億円、配当1.7億円などとなり、-7.2億円となった。結果、トータル-15.1億円となり、現金及び現金同等物がその分減少し、今期の現金及び現金同等物の期末残高は33.7億円と総資産の17.1%となった。

   このように、大黒天物産の2009年5月期の中間決算は大幅な増収増益の好決算となり、通期予想については、配当を含め上方修正する好調な予想である。また、財務的にも借入の返済も進み、自己資本比率も上昇し、出店余力も増しており、既存店の好調さに加え、新規出店も望める安定的な財務内容になりつつある。ただ、気になるのはこの好決算であるにもかかわらず、キャッシュフローの流れが、フリーキャッシュフローがマイナスとなる逆流となったことである。ただ、明らかに、大黒天物産は消費者の節約志向の流れにぴったりはまったマーチャンダイジングが功を奏しており、今後、客数増の高い成長力が期待される。今後、大黒天物産が好調な中間決算を受け、どのような成長戦略を打ち出すかに注目である。

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January 21, 2009

ID-POS時代の客数、どうとらえたら良いのか?

   ID-POS分析が即実践に応用しにくい大きな要因のひとつに客数という問題がある。一般的にPOS分析では客数というとレジ通過客数、すなわちレシート枚数のことであり、しかも、来店総客数、総レシート枚数のことである。この客数を分母にし、売上金額、売上数量、粗利金額など様々な営業数値を分子にし、算出するのがPI値であり、POS分析はPI値分析のことといっても過言ではない。では、ID-POS時代の客数はどう考えたらよいだろうか。これがなかなか共通認識がなく、様々な客数が使われ、ID-POS分析に混乱をきたしているといえる。そこで、ここでは、ID-POS時代の客数をどうとらえたら良いかをまとめてみたい。

   まず、ID-POSで抑えなければならない最も重要な客数は総ID数である。この総ID数はある一定期間に1度でも来店されたIDの総数であり、この客数がID-POS分析では基本になる。そして、これに対応する客数がそのIDの総レシート枚数である。通常のPOS分析の時のレジ通過客数のように思えるが、少し、違うのは、この総レシート枚数はあくまでも、IDのレシート枚数であって、IDとして把握できていない、いわゆる非会員のレシート枚数は含まないので注意が必要である。ID-POSの場合は、必ず、IDが把握できる会員、IDが把握できないレシートのみの非会員とに大きく分かれ、レシート枚数も会員のIDが把握できるレシート枚数とIDが把握できないレシート枚数に分かれる。この2つを足したものが、レジ通過客数であり、従来のPOS分析の客数のことである。

   したがって、ID-POSの場合は会員比率が重要であり、売上金額、売上数量、粗利などすべて会員と全体、そして、非会員とに分けることがポイントとなる。ちなみに、会員比率といった場合、IDの比率は非会員のID数が把握できないので、算出は不可能である。可能な会員比率はレシート枚数、売上金額、売上数量、粗利などである。一般的な食品スーパーマーケットでは大体会員比率は80%から90%ぐらいになるのが通常であり、残り10%から20%は会員化は難しいのが現状である。

   このように、まず客数といった場合、会員、非会員を含めた総レシート枚数、これが、従来のPOS分析の客数であり、ID-POSになると、これに、会員ID数、会員レシート枚数が加わり、基本の分析は、会員ID数となり、分析が進んでゆく。たとえば、会員のレシート枚数÷ID数をID客数PI値といい、ID1人当たりのレシート枚数を表し、購入頻度分析などが可能となる。このID客数PI値がID-POS特有の指標のひとつであり、この指標がID-POSでは縦横無尽に活躍することとなる。

   この3つの基本客数に加え、ID-POSではさらに、一歩踏み込んで、購入客数と未購入客数とに分けるのが一般的である。この分解は従来のPOS分析でもレシートだけであれば可能ではあったが、そこまで分析し、実践に活用していた事例は皆無に近いといえ、ほとんどのケースが総客数、すなわち、総レシートどまりであったといえよう。

   通常のPOSの時代ではあまり実用性がなかった客数の分類であるが、ID-POSの時代には必須の分析ともいえ、購入と未購入に分けて客数をとらえることは実践面でも重要な分類である。では、どのように購入と未購入を分けるかであるが、まず、ID全体を購入IDと未購入IDに分けることができる。そして、さらに、購入IDのレシート枚数、未購入IDのレシート枚数を算出することが可能となり、客数は先ほどの3つの客数、総レシート、総ID、総IDレシートが購入、未購入に分かれ、全部で3×2=6通りの客数が理論的には区別することができる。これがID-POS時代の客数の基本である。

   整理すると、客数はまず、総レシート枚数からはじまる。そして、IDの把握ができるようになると、ID客数の把握が可能となる。これがID-POS分析の第1歩となる。そして、そこから、IDのレシート客数が生まれ、客数は総レシート枚数、ID数、IDのレシート枚数と3つの基本客数ができあがる。これが基本である。そして、ここから応用となるが、今度はこの3つの客数それぞれを購入客数と未購入客数に分けることがポインとなる。まず、総レシート枚数であるが、購入レシートと未購入レシートである。次に、IDであるが、購入IDと未購入IDである。そして、最後が、購入IDのレシート枚数と未購入IDのレシート枚数である。これで全部で6つの客数ができあがる。

   このように、ID-POSの時代の客数はこの6つの基本客数が存在し、顧客の購買行動をより深く分析することができ、ここから様々なマーチャンダイジングの仮説をつくることが可能となり、検証の精度も向上する。また、通常のPOS分析では、顧客を細分化できなかったため、顧客分析よりも商品分析が重点となったが、ID-POS分析では、商品分析に加え、顧客分析が重要な分析手法となり、マーチャンダイジングもより顧客起点のものとなってゆく。また、工夫次第では、さらに、購入者IDをつきつめ、リピート分析に踏み込むことも可能となる。POS分析もIDを把握できたことにより、これまで見えなかった、また、踏み込むことができなかった領域に踏み込むことが可能となり、様々なマーチャンダイジングの可能性を広げることができるようになる。ID-POSはまだまだ始まったばかりであり、今後より実践的な研究開発に踏み込んでゆきたい。

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January 20, 2009

サンエー、2009年2月期、第3四半期決算、増収減益!

   サンエーが、1/7、2009年2月期の第3四半期決算を公表した。営業収益969.97 億円(102.9%)、営業利益63.69億円(97.4%:営業収益比6.5%)、経常利益65.57億円(99.0%:営業収益比6.7%)、当期純利益38.66億円(103.3%:営業収益比4.0%)となり、増収とはなったが、営業、経常段階では減益となるやや厳しい第3四半期決算となった。ただ、営業利益の対営業収益比は6.5%と依然として高水準にあり、食品スーパーマーケット業界の中でもトップクラスを維持している。ちなみに、通期予想であるが、営業収益1,307.63億円(102.5%)、営業利益86.54億円(101.6%:営業収益比6.6%)、経常利益88.03億円(100.4%:営業収益比6.7%)、当期純利益52.81億円(104.9%:営業収益比4.0%)と増収増益の予想である。

   サンエーが、食品スーパーマーケットとして、高収益を確保できる要因にはサンエー独特の経営戦略があり、通常の食品スーパーマーケットでは、真似のできないビジネスモデルを作り上げたことが大きいといえよう。サンエーは沖縄という閉鎖商圏での食品スーパーマーケットのビジネスを主体としているため、食品スーパーマーケットだけでは、年商1,000億円を超えるビジネスは難しいのが実情である。したがって、食品スーパーマーケット以外にも様々な小売ビジネス、さらには、外食、ホテルなどの多角化も行っており、これらの周辺ビジネスの収益を含め、相乗効果が働き、総合的に高収益を維持しているのが実情といえよう。

   この第3四半期もサンエーの原価は69.8%と極めて低く、結果、売上総利益は30.2%と通常の食品スーパーマーケットと比べ、極めて高い粗利率である。この背景には比較的粗利率の低い食品の売上構成比を56.7%に抑え、粗利率の高い衣料品を11.5%、さらには、売上構成比が4.6%ではあるが、60%を優に超える高粗利率の外食、ホテルがあり、相乗積を取ると粗利貢献度は3.0%に近い数字となる。一方、サンエーの販売費及び一般管理費であるが、26.3%であり、この数字も、通常の食品スーパーマーケットと比べやや高めの数字である。結果、マーチャンダイジング力、商品売買から得られる粗利から経費を引いた数字は、3.9%であり、この中には外食、ホテル等の粗利も入っているので、食品スーパーマーケットの純粋な数字で見ると、ここまで高い数字とはならないといえよう。

   また、食品スーパーマーケット以外にも、テナント収入の見込めるNSC、GMS、SC等も積極的に出店しており、今期も不動産収入などの営業収入が2.9%あり、マーチャンダイジング力の3.9%にプラスオンされ、結果、営業利益が売上対比では6.8%と超高収益となる。逆に見れば、食品スーパーマーケットを核とした、沖縄という独特の商圏の中で、収益性の高いビジネスを多角化し、売上、利益を相乗的に積み上げている独特のビジネスモデルを形成しているといえ、食品スーパーマーケットとしては異色の収益構造を作り上げたといえよう。

   この高収益を活かし、この第3四半期のサンエーのキャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローが109.03億円と昨年の53.68億円から倍増し、100億円を超えたが、これは、今期決算の締めが営業曜日の関係で仕入債務が翌月に繰り越されたからであり、実際、営業キャッシュフローに62.88億円、仕入債務が増加されている。今期は多くの食品スーパーマーケットで、このような変則的なキャッシュフローとなっているケースがあるが、サンエーもこれを加味すると、実質、昨年並みの営業キャッシュフローであるといえよう。ちなみに、これは総資産834.00億円の7.5%にもなり、結果、この第3四半期の自己資本比率は昨年の67.2%から61.3%と下がっているが、これは仕入債務が負債に計上されたためである。
  
   また、投資キャッシュフローであるが、50.80億円と大きな投資がなされている。中身は新規出店関連の有形固定資産へ51.11億円投資しているので、今後、新店戦略が組まれるものと予想される。結果、フリーキャッシュフローは58.95億円の順流となり、これに財務キャッシュフローが-6.18億円となり、トータル52.77億円となった。

   これを受けて、サンエーの現状の負債の主要項目長短借入金の合計であるが、わずか37.68億円であり、総資産の4.5%といつでも無借金経営が可能な状況であり、自己資本比率も70%以上がいつでも可能な強固な財務状況であるといえよう。したがって、出店余力も、出店にかかわる資産である土地、建物、長期差入保証金の合計は461.14億円と総資産の55.3%であるが、自己資本比率61.3%の範囲内であり、6.0%の余力があり、自己資本比率の範囲内で十分に新規出店ができる財務構造である。
   
   このように、この第3四半期のサンエーの決算は増収とはなったが、わずかな減益となるやや気になる決算となったが、依然として、高収益を確保しており、財務状況も極めて堅固であり、しかも、今期、新規出店へ向けての投資もしており、来期は、今期以上の決算が期待できる体制を整えたといえよう。ただ、消費環境は、予想以上に節約志向が浸透し、さらには家計のリストラにまで進む公算が高くなった現在、今後の売上が今期並みに確保できるかどうかが読めないところであろう。サンエーが来期、2010年2月期、どのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。

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January 19, 2009

セブン&アイHとイオン、対照的な第3四半期決算!

   セブン&アイホールディングスが1/8、2009年2月期の第3四半期決算を公表した。それによると、営業収益4兆3,253.13億円(101.6%)、営業利益2,182.76億円(104.4%:営業収益比5.04%)、経常利益2,168.67億円(104.1%:営業収益比5.01%)、当期純利益1,016.67億円(99.4%:営業収益比2.35%)と、当期純利益はわずかに昨対を切ったが、営業、経常段階では増収増益となる好決算となった。一方、イオンも1/7、2009年2月期の第3四半期決算を公表したが、営業収益3兆8,777.57億円(102.7%) 、営業利益659.24億円(81.7%:営業収益比1.70%)、経常利益678.72億円 (74.4%:営業収益比1.75%)、当期純利益-294.45億円 となる増収減益、特に、当期純利益は赤字となる厳しい決算であった。

   両企業の決算内容は対照的な内容となり、イオンの経営の厳しさが一段と鮮明になったといえよう。特に、この第3四半期では、イオンが最終赤字となったことに加え、営業利益率がセブン&アイホールディングスの5.04%に対し、1.70%と決定的な差となった。実際、両企業のマーチャンダイジング力、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた差、すなわち、商品売買から得られる粗利から経費を引いた差を見てみると、セブン&アイホールディングスは25.3%-30.4%=-5.1%に対し、イオンは、28.2%-37.4%=-9.2%という状況であり、どちらもマイナスではあるが、その差が約2倍近い開きがあり、特にイオンの経費比率が異常に高いことが決定的な差となっていることがわかる。

   これに、不動産収入等の営業収入がのり、営業利益はプラスに転じるが、それを見ると、セブン&アイホールディングスは10.7%、イオンは11.0%であり、どちらも通常の食品スーパーマーケットでは考えられない数字であり、この多額の営業収入でマーチャンダイジング力の大幅なマイナスをカバーしている構造である。それにしても、イオンの経費比率が37.4%は異常な数値であり、この経営構造を根本的に変革しない限り、今後、安定的な高い利益を生み出すことは極めて難しいといえよう。

   その結果、キャッシュフローではさらに決定的な差が生じている。セブン&アイホールディングスの営業キャッシュフローは2,086.69億円に対し、イオンは871.84億円と決定的な差となっている。これは、減価償却費の差はほとんどないので、純利益、すなわち、収益率の差がそのまま表れており、セブン&アイホールディングスが1,981.22億円であるのに対し、イオンが200.12億円と約10倍の差となったことが大きいといえる。そして、ここから投資キャッシュフローとなるが、セブン&アイホールディングスは-727.15億円となり、フリーキャッシュフローが1,359.54億円と順流のキャッシュフローとなるが、イオンは-2,548.23億円となり、フリーキャッシュフローが-1,676.39億円と大幅なマイナスとなり、営業キャッシュフローで投資キャッシュフローを賄えない逆流のキャッシュフローである。

   そして、財務キャッシュフローであるが、セブン&アイホールディングスは-1,469.10億円となり、トータル-109.56億円の若干のマイナスとなったが、財務キャッシュフローの中身は有利子負債関係が借り換え等で相殺されたため、自己株式の取得1,581.06億円がほぼマイナス分となる構造である。これに対し、イオンは長期借入、コマーシャルペーパーの発行などにより、2,071,01億円のプラスとなっており、これで、フリーキャッシュフローのマイナスをカバーし、結果、トータル-477.22億円となり、厳しいやりくりであったといえよう。双方の期末の現金および現金同等物であるが、セブン&アイホールディングスは6,543.66億円となり、イオンは1,933.69億円となり、約3倍強の差である。
 
   このキャッシュフローの流れを見ても、セブン&アイホールディングスは余力のあるキャッシュフローであり、長短借入金等の合計が8,265.63億円(昨年7,837.11億円)となり、総資産の20.9%であり、若干増加しているのは気になるが、イオンは1兆2,422.45億円(昨年1兆1,403.62億円)と1兆円を優に超え、総資産の32.2%となり、昨年よりもさらに約1,000億円増加しており、この厳しいキャッシュフローが経営を大きく圧迫しているといえよう。
 
   そこで、双方の出店余力を見てみてみると、セブン&アイホールディングスの自己資本比率は46.5%である。また、出店にかかわる資産である、土地、建物、長期差入保証金の合計は1兆5,298.46億円であるので、これは総資産の3兆9,463.07億円の38.7%であり、差し引き7.8%のプラスであり、自己資本の範囲内で出店が賄える財務構造であるといえよう。これに対し、イオンの自己資本比率は21.1%であり、出店にかかわる資産は1兆5,218.19億円となり、これは総資産3兆8,465.25億円の39.5%であり、差し引き、-18.4%となり、負債に約50%を依存する出店構造となっており、出店余力が厳しい状況である。
 
   このように、セブン&アイホールディングスとイオンのこの第3四半期の決算を比べて見ると、マーチャンダイジング力の差が歴然であり、これがキャッシュフローに大きな影響を与え、財務構造の差となり、結果、小売業にとって最大の経営戦略ともいえる新規出店戦略に決定的な差となって表れていることがわかる。小売業にとって、マーチャンダイジング力がいかに重要であり、決定的な経営の差を生み出すかが改めて鮮明になった両企業の第3四半期の決算であったといえよう。

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January 18, 2009

第3のビールと鶏肉、節約志向、昨年の象徴的な商品!

   日経新聞1/16にビールの2008年度のシェアの特集記事が掲載された。「ビール系昨年シェア」と題し、見出しは、「第3が明暗分ける」、「サントリー3位に浮上、サッポロ、出遅れ響く」であり、これに、ベスト10の商品別ランキング、ビールメーカー各社の円グラフでのシェアが掲載された。この見出しに見るように、2008年度はビールに異変が起こっており、第3のビールが発泡酒を抜き、それが各社のシェアに微妙な影響を与え、ついには、サントリーがビール参入46年目で3位になるなど、激震が走った。この背景には、ここへ来て、消費者の節約志向が本格化したことがあるといえ、その象徴的な商品が第3のビールであったといえよう。

   また、この第3のビールと同様に2008年度の食品の中で、節約志向の典型的な商品として、鶏肉を上げることができよう。鶏肉については、直近の家計調査データ、2008年11月度の数字を見ると、肉類全体も107.2%と好調であるが、その中でも鶏肉は112.8%と極めて高い伸びを示しており、まさに、第3のビール同様、肉の中で、この2008年度、最も数字が伸びた商品である。その背景には、100g当たりの単価が牛よりも豚、豚よりも鶏がお買得という関係があり、これはビールよりも発泡酒、発泡酒よりも第3のビールがお買得という関係と同じ、節約志向からくる消費者の自然な選択といえ、まさに、2008年度の節約志向を象徴する食品の中では2大巨頭の商品であったといえよう。

   そこで、ここでは、この典型的な節約志向の2大巨頭の商品について、日経新聞の記事と家計調査データをもとに、その状況を掘り下げてみたい。恐らく、今期、2009年度も消費者の節約志向の意識はより、深まるといえ、この2大商品以外でも様々な商品に影響が広がることは必至といえ、合わせて、今後の節約志向がどのような方向に進んでゆくかについても考えてみたい。

   まず、第3のビールであるが、2008年度はまさに第3のビールの1人勝ちといえる状況であり、ビールが93.5%、発泡酒が92.3%と低迷した中、第3のビールは113.8%と数字を伸ばし、発泡酒を逆転し、ビールの中でNo.2のカテゴリーとなった。日経新聞の記事には2008年度のビールの商品別国内販売ランキングベスト10が掲載されているが、これを見ると、7番目までは前年と順番が変わらないが、2008年度は8、9、10番が初登場の商品となっており、しかも、8番目がアサヒのクリアアサヒ、9番目がサントリーの金麦の第3のビールが入った。ちなみに、10番目はサントリーのザ・プレミアム・モルツである。

   その結果、ベスト10に2番目となったキリンののどごし<生>の第3のビールを加え、3品がランキングに入り、発泡酒の2品を超え、まさに第3のビールの勢いがベスト10にも表れたといえ、消費者の節約志向が明確に単品レベルでも明らかになったといえよう。このベスト10にサントリーは2品ランクインしたが、金麦の第3のビールとザ・プレミアム・モルツのプレミアムビールと両極端のビールであり、これも2008年度の特徴といえ、節約志向で価格の安さを追求する一方、良いものもしっかり買うという消費者の購買行動の表れでもあるともいえよう。

   これに対して、鶏肉はどうかをここ数ケ月の家計調査データから見てみたい。直近の11月度は鶏112.8%、豚107.0%、牛107.9%であったが、10月度は鶏114.7%、豚104.9%、牛100.1%、9月度は鶏115.5%、豚105.8%、牛98.4%、8月度は鶏114.6%、豚109.7%、牛99.4%、7月度は鶏107.3%、豚104.0%、牛97.5%、そして、6月度は鶏117.8%、豚110.5%、牛100.1%という過去6ケ月間の推移であり、明らかに鶏の数字が絶好調であることがわかる。もちろん、この要因には様々なことが考えられるが、消費者の節約志向の表れが、比較的価格の安い鶏へとシフトしたことが大きいといえよう。

   このように、第3のビールと鶏肉は、節約志向の典型的な2大商品といえ、2008年度はまさに、この2大商品が消費者から絶大な支持を受け、実際、家計の節約に大きく寄与したのではないかと考えられる。

   では、この2大商品と同様な節約志向の商品がないか、直近の家計調査データ、11月度で見てみると、スパゲティが129.2%と異常な伸びを示している。麺類の中では特に、スパゲティに注目が集まったようである。スパゲティは10月度134.8%、9月度138.6%と、ここ数ケ月絶好調であり、まさに、節約志向の典型的な商品といえそうである。また、これ以外では、ウィスキーも11月度125.6%、10月度140.0%と絶好調であり、9月度は95.9%であるが、8月度は125.9%という数字であることから、家庭で飲むようになったともとれ、ある種の節約志向といえないこともない。

   こう見ると、2008年度は節約志向元年といえ、その典型的な商品が第3のビールと鶏肉に象徴される商品であったといえ、これを受けて、2009年度は本格的な節約志向に家計が入り、節約志向商品が広範な商品に広がってゆく可能性が高いといえよう。ちょうど、企業経営がリストラを行うように、家計もリストラに入り始めたといえ、これがさらに進むと、構造改革、すなわち、食生活に限らず、生活様式そのものの変革につながるところまで、今年はゆく可能性もあろう。節約志向はその意味では家計のリストラの初期段階に表れる現象でもあり、2009年は予断をゆるさない、家計のリストラに発展する消費の激変をはらんだ1年となりそうである。

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January 17, 2009

日経MJ新製品週間ランキング1/16、一転低迷!

   前週は年末年始ということで、好調な数字であった日経MJ新製品週間ランキングが一転、今週は極めて厳しい数字となった。このランキングは金額PI値を基準に算出しており、一般的に食品スーパーマーケットの金額PI値は500円(1人当たり0.5円)を超えればAランクといえる。できれば1,000円(1人当たり、1.0円)は欲しいところであるが、グロサリー関連でこの水準を超える商品はそうそうはないので、500円が順等であろう。Bランクは300円、Cランクは200円と見れば、重点商品の見分けがしやすいといえ、この新製品週間ランキングも一目で商品の重要性を判断できると思う。

   そこで、今週の数字であるが、前週は金額PI値500円を超える新製品がたくさんあったが、今週は0、Bランクの300円を超える新製品もわずか1品、Cランクの200円を超える新製品も5品となる低迷であり、厳しい新製品の状況であるといえよう。特に、飲料は壊滅的な数字となっており、今週初登場の新製品がベスト20の中に7品、しかもいずれもベスト10以内に入っているにもかかわらず、A、B、Cランク商品0である。飲料No.1は、今週初登場のアサヒ飲料、スカッと白い三ツ矢サイダー青りんご500mlペットボトルであり、金額PI値は何と109円という低さである。以下、今週の飲料はすべて、金額PI値100円を切る状況であり、冬という季節を考慮しても、かなり、低い数字であるといえよう。

   飲料No.2、No.3も今週初登場の新製品であり、どちらも日本コカ・コーラである。No.2はコカ・コーラプラス500mlペットボトル、金額PI値95円、No.3はQoo(クー)みかんの季節500mlペットボトル、金額PI値94円であり、初登場としてはランキングはNo.2、No.3とはなったが、金額PI値はかなり厳しい数字であるといえよう。以下、飲料はすべて金額PI値100円を切る状況であり、この節約志向の中、顧客から支持の高い新製品を開発することが、いかに難しいかを表しているといえよう。

   今週の新製品ランキングでは金額PI値Aランクの500円を超える新製品はなく、Bランク300円を超える唯一の新製品は菓子部門のNo.1、ネスレコンフェクショナリー、キットカットミニ紅白パック14枚であり、金額PI値は356円であった。カバー率も77.0%と対象45チェーン250店舗の大半に入っての数字であり、菓子としては高い金額PI値であるといえよう。これ以外では、ここへ来て、今年も受験シーズンとなり、菓子部門では合格関連の新製品がランキングに入ってきている。No.6に今週初登場のロッテ商事、めざせ合格!コアラのマーチ55g、金額PI値165円、No.8に先週102位から急浮上した明治製菓、合格カールカレー味75g、金額PI値130円、No.11に、これも先週311位から急浮上したカルビー、ポテトチップス合格桜塩味62g、金額PI値108円などである。菓子部門は来週以降、合格シリーズのオンパレードとなる一方、バレンタインデーも近づき、注目の部門となろう。

   今週、全体が低迷する中で、比較的好調であったのがその他部門である。ベスト10がほとんど入れ替わり、下位から大きく順位を上げた新製品、今週初登場の新製品で占められ、がらっとランキングが入れ替わっている。No.1は明治乳業、先週18位からの上昇であり、ブルガリアヨーグルト白桃&黄桃80g×4個、金額PI値Bランクの278円である。No.2は森永製菓、先週44位からの急上昇したビヒダスプレーンヨーグルト脂肪0(ゼロ)500g、金額PI値235円である。そして、No.3はこれも先週59位から急浮上したマック食品、ソース付焼そば3食135g×3、金額PI値186円である。残念ながら、この新製品はカバー率がわずか10.1%であるので、ごく限られた食品スーパーマーケットだけの数字であるが、導入した店舗ではそこそこの数字を獲得しているといえよう。

   これに加え、その他食品部門では、今週初登場の新製品が4品あり、いずれも日清食品である。その中で、注目の新製品はNo.4となったカップヌードルライト53gであろう。No.7にもカップヌードルシーフードヌードルライト57gが入ったが、金額PI値は182円、162円といまひとつ伸び悩んでいる感は否めないが、今後、どのような数字で落ち着くか注目である。また、その他食品にも菓子同様、合格関連の新製品が登場しており、No.5に今週初登場の日清食品、チキンラーメン受験生応援カップ64g、金額PI値169円、同様にNo.10に日清食品の出前一丁受験生応援カップ71gが金額PI値132円で入った。

   これ以外の部門では冷凍食品部門ではアイスクリームが上位をしめ、No.1に森永乳業、エスキモー「PARMチョコレートバー」55ml×6本、金額PI値156円が入った。また、家庭用品部門ではNo.1に花王、ニュービーズ1kg、金額PI値298円が入った。

   このように、今週は先週と一転、厳しい金額PI値となり、Aランク0、Bランク1、Cランク5という厳しい新製品ランキングとなった。ただ、金額PI値はまだまだ低いが、今週初登場の新製品が数多く登場しており、また、この時期特有の合格関連の新製品が菓子部門、その他食品部門で登場しており、今後期待のできる新製品もある。来週以降も低迷状況がつづくのか、それとも、また一転して、新製品が活性化するのか、今後とも注意深く日経MJ週間新製品ランキングを見守ってゆきたい。

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January 16, 2009

Chain Store Age、1月15日号でパワーカテゴリーを特集!

   Chain Store Age、2009年1月15日号で恒例のパワーカテゴリー2009の特集が組まれた。これは、TOPNAVI-NETの全国約100チェーン、約400店舗のGMS、SM、ミニSM、CVS、ドラックのPOSデータをPI値をもとに分析し、注目カテゴリーのランキングをまとめたものである。今回の期間は2008年上半期であり、2008年4月から9月までの6ケ月間であり、ちょうど値上げ問題がピークを迎えた時期でもあり、アメリカ初のサブプライムローンの問題に端を発する未曾有の金融危機が本格化する直前までの期間である。その意味で、値上げの影響がどのように消費に影響が出たのかを知る上で貴重な時期のPOSデータであるといえよう。

   誌面構成は、売上の構造、直近のトレンド、成長のための視点というテーマのもとに簡単なコメントが掲載され、そのコメントを裏付ける形で、各種PI値のグラフ、数表が掲載されている。対象期間6ケ月間の月別PI値昨対比較の表、地域別PI値比較の表、そして、カテゴリー内売上シェアトップ20の一覧表である。

   そして、今回の対象カテゴリーであるが、食品では、畜肉ハム、漬物、中華調味料、風味調味料、ルウカレー、スパゲティ、お茶漬の素、インスタントカップめん、冷凍めん、魚肉ソーセージ、ドレッシング、味噌、ガム、ドリンク剤、インスタントコーヒー、簡易抽出型コーヒー、マヨネーズ、卵、機能性ゼリー、ファミリーアイス、食パン、緑茶ドリンクの22カテゴリーである。酒では、ビール、発泡酒、ワイン(果実酒)、ウィスキー、RTD、日本酒、焼酎甲類、本格焼酎、新ジャンルアルコール飲料の9カテゴリーである。そして、雑貨であるが、フェースクリーム、シェービング、ティシュペーパー、ヘアカラー、トイレ用芳香剤、室内用芳香剤、防虫剤、除湿剤、・スポンジ、家庭用手袋、からだ洗い用品、大人用紙オムツ、キャットフード、ローソク、ライター・点火棒、線香、乾電池の19カテゴリーである。全部で、ちょうど50カテゴリーであり、グロサリーの主要かテゴリーをほぼ網羅しており、貴重なPOS分析データであるといえよう。

   ひとつ、今回の特集で特につけ加えてみたらおもしろかったと思うのは、平均単価、ないしは金額PI値の月別トレンドである。特に、この時期は値上げの影響がどのように売上に表れるかが、最大の関心事であるので、ダイレクトに平均単価の推移を示すか、金額PI値=PI値×平均単価であるので、PI値と平均単価をかけ合わせた金額PI値で、月別推移を比較すると、PI値で見るよりも、値上げの影響が鮮明になったのではないかと思う。たとえば、値上げ商品の典型的なインスタントカップめんであるが、PI値の月間推移表では、昨年よりも明らかにグラフが下回っており、厳しい状況であるが、金額PI値では恐らく、平均単価がかかるために、同じか上昇している可能性が高いのではないかと思われる。同様な商品はマヨネーズ、ビールなどにいえることであり、PI値だけでは見えない世界を金額PI値は見せてくれるので、POSデータの分析では、金額PI値を起点に、PI値、平均単価を分析すると、より、精度の高い、現状の分析が可能だったと思う。

   さて、今回の50カテゴリーをざっと見てみると、2つの特徴があるように思える。ひとつは、この時期が先にも触れたように値上げまっただ中の期間であるので、この厳しいい消費環境の中でも明らかにPI値を伸ばしたカテゴリーは何かということである。実際に各ページをめくってみると、風味調味料、ルウカレー、お茶漬の素、魚肉ソーセージ、ファミリーアイス、本格焼酎、新ジャンルアルコール、除湿剤等である。特に、魚肉ソーセージと新ジャンルアルコールは堅調なPI値の伸びである。

   もうひとつは、重点商品の集中度である。カテゴリーによっては、上位5品で30%以上超えるものもあれば、数%どまりのものもあり、両極端なカテゴリーが見られるということである。これは、メーカーの寡占化が進んでいる、いないもあるが、消費志向が重点商品に集中しているか、バラついているかにもあるといえよう。ここでは、この中で、上位5品の売上シェアが10%以下のカテゴリーをこの50カテゴリーから抽出してみると、漬物、ワイン、ヘアカラー、キャットフードなどである。これらのカテゴリーはまさに品揃えが命ともいえ、重点商品に絞り込んだマーチャンダイジングは売上を落とす結果を招くだけであり、いかに、顧客の嗜好に合わせたマーチャンダイジングができるかどうかが課題である。

   このように、2008年4月から9月までのPI値にもとづくパワーカテゴリー2009を見てみると、この時期はちょうど、値上げ問題の嵐の中での商品動向が表れたPOSデータであり、非常に興味深い内容となっている。また、次回は、9/15のリーマンブラザーズ破綻以降のまさに、未曾有の厳しい経済情勢の中での数字となるので、次回の結果もさらに興味深い内容となろう。次のパワーカテゴリー2009の特集がどのような結果となるか気になるところである。

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January 15, 2009

GMSからスーパーセンターへ、環境整う、ベイシア出店!

   日経新聞1/14に、「ベイシア、出店ペース倍に、来期6店、岐阜にも進出」という記事が掲載された。内容は、2010年2月期、来期であるが、ベイシアがスーパーセンターを中心に今年度の2倍にあたる6店舗を新規出店し、積極的な出店戦略に踏み切るというものである。しかも、ベイシアはすでに、まちづくり3法対応型の10,000平米以下のスーパーセンターの開発を終えており、消費者の節約志向の追い風に乗った新規出店戦略を発動できる体制が整っている。来期は、再び、スーパーセンターを中心に流通業界に激震が走る波乱の幕開けとなりそうである。

   スーパーセンターはかつて日の出の勢いで日本各地を席巻した時期があった。ベイシアスーパーセンター、イズミヤスーパーセンター、PLANT、アークランドサカモト、オークワスーパーセンター、バロースーパーセンター、トライアルカンパニー、そして、西友、イオンなど、錚々たる企業がフォーマットの開発に取り組み、新規出店攻勢をかけ、特に、改正まちづくり3法の論議が本格し、規制が入る直前まで、新規出店があいついでいたといえる。

   ただ、出店ペースを急ぐあまり、主要な企業では自己資本比率を下げ、負債に依存する新規出店構造となり、出店余力が弱まり、自然、出店ペースが鈍り、ここ最近では、全体として、スーパーセンターの新規出店が低調な状況であった。また、改正まちづくり3法の施行もはじまり、10,000平米を超えるスーパーセンターの出店が難しくなる中、スーパーセンターの時代は一段落したのではないか思われていた。

   事実、スーパーセンターをすでに約30店舗出店しているベイシアもここ数年のスーパーセンターの新規出店状況を見ると、その実態がよくわかる。直近のスーパーセンターから、スーパーセンターの出店状況を年度別に逆算してみると、以下のようなスーパーセンターの出店の奇跡である。

   2008年度、スーパーセンター31号店舗(9/15、ベイシア益子店、まちづくり3法対応)、30号店舗(7/10、ベイシアスーパーセンター大網白里店、まちづくり3法対応第1号店)、29号店舗(5/15、ベイシアスーパーセンター大平モール店)の3店舗の新規出店である。2007年はスーパーセンターは1店舗の新規出店もなかった。2006年であるが、28号店舗(12/20、ベイシアスーパーセンターさくら氏家店)、27号店舗(11/30、ベイシアスーパーセンター三好店)、26号店舗(7/15、ベイシアスーパーセンター長生店)、25号店舗(6/28、ベイシアスーパーセンターなめがわモール店)、24号店舗(6/22、ベイシアスーパーセンター市原八幡店)、23号店舗(4/27、ベイシアスーパーセンターひだかモール店)とこの年は6店舗を新規オープンしている。

   2005年であるが、22号店舗(12/16、ベイシアスーパーセンター佐倉店)、21号店舗(12/8、ベイシアスーパーセンター富里店)、20号店舗(9/15、ベイシアスーパーセンター栗橋店)、19号店舗(7/20、ベイシアスーパーセンター彦根店)、18号店舗(6/9、ベイシアスーパーセンター鶴ヶ島店)、17号店舗(4/20、ベイシアスーパーセンター寄居北店)と、6店舗の新規出店である。2004年は、16号店舗(4/14、ベイシアスーパーセンター中野店)の1店舗のみの新規出店である。2003年は、15号店舗(12/6、ベイシアスーパーセンター鴨川店)、14号店舗(11/26、ベイシアスーパーセンター小千谷店)、13号店舗(10/16、ベイシアスーパーセンター新潟豊栄店)・・という状況である。ちなみに、スーパーセンター1号店は2000年の渋川こもち店である。

   このように、ここ数年間は、スーパーセンターの新規出店は抑制気味で推移しており、2005年、2006年が合計12店舗でピークであったといえよう。一時は、スーパーセンターがアメリカのウォルマートが全米を制したように、日本でもGMSを凌駕し、小売業のトップ業態になるのではと思われた時期もあったが、ここ数年の動きをみる限り、小売業界の本命となることはないのではないかと思われてきた。

   ところが、アメリカ発のサブプライムローンの問題に端を発する100年に1度の経済危機が世界中を覆い、日本へもその影響が出始めつつある中、再び、スーパーセンターの時代が訪れるのではないかと思われるような今回のベイシアのスーパーセンターの積極出店である。折しも、GMSはイオンをはじめ、ここへ来て大量閉鎖があいついでおり、イトーヨーカ堂はプライスというディスカウント業態への転換を急ぐようである。また、西友はGMSの24時間対応で売上アップをはかっているが、GMSはここへきてさらに劣勢になりつつあるといえよう。

   来期のベイシアのスーパーセンターはピーク時に匹敵する新規出店であり、これが他のスーパーセンターを出店してきた企業にどのような影響を与え、また、既存のGMSがどのような対応をし、さらには、既存の食品スーパーマーケットでも新たにスーパーセンターへの参入がないとはいえない。来期は、このベイシアのスーパーセンターの動向が少なからず、小売業界に大きな影響を与えるのではないかと思われる。経済情勢はベイシアが判断したようにスーパーセンターに有利に働いているといえ、来期のスーパーセンターをすでにフォーマットとしてももっている企業、今後開発を検討している企業など各社のスーパーセンターへの対応が注目されよう。

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January 14, 2009

オオゼキ、2009年2月期、第3四半期決算、堅調!

   オオゼキが1/9、2009年2月期の第3四半期決算を公表した。売上高497.49億円(102.5%)、営業利益38.95億円(107.3%:売上対比7.8%)、経常利益39.84億円(107.9%:売上対比8.0%)、当期純利益23.52億円(108.5%:売上対比4.7%)と増収増益、堅調な決算となった。売上が伸び悩んでいるが、これは、ここ最近、新規出店が思うように進まず、既存店のみの数字であるためである。ただ、営業利益は7.8%と食品スーパーマーケット業界では断トツの高い数字であり、改めて、オオゼキの収益性の高さを示した決算結果であるといえよう。

   オオゼキのこの第3四半期の売上102.5%の中身であるが、この期間、新店がなく、既存店のみの数字である。客数は、101.3%、客単価は101.2%とバランスのよい伸びであり、客数、客単価ともに堅調な伸びとなった。客単価の中身であるが、PI値100.2%、平均単価101.0%であるので、やや、PI値が伸び悩んだ感があるが、差はわずかであり、PI値、平均単価ともに堅調であったといえよう。ちなみに、オオゼキの部門別の売上構成比の状況を昨年と比較してみると、オオゼキNo.1部門の青果が21.9%から22.2%へ、そして、精肉が12.1%から12.4%へ、食品が18.0%から18.2%へ、惣菜が0.4%から0.5%へと伸びている。オオゼキの競争力の源泉である青果と食品が一段と強くなっており、さらに、節約志向の典型的な商品、精肉が伸び、最近強化しはじめた惣菜が伸びるなど、理想的な商品力の強化がはかられたといえよう。逆に、厳しかった部門は鮮魚12.8%から12.5%、酒7.2%から6.7%であった。

   では、オオゼキの営業利益率が7.8%となった要因を見てみたい。まず、原価であるが、75.2%(昨年75.4%)であるので、0.2ポイント原価がさがっており、この値上げ攻勢の厳しい中、原価改善ができたことが、利益改善として大きかったといえよう。その結果、売上総利益は24.8%(昨年24.6%)となった。これに対し、販売費及び一般管理費であるが、18.0%(昨年18.2%)と、こちらも0.2ポイント削減している。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力(商品売買から得られる粗利から経費を引いた利益)は6.8%(昨年6.4%)と0.4ポイント改善しており、通常の食品スーパーマーケットではまず達成できない高い数字である。特に、経費比率が18.0%へ抑えられていることが驚異的といえ、ここがオオゼキならではの強さの源泉といえよう。そして、これに、不動産収入等の数字が若干のり、結果、営業利益は7.8%(昨年7.5%)と、好決算となった。

   この好決算の結果を受け、オオゼキのキャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローが27.39億円となった。ここから投資となるが、投資キャッシュフローは-22.71億円となり、主な投資は、定期預金、有価証券が大半であり、これ以外では、新店等の固定資産の取得が7.2億円である。この投資を見る限り、新規出店への体制はまだ整っていないと見え、オオゼキがこの豊富な営業キャッシュフローをいつ成長戦略に向けて、投資するかがポイントであろう。

   その結果、フリーキャッシュフローは5.19億円となり、キャッシュフローは順流である。ここから、財務キャッシュフローとして、配当金を4.89億円計上し、結果、トータルではわずかにプラスとなった。オオゼキはすでに、無借金経営となっており、財務キャッシュフローに借入関係の科目がなく、今期も配当金のみであり、すっきりしたキャッシュフローの流れであるのが特徴である。

   したがって、自己資本比率も極端に高い数字であり、今期は78.7%(昨年77.8%)と昨年よりもさらに数字をあげており、財務面では盤石な体制ができつつある。食品スーパーマーケットで、自己資本比率が80%近い企業はまれであり、装置産業ともいわれる設備投資の金額が大きい食品スーパーマーケットがここまで自己資本比率を高められるケースは珍しい、特異なケースであるといえよう。

   では、オオゼキの出店余力を見てみたい。今期のオオゼキの出店にかかわる資産、土地、建物、長期差入保証金の合計は158.07億円(昨年155.59億円)とほぼ昨年と同じ数字であり、これは総資産328.57億円の48.1%であり、1店舗当たりでは5.45億円となる。そこで、出店余力、自己資本比率から出店にかかわる資産を引いた数字は、78.7%-48.1%=30.6%となり、自己資本比率の範囲内で十分な新規出店が可能な状況であり、負債に全く頼ることなく、新規出店が可能な財務構造である。このような豊富な資金を持っている食品スーパーマーケットは稀であり、いつ、10店舗ぐらい同時に新規出店をしても全く問題のない安定した財務体質であるといえよう。

   このように、オオゼキが2009年2月期の第3四半期決算を公表したが、増収増益の堅調な決算結果となり、キャッシュフローも順流、自己資本比率も80%に迫る勢いであり、超健全な財務基盤が築かれつつあるといえよう。あとは、残すところ、新規出店による安定成長路線にいつ経営戦略を切り替えるかにあるといえ、オオゼキの戦略転換がいつ行われるかが注目であるといえよう。今期決算もほぼ同様の堅調な決算が予想されるが、オオゼキについては、今期決算よりも、来期の経営戦略、特に、新規出店計画に注目したい。

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January 13, 2009

ウォルマート売上速報、2008年12月、マイナス成長!

   ウォルマートの2008年12月期の売上速報が1/8、公表された。結果は、マイナス0.1%(99.9%)となる厳しい数字となり、さすがのウォルマートも、未曾有の金融危機による経済情勢の悪化には勝てなかったといえよう。特に、海外部門が約20%近いドル高になり、これが急激にドル換算ベースでの売上を悪化させたのが主な要因である。では、国内はどうかというと、サムズクラブ部門もマイナスとなり、主力のウォルマート部門はさすがにプラスにはなったが、48週累計と比べると、この12月度は数字が下がっており、明らかに失速気味であるといえよう。

   これを受けて、ウォルマートの株が1/8以降、異常な投げ売りをされており、株価がストンと落ち、投資家もこの売上速報を売りと判断したようである。この売上速報が公表されたのが1/8であるので、その前後のウォルマートの株価を見てみると、以下の通りである。1/2(57.18ドル)、1/5(56.52ドル)、1/6(56.02ドル)、1/7(55.54ドル)、そして、1/8(51.38ドル)、1/9(51.58ドル)という状況であり、1/8、約10%の株価の下落である。しかも、この日、商いが約9,300万株の大商いとなり、通常が約3,000万株前後の商いであるので、投げ売りに近い状況であったことがわかる。

   1/8、恐らく、このウォルマートの失速を、全米の急激な消費後退に陥らない歯止めを掛けなければならないとの強い意志で打ち出されたのが、オバマ次期大統領の経済対策であろう。日経ヴェリタスによれば、「勤労者世帯の95%を対象に、1000ドルの減税を実施する。オバマ次期米大統領は8日、昨年から検討を続けてきた大型景気対策を発表した。減税以外に雇用創出策なども盛り込む幅広い内容で、総額は当初段階で年間7750億ドル規模に上るとみられ、・・」という、日本円に換算して約70兆円の日本の国家予算なみの経済対策である。ウォルマートの失速は、投資家だけでなく、アメリカ経済をも左右する衝撃とオバマ次期大統領は見たのではないかと推測される。

   では、1/8に公表されたウォルマートの売上速報をじっくり見てみたい。まず、全体売上であるが、465.09億ドル(約4.2兆円)であり、昨年対比99.9%とマイナス0.1%となった。48週累計が106.5%であるので、明らかに、この12月度は失速といえ、厳しい売上であった。その内訳をみえると、海外が-10.4%と大きく落ち込んだのが大きく、海外部門は現在107.06億ドル(約1兆円弱)、ウォルマート全体の12月度の売上が465.09億ドル(約4.2兆円)であるので、約25%弱の構成比であり、海外部門の失速はウォルマート全体に大きな影響を与えたといえよう。48週累計の海外部門は107.8%の成長であるので、いかに、サブプライムローンの影響がここ数ケ月急激にウォルマートへの影響が大きかったかがわかる。

   では、ウォルマート全体の65%強を占めるアメリカ国内のウォルマート本体はどうであったかを見てみたい。売上は309.69億ドル(約2.8兆円)であり、104.3%であった。これは、48週累計が106.3%であったので、やはり、ここへきて、失速感が否めない状況といえよう。また、既存店の売上を見ると、101.9%であり、48週の既存店の売上累計が102.8%であるので、既存店も全体もこれまでよりは、明らかに売上が失速しており、さすがのウォルマートもここへきて厳しい状況に追い込まれつつあることが明らかである。

   ちなみに、サムズクラブ部門であるが、-2.1%(97.9%)であり、48週累計が105.6%であるので、ウォルマート部門以上に厳しい状況である。既存店については、さらに厳しく、-3.2%(96.8%)であり、48週累計の既存店が104.7%であるので、この12月度はサムズクラブ部門も苦戦したことがわかる。

   問題は、このウォルマートの厳しい状況が、年末年始の12月特有の売上の失速であるか、それとも、今期はウォルマートも厳しい状況となり、ひいては、アメリカの消費環境がより一層悪化し、比較的不況に強い、低価格戦略を強く打ち出しているウォルマートすらも厳しい状況に陥るほど、消費環境が悪化するのではないかという懸念であろう。

   1/8のウォルマートの株価、投資家の反応、そして、オバマ次期大統領の経済対策を見る限りでは、これは、短期的な現象としてとらえているのではなく、中長期的な観点から、アメリカの経済、そして、消費環境の悪化をとらえていると判断して良いと思われるので、今期のアメリカは新年早々ではあるが、今後、厳しい状況になることが確実な情勢になったといえよう。

   このように、ここ数ケ月、売上が失速してきたウォルマートであったが、ついに、マイナスという衝撃的な数字となり、この状況を投資家、オバマ次期大統領も深刻に受け止め、投資家は投げ売り、オバマ次期大統領は大型経済対策を、この1/8のウォルマートの12月度の売上速報の公表に合わせて行っており、いかに、ウォルマートがアメリカ経済にとって象徴的な企業であり、しかも、実際、強い影響があるかが改めて明らかになったといえよう。ウォルマートの決算も残すところ、あと1ケ月であるが、問題は、今期の決算ではなく、今後、ウォルマートがこの状況を踏まえ、どのような経営戦略を打ち出すかにあり、ウォルマートの来期の経営戦略に注目である。

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January 12, 2009

節約志向鮮明、日経、マネー生活で特集!

   日経新聞1/11、Sunday Nikkei、マネー生活ページで家計ネット1,000人本社調査が公表された。内容は、日経がインターネットで全国の約1,000人にアンケート調査を行ったところ、1年前に比べ不安を感じることが増えた項目として、「収入の減少」、「将来の暮らし」を挙げた人がそれぞれ約6割に上ったということである。また、このような不安に支出入を見直して緊縮財政で対処しようとする人は8割近くに達したとのことである。食品スーパーマーケットの商品の販売動向を見ても、これらは裏付けられる数字でもあり、家計は明確に節約志向、緊縮財政にシフトしたといえよう。

   今回の、日経のアンケート結果の見出しを見ると、「将来不安、緊縮財政急ぐ」、「赤字・予備軍が半数」、「支出入見直す、8割近く」、「節約するなら食費・・」、「通信など固定費カギに」、「期待できる明るい話題、日本企業の回復4割」というものである。記事では、これらの見出しに沿って、集計結果を円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフなどにまとめており、興味深い調査結果であるといえよう。

   まず、毎月の家計の収支についての集計結果が円グラフで公表されているが、これを見ると、54.6%が赤字もしくは赤字予備軍であり、収支が厳しい状況がわかる。だいたい黒字はわずか14.5%しかなく、だいたいトントンも23.6%という状況である。そして、この赤字もしくは赤字予備軍を年齢別にみると、45-49歳が70%をしめ、トップであり、50-54歳、55-59歳も60%を超え、この45-59歳の年齢が最も厳しい状況であるという。逆に、若年層は50%を下回り、年配の家計ほど厳しい状況であるがことが浮かび上がった。この世代はまさに、食品スーパーマーケットのコア顧客であるだけに、この調査結果は食品スーパーマーケットにとっては、戦略転換を迫る調査結果といえ、今後、いかに、節約志向に入った家計を支援するマーチャンダイジングの構築が一層求められるといえよう。

   また、家計の支出や収入を見直す必要があるかとの問いに、実に76.3%が見直す必要があると答えており、見直す必要がないはわずか16.8%である。そして、その具体策であるが、50%前後の方が食費など生活必需品の支出を削る、小遣いや娯楽・レジャー費用を削る、衣料品などの購入を減らす、と答えており、食費、小遣い、衣料品が3大節約商品であることがわかる。ついで、携帯電話などの料金プランを見直す、生命保険を見直すなどとなる。
   
   実際、現在、最新の家計調査データ2008年11月度の数字を見てみると、外食を除く食品は102.9%、小遣い84.8%、その中でも世帯主の小遣い88.7%、パック旅行費97.3%、衣料品100.3%という状況である。さらに、衣料の状況を見ると、和服28.5%、洋服105.7%、婦人用洋服106.1%、子供用洋服106.3%、シャツ・セーター類97.8%などであり、意外に、小遣いは厳しい状況ではあるが、食品を含めて、衣料品の数字はまだ堅調であるといえよう。今後、小遣いから、衣料品、食費へとじわじわと節約志向が進んでくるのではないかと、このアンケート調査を見る限り、予想される。
   
   今回の日経のアンケートでは、これ以外にも節約を考えるとき「値段の安さ」と「品質・安全・効率性」のどちらを重視するかという問いに対し、食料品は60%以上が安さより質・安全重視と答えており、厳しい家計の状況においても、家計は、単なる価格訴求は望んではいないことがわかる。ただ、洗剤、日用品は逆に60%以上が質・安全より安さ重視と答えており、衣料品は50%:50%であり、商品により、判断が分かれたのが特徴である。食品スーパーマーケットとしては、この結果を見る限り、食品の単なるディスカウントではなく、品質、安全重視の値頃のある価格の打ち出しがポイントといえ、PBにおいても、価格ではなく、品質、安全重視が課題といえよう。
   
   最後に、節約術マップという興味深い分析のグラフが掲載されており、縦軸が大ナタ、チリツモ、横軸が変動費、固定費で分け、4象限で内容を分析している。これを見ると、右上の大ナタ、変動費の代表的な内容は、古いものを修理などで買い換えずに使う、買い物をする店を変える、買い物回数を減らすであり、左上の大ナタ、固定費は、住宅ローンの借り換え、車を手放す、生命保険などの保険の見直し、携帯のプラン変更などである。これに対して、右下の変動費、チリツモは閉店時間の直前など、買い物に出るタイミングを変えるなどであり、左下の固定費、チリツモは小遣いを減額する、こまめに節電・節水をするなどである。
   
   このように、今年は、この日経のアンケート調査結果が示すように、家計の収支が厳しくなり、必然的に家計の節約志向が深まることが確実となったといえよう。また、今回の内容を見ると、単なる価格訴求を家計は望んではおらず、品質重視、安心、安全を強く望んでいることも明確に浮かび上がっており、食品スーパーマーケットにとっては、品揃えと、売り場づくり、販促を再度見直し、戦略的に家計の節約志向にこたえられる体制作りが必要といえよう。食品スーパーマーケット各社が今後、具体的に節約志向をどのように売り場で具現化してゆくのかに注目したい。

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January 11, 2009

マルエツ、2009年2月、第3四半期、増収大幅増益!

    マルエツの2009年2月期の第3四半期決算が、1/8、公表された。営業収益2,560.48億円(102.2%)、営業利益62.26億円(112.9%:営業収益比2.4%)、経常利益58.66億円(116.0%:営業収益比2.3%)、当期純利益58.24億円(174.7%:営業収益比2.27%)となる増収大幅増益となる好調な決算となった。収益が102.2%とやや伸び悩んだ感があるように思われるが、マルエツ単体の営業収益は108.1%と堅調な伸びを示している。特に、ここ最近のマルエツ単体の売上速報を見ると、11月度111.0%(既存店104.4%)、10月度107.3%(既存店101.0%)、9月度106.3%(既存店100.6%)と、ここへ来て高い伸び率を示しており、マルエツ単体、すなわち、店舗は順調な売上推移であり、好調である。

    今期も上期にマルエツ勝どき六丁目店(東京都)、ポロロッカ護国寺駅前店(東京都)、フーデックスプレス白金台プラチナ通り店(東京都)、ポロロッカ港南シティタワー店(東京都)の4店舗を新設し、下期にはマルエツ行徳駅前店(千葉県)、イオンレイクタウン内にマルエツ越谷レイクタウン店(埼玉県)の2店舗をオープンした。その結果、総店舗数は241店舗と日本の食品スーパーマーケット業界ではNo.1の店舗数を誇っている。

    一方、利益面であるが、原価は71.9%(昨年73.8%)と約2ポイント改善した。今期はイオンのPB、トップバリュの導入を拡販したこともあるとは思うが、この値上げ環境の厳しい中、原価が改善しており、結果、売上総利益は28.1%(昨年26.2%)と好調であった。一方、販売費及び一般管理費であるが、27.7%(昨年26.0%)と約2ポイント弱上昇し、やや厳しい状況であった。その結果、マーチャンダイジング力、商品売買から得られる粗利-経費は0.4%(昨年0.2%)と昨年より、増加し、プラスとはなったが、もう少し、強化したいところであろう。

   今後、マーチャンダイジング力を強化するには、いかに、経費を抑えるかが課題といえ、そのためにも、一層の経費削減と、一方で、坪効率を引き上げ、相対的に固定費を下げる戦略的な店舗づくりも課題といえよう。そして、これに不動産収入等の営業収入が2.0%(昨年2.1%)のり、結果、営業利益は2.4%(昨年2.3%)と0.1ポイント上昇し、好調な決算結果となった。

   この好調な決算の流れを受けて、キャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは110.0億円と100億円を超えた。投資キャッシュフローは、新店投資などに投資を行い、-33.5億円となり、結果、フリーキャッシュフローは76.5億円とプラスの順流のキャッシュフローとなった。ここから、財務キャッシュフローとして、短期借入金35.0億円、コマーシャルペーパー20.0億円などを返済し、-63.9億円と多額のマイナスとなったが、トータルでは、12.6億円のプラスとなり、ほぼ理想的なキャッシュフローの流れである。

   一般的にキャッシュフローの理想的な流れは、好調な決算によって、営業キャッシュフローを極限まで高め、その豊富な営業キャッシュフローから、成長戦略のための新規出店投資への投資キャッシュフローを50%以上、残りの50%以内の、30%ぐらいを配当、負債の圧縮等に充て、20%ぐらいを資金として残すのが理想といえよう。今期、マルエツについては、負債圧縮の財務キャッシュフローの構成比が60%近くとなり、投資キャッシュフローが30%ぐらいしかできず、やや成長戦略への投資が抑制されざるをえなかった点が気にはなるが、いずれ、負債が健全な状況になれば、一層の成長戦略への投資が可能となり、より、理想に近いキャッシュフローの流れができるようになろう。

   そこで、マルエツの負債の状況を見てみたい。負債の中でも、その主要項目である長短借入金等の合計は297.3億円(昨年310.3億円)と約10億円強削減した。ただ、前期決算時には360.1億円であったので、削減額はこの9ケ月で60億円強であり、負債の削減が大きく進んでいることがわかる。結果、総資産1,275.0億円の23.3%となった。現在、マルエツの自己資本比率は41.3%であるが、昨年は38.0%であり、徐々に上昇傾向にあり、今後、好調な決算をいかし、負債の圧縮が一層すすめば、自己資本比率を50%から60%へと安定的な比率に改善する方向が見えてきたといえよう。

   では、マルエツの出店余力を見てみると、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金の合計は837.0億円(昨年733.9億円)となり、総資産の65.6%であり、自己資本比率41.3%から引いた出店余力は-24.3%であり、まだまだ、負債に依存した新規出店構造といえ、今後、安定的な成長をしてゆく上には、一層の財務改善が必要といえよう。ちなみに、1店舗当りに換算すると、3.5億円であり、小型店が多いせいか、出店にかかわる資産は比較的低いのが実態である。

   このように、マルエツの2009年2月期の第3四半期決算が公表されたが、増収増益の好決算となり、キャッシュフローの流れもよくなり、財務の改善が確実に進み、自己資本比率は40%台となった。現在、マルエツをはじめ、食品スーパーマーケットには節約志向、内食需要という追い風が吹いており、今期は好決算が予想される。マルエツとしても、ここで、この好決算をいかし、財務改善が一層すすめば、数年後には安定成長戦略が可能な強固な財務体制ができあがるといえよう。来期、マルエツがどのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。

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January 10, 2009

日経MJ新製品週間ランキング、年末年始好調!

  日経MJ新製品週間ランキングが1/9、公表された。今週は12/28から1/3の1週間の週間ランキングであり、ちょうど年末年始となった。そのせいもあるかとは思うが、ここ数週間、金額PI値Aランクの500円(1人当たり0.5円)を超える新製品が1品もなかったが、今週は何と、6品も登場した。特に、年末年始特有の商品が数字を引き上げたのがその要因であり、その他食品の日配関連、アイスクリーム、菓子などが好調であった。特に、その他食品では、大半が年末年始特有の新製品で占められており、いかに、年末年始は日配に特有の新製品が集中するかが改めて浮き彫りになったといえよう。

  今週、全新製品の中でNo.1となったのは、金額PI値675円となった、ハーゲンダッツジャパン、ミニカップ・マルチパック6個入り(リッチミルク・ショコラクラシック・カスタードプディング)である。先週比金額PI値274円という急上昇であり、まさに、年末年始、異常値となった商品である。No.2は金額PI値614円のカルビー、ビックバックうすしお味70gであり、これも先週比280円という異常値である。どちらも、年末年始に、これらの商品を家族みんなで食べている姿が目に浮かぶような状況である。

  これについで、金額PI値500円以上の新製品としては、その他食品のフジミツ、お正月福150g×2本+175g、金額PI値578円、たいまつ食品、お鏡餅福招き干支160g、金額PI値534円、たいまつ食品、お鏡餅橙(パッと鏡開き)160g 24入れ、金額PI値510円が続く。いずれも、まさに、年末年始特有の新製品といえ、この時期だけの特別な新製品といえよう。また、家庭用品からも1品、花王、ニュービーズ大1kg、金額PI値513円が入った。以上が、金額PI値Aランク500円を超える全新製品の6品である。

  ここで、金額PI値はやや下がるが、年末特有の新製品をいくつか見てみたい。まず、冷凍食品No.2となったヒマラヤ、ボイルたらばがにハーフポーション400g、金額PI値337円、No.3のクラレイ、ボイルズワイガニバルダイHP520g、金額PI値284円、そして、No.6となるが、極洋、ボイルバルダイハーフポーション520g、金額PI値187円である。これに加え、No.10の江崎グリコ、アイス詰め合わせ(福袋)8個、金額PI値137円、No.14の日清食品冷凍、冷凍具多とろっとたまごの鍋焼天プラそば291g、金額PI値75円なども年末特有の新製品であろう。

  さらに、その他食品でも、No.4の堀川、松竹梅セット85g×3本、金額PI値392円、No.5、日本ハム、長崎仕込み黒角煮410g、金額PI値344円、No.6、佐々商店、栗きんとん230g、金額PI値342円などである。いずれも、まさに年末年始特有の新製品といえ、このほんの一瞬だけ、ランクングに登場する新製品とえよう。もういくつか見てみると、No.13、しなの麺工房、信州生そばつゆ付310g、金額PI値232円、No.20の越後製菓、お鏡もち開いてポン550g、金額PI値187円も年末特有の新製品であるといえよう。

  また、この年末年始は全体でNo.2になったポテトチップスに代表されるがごとく、菓子部門も好調な新製品が多い。特に、ポテトチップスは絶好調であり、菓子部門No.2にカルビー、ビックバックコンソメパンチ170g、金額PI値448円、No.3にカルビー、ポットチップスうすしお味70g、金額PI値352円、No.4にもカルビー、ポテトチップスコンソメパンチ70g、金額PI値268円が入り、カルビーがこの年末年始は菓子部門を独占した状況である。また、菓子でも年末年始独特の新製品として、No.5にあわしま堂、初春鶴亀6個入、金額PI値196円、No.9に岩塚製菓、黒豆せんべい10枚、金額PI値132円、No.20にあわしま堂、L迎春和菓子セット6個入り、金額PI値90円などが入った。

  逆に、この年末年始、不振だった部門は飲料である。金額PI値Aランクの500円を超える新製品がないだけでなく、Cランクの金額PI値200円を超える新製品も1品もなかった。飲料No.1は日本コカ・コーラ、ファンタフルーツパンチ1.5L、金額PI値122円が最高であり、これ超える新製品は1品もなかった。No.2も日本コカ・コーラ、ファンタフルーツパンチ500mlペットボトル、金額PI値113円であり、これ以下は、金額PI値がすべて100円を切り、厳しい状況であった。

  そして、家庭用品部門であるが、先に上げた花王、ニュービーズ大1kg以外では、No.2に資生堂、リバイタルグラナスセラム30g、金額PI値309円が入った。No.3には花王、グレイスソフィーナメディケイテッド薬用リンクル美容液40g、金額PI値202円が入った。いずれも化粧品であり、平均単価が14,657円、5,583円と高額商品である。

  このように、今週の新製品週間ランキングは年末年始となったため、独特な新製品がランキングに登場し、また、上位も年末年始特有の新製品が占めた状況である。特に、その他食品、冷凍食品、そして、菓子は異常値の新製品が数多く登場しているのが特徴である。気になるは、飲料であり、時期的も冬場は難しい季節ではあるが、ヒット商品不在の状況がここ暫く続いており、金額PI値も低い状況である。来週以降は年末年始の異常な新製品のオンパレードは終わり正常にもどると思われるが、どのような結果になるか気になるところである。来週の新製品ランキングに注目したい。

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January 09, 2009

ライフコーポレーション、2009年2月期第3四半期、好調!

   1/6、ライフコーポレーションの2009年2月期の第3四半期決算が公表された。営業収益3,448.64億円(105.9%)、営業利益80.71億円(108.8%:営業収益比2.3%)、経常利益77.86億円(111.5%:営業収益比2.2%)、当期純利益42.35 億円(111.9%:営業収益比1.2%)となり、好調な決算であった。特に、利益はほぼ2桁の伸び率であり、節約志向、内食回帰の追い風を受け、食品スーパーマーケットの好調さが新ためて示された決算であるといえよう。ただ、通期予想は、営業収益4,600.00億円(104.6%)、営業利益105.00億円(100.6%:営業収益比2.2%)、経常利益98.00億円(100.6%:営業収益比2.1%)、当期純利益50.00億円(116.9%:営業収益比1.0%)であり、売上は堅調であるが、利益がやや伸び悩む予想であり、気になるところである。
   
   今期、ライフコーポレーションは既に、8店舗の新規出店をしており、10月に寝屋川黒原店(大阪府)、11月に大国町店(大阪府)を新規オープンしたことに加え、これまでに、今津駅前店(3月)、毛馬店(3月)、三国橋店(4月)、西九条店(4月)、調布仙川店(6月)、江北駅前店(7月)と次々に店舗をオープンしており、積極的な新規出店を果たしている。その結果、総店舗数は、首都圏91店舗、近畿圏112店舗の合計203店舗となり、200店舗を突破した。この積極的な新店戦略が堅調な営業収益へとつながったといえよう。
  
   一方、利益の方であるが、原価は73.9%(昨年74.0%)と0.1ポイント下がっており、この厳しい食品メーカーの値上げ攻勢の中で、原価が下がった。結果、売上総利益は26.1%(昨年26.0%)となった。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、26.4%(昨年26.3%)と0.1ポイント上昇した。したがって、マーチャンダイジング力、売上総利益-経費は-0.3%(昨年-0.3%)となり、昨年同様、-0.3%であった。残念ながら、現状のライフコーポレーションのマーチャンダイジング力はマイナスであり、商品売買から得られる粗利で経費を賄えない構造となっている。したがって、不動産収入等の営業収入で相殺する構図となるが、今期は2.7%(昨年2.6%)と0.1ポイント増加したため、結果、営業利益は、2.4%(2.3%)と0.1ポイント、率にして、104.3%の上昇となった。これが、好調な営業収益とあいまって、利益を押し上げた要因である。
   
   ただ、マーチャンダイジング力がマイナスになるのは気になるところである。ここがプラスになれば、不動産収入等の営業収入分がそっくりプラスとなり、営業利益が大きく跳ね上がることになる。現在のライフコーポレーションは残念ながら、経費比率が26.4%と高い水準にあるため、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆくには、それ以上の原価削減が必要となるが、これは厳しい食品スーパーマーケットの競争の中では難しいものがあり、今後、ライフコーポレーションとしては、何としても経費比率を25%以下に下げたいところであろう。そのためには、一層の経費削減に取り組む一方で、固定費を相対的に下げるために坪効率をいかにあげるか、ないしは、集客力を引きあげ、売上をさらにあげるかが課題となろう。
  
   では、この好調な決算を受けて、財務状況はどうかを見てみたい。まず、自己資本比率であるが、23.4%(昨年23.5%)と極めて低い数字である。このまま、自己資本比率が改善しないと、いずれは、出店余力に限界が生じ、新規出店が思うようにできない状況となりかねない懸念があるといえよう。その要因であるが、負債の主要項目である長短借入金の合計が523.35億円(昨年672.72億円)と総資産の30.5%とかなりの比重を占めていることである。ただ、昨年と比べ、約150億円削減し、急激な財務改善が進んでいる状況といよう。仮に、このペースで負債の削減が進めば、数年で自己資本比率は倍増し、いっきに出店余力が生まれ、成長戦略が見えてくることになる。
  
   そこで、今期のライフコーポレーションの出店にかかわる資産であるが、土地、建物、差入保証金の合計が973.02億円(昨年964.12億円)となり、総資産の56.7%である。これは全店舗203店舗で割ると4.79億円となる。したがって、ここから出店余力を計算すると、自己資本比率-出店にかかわる資産=-33.3%であり、ちょうど、負債の長短借入金分30.5%で賄っている構図となっており、負債に大部分を依存した出店構造といえる。今後、今期の勢いで長短借入金が返済され、自己資本比率が高まってくれば、出店余力は大きく改善されるので、いかに、ライフコーポレンションとしては、好業績をもとに、負債を削減できるかが、今後の成長戦略を描く上での課題となろう。
   
   このように、2009年2月期の第3四半期のライフコーポレーションの決算が公表されたが、増収増益の好決算となり、負債も削減され、経営改善が確実に進んでいるといえよう。ただ、今後、さらに収益を上げ、安定成長してゆくには、経費比率の削減、負債の削減が一層求められるといえ、これらがどこまで、今後改善されるがかが経営課題といえよう。ライフコーポレーションが現在進めている経営改革の成果が今期の数字にも着々と表れつつあるといえ、今期決算がどのような数字となり、そして、来期経営戦略をどのように打ち出すかに注目したい。

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January 08, 2009

イズミ、2009年2月期第3四半期決算を公表、増収減益!

   売上好調のイズミが2009年2月期の第3四半期の決算を1/6、公表した。営業収益3,641.62億円(107.1%)、営業利益150.21億円(86.2%:営業収益比4.1%)、経常利益 141.10億円(81.6%:営業収益比3.8%)、当期純利益95.58 億円(99.1%:営業収益比2.6%)と増収とはなったが、減益となるやや厳しい決算となった。イズミはこの11月度、売上が絶好調である。11月度は昨年と違い、土日、祝日が多く、GMS、SCが主力業態のイズミにとっては追い風が吹いていたこともあるが、異常値ともいえる数字である。上場食品スーパーマーケット業界で、売上速報を公表している企業の中でイズミは断トツの1位の売上伸び率であった。また、1/7の日経新聞に公表された11月度のスーパー販売実績では、何と、単体では125.4%という前年比の売上伸び率であり、改めて、この11月度のイズミの売上の好調さを示しているといえよう。
 
   日経新聞で公表された11月度のスーパー販売実績は、イズミだけでなく、軒並み、各社の数字は好調である。ベイシア114.7%、ユニー114.1%、マルエツ111.0%をはじめ、サミット109.8%、ライフコーポレーション109.3%、フジ107.1%、ヨークベニマル106.4%と105%以上の好調な企業に続き、イトーヨーカ堂103.4%、ダイエー102.9%とGMSも好調である。逆に、この11月、厳しかった企業は平和堂91.9%、イオン95.1%、コープこうべ98.4%、東急ストア99.6%の4社のみ、昨対を割っただけであった。いかに、11月度は曜日の関係もあるが、各社、売上が好調であったかがわかる。
 
   さて、イズミの2009年第3四半期の決算内容であるが、売上が好調な理由は既存店が99.7%という数字であるので、既存店ではなく、新店が大きく寄与したことがその要因であるといえる。特に、今期は、11 月に四国第2 号店となる「ゆめタウン三豊」(香川県三豊市)の新設に加え、6月にゆめタウン出雲、2月にゆめタウン広島の新規オープン等があり、これらの新店が売上を大きく底上げしたのが大きかったといえよう。イズミはこの12月にもゆめタウン丸亀をオープンさせ、さらに、今後、ゆめタウンみゆき、ゆめタウン新下関を新規オープン予定であり、当面、新規出店が寄与し、売上は大幅増が続くものと予想される。

   では利益はどうかを見てみたい。まず、原価であるが、78.9%(昨年78.4%)と0.5ポイント上昇している。今期の値上げによる原価上昇が響いたといえよう。結果、売上総利益は21.1%(昨年21.6%)と、0.5ポイント下がった。一方、販売費及び一般管理費であるが、22.4%(昨年20.9%)と1.5ポイントと大幅に上昇した。その結果、マーチャンダイジング力、商品売買から得られる粗利-経費は-1.3%(昨年0.7%)とプラスから、マイナスに転じた。これに、不動産収入等が5.2%(昨年4.6%)のり、最終的な営業利益は、マーチャンダイジング力のマイナスをカバーし、3.9%(昨年5.2%)とプラスになったが、昨年と比べ、1.3ポイントのマイナス、率にして75%という結果である。

   これに対して、イズミは「店舗新設や増床に係る創業経費や販促関連経費など販管費負担が増大したことに加え、有利子負債増加に伴う支払利息増加や有価証券及びデリバティブの評価損の計上(いずれも営業外費用)もあり、当第3四半期は中間期に引き続き営業利益、経常利益ともに減益となり、・・」とコメントしている。新店による成長戦略が、経費の増大、負債の増加をもたらしており、経営を圧迫しはじめているということである。

   では、その財務状況であるが、自己資本比率が26.1%(昨年32.5%)と大きく下がっており、自己資本による出店余力が厳しい状況になっているといえる。これは、負債の主要項目である有利子負債が1,773.51億円(昨年1,666.21億円)と約100億円増加しており、総資産に占める割合は44.3%とかなりの比重となっていることである。イズミの出店にかかわる資産である土地、建物、差入敷金及び保証金の合計は2,907.15億円(昨年2,582.40億円)であり、これは総資産の72.6%を占める状況であり、自己資本比率26.1%では賄えず、出店余力は-46.5%と負債、特に、有利子負債に大半を負う構造となっている。今後、さらに成長戦略を継続してゆくには、厳しい財務状況であるといえよう。

   これを受けて、2009年2月期通期の予想であるが、営業収益4,965.00億円(105.5%)、営業利益216.00億円(87.1%:営業収益比4.3%)、経常利益205.00億円(82.8%:営業収益比4.1%)、当期純利益124.00億円(90.7%:営業収益比2.4%)と増収の予想ではあるが、この第3四半期決算同様、利益はやや厳しい状況となる予想である。

   このように、イズミの2009年2月期の第3四半期決算が1/6に公表されたが、売上は順調に推移し、今期、年商5,000億円に届く勢いであるが、既存店の伸びがなく、積極的な新店による売上増であり、結果、経費、財務を圧迫し、利益がやや厳しい状況である。また、財務も、有利子負債が増加し、結果、自己資本比率が26.1%となり、今後、さらに成長を目指してゆくには厳しい財務状況といえよう。今期は成長戦略に重点をおいた経営戦略を優先してきたが、来期は財務の改善、そして、利益に重点をおいた経営戦略への転換が必須といえよう。イズミが来期、どのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。

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January 07, 2009

時価総額1/5、小売業、食品スーパーマーケットの現状!

   1/5、今年も株式の取引が始まった。そこで、年頭に当たり、1/5時点での上場小売業約350社、食品スーパーマーケット約50社の時価総額がどのくらいの水準にあるかを見てみたい。今年は、間違いなく、流通再編の年となると思われ、様々なM&Aが起こることが予想される。そのM&Aにあたっての重要な決め手となる指標のひとつが時価総額である。また、企業経営にとっては時価総額はPER、PBRとも密接な関係があり、株主にとっても重要な指標のひとつであり、経営者としては、いかに時価総額を高める経営を行うかは、株主に対しての責任を果たす意味でも重要な指標である。そこで、ここでは、1/5、大初会時点での小売業、そして、食品スーパーマーケットの時価総額を見てみたい。

   ちなみに、時価総額と企業経営の関係であるが、PER(株価収益率)=時価総額÷純利益、PBR(株価純資産倍率)=時価総額÷株主資本となり、さらに、PBR=PER×ROE(株主資本利益率)となるので、時価総額を高めることは、PER、PBRを高めることにつながり、さらには、ROEとバランスをとることにより、PBRの向上にもつながる。ただし、単純にROEを高めるには、ROE=純利益÷株主資本であるため、利益を高めるのではなく、株主資本を小さくすれば、高まることになり、いわゆる、負債、特に借入金の多いレバレッジの高い財務内容の場合、ROEは高まるので、その中身も見ることがポイントである。
  
   さて、1/5の小売業の時価総額ベスト10であるが、7&I-HD27,193億円、ファーストリテーリング14,097億円、イオン7,188億円、ヤマダ電機5,845億円、ローソン5,100億円、ニトリ3,971億円、Fマート3,751億円、三越伊勢丹H3,006億円、ABCマート2,676億円、しまむら2,487億円である。No.1の7&I-HDとNo.10のしまむらとはちょうど10倍の差があり、いかに小売業界は上位数社のみが突出した時価総額であるかがわかる。また、イオンの時価総額がNo.3、No.1の7&I-HDの1/4、No.2のファーストリテーリングの1/2であり、これは企業規模からすると、かなり厳しい時価総額であるといえよう。今後、三菱商事との資本業務提携を活かし、いかに時価総額を高めるかが喫緊の経営課題であるといえよう。その三菱商事であるが、22,927億円であり、ほぼ7&I-HDと同じ規模である。残念ながら、このベスト10に食品スーパーマーケットが1社も入っていず、いかに、食品スーパーマーケットの時価総額が低いかがわかる。
   
   次に、食品スーパーマーケットのベスト10であるが、イズミ1,698億円、ライフコーポレーション933億円、平和堂827億円、マルエツ697億円、オークワ620億円、フジ617億円、アークス613億円、ヤオコー600億円、サンエー588億円、バロー527億円という規模である。No.1のイズミは小売業の中では15番目の時価総額である。現在、時価総額1,000億円以上の食品スーパーマーケットはイズミのみであり、食品スーパーマーケット業界は、まだまだ、時価総額が低い状況であり、今後、いかに時価総額を高めるかが課題であるといえよう。
   
   さらに、ベスト20まで食品スーパーマーケットの時価総額を見てみたい。イズミヤ519億円、いなげや469億円、タイヨー445億円、MV西日本 363億円、オオゼキ338億円、カスミ324億円、丸久272億円、MV東海272億円、丸久261億円、イオン九州254億円となる。No.11までが、時価総額500億円以上の食品スーパーマーケットであり、No.12からは500億円を下回り、No.20では250億円となる。このベスト20の中には、食品スーパーマーケットの中でも業績が好調で、経営内容の安定した企業、ヤオコー600億円、サンエー588億円、オオゼキ338億円などが登場しており、その時価総額は500億円前後といえる。
   
   逆に、食品スーパーマーケット業界で時価総額が低い企業を見てみると、PLANT18億円、丸和19億円、マルミヤストア25億円、マルヤ27億円、北雄ラッキー28億円、ジョイス52億円、ドミー59億円、マルキョウ61億円、エコス 69億円、MV東北82億円、天満屋ストア98億円であり、この11社が、1/5現在、100億円を下回る食品スーパーマーケットの時価総額の企業である。
   
   最後に、小売業約350社の上場企業の中で、トップ10を除き、時価総額が1,000億円以上の企業を見てみたい。マクドナルド2,419億円、高島屋2,203億円、Jフロント1,952億円、ユニー1,912億円、イズミ1,698億円、サンドラック1,656億円、丸井G 1,644億円、スギHD1,504億円、H2Oリティル1,389億円、サークルKS1,389億円、ポイント1,284億円、ドン・キホーテ1,278億円、コメリ1,194億円、良品計画1,154億円、松 屋1,033億円である。
   
   このように、1/5現在の小売業、そして、食品スーパーマーケットの時価総額を見てみたが、小売業約350社の内、時価総額が1,000億円を超える企業は25社しかなく、1割にもみたない。この中にはイズミが食品スーパーマーケットとして唯一入っているが、食品スーパーマーケットにとっては、時価総額1,000億円が大きな壁であるといえる。今後、食品スーパーマーケットはもちろん、小売業界としても、時価総額をまずは1,000億円を目指し、どのような経営戦略を作るかが、企業の価値を上げる上にも重要な経営課題といえ、来るべき、流通再編のM&Aの嵐の中で生き残ってゆくための目標といえよう。今期、この1/5時点の小売業、食品スーパーマーケット各企業の時価総額が、この1年でどこまで価値があがるかに注目したい。

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January 06, 2009

流通再編を考える!

   1/5の日経新聞に流通再編の特集記事が図解入りで組まれた。「流通再編、業種超え加速」との見出しのもとに、コンビニ(ローソン・ミニストップ、連携視野、イオンの動きカギ)、百貨店(電鉄系、焦点に浮上)、家電量販店(消耗戦に拍車、コジマも合従連衡に含み)、ドラックストア(販売規制緩和で荒波、売上高2000億円めざしM&Aも、市場には成長期待)を取り上げての特集記事である。特に、図解は商社、スーパー、コンビニ、ドラックストア、調剤薬局、百貨店、家電量販店と流通業界全体を俯瞰しての内容であり、興味深い記事である。ただ、食品スーパーマーケットは、GMSと一緒に図解されており、食品スーパーマーケットの流通再編の動きがややわかりにくく、残念である。そこで、本ブログでは、食品スーパーマーケットの動きを少し交えながら、今年、間違いなく起こるであろう流通再編について考えてみたい。

   いま起こっている流通再編の注目点は商社が昨年来、本格的に動き始め、GMSを起点に食品スーパーマーケット、コンビニ、ドラックストアを巻き込んだ垂直的な再編に発展するのではないかということが最も大きな動きであると思う。これはどちらかというと質を追い求めた流通再編といえよう。また、西友、ウォルマート連合もいつ、GMS、食品スーパーマーケットへのM&Aの発表があってもおかしくない状況であり、この動きも今年の流通再編のポイントである。一方、これに対して、水平的な流通再編も激しい勢いで起こっており、百貨店、家電量販店、そして、ドラックストア業界でここ最近、動きが激しさを増しているといえよう。これは質に対して、どちらかというと量をもとめた流通再編といえよう。

   この質と量の流通再編は一方的な動きではなく、相乗的に螺旋状にも動いており、最終的にどのような流通業界の再編につながるかは読みにくい状況ではあるが、今年は、何が起こっても不思議ではなく、逆にいえば、何でもありの流通再編の状況といえよう。ただ、流通再編を急がなければならい、待ったなしの状況もある。その大きな要因は、今年6月からはじまる改正薬事法の施行であるといえよう。また、昨年から本格的な規制がはじまった改正街づくり3法の規制の影響もGMSには大きな要因である。そして、もう一点は、未曾有の経済情勢の悪化からくる消費者の節約志向の高まりによる流通業界全体での価格競争の激化であろう。

   まず、改正薬事法の問題であるが、この問題は、この日経の流通再編の記事にあるように、「病院が診療、薬局は調剤に特化する「医薬分業」の流れから、07年度の調剤市場は4兆9,000億円と前年比8.7%の成長した。今後も伸びが期待され、・・」とのことであり、今後、大衆薬の大半が登録販売者をおけば、GMS、食品スーパーマーケット、コンビニでも販売が可能になり、ドラックストア業界が厳しい状況となる。これを打開する有力な方法が成長性の高い調剤を強化することであり、ここにいま熱い視線が注がれているということであろう。実際、日経の記事でも、マツモトキヨシHDと日本調剤との業務提携、セブン&アイHDとアインファーマシーズとの資本業務提携などの動きが解説されている。

   次に、改正街づくり3法の規制であるが、これはSCを主力業態のひとつとしてきたイオンには特に大きな打撃であり、GMS業態、スーパーセンター業界も自由な出店ができず、成長路線の修正を余儀なくされている。特に、イオンは今後の成長戦略をみなおし、国内では収益重視の戦略展開を図っている最中であり、三菱商事との資本業務提携に踏み切っている。また、SC、GMSから食品スーパーマーケット、コンビニへのM&Aを加速させており、マルエツ、カスミ、ベルク、光洋などを子会社化、ないしは、資本業務提携に踏み切っている。さらに、今後、三菱商事との関係が深まれば、三菱商事系列の食品スーパーマーケットのライフストア、コンビニのローソン、ローソン傘下のショップ99などとの連携も視野に入り、大がかりな流通再編に入る可能性も高い。

   そして、消費者の節約志向による流通業界全体の価格競争の激化であるが、すでに、この年末商戦からはじまっており、この動きはますます激化しよう。家電量販店のヤマダ電機の食品ディスカウントへの参入も、成長性に陰りを見せた家電に価格訴求の食品を加えることで既存店の集客力を引き上げる戦略であり、価格訴求はあらゆる流通業界全体で今年は最大のテーマとなろう。

   このように、今年は、この1/5の日経が特集したように、流通業界の質、量を目指した垂直、水平、入り交えた再編がまさに加速するのではないかという情勢であり、いつ、何が起こってもおかしくない状況に入ったといえよう。特に、アメリカ発の金融不安による未曽有の世界経済の悪化は確実に日本経済にも波及しており、流通業界も無傷ではいられない状況であるといえる。流通業界にとっては、今年は歴史的な1年になるのではないかと思う。

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January 05, 2009

マックスバリュ中部、西日本、第3四半期決算、好対照!

   マックスバリュ中部(12/10)、西日本(12/16)が2009年2月期の第3四半期の決算をあいついで公表した。マックスバリュ中部の営業収益855.55億円(101.7%)、営業利益12.67億円(109.1%:営業収益比1.48%)、経常利益13.67億円(210.4%:営業収益比1.59%)、当期純利益4.35億円(69.8%:営業収益比0.50%)と営業、経常段階では増収増益となる好決算ではあったが、当期純利益が昨対を切った。これは、昨年吸収合併したマックスバリュ名古屋の財務的な影響によるものであり、特に税効果会計等の適用が大きかったという。一方、マックススバリュ西日本であるが、営業収益1,597.64億円(110.5%)、営業利益50.74 億円105.4%:営業収益比3.17%)、経常利益53.00億円(104.8%:営業収益比3.3%)、当期純利益27.81億円(101.7%:営業収益比1.74%)と増収増益の好決算であった。

   この両食品スーパーマーケットを比較すると、マックスバリュ西日本は顕著な好業績であり、成長性、収益性ともに高い数字であるが、マックスバリュ中部は、マックスバリュ名古屋の吸収合併に手間取っているようであり、昨年、今年と不安定な決算結果となった。特に営業利益の営業収益比がマックスバリュ西日本の3.17%に対し、マックスバリュ中部が1.48%と半分の収益性であり、その差が歴然としている。食品スーパーマーケットの中間決算を見ても、現在、公表されつつある第3四半期決算を見ても、優良食品スーパーマーケットの営業利益率は4%前後であるので、マックスバリュ西日本は近い数字であるが、マックスバリュ中部はやや厳しい数字であるといえよう。

   では、この差がどこにあったのかを両食品スーパーマーケットの原価、経費の面から見てみたいい。まず、好調なマックバリュ西日本の状況であるが、売上原価は75.5%(昨年75.7%)と0.2ポイント改善している。今期の厳しい値上げ環境の中で、原価が改善されており、結果、売上総利益は24.5%(昨年24.3%)と粗利が改善された。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、23.4%(昨年22.9%)となり、0.5ポイント上昇するという厳しい結果となった。その結果、マーチャンダイジング力、売上総利益-経費は1.1%(昨年1.4%)と0.3ポイント下がったが、プラスの状況である。これに、不動産収入等の営業利益が2.1%(昨年2.0%)のり、営業利益は3.2%(昨年3.4%)と0.2ポイントであるが、減少したが、営業収益が110.5%伸びたので、これをカバーし、堅調な増益となったといえる。

   これに対して、マックスバリュ中部であるが、原価は74.9%(昨年75.2%)と0.3ポイント改善した。マックスバリュ西日本同様、この厳しい値上げ環境の中での原価改善であり、結果、売上総利益は25.1%(昨年24.8%)となった。この段階では、マックスバリュ中部の方が高粗利である。一方、販売費及び一般管理費であるが、26.0%(昨年26.2%)と0.2ポイント削減しており、経費改善が進んだといえよう。ただ、マーチャンダイジング力、売上総利益-経費は-0.9%(-1.4%)と0.5ポイント改善してはいるが、マイナスが続いており、ここがマックスバリュ西日本と決定的に収益性において違う点である。これに不動産収入等の営業収益が2.5%(昨年2.3%)のり、結果、営業利益は1.5%(昨年0.8%)と大きく改善はしたが、マーチャンダイジング力のマイナスが響いており、厳しい収益率であるといえよう。

   次に、この両食品スーパーマーケットの財務面を見てみたい。ここでは、特に、この決算結果を受けて、資金をどのように活用しているかをキャッシュフローの面から見てみたい。まず、マックスバリュ西日本であるが、積極的な投資を行っており、営業キャッシュフローが39.13億円に対し、投資キャッシュフローを-66.24億円とし、有形固定資産の取得に何と70.02億円を投入している。次の新規出店への布石といえよう。結果、フリーキャッシュフローは-27.11億円のマイナスとなる逆流となった。営業キャッシュフロー以上の投資、成長への布石を打ったのが特徴といえよう。また、財務キャッシュフローは-9.34億円をほぼ配当に支出しており、トータル-36.45億円となった。その結果、現金および現金同等物が59.14億円から22.68億円となったことが、気になるが、将来への成長を目指した積極的な投資に打って出た資金活用である。

   これに対し、マックスバリュ中部であるが、営業活動によるキャッシュフローは35.54億円であり、マックスバリュに西日本とほぼ同じ数字である。これに対し、投資キャッシュフローは-26.87億円であり、その大半は新規出店へ備えての、有形固定資産の取得25.78億円である。両食品スーパーマーケットとも成長性への投資に積極的であるが、マックスバリュ中部は営業キャッシュフローの範囲内であり、健全な投資であり、結果、8.67億円の順流のフリーキャッシュフローとなった。そして、財務キャッシュフローであるが、-6.45億円であり、結果、トータル2.21億円のプラスとなり、現金および現金同等物は昨年とほぼ同じ13.53億円となった。

   このように、マックスバリュ西日本と中部の2009年2月期の第3四半期の決算結果を見てみたが、対照的な結果とキャッシュフローの活用である。マックスバリュ西日本は好決算をいかして、思い切った成長戦略に踏み込んだ投資を行っているが、やや決算結果のおもわしくなかったマックスバリュ中部は営業キャッシュフローの範囲内での健全な投資を行っており、同じイオングループではあるが、経営戦略の違いが鮮明である。今期本決算まであと数ケ月になったが、両食品スーパーマーケットが最終的にどのような決算となるか、注目である。

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January 04, 2009

新マーチャンダイジングのすすめ!

   いよいよ、今年はID-POSによるマーチャンダイジングが本格的に動き始めるのではないかという予感がする。すなわち、新マーチャンダイジングである。そこで、ここでは、ID-POS時代のマーチャンダイジング、新マーチャンダイジングの時代を先読みし、まだ、ID-POS分析の段階に達していない場合でも、現状の中で、ID-POSのマーチャンダイジング、すなわち、新マーチャンダイジングを実践するための考え方をまとめてみたい。
  
   新マーチャンダイジングとは、これまでのレシート分析によるマーチャンダイジングからIDを意識したマーチャンダイジングのことである。直観的には誰もが理想としているマーチャンダイジングのことではあるが、通常の小売業ではIDの把握が不可能であったために、レシート分析にとどまってしまい、中々、踏み込めなかった領域である。その踏み込めなかった領域が、最近、徐々に踏み込むことができるようになり、新たなマーチャンダイジングが開拓されつつあるのが実態である。
  
   では、新マーチャンダイジングとは何かであるが、それは、常に、顧客を意識したマーチャンダイジングのことである。これまでのマーチャンダイジングは顧客よりも商品を意識したマーチャンダイジングであったといえる。マーチャンダイジングそのものが直訳すると商品政策となるので、商品を意識したマーチャンダイジングとなったのは当たり前といえば、当たり前である。また、POS分析も、=商品分析のことであり、商品1品1品の動きを数字でとらえ、商品1品1品、ひいては、全体の商品の売上、利益を最大にすることを目指していたといえる。
  
   これが新マーチャンダイジングとなると、商品から、顧客に意識が変わり、顧客一人一人の商品の購買履歴をもとに、時間とともに、顧客一人一人の売上、利益を最大にすることが目的になるマーチャンダイジングとなる。そして、顧客一人一人の売上、利益最大を目指し、ひいては、顧客全体の売上、利益を最大にすることを目指している。したがって、究極はどちらのマーチャンダイジングも一致し、商品全体の売上、利益=顧客全体の売上、利益となるが、そのアプローチ方法は正反対ともいえる方法となり、考え方も好対照なものとなる。
  
   残念ながら、まだ、現在では、新マーチャンダイジングは開発途上であり、完成を見るまでにはあと数年は要すると思われるが、確実に動き始めており、徐々にではあるが、具体的な成果も出始めつつある。
  
   ちなみに、少し、夢物語り的になるが、新マーチャンダイジング実現後の世界を創造で描いて見ると以下のようになる。まず、POSシステムが根本的に変わる。現在のPOSシステムは商品を意識したPOSシステムであるため、PLU(Price Look Up)の仕組みにより、バーコードをスキャンした瞬間に、その商品の価格が表示される仕組みである。これが新マーチャンダイジングのPOSになると、PLUから、C-PLU(Customer-Price Look Up)の仕組みとなり、IDカードをスキャンした瞬間に、その顧客のみの購買履歴にもとづく、商品一品一品の還元価格が表示されるようになる。商品の店頭価格ははじめてその商品を購入する時の価格にすぎず、その店舗でその商品を購入すればするほど、その顧客のみの還元価格となり、その顧客だけの価格となる仕組みである。これは、EDLPからEDYP(Everyday Your Price)政策となる仕組みでもある。
  
   もうひとつあげれば、粗利計算が劇的に変わる。これまでは、商品の売価から原価を引いたものが粗利であり、粗利政策は商品と商品の相乗積を駆使し、粗利ミックスをはかり、粗利率の改善をはかってきた。これが、顧客ごとの粗利政策を考えることが大前提となり、顧客一人一人の粗利計算を行い、顧客の粗利の相乗積を計算し、粗利ミックスをはかり、粗利改善を行うようになる。また、これが前提とならないと、先のPOSシステムも機能しなく、どの顧客にいくら還元するかはまさに、この顧客ごとの粗利計算ができてはじめて可能な仕組みでもある。

   これ以外にも、新マーチャンダイジングは様々な変化が起こる。たとえば、ちらしからクーポン、DMへの転換、店頭販売からネット販売、宅配へ、セルフサービスから予約、対話型サービスへ、店舗レイアウト、棚割など、様々なマーチャンダイジング政策が新マーチャンダイジング政策によって置き換わってゆくことになろう。

   ただ、ここまで、置き換わるのは、まだまだ時間がかかるといえるが、これらを先取りして、新マーチャンダイジングを実践することが可能である。それは、これまでのレシート分析に加え、レシートの枚数を意識することがその第一歩である。たとえば、バナナの売上を上げようと思ったら、これまでのマーチャンダイジングではバナナをたくさん(PI値)買ってもらうか、より、付加価値(平均単価)の高いバナナを買ってもらうかを考え、販促、POP、品揃え、棚割、レイアウト、発注、オペレーション等を考えてきた。これが、新マーチャンダイジングでは、これに加え、バナナのレシート枚数を増やすことを考えることが、その第一歩となる。

   店内に来店した顧客に新たにバナナを購入してもらう、あるいは、その商圏内の顧客に新たにバナナを購入してもらうことである。そして、もう一方で、すでに、バナナを購入していただいた顧客に次回またバナナを購入してもらうにはどうすればよいか、さらには、一生バナナを購入し続けてもらうにはどうしたらよいかを考えることである。要は、いかに、新規レシートを増やし、既存レシートについてはその同一顧客のレシート枚数を時間とともにいかに増やすかである。

   このように新マーチャンダイジングはレシートの中身ではなく、レシートの枚数にこだわるマーチャンダイジングといえ、実現にはもう少し、時間がかかると思われるが、考え方としては、すぐに、実践が可能であり、現状のマーチャンダイジングに加え、新マーチャンダイジングの意識だけでも入れると、精度は低いかもしれないが、方向性は正しい方向に歩みはじめるので、ぜひ、意識だけでも実践してみて欲しい。

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January 03, 2009

ハローズ、2009年2月期、第3四半期決算、増収増益!

   ハローズが、12/26、2009年2月期の第3四半期の決算を公表した。売上465.23億円(110.0%)、営業利益15.75億円(108.8%:売上対比3.38%)、経常利益15.81億円(110.1%売上対比3.39%)、当期純利益8.82億円(113.8%:売上対比1.89%)と増収増益の好決算となった。食品スーパーマーケットは小売業界の中ではコンビニと並び、経営が比較的好調であるが、このハローズの数字も、それを裏づける数字といえ、売上、利益ともに、ほぼ2桁のアップとなった。ただ、通期予想は、売上高こそ630.00億円( 110.2%)と2桁の増収の予想であるが、利益の方は、営業利益21.10億円(103.2%:売上対比3.34%)、経常利益20.70億円(102.3%:売上対比3.28%)、当期純利益11.60億円(102.0%:売上対比1.84%)と増益とはなるが、伸び率が低く、やや厳しい状況が予想される。

   ハローズの売上が特に好調な要因は、ここへきて積極的な新規出店を果たしていることがあげられる。6月に四国1号店となる丸亀店(香川県丸亀市)を出店し、11月に四国2号店となる六条店(香川県高松市)、12月に笠岡店(岡山県笠岡市)、そして、今期中にもう1店舗の新規出店を予定しており、合計、今期41店舗となる予定である。食品スーパーマーケットの成長は新規出店が最大の成長先戦略であるが、ハローズは今期4店舗の新規出店を果たす予定であり、新規出店後の全店舗数が、41店舗であるので、ちょうど110%の店舗数となり、売上も110.2%の予想であり、まさに、店舗数増=売上伸び率というバランスがとれた出店戦略を実現できたことが大きいといえよう。特に、これまでの広島、岡山ドミナントから、今期、新ドミナント地区として、四国、香川県への新規出店が2店舗となり、3つめのドミナト地区が軌道に乗り始めたことも大きいといえよう。

   一方、この第3四半期、利益もほぼ2桁の増となったが、その要因を原価、経費の面から見てみると、売上原価は76.9%(昨年76.9%)と昨年と同水準に抑えることができた。今期は食品の値上げ問題等もあり、原価は上昇傾向にあったが、この第3四半期の段階でも昨年と同じ水準で抑えられたことは利益確保にとっては大きな貢献といえよう。その要因のひとつには、ハローズセレクションというPBの強化も寄与したといえ、昨年は売上構成比が6.1%であったが、今年は、6.8%と111.4%伸びたことも大きかったといえよう。結果、売上総利益は23.1%(昨年23.1%)となった。一方、販売費及び一般管理費は22.2%(昨年22.1%)と、わずかではあるが、0.1ポイント上昇した。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は0.9%(昨年1.0%)とわずかに下がったがプラスとなった。これに、不動産収入等の営業収入が2.5%(昨年2.4%)と、0.1ポイント乗り、最終的に、営業利益は3.4%(昨年3.4%)と同水準となり、好調な増益となったといえる。

   この好調な増収増益の結果、財務状況であるが、今期は決算日が金融機関の休業日となったため、仕入債務等の未決済分が32.71億円となったため、総資産の増加が見られ、正確な財務状況とは少し違う数字となっている。そのひとつの指標としては、自己資本比率が34.9%(昨年40.1%)と5%近く下がったが、これも、総資産277.07億円の中に仕入債務相当分が入り、資産および負債に計上されているために、自己資本比率が低くなっている。これを除外すると、自己資本比率は40.0%を優に超えるので、実質、自己資本比率は改善されているといえよう。ただ、負債の主要項目、長短借入金の合計は60.41億円(昨年55.87億円)と、ここ最近の積極的な新規出店により、増加しており、総資産の21.8%となっていることが、やや気になるところではある。

   そこで、ハローズの出店余力であるが、土地、建物、差入敷金保証金等の合計であるが173.42億円(153.44億円)と、ここ最近の新規出店により、約20億円増加し、総資産の62.5%となった。したがって、自己資本比率34.9%から引いた出店余力は-27.6%となり、現状は負債に大きく依存する出店構造となっており、今後、安定成長を維持してゆくには、この好調な決算数字を活かした財務改善が課題といえよう。

   今期、ハローズのキャッシュフローを見てみても、数字上は営業キャッシュフローが55.77億円、投資キャッシュフローが-36.32億円とフリーキャッシュフローは19.45億円のプラスとなっているが、この営業キャッシュフローの中には、仕入債務等の約30億円がプラスとなっているので、実質、マイナスのフリーキャッシュフローといえる。そして、財務キャッシュフローも-4.01億円となり、結果、トータル資金は15.43億円とはなったが、仕入債務の分を考慮すると厳しいキャッシュフローの流れであるといえよう。

   このように、ハローズのこの第3四半期決算はほぼ2桁の増収増益と好調な決算となったが、気になるのは出店余力である。経営としては、増収増益の好決算時には、成長重視か財務の安定重視か判断が難しいところであるが、数字を見る限り、ハローズは成長重視戦略をとっており、今期、四国1号店を出店し、広島、岡山につぐ第3のドミナント圏を築くことを優先した経営戦略をとっているといえよう。当面、この四国戦略が落ち着くまでは、財務の改善はやや遅れるのではないかと思われるが、中長期的には、自己資本比率を50%以上、理想的には60%以上に引き上げ、出店余力を増し、持続的な成長をはかることが経営課題といえよう。

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January 02, 2009

ネットスーパー、住商、今期いよいよ本格展開!

   1/1の日経1面にネットスーパーの記事が掲載された。「住商、ネット専業スーパー、食品や日用品10月から販売、携帯・テレビ連携視野」という見出しの記事である。内容は、住友商事が傘下のサミットと共同で専用のセンターや食品加工センターを設置し、2009年10月から販売を開始するという内容である。ちょうど、2009年1月号の日経トレンディーでもネットスーパーの特集が組まれているが、いよいよ、2009年度はネットスーパーの本格展開の年となりそうである。
  
   まず、日経新聞の住商のネットスーパーの内容であるが、現在、各地の食品スーパーマーケットで展開しているネットスーパーとは違い、本格的な専用の配送センターを持つ方式を採用するという。通常の食品スーパーマーケットのネットスーパーは、店舗が配送センターの機能を兼ねており、店舗周辺からの受注のみとなるため、受注件数、受注地域が限られるのが現状である。記事の中にもあるように、大量の受注が入ると、店舗の運営に支障をきたすため、1日200件程度が限界となるという。これは、通常の食品スーパーマーケットの1日当たりの来店客数が約2,000人であるので、客数の約10%である。
  
   食品スーパーマーケットの通常の最重点商品は約200品ぐらいであるが、そのPI値は1%強である。したがって、客数の10%の10%が同じ商品を注文すると、重点商品に欠品を起こす可能性が高く、ましてや、それ以下のPI値の商品は店舗在庫を絞っていることが多いため、さらに欠品を起こす可能性が高い。そうすると、買い物に来たお客さまにご迷惑がかかるだけでなく、ネットからの注文にも対応できなくなる恐れがあり、客数の10%の壁を超えることが、通常のネットスーパーでは中々できなかったのが現状である。したがって、現状の食品スーパーマーケットで現在の本格的な配送センターをもたない方式では、ネットスーパーの年商は売上の10%強が限界であり、売上は店舗の数に制約されるという状況であった。
  
   今回の住商のネットスーパーはこの限界を打ち破る仕組みでのネットスーパーの展開であり、これが実現すれば、これまでの有店舗ネットスーパーから、まさに、無店舗ネットスーパーができることとなり、受注件数の制限、受注地域の制限がほぼ克服され、年商を飛躍的に増加させることが可能となる。ただ、そのためには、配送センターの建設が大きな課題となるが、今回の住商の計画では、2百数10億円を投資し、36か所にセンターをつくるという。その結果、受注件数は1配送センター、1日当り、1,200件から1,800件の受注が可能となるという。
   
   ここで、住商のネットスーパーの計画内容を記事の内容から整理してみると、今回のネットスーパーの年商目標は1,100億円であり、会員数は50万から60万世帯、配送センターは36カ所、1センター当りの受注件数は1,200件から1,800件となる。逆算すると、1センター当り約30億円の年商であり、1日1,500件の受注とすると、年間では約55万件の受注となるので、1回当たりの受注金額、客単価は5,500円となる。また、会員数は1センター当り、約15,000世帯であり、世帯当たりの受注金額は年間20万円となり、年間では、40回弱の買い物となる計算である。
  
   日経トレンディーを見ると、イトーヨーカ堂、西友、紀ノ国屋、マルエツ、サミット、ユニー、オークワ、イズミヤのネットスーパーの取材記事が掲載されている。これを見ると、会員数は1店舗当たり、マルエツの1,100人を除けば、各社数千人であり、客単価は約6,000円、1日当り1店舗30件程度が多く、1日4便の配送が平均的な数字である。こう見ると、今回の住商のネットスーパーは客単価はほぼ同じ数字であるが、専用の配送センターをもつことによって、センター当りの受注件数と会員数を飛躍的に増加させることが可能となり、結果、ネットスーパーの年商を100店舗クラスの食品スーパーマーケットの年商レベルに引き上げることが可能となる仕組みであるといえる。
  
   課題は、専用センター36カ所への投資額2百数10億円であり、計画通りの会員数50万から60万世帯への加入が可能かどうかということ、それに、生鮮食品、惣菜等の加工がどこまで対応できるかであろう。現状の日本の食品スーパーマーケットの規模では、これだけの投資と体制づくりは無理があるが、商社等が投資主体となり、数社の食品スーパーマーケットが支援する体制ができれば、可能性は高いといえよう。
  
   いまから約20年前にフレッシュシステムズという宅配ビジネスが今回と同様なコンセプトで挑戦し、撤退した歴史があるが、現在は、当時と比べ、IT技術の飛躍的進歩と急速な、特に都市部での少子高齢化が進んでいることもあり、消費環境は様変わりしている。また、日経トレンディーに見るように、各社が有店舗ネットスーパーに取り組み、軌道にのりつつあり、ノウハウも各社蓄積がなされつつある。したがって、ネットスーパーに取り組む時期としては、ビジネス環境が整いはじめているので、住商の今回の試みは、極めて現実性の高い、有望なビジネスであるといえよう。既に、ネットスーパーを展開している食品スーパーマーケット、現在、検討している食品スーパーマーケットの動向に今後、注目である。

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January 01, 2009

家計調査データ2008年11月度、食品堅調!

   2008年11月度の家計調査データが12/26、総務省統計局から公表された。消費支出は1世帯当たり284,762円であり、前年同月比実質0.5%の減少となったが、前月比(季節調整値)では、実質3.1%の増加となった。特に食料品は(外食を含む)は9ケ月ぶりの実質増加、0.5%の増加に転じた。本ブログでは、名目数値をもとに、食品スーパーマーケットの客単価と連動をはかるために、1日当たりの数字に換算して、昨年との比較を試みるが、この数字を見ると、全体は100.7%、食料(外食を含む)は103.7%、外食を除く、食品は2,019.07円、102.9%と堅調な数字となった。ちなみに、外食はここへ来て、好調であり、466.90円(107.1%)であった。

   参考に外食の伸びた項目を見てみると、ハンバーガー13.03円(143.8%)、中華そば16.20円(112.8%)、日本そば・うどん15.87円(110.7%)であった。本ブログでは、家計調査データを独自に加工し、単純な消費額だけでなく、その消費額を消費世帯のみの消費額と消費世帯の割合に分けて分析し、消費額=消費世帯のみの消費額×消費世帯の割合で分析している。この分析方法で、外食をこの11月大きく牽引したハンバーグを見てみると、ハンバーガーの13.03円(143.8%)は、ハンバーガーだけを購入した世帯数のみの消費額が61.80円(128.8%)であり、その世帯数の割合は21.1%(111.6%)であったことがわかる。この数字を見る限り、ハンバーガーは約2割の家計が1ケ月に1回購入する商品であることがわかり、伸びた要因は、新規に購入した世帯が約1割、その新規世帯を含め、既存のハンバーガー購入世帯が約3割も伸びたといえ、11月にはハンバーグの商品戦略が大きく変化し、それが、消費者に受け入れられた可能性が高いことがわかる。

   では、食品の方はどのような状況であったかを見てみたい。食品は穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜・海草、果物、油脂・調味料、菓子類、調理食品、飲料、酒類の10大分類になっているが、この中で、この11月度最も好調であった分類は穀類245.27円(113.0%)であった。2桁の伸びであり、断トツである。特に、スパゲッティ3.83円(129.2%)、中華めん11.93円(127.0%)、即席めん4.97円(123.1%)の麺類に加え、米も107.13円(120.7%)と絶好調であった。特に、即席めんは、カップめん8.93円(103.1%)に対し、構成比も50%を超え、大きな伸び率であり、今後、食品スーパーマーケットとしても、棚割、品揃え、販促の再構築が必要なカテゴリーとなったといえよう。

   穀類についで、この11月消費を牽引したのは、菓子類204.33円(107.3%)と肉類229.23円(107.2%)である。特に伸びた項目を見てみると、菓子類では、カステラ2.67円(127.0%)、ビスケット9.90円(122.2%)が絶好調であり、ついで、チョコレート菓子3.53円(119.1%)、キャンデー7.80円(118.8%)、スナック菓子11.00円(113.0%)、ケーキ20.80円(110.4%)がよく伸びている。肉類については、110%以上伸びた項目は鶏肉のみであり、38.00円(112.8%)という数字である。ついで、牛肉55.70円(107.9%)、豚肉75.17円(107.0%)という状況であり、生鮮肉の動きが良いのが特徴である。加工肉も伸びてはいるが、加工肉47.40円(103.3%)という状況であり、生鮮肉、特に鶏肉が肉類を牽引しているといえよう。ただ、生鮮肉はいずれも、消費世帯の割合はさほど増加しておらず、消費世帯のみの割り合いが増加しての消費の伸びであり、内食回帰により、肉を食べる、しかも、よりお買得な鶏肉への需要が増加しているのではないかと推測される。

   これに対し、この11月度、消費が厳しかった分類を見てみると、果物98.37円(93.4%)である。ただ、この11月の果物は、いちご1.53円(176.9%)、バナナ15.67円(164.9%)、キウイフルーツ1.90円(132.6%)と、この3項目のみは抜群の伸び率であり、異常値となっている。特に、バナナはダイエットブームにも乗り、金額でも15.67円と魚介類No.1のまぐろの14.20円(83.5%)を抜き去り、断トツの数字である。バナナ15.67円(164.9%)の中身を分析すると、バナナの消費世帯のみの金額22.37円(146.6%)がバナナの消費世帯の割合70.0%(112.5%)大きく上回っての数字であり、バナナの購入頻度が恐らく大きく上昇したのではないかと推測される。果物はこの3品がダントツの伸びではあったが、この時期、最重点商品のみかん25.57円(82.6%)、りんご23.40円(85.0%)、かき12.80円(84.8%)が不振であり、全体としては厳しい消費となった。

   果物以外では野菜・海藻273.10円(98.1%)、魚介類237.47円(98.5%)の2部門が100%を割った。全体的には肉類を除く、相場性の高い青果部門、鮮魚部門の生鮮食品がこの11月度は厳しかったといえよう。逆に、穀物、菓子、肉類ほどではないが、油脂・調味料も121.07円(105.6%)と健闘しており、その中でも食用油11.97円(121.3%)、マーガリン2.63円(119.7%)、ジャム3.60円(116.1%)、カレールウ4.30円(113.2%)などが好調であった。

   このように、この11月の家計調査データは9ケ月ぶりに、実質の消費額が食品でプラスになるなど、外食を含め、食品全般が堅調であったのが特徴といえよう。その中でも、穀類、菓子類、肉類が消費を牽引しているのが、この11月の特徴である。次回、1月下旬には12月度の家計調査データが公表される予定であるが、この11月度を踏まえ、年末の消費状況がどのような数字になっているか興味深いところである。

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