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January 04, 2009

新マーチャンダイジングのすすめ!

   いよいよ、今年はID-POSによるマーチャンダイジングが本格的に動き始めるのではないかという予感がする。すなわち、新マーチャンダイジングである。そこで、ここでは、ID-POS時代のマーチャンダイジング、新マーチャンダイジングの時代を先読みし、まだ、ID-POS分析の段階に達していない場合でも、現状の中で、ID-POSのマーチャンダイジング、すなわち、新マーチャンダイジングを実践するための考え方をまとめてみたい。
  
   新マーチャンダイジングとは、これまでのレシート分析によるマーチャンダイジングからIDを意識したマーチャンダイジングのことである。直観的には誰もが理想としているマーチャンダイジングのことではあるが、通常の小売業ではIDの把握が不可能であったために、レシート分析にとどまってしまい、中々、踏み込めなかった領域である。その踏み込めなかった領域が、最近、徐々に踏み込むことができるようになり、新たなマーチャンダイジングが開拓されつつあるのが実態である。
  
   では、新マーチャンダイジングとは何かであるが、それは、常に、顧客を意識したマーチャンダイジングのことである。これまでのマーチャンダイジングは顧客よりも商品を意識したマーチャンダイジングであったといえる。マーチャンダイジングそのものが直訳すると商品政策となるので、商品を意識したマーチャンダイジングとなったのは当たり前といえば、当たり前である。また、POS分析も、=商品分析のことであり、商品1品1品の動きを数字でとらえ、商品1品1品、ひいては、全体の商品の売上、利益を最大にすることを目指していたといえる。
  
   これが新マーチャンダイジングとなると、商品から、顧客に意識が変わり、顧客一人一人の商品の購買履歴をもとに、時間とともに、顧客一人一人の売上、利益を最大にすることが目的になるマーチャンダイジングとなる。そして、顧客一人一人の売上、利益最大を目指し、ひいては、顧客全体の売上、利益を最大にすることを目指している。したがって、究極はどちらのマーチャンダイジングも一致し、商品全体の売上、利益=顧客全体の売上、利益となるが、そのアプローチ方法は正反対ともいえる方法となり、考え方も好対照なものとなる。
  
   残念ながら、まだ、現在では、新マーチャンダイジングは開発途上であり、完成を見るまでにはあと数年は要すると思われるが、確実に動き始めており、徐々にではあるが、具体的な成果も出始めつつある。
  
   ちなみに、少し、夢物語り的になるが、新マーチャンダイジング実現後の世界を創造で描いて見ると以下のようになる。まず、POSシステムが根本的に変わる。現在のPOSシステムは商品を意識したPOSシステムであるため、PLU(Price Look Up)の仕組みにより、バーコードをスキャンした瞬間に、その商品の価格が表示される仕組みである。これが新マーチャンダイジングのPOSになると、PLUから、C-PLU(Customer-Price Look Up)の仕組みとなり、IDカードをスキャンした瞬間に、その顧客のみの購買履歴にもとづく、商品一品一品の還元価格が表示されるようになる。商品の店頭価格ははじめてその商品を購入する時の価格にすぎず、その店舗でその商品を購入すればするほど、その顧客のみの還元価格となり、その顧客だけの価格となる仕組みである。これは、EDLPからEDYP(Everyday Your Price)政策となる仕組みでもある。
  
   もうひとつあげれば、粗利計算が劇的に変わる。これまでは、商品の売価から原価を引いたものが粗利であり、粗利政策は商品と商品の相乗積を駆使し、粗利ミックスをはかり、粗利率の改善をはかってきた。これが、顧客ごとの粗利政策を考えることが大前提となり、顧客一人一人の粗利計算を行い、顧客の粗利の相乗積を計算し、粗利ミックスをはかり、粗利改善を行うようになる。また、これが前提とならないと、先のPOSシステムも機能しなく、どの顧客にいくら還元するかはまさに、この顧客ごとの粗利計算ができてはじめて可能な仕組みでもある。

   これ以外にも、新マーチャンダイジングは様々な変化が起こる。たとえば、ちらしからクーポン、DMへの転換、店頭販売からネット販売、宅配へ、セルフサービスから予約、対話型サービスへ、店舗レイアウト、棚割など、様々なマーチャンダイジング政策が新マーチャンダイジング政策によって置き換わってゆくことになろう。

   ただ、ここまで、置き換わるのは、まだまだ時間がかかるといえるが、これらを先取りして、新マーチャンダイジングを実践することが可能である。それは、これまでのレシート分析に加え、レシートの枚数を意識することがその第一歩である。たとえば、バナナの売上を上げようと思ったら、これまでのマーチャンダイジングではバナナをたくさん(PI値)買ってもらうか、より、付加価値(平均単価)の高いバナナを買ってもらうかを考え、販促、POP、品揃え、棚割、レイアウト、発注、オペレーション等を考えてきた。これが、新マーチャンダイジングでは、これに加え、バナナのレシート枚数を増やすことを考えることが、その第一歩となる。

   店内に来店した顧客に新たにバナナを購入してもらう、あるいは、その商圏内の顧客に新たにバナナを購入してもらうことである。そして、もう一方で、すでに、バナナを購入していただいた顧客に次回またバナナを購入してもらうにはどうすればよいか、さらには、一生バナナを購入し続けてもらうにはどうしたらよいかを考えることである。要は、いかに、新規レシートを増やし、既存レシートについてはその同一顧客のレシート枚数を時間とともにいかに増やすかである。

   このように新マーチャンダイジングはレシートの中身ではなく、レシートの枚数にこだわるマーチャンダイジングといえ、実現にはもう少し、時間がかかると思われるが、考え方としては、すぐに、実践が可能であり、現状のマーチャンダイジングに加え、新マーチャンダイジングの意識だけでも入れると、精度は低いかもしれないが、方向性は正しい方向に歩みはじめるので、ぜひ、意識だけでも実践してみて欲しい。

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