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February 10, 2009

日経ビジネス2009.2.2、セブン&アイの破壊を読む!

   日経ビジネス2009.2.2で「セブン&アイの破壊」という特集記事が掲載された。内容は、「鈴木敏文会長、最後の大仕事、セブン&アイの破壊」、「聖域なき売り場改革へ、創業の原点、衣料品さえ捨て去る」、「個店力が限界を破る、現場の裁量で脱・画一化」、「成功モデル破壊の最前線、中国で発揮される突破力」、「生存欲求が紡ぐ絆、セクショナリズムを壊せ」という5本立て、全15ページに渡っての特集記事である。

   特に、この特集記事では、鈴木敏文会長へのインタビューを随所に織り込んでおり、いま、セブン&アイが何を破壊しようとしているのかがクローズアップされ、その思いが伝わってくる内容であるといえよう。ただ、記事全体から破壊の思いは伝わってくるが、破壊の目的、その後、何をどのような方法で創造してゆくのか、その全体像が描き切れていないといえ、少し残念な内容である。

   この特集記事を読んで、すぐに思い浮かんだのは、「行革」である。いまから、約30年前の1981年のイトーヨーカ堂の中間決算が創業以来の減益になることが明確になり、当時の伊藤雅俊社長が社内に「荒天準備」の指示を出した。そして、その翌年、1982年1月にイトーヨーカ堂の組織改革を断行し、2月23日に、当時の鈴木敏文常務を中心に「行革、業務改革委員会」をスタートさせたことである。この時、イトーヨーカ堂の本部入口には「荒天に備えよ」という看板が掲げられたという。当時は悲壮感漂う中での組織一丸となっての行革という経営改革への突入であったという。

   今回も、セブン&アイは、今期決算こそ、過去最高益が見込まれる中ではあるが、100年に1度という金融不安にともなう本格的な世界同時の経済不況へ突入しはじめた矢先であり、当時の「荒天」よりもはるかに厳しい経営環境になる可能性が高いといえる。ただ、いまひとつ、何が問題なのか、何を破壊し、何を創造しようとしているかが分かりにくい現況であるといえよう。記事全体が「破壊」という言葉がキーワードとなっており、その対義後の「創造」があまり語られていなかったので、特に、そう感じた面もあろう。

   現在、セブン&アイは記事の中にも円グラフで示されているように、売上の41%を占めるセブンイレブンが71%の営業利益を稼ぎ出し、創業の原点であったイトーヨーカ堂を含むスーパーストア事業が売上こそ36%であるが、営業利益のわずか12%しかないというアンバランスな経営構造にある。これに最近では、百貨店事業の売上が18%乗ったが、その営業利益の構成比は9%であり、この収益構造そのものが破壊と創造の対象といえよう。そのために、何を破壊するかであるが、記事の中では、「聖域なき売場改革へ」というテーマで、売場開発第1プロジェクトのホームセンター、第2プロジェクトのザ・プライスを取りあげていたが、まだまだ、実験、検証段階といえ、この試みが、GMSの破壊と創造につながってゆくかは、見えないところである。

   この記事の中で、最も興味深かったのは、「生存欲求が紡ぐ絆」というテーマで取り上げられたヨークベニマルの大高善興社長の記事である。現在、大高善興社長はセブンプレミアムの開発を担当し、今期800品目、1,800億円の実績となったが、その期間わずか22ケ月であり、セブン&アイのグループトータルの食品売上が3兆6,000億円であるので、ちょうど5%となる規模となった。当初、大高善興社長がなぜ、セブン&アイの完全子会社となる決断をし、そして、その後、セブンプレミアムを担当するのかという疑問があったが、記事の中で、2035年の首都圏と東北の食品市場の話をしており、約30年先を見ての決断であったことをあかしている。また、続いて、記事の中では、この1月にはじめて西武百貨店の幹部、食品バイヤー等がヨークベニマルの本社、郡山で行われた業務改善委員会に参加したという内容がある。これは、まさに、約30年前のイトーヨーカ堂の行革を彷彿とさせる光景といえよう。いずれ、その成果がミレニアムの本丸、西武百貨店池袋店の地下食品売り場に現われてくるのではないかと思われるが、東北のヨークベニマルの完成度の高い食品の売り場の一旦が東京の池袋で見られるのは楽しみである。

   記事全体を通じて感じたことは、いまセブン&アイにとっては、破壊よりも創造の方が重要なテーマではないかいうことである。セブン&アイに限らず、イオン、西友、ダイエー、ユニーすべてに共通しているのはGMSの構造問題であり、この問題をいかに解決するかが経営課題であるといえる。そして、その解決方法は、破壊ではなく、創造による解決が望ましいといえよう。本来であれば、創造しつつ、一方で破壊してゆき、どこかで創造が破壊を逆転し、創造が打ち勝ってゆくことことが望ましいが、セブン&アイにおいては、その創造がまだ明確には見えない段階のように思え、この創造がいま一番問われているテーマといえよう。次回は、是非、今回の「セブン&アイの破壊」に続き、「セブン&アイの創造」というテーマでの特集記事を期待したい。

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