気になるイオンの大型SC7施設凍結、延期!
日経新聞2/19、1面にイオンの記事が掲載された。見出しは、「イオン7施設凍結、延期、大型ショッピングセンター」、「拡大路線転換、低価格小型店に軸足」である。さらに、10面でも関連記事として、「イオン計画凍結、大型店の成長限界に」、「小売業出店、届け出、全国で4割減、郊外規制強化も響く」という見出しの記事である。イオンが今回見直す大型SCであるが、記事によれば、凍結が千葉県野田市、撤回が茨城県笠間市、延期が千葉県木更津市、愛知県常滑市、奈良県大和郡山市、兵庫県伊丹市、福岡県大牟田市の7施設である。
今回の記事の対象は、イオンの大型ショッピングセンターを統括するイオンモールのことであると思われるが、イオンモールは、イオンの中では売上よりも、利益の源泉となっており、このイオンモールの出店が凍結、延期されることは、今後、イオンの利益にも響くことになる可能性が高いといえよう。
この中間期のイオングループのセグメント別の営業収益、営業利益の状況を見てみると、イオンの中核となる総合小売業(GMS、SM等)は営業収益が2兆948.51億円(104.1%、構成比72.1%、営業利益構成比30.7%)であるのに対し、イオンモールの営業収益は749.15億円(112.4%、営業利益構成比27.3%)である。イオンモールは核店舗が原則イオンであり、その売上は総合小売業に集計され、営業収益はSCのテナント収入等が中心となるので、営業収益の規模は比較的少ないといえる。ただ、営業利益は営業収益が約30倍も小さいにもかかわらず、ほぼ同じ数字であり、まさに、この中間期を見る限り、利益の源泉といえよう。ちなみに、この中間期ではイオンの稼ぎ頭、営業利益の約40%強を稼いでいるのがクレジットカードなど金融等のサービス業である。
その意味でイオンは売上では総合小売業が約70%強を占めているが、利益では、サービス業とSCのイオンモールが約70%強を占めるという逆相関の構図になっているのが実態である。しかも、クレジットカード等のサービス部門はイオンモールの核テナントのジャスコ、そのテナント等による波及、相乗効果が大きいといえ、その意味で大型SCの出店凍結、延期は売上にも影響が出ると思われるが、それ以上に、利益の方に影響がでるのではないかと懸念される。
日経新聞では、「拡大路線転換、低価格小型店に軸足」との見出しであったが、その軸足となるイオンリテールのこの12月、1月度の売上速報を見てみたい。イオンリテールは現在GMS252店舗、SM80店舗、その他82店舗の計414店舗となる規模である。ちなみに、イオンのグループトータルのGMS(総合スーパー)は608店舗、SM 1,230店舗、スーパーセンター31店舗である。
そのイオンリテールの1月度、12月度の売上であるが、1月度95.4%(既存店95.6%)、12月度96.1%(既存店96.6%)という状況である。特に、客単価が1月度93.9%(既存店95.4%)、12月度94.9%(既存店96.2%)と客単価が大きく落ち込んでいる状況である。これを業態別に見ると、1月度はGMS96.7%に対し、SMが86.9%と深刻な状況である。12月度はGMS97.2%、SM87.5%と同様にSMが厳しい状況である。ただ、このSMはイオンリテールの直営のSM80店舗の数字であり、イオングループのマックスバリュ等の店舗の大半は入っていない数字である。また、業種別にみると、1月度は衣料89.9%、食品99.2%、住居余暇93.1%、12月度は衣料88.3%、食品100.9%、住居余暇93.7%という状況であり、衣料、住居余暇が特に厳しい状況である。
参考に、イオングループのイオンリテール直営以外のSMの状況を12月度で見てみると、マックスバリュ北海道94.6%、マックスバリュ東北106.8%、マックスバリュ東海109.9%、マックスバリュ中部102.6%、マックスバリュ西日本111.8%であり、マックスバリュ北海道はやや厳しい状況であるが、それ以外は好調な売上であるといえよう。ちなみに、マイカル91.3%、イオン九州102.4%、イオン北海道87.5%という状況であり、イオン九州は堅調な売上ではあるが、マイカル、イオン北海道は厳しい数字といえ、GMSはやや厳しい状況であるといえよう。
こう見ると、今後、大型SCの出店が凍結、延期された場合、それに代わる成長性の高い業態を見つけるのは容易ではないといえよう。記事の中では、「低価格小型店に軸足」とあるが、現状のGMS、SM等の構成比が約70%強と高いが故に、イオン全体の成長を促すには相当数の大量出店が必要といえよう。まだ、中国、東南アジア市場へのSC、SMの新規出店の方が現実的であるように思える。実際、計画では、記事にもあるように、現在の約60店を2年以内に190店へ広げるとのことであるので、イオングループトータルのGMSが608店舗であるので、実現すれば、インパクトは大きいといえよう。
このように、今回の日経2/19のイオンの記事は、イオンの売上だけでなく、利益の源泉でもあった大型SCの出店抑制、そして、低価格小型店への戦略転換はここへきて、厳しい消費環境が加速するなか、まったなしの決断が必要となったのではないかと思える。イオンの今期2月期の決算は、この第3四半期の決算時に公表された通期予想でも厳しい状況となることが確実であるが、ここ最近の経済情勢の悪化は、さらに追い打ちをかけて厳しくなる懸念がある。これまで、イオンが公表してきた以上のさらに踏み込んだ抜本的な経営戦略の再構築が来期は必要な状況になったといえ、この決算前、そして、決算後のここ数ケ月、イオンの動向に注目といえよう。
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