ユアーズ、丸和を事実上M&A、持株比率66.42%!
今期は食品スーパーマーケットのM&Aが本格化することが予想される1年であるとも思われるが、早くも、3/2、丸和が「第三者割当により発行される株式の募集に関するお知らせ及び親会社の異動に関するお知らせ」を公表した。事実上の親会社、ユアーズのM&Aといってもよく、この第三者割当の発行により、ユアーズの丸和に対する持ち株比率はこの3/17以降、現在の40.91%から66.42%へと大きく増加し、商法に規定される重要事項の議決が可能なほぼ2/3(66.6%)に限りなく迫り、事実上、M&Aが実現されることになった。
商法上の重要事項は合併、営業権の譲渡、減資、解散、取締役・監査役の解任、株主以外の第三者への新株の有利発行、定款変更などであり、これらは、出席株主の2/3以上の賛成が必要となる。したがって、今回、ユアーズが丸和の66.42%の株式を取得することにより、出席者がわずかに株主数よりも少なくなれば、ユアーズの議決権が2/3を超え、重要事項を決定することが可能となり、事実上、M&Aによる経営権を掌握したといえる持株比率66.42%であるといえよう。
ただ、今回、第三者割当増資ということではあるが、そのスキームは単純なものではなく、やや複雑な迂回増資ともいえる形での増資である。丸和の説明によれば、「本件増資においては会社法第201 条第3 項及び同条第5 項の規定により有価証券届出書の提出から払込までに2 週間の期間を設ける必要がありますが、その間の資金需要への対応を目的に、当社はユアーズより1,392 百万円の新規の借り入れ(以下「本件借入れ」という。)を本日実行致しました。」とのことで、増資は商法上3/17となるが、それまでの2週間の資金需要への対応ができないとのことで、この公表のあった3/2時点で増資相当額の13.92億円をユアーズから、借り入れたとのことである。
これは、丸和の経営状況がまったなしの厳しい状況にあると思われ、この2週間に丸和が必要なキャッシュをユアーズが借入金という形で即日融資した形である。その借入金の使途について、丸和は、「既存借入金の返済及び運転資金に充当されることとなります。」とコメントしており、借入金と運転資金の喫緊の調達が必要となったことによると思われる。そして、増資であるが、この借入金から利子相当額を差し引いた13.91億円が3/17付けで貸付債権の現物出資という形で相殺され、丸和のバラナスシートの有利子負債が減少することになるという。その結果、丸和の自己資本比率は9.7%から13.9%に上昇し、財務基盤がこれまでよりもやや改善されることになる。
通常であれば、ストレートに第三者割当増資を実施するところであるが、増資までの2週間の時間が丸和にとっては経営の存続に重要な時間であったため、ユアーズからの緊急融資という迂回増資というスキームをとったものといえよう。
丸和の2009年1月期の決算内容はまだ公表されておらず、直近の財務諸表は第3四半期決算であるが、これを見ると、売上高299.84億円(101.6%)、営業利益-0.84億円、経常利益-2.93億円、当期純利益2.06億円(115.9%)と、特別利益が発生したため、当期純利益は黒字になったが、赤字決算であり、厳しい状況である。したがって、キャッシュフローの流れを見ると、営業キャッシュフローは0.09億円のマイナスであり、投資キャッシュフローは0.42億円のマイナスであり、結果フリーキャッシュフローは0.51億円のマイナスと厳しい状況である。そして、財務キャッシュフローにおいて、借入金により補い1.77億円のプラスとなり、トータル1.25億円のプラスとなったが、借入により、キャッシュを回している状況であり、資金繰りが厳しい状況にあるといえる。結果、負債の中の長短借入金等は133.84億円(昨年153.28億円)と、昨年よりは削減されてはいるが、総資産281.28億円の47.5%を占めており、経営に重くのしかかっている状況である。
ただ今回、13.92億円が相殺されたとしても、依然として多額の借入金が残り、しかも、営業利益は厳しい状況が予想され、丸和としては、依然として財務的には厳しい状況が続くものと思われる。ユアーズとしては、事実上M&Aとなり、丸和の経営権を掌握したことにより、さらに、踏み込んだ、まさに重要事項にあたる決議を実施することが求められよう。
そのユアーズの直近の決算内容であるが、2008年9月期は、売上高417.01億円(101.4%)、営業利益6.78億円(74.5%:売上対比1.62%)、経常利益8.10億円(77.1%:売上対比1.94%)、当期純利益1.69億円(54.6%:売上対比0.40%)という状況であり、増収減益のやや厳しい決算である。また、自己資本比率(純資産/総資産)は13.1%であり、けっして財務的に余裕がある状況ではなく、今後、さらに丸和を支援してゆくには、ユアーズ自身も思い切った経営改革が必要といえよう。
このように、まさに、3月に入り、ユアーズによる事実上の丸和へのM&Aが実施されることが確実となり、食品スーパーマーケット業界で本格化するであろう今期のM&Aの先駆けとなる動きである。ただ、今回のユアーズの丸和への資本増強により丸和の財務が安定したわけではなく、第2、第3の支援策が必要となろう。これに対して、ユアーズが単独で支援し続けられるかどうかも現在のユアーズの財務状況を見る限り、けっして余裕があるわけではなく、今後、予断をゆるさない状況が続くものと思われる。丸和の経営権を掌握したユアーズが今後どのように自身の、そして、丸和の経営改革を断行するかに注目である。
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