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March 07, 2009

NHK特報首都圏、激安を作り出せ、西友、THE PRICE!

   3/6、19:30からのNHKの番組、特報首都圏で「激安を作りだせ!」というタイトルで西友とTHE PRICE(イトーヨーカ堂)を取り上げた。この2社に焦点を当てたのは、まさにいま首都圏で激安戦争が起こっており、その導火線となった原点ともいうべき企業がこの2社であるからであろうと思われる。残念ながら、イオン、ダイエーは今回は取材対象にならなかったようであるが、実際、現在、この2社は、まさに首都圏で激安を真正面から掲げ、本格的な店舗活性化に踏み込んでおり、一過性のものではなく、中長期的な戦略の中で動きはじめており、NHKが取り上げのもうなずけるテーマである。

   まず、西友の取材から番組はスタートする。その象徴的な場所として、ライバルがひしめき合う津田沼駅前の西友が映し出される。津田沼は、いまから数10年前、イトーヨーカ堂とダイエーが身を削るような価格戦争をした激安地域であり、その時の激しさを彷彿とさせる価格戦争が、今度は西友と各社との間で起こっているという。映像では、西友の青果の担当者がライバル店を視察し、自店にもどり、店長にりんご78円であったことを報告する。すぐさま、店長は77円にりんごの価格変更の支持を出し、値札を切り替える場面を映し出す。現在、西友が採用している地域一番の安さを打ち出す象徴的な場面である。

   場面は切り替わり、西友のCEOカレジェッスキー氏へのインタビューがはじまる。お客さまは品質と安さを求めていると説明し、価格には自信があると答える場面である。さらに、場面は切り替わり、スタジオでNHKの司会者が西友がなぜ価格訴求に打って出たかを解説する。その中で、過去6期赤字決算が続き、厳しい経営状況に追い込まれたが、その大きな要因が食品の価格競争に勝てなかったことであるという。特に、この5年でスーパーの売上は15兆円から14兆円に減り、その1兆円が食品に新規参入したホームセンター、100円ショップ、家電量販店などに顧客を奪われたという。その顧客の奪回には価格を下げることが、西友の最重点戦略となったことを解説する。

   ついで、場面は西友のグロサリーバイヤーの商談場面となる。西友の象徴的な価格政策であるEDLP(Everyday Low Price)政策を映し出す。ちょうど、NBの象徴的な企業であるハウスのカレールウ、ハウスバーモントカレーの営業マンとの価格交渉である。これまで、西友では通常190円、日替わり特売では130円で販売していたが、これを150円でEDLPで販売したいとの商談に持ち込むが、ハウスの営業マンは首を縦に振らない。さらに、西友のバイヤーは、棚割で最良の場所での販売を提案するが、なかなか、交渉がまとまらない。結局、このカレールウの商談は継続となるが、西友がNBのEDLPに強くこだわり、これを今後とも強くおしすすめてゆく方針である象徴的な場面である。さらに、今後はウォルマートの世界調達のネットワークをも活かし、EDLPを一層推進するという。すでに、70%近い商品が西友ではEDLP化され、価格訴求が激しい勢いで進んでいるという。

   そして、場面は、THE PRICEに置き換わる。まず、やはり、激安の場面が写しだされる。これまでのイトーヨーカ堂と比べ、2割から3割安いという。その最大の理由の一つが仕入にあるとのことで、場面は築地市場への鮮魚バイヤーの買い付けとなる。これまでのイトーヨカード堂の仕入れとは違い、規格外の魚、市場で余った魚などを購入し、格安で販売するのがTHE PRICEの戦略であるという。これは、生鮮全般にいえることで、デコポンの規格外、アジの小ぶり1尾68円など、品質を維持できれば、それ以外の要素には目をつぶった仕入を行うということで、これまで大手スーパーがとらなかった仕入改革が生鮮では断行されたという。

   さらに、安さを打ち出すために、売場の商品数を通常の半分以下に、約3,500種類の売れ筋に絞り込み、在庫を店内に置き、作業時間を減らしたり、牛乳のケース販売を行い、補充頻度を減らしたりと、ありとあらゆる、通常、食品スーパーマーケットがとってきたノウハウが総動員されたコスト削減が映し出される。その結果、THE PRICEは3ケ月で客数が2倍になったという。

   番組ではセブン&アイホールディングスのCEO鈴木会長のインタビューに移り、このTHE PRICEのアイデアは鈴木会長自らが発案したものであり、これまでディスカウントの経験がなかった渡辺さんをプロジェクトリーダーに指名したという。鈴木会長はイトーヨーカ堂の数字の落ち込みに強い危機感を感じ、お客さんのニーズに合わせるために自己改革が必要であり、ただ値引きではない、品質を落とさずに激安を実現するTHE PRICEを目指す指示を出したという。今後、PBのセブンプレミアムより、さらに安い商品の投入、自社の農場を利用した規格外の商品の破格での販売可能な激安スーパーを目指し、変化対応をしながら、安さを合理的に見出すしかないと言いきる。今後、THE PRICEはプロジェクトリーダーの渡辺さんを中心に今期20店舗改装、新規出店をしてゆく方針であるという。

   そして、場面はスタジオにもどり、日本の消費者は世界一難しいといわれ、いかに価格と品質を厳しく求めるか、安かろう悪かろうでは、消費者は絶対買わないという中、安定的な品質をともなった価格訴求の商品供給が決め手になる、というまとめで番組は終わる。

   昨年後半から、食品スーパーマーケット業界も、大黒天物産に象徴されるように、明らかにディスカウント戦略を採用している企業の売上の伸びが著しい状況である。今回のNHKの特報首都圏は、ディスカウント、激安が首都圏で、しかも、日本の小売業最大手のセブン&アイホールディングス、世界最大の小売業ウォルマートの子会社西友で本格的な展開が始まったことがまさにニュースとなったものといえ、今年は、食品スーパーマーケットはもちろん、小売業全体が価格をキーワードに激しい競争、合従連衡が起こる前兆ともいえる番組であるように思う。

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