食品スーパーマーケットで自社株買い、株価は?
昨年9/15のリーマンブラーズショック以来、日経平均が低迷するなか、食品スーパーマーケット業界の株価も例外ではなく、厳しい状況が続いている。このような中で、食品スーパーマーケット業界も決算を控え、株価対策として、自社株買いを実施する企業がここ最近見受けられる。自社株買いは株式市場での流通株数を抑え、1株当たりの価値を引き上げる株価対策の有力な手段のひとつであるが、キャッシュに余裕がないと、自社株買いを行うための原資が捻出できず、自然、キャッシュに余裕のある財務の安定した企業が行うのが一般的である。
通常、自社株買いを実施する企業のキャッシュフローの流れをみると、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたフリーキャッシュフローに余裕がある場合、投資家への配当、借入金などの債務の返済、次期への繰り越しの3つのバランスをとり、さらに余裕がある時に自社株買いを実施するのが通常である。したがって、配当が不十分であったり、借入金が多額であったりした場合には、この2点が最優先のキャッシュフローの使途となり、中々、株価が低迷していても、自社株買いまでは余裕がないのが実情である。また、本来、好調な業績により、財務が安定している場合、株価は自然上昇する傾向があり、逆に、優良企業が自社株買いをするケースは少ないといえるが、今回の未曾有の金融危機は、企業の業績の如何に関わらず、株価全体が下げに転じており、優良企業でも株価対策が必要な異常状況といえる。その意味で、ここ最近は優良企業があえて自社株買いを行っているともいえ、食品スーパーマーケットでも同様な動きが見られる。
その典型的なケースのひとつといえるかと思うが、オオゼキが2/9、「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」を公表し、自社株買いに踏み切った。内容は、60万株(4.90%)、総額16億円を上限とする自社株買いであり、しかも、2/10から2/13までの短期間での株式購入である。オオゼキはその目的を、「株主価値の向上を図るとともに、経営情勢の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため」としており、株価対策だけでなく、機動的な資本政策を遂行するためとしており、将来的な株式交換などによるM&Aにも備えたものともいえよう。
結果であるが、2/10に532,500株を1株2,565円で合計1,365,862,500円で取得し、終了した。2/9発表、2/10終了のわずか1日での早業であり、これで、約5%弱のオオゼキの株価が市場から減ったことになる。ちなみに、その前後のオオゼキの株価の推移であるが、2/9(2,565円)、2/10(2,615円)、2/12(2,620円)、2/13(2,610円)、2/16(2,620円)という状況であり、やや上昇したといえるが、3/4(2,540円)、3/5(2,535円)、3/6(2,485円)であるので、現在は自社株買い以前の水準にもどりつつあり、自社株買い以上に、市場全体の下げ圧力が高いといえよう。
オオゼキのこの第3四半期のキャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計のフリーキャッシュフローは4.68億円であり、これに若干の現金を取り崩し、この第3四半期は財務キャッシュフローで4.89億円を配当のみに費やした。オオゼキは現在、無借金経営であり、債務の返済は必要なく、自己資本比率は78.7%と超健全な状況であり、現金及び現金同等物も100億円を超えている。今回、この原資を自社株買いに充てたものと思われる。今後オオゼキは積極的な新規出店を表明しているので、投資キャッシュフローは増加する傾向になると思われるが、財務キャッシュフローでの返済が必要ない分、今後とも機動的に自社株買い、配当等にキャッシュフローを当てることができ、成長路線と株価対策の双方をバランスよく実施できる状況にあるといえよう。
また、オオゼキ以外にもここ最近自社株買いを実施している食品スーパーマーケットは平和堂、神戸物産等がある。平和堂は昨年の11/5に200万株(3.57%)、30億円を上限とする自社株買いであり、期間は今年の2/20までである。結果は11,600株(14,824,400円)と目標を大きく下回ったが、2/20に「自己株式の市場買付及び取得終了に関するお知らせ」で終了の宣言をしている。そして、神戸物産であるが、1/5に175,500株(1.99%)、273,631,200円を上限する自社株買いを実施し、2/19に終了したが、結果は30,100株、44,814,200円となり、平和堂同様、目標を大きく下回った。
このように、食品スーパーマーケットは2月期決算、3月期決算が大半であり、ここへきて、全体的な株価の低迷に連動するように食品スーパーマーケットの株価も低迷しており、今回、その対策の一環として、オオゼキ、平和堂、神戸物産等が自社株買いに踏み込んだ財務戦略を実施したが、オオゼキはほぼ目標どおり、平和堂、神戸物産は目標を大きく下回るという対照的な結果となった。また、目標どおり自社株買いを終了したオオゼキも一時的には若干株価の上昇も見られたが、ここへきて、また、株価は厳しい状況を示しており、自社株買だけでは株価対策が厳しい状況といえよう。今後、オオゼキを含め、各食品スーパーマーケットがどのような株価対策を打ち出すかに注目したい。
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