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April 25, 2009

カスミ、2009年2月期決算、増収減益、高コスト響く!

   カスミが2009年2月度の決算を4/13、公表した。結果は、営業収益2,083.31億円(102.7%)、営業収益46.22億円(75.4%:営業収益比2.2%)、経常利益52.22億円(77.6%:営業収益比2.5%)、当期純利益17.00億円(69.4%:営業収益比0.8%)と、増収減益となる厳しい決算となった。特に、利益が各段階で減益となり、当期純利益は大きく減収となった。

   そこで、営業利益が減益になった要因を見てみたい。まず、原価であるが、72.4%(昨年72.2%)となり、0.2ポイント上昇している。したがって、売上総利益は27.6%(昨年27.8%)となり、粗利が下がった。今期は、既存店の内、6店舗をディスカウント業態Food OFFストッカーへ転換しており、全店が135店舗であるので、約3%の店舗構成比なる。その結果、Food OFFストッカーは、全部で18店舗となり、全体では10%強となり、これらのディスカウント業態が原価を押し上げている要因のひとつであろう。

   カスミの今期の売上総利益は27.6%であるが、これは全業態の平均であり、現在、カスミはこの平均を超える付加価値の高い業態と、Food OFFストッカーのように、この平均を遥かに下回る業態と、様々な業態に取り組んでいる。ここ数年は、Food OFFストッカー側の平均を大きく下回る業態に力を入れ、すでに、18店舗となり、構成比も10%を超え、全体の売上総利益へ影響を与えつつあるところまで来ている。相乗積からも、5%原価が高くなれば、0.5ポイント、10%で1.0ポイント、全体の原価を押し上げ、結果、売上総利益が下がる要因となる。このまま、Food OFFストッカーの店舗数が増えると、今後は、さらに、このような傾向が強くことになろう。

   一方で、カスミは、原価に関しては、イオンのトップバリュを積極的に導入し、特に、今期は原価改善に取り組んだ。現在、トップバリュの売上は100億円を超え、売上構成比は5.2%となり、原価へのインパクトは大きいといえる。これも、相乗積をとると、5%の原価改善で0.25%、10%で0.5%、20%で1.0%の全体への原価改善が可能であり、今期も0.5%以上は少なくとも原価改善につながったものと思われる。それにもかかわらず、今期の原価が0.2ポイント上昇したことは、少なくとも0.4ポイント以上は、原価を押し上げる要因があったといえ、Food OFFストッカーの要因だけではなく、それ以外の、今期の資源、エネルギー価格の上昇による仕入れ原価の上昇も大きかったものと思われる。

   では、営業利益を決めるもうひとつの大きな要因である経費、すなわち、販売費及び一般管理費を見てみたい。今期は28.7%(昨年28.1%)と、0.6ポイント上昇しており、本来であれば、Food OFFストッカーの店舗数が全体の10%を超えてきたので、ディスカウント業態の真骨頂であるローコスト効果が表れ始めても良い段階である。ところが、今期は、逆に0.6ポイントの上昇となり、他業態の経費上昇が相当大きかったものと思われる。

   こう見ると、今期はディスカウント業態であるFood OFFストッカーへ既存店を積極的に転換し、トップバリュを積極的に導入をはかり、経費削減と原価改善を同時に追求したにもかかわらず、双方が上昇するということになり、カスミとしては、既存業態、既存商品が厳しい状況であったものと推測される。

   その結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-1.1%(昨年-0.3%)と大きくマイナスとなり、商品売買から得られる粗利で経費をまかなえない構造がより拡大するという厳しい状況となった。営業利益が減益となった要因はここにあるといえ、今後、マーチャンダイジング力をいかにプラスにもってゆくかが、経営戦略の最優先課題といえよう。

   そして、営業利益であるが、このマーチャンダイジング力に物流収入、不動産収入が3.4%(昨年3.4%)のり、最終的には2.3%(昨年3.1%)とプラスにはなったが、昨年と比べ0.8ポイントと大幅に下がる厳しい結果となった。

   カスミは現在、135店舗であるが、その出店エリアは茨城県86店舗、埼玉県19店舗、千葉県18店舗、栃木県9店舗、群馬県3店舗という状況であり、茨城県が約60%という主ドミナント地区となっているが、この茨城県がここ数年、地元の食品スーパーマーケットの新規出店に加え、イオンのショッピングセンター、ヨークベニマルの本格参入、北関東、埼玉の有力食品スーパーマーケットの参入などもあり、競争が激化しており、今期のようなマーチャンダイジング力に直影響がでる厳しい経営環境にあるといえよう。
 
   ただ、来期の通期予想は、一転、営業収益2,282.00億円(109.5%)、営業利益52.00 億円(112.5%:営業収益比2.2%)、経常利益56.00億円(107.2%:営業収益比2.4%)、当期純利益25.00億円(147.1%:営業収益比1.0%)と、大きく業績が回復し、特に、売上が伸びる予想である。今期が特に厳しい状況であったといえよう。

   このように、カスミの今期の決算は増収とはなったが、減益となる厳しい決算となり、特に、原価、経費双方が上昇し、利益を大きく圧迫し、マーチャンダイジング力が大きくマイナスとなった。この数字を見る限り、Food OFFストッカー、トップバリュの効果はまだ明確に表れているとはいえず、今後、双方の売上構成比をさらに大きく上げることが必要とはいえるが、バランスを崩すと、カスミ本来の姿を見失う恐れもあり、どこでバランスをとるかが難しい経営バランスといえよう。来期、この微妙なバランスをどのように舵取りしてゆくのか、カスミの経営戦略のゆくえに注目したい。

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