アオキスーパー、2009年2月度本決算、経費比率16.7%!
経費比率16.7%(昨年16.8%)、2009年2月度のアオキスーパーの本決算の結果である。経費比率16.7%は上場食品スーパーマーケット約60社の中では最も低い、経費比率であり、これほど、低い経費比率で経営できる食品スーパーマーケットは日本では非上場ではあるが、オーケーの14.9%(2009年3月期中間決算時)ぐらいであろう。これが、アオキスーパーの最大の経営の武器であり、今期はさらに磨きがかかったといえよう。
ちなみに、今期、2009年2月期の主な経費項目の売上比率を見ると、人件費関連として、役員報酬、給料手当・賞与、賞与引当金繰入額、役員賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利厚生費の合計は8.1%(営業総利益の41.2%)、地代家賃1.9%、広告宣伝費1.3%と、上場食品スーパーマーケットの現状と比べると、いずれも30%ぐらいは低く抑えているといえよう。この経費比率がアオキスーパーの最大の強みといえるが、アオキスーパーはこの強みを自社の利益の確保に向けるのではなく、顧客への還元に振りむけることが凄味である。通常の食品スーパーマーケットであれば、これだけの経費比率であれば、粗利を20.0%ぐらい確保し、営業利益を3.0%以上は確保するところであるが、アオキスーパーの今期の売上総利益は16.6%(昨年17.0%)と原価が上昇したこともあるとは思うが、さらに引き下げ、差し引き、-0.1%(昨年0.2%)と、何と、マーチャンダイジング力をマイナスとしていることである。
すなわち、経営努力により、経費比率を極限まで下げていながら、その下げた分をそっくり、今期はそれ以上に、顧客に還元し、結果、ディスカント戦略を打ち出すという経営戦略をとっている。粗利=経費という構図であり、しかも、経費を下げると、粗利も下げ、経費削減の限界を追求しつつ、究極の低粗利へも挑戦しているということである。では、どこで利益をだすのか、今期決算を見ると、その答えが、不動産賃貸収入1.0%であり、その他収入2.2%であることがわかる。その他収入は大半が物流部門における手数料収入であり、これがアオキスーパーの生命線であるともいえよう。
アオキスーパーは現在43店舗であり、今期の売上高885.21億円を単純に割ると、20.5億円であり、食品スーパーマーケットとしては高い売上高である。このように高水準の売上を上げることが、結果、物流手数料を増やし、さらに、不動産収入も増やすことになり、結果、営業利益が増加するという経営戦略といえる。ここまで、徹底した経営戦略を実現するのは、中々できることではなく、食品スーパーマーケット業界の中でも極めてまれなケースであるといえよう。
では、アオキスーパーが平均店舗の年商が20億円を超えるマーチャンダイジング戦略はどこにあるかであるが、その要因のひとつが、水産の強さにあるといえよう。アオキスーパーの水産の売上構成比は何と17.5%であり、農産の14.6%、畜産の14.6%と比べても異常に高い数値である。水産には練製品が含まれているかどうかにより、数値が違ってくるが、仮に、この中に練製品が含まれていたとしても、17.5%は高い数字であるといえ、アオキスーパーのマーチャンダイジングの強さの秘訣は水産の強さによるところが大きいといえよう。また、農産、畜産の14.6%も通常の食品スーパーマーケットの売上構成比と比べると高い数値であり、結果、生鮮3品合計が46.7%となり、生鮮強化型のマーチャンダイジング構成となっており、水産はもちろん、生鮮全体が充実した食品スーパーマーケットであるといえる。
さて、ここで改めて、アオキスーパーの決算概要を見てみると、営業収益913.70億円(110.8%)、営業利益27.14億円(101.0%:営業収益比2.9%)、経常利益28.03億円(101.7%:営業収益比3.0%)、当期純利益14.73億円(101.2%:営業収益比1.6%)と増収増益と、好決算であったが、特に、売上が2桁伸びたことが大きかったといえよう。その売上の中身であるが、既存店が102.6%と安定した伸びに加え、新店を西枇杷島店(3月)、三条店(8月)と出店し、3店舗を改装したことが大きかったといえる。
そこで、アオキスーパーの出店余力を見てみると、自己資本比率は59.6%(昨年58.8%)と高い数字であり、出店関連の資産、土地、建物、差入保証金の合計は122.09億円であり、これは総資産235.73億円の51.7%であり、十分に自己資本比率でまかなえる財務構造であり、差し引き、出店余力は7.9%となる。また1店舗当たり2.8億円であり、極めてローコストな店舗であり、この時点から、すでに経費削減が始まっているといえよう。また、負債の主要項目の長短借入金の合計もわずか2.0億円であり、総資産の0.8%であり、ほとんど問題ない借入金額であり、いつでも無借金経営が視野に入っている健全な財務状況である。
このように、アオキスーパーの2009年2月期の決算は経費比率が16.7%と昨年よりも0.1ポイント下がり、一層のローコストの経営が進んだ。そして、この強みをいかし、ディスカウント路線を徹底し、売上を110.8%と2桁増をもたらし、増収増益の好決算となった。また、財務的にも安定した自己資本比率59.6%を達成し、無借金経営も射程圏内であり、結果、出店余力も十分で、今後の新規出店も期待できよう。今後、経営環境が一層厳しくなることは必至であるが、この経費比率16.7%は、このような厳しい経営環境の中で競争してゆくには、最大の武器であるといえ、アオキスーパーにとってはチャンスといえよう。来期、アオキスーパーがどのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。
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