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April 30, 2009

GMS業態苦戦、2009年2月期決算、イズミヤ、フジ!

   食品スーパーマーケット、上場企業の2009年2月期の決算がほぼ終了したが、食品スーパーマーケット業態には大きく2つのタイプがある。文字通り、食品専門に近い食品スーパーマーケットと、衣料品、住関連をも重視するGMS、ホームセンタータイプである。そのGMSタイプの典型的な食品スーパーマーケット、というよりも、食品を主力とするスーパーマーケットとして、イズミヤ、フジがあるが、この2社の2009年2月期の決算を取り上げてみたい。

   イズミヤは食品の売上構成比が58.7%、フジはテナントを除いた食品の売上構成比が60.4%であり、両食品スーパーマーケットともに、ほぼ同じ食品の比率である。衣料品はイズミヤ16.2%、フジ20.3%、住関連商品はイズミヤ20.1%、フジ19.2%であり、イズミヤの方がGMSよりもスーパーセンターが主力業態となりつつあるためと思われるが、住関連の構成比がやや高いという特徴がある。

   さて、今期、2009年2月期の決算であるが、イズミヤは営業収益3,811.31億円(0.0%)、営業利益53.39億円(78.6%:営業収益比1.4%)、経常利益41.89億円(75.5%:営業収益比1.0%)、当期純利益9.65億円(48.0%:営業収益比0.2%)と、営業収益横ばいとなり、利益は減益となる厳しい決算となった。一方、フジであるが、営業収益3,211.57億円(0.0%)、営業利益13.22億円(29.3%:営業収益比0.4%)、経常利益12.82億円(27.9%:営業収益比0.4%)、当期純利益-3.78億円となり、営業利益横ばい、利益は減益、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。両食品スーパーマーケットともに、売上が伸び悩み、利益は減益となる厳しい決算であり、この背景にはGMSタイプ特有の利益を生み出しにくい要因があると思われる。

   そこで、まず、両食品スーパーマーケットの営業構造を見てみると、一般的な食品スーパーマーケットとの最大の違いは、経費比率にあるといえる。イズミヤの販売比及び一般管理費は31.2%(昨年30.8%)であり、フジは28.8%(昨年28.6%)であり、どちらも、極めて高い経費比率である。しかも、昨年より、さらに、経費比率が上昇し、利益を圧迫しており、利益を出しにくい構造であるといえる。食品スーパーマーケット業界で高収益を上げている企業はこの経費比率が20%を切っている状況であり、この時点で約10%の差があり、粗利の低い食品を柱としてゆくには経費比率30%は、極めて利益を出しにくい構造であるといえよう。

   では、この差はどこから生じるかであるが、当然10%の経費差は、それぞれの項目の比率が高いということになるが、そのさらに背景にあるのは、資産効率にあるといえよう。資産効率を最も端的に表す指標は坪売上であるが、イズミヤの坪売上を計算すると、総店舗面積が617,201平米であるので、単純に営業収益を割ると、61.7万円となり、坪当たり203.7万円となる。一方、フジの総店舗面積は683,991平米であるので、同様に計算すると、46.9万円となり、坪当たり154.9万円となる。

   しかも、この販売にかわわる資産、すなわち、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金(差入保証金)等の合計はイズミヤが1,808.17億円(1店舗当たり21.02億円)、フジが909.53億円(1店舗当たり10.33億円)となり、それぞれの、総資産当たりの比率を計算すると、イズミヤが70.3%、フジが56.7%である。ちなみに、自己資本比率を見ると、イズミヤが40.2%、フジが33.7%であるので、差し引き、出店余力はイズミヤ-30.1%、フジ-23.0%となり、負債に大きく依存した出店構造となっている状況である。

   こう見ると、通常の食品スーパーマーケットとの差は歴然としており、GMSタイプの業態の場合は、1店舗あたり、少なくとも2倍以上の資産を投入しており、しかも、その資産が負債に依存する構造となっており、自己資本の範囲内での自由な出店戦略が組みにくい財務構造となっている。これに加え、坪当たりの売上が、1/2から1/3であり、様々な商品の中でも、最も商品回転率の高い商品である食品がゆっくりと回転しているイメージであり、結果、様々なコストが相対的に上昇し、経費比率を引きあげているといえよう。

   経費比率を引き下げるには、単純に経費削減も重要な手法のひとつであるが、それ以上に、財務構造、営業構造を根本的に見直すことも重要な経費削減の手法である。GMS業態の場合は、食品専門の業態と比べると、スタート時点から多額の資産が、負債依存型で投入され、しかも、その資産が生み出す売上が極めて低い効率となってしまいがちであり、結果、様々な固定費が上昇し、経費比率を引き上げてしまう、構造的な問題をかかえているといえよう。

   このように、イズミヤ、フジという典型的なGMSタイプの食品スーパーマーケットの今期決算を見てみたが、両企業とも同様の構造的な問題を抱え、利益が出しにくい状況にあるといえよう。この状況は、イズミヤ、フジに限らず、大手GMSも全く同じ構造的な問題にあるといえ、今後、収益をだしてゆくには、抜本的な営業面だけではなく、財務面においても改革が急務といえよう。まずは、現状の坪売上を少なくとも2倍以上に引きあげる政策が最優先であり、その後、安定的な収益確保をもとに財務構造の改善に入ることが望ましいといえよう。今後の両企業のGMS改革に注目したい。

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