オオゼキにみる常連客の経営的な意義を考えてみる!
「お父さん、お父さん、今のお客さん、明日もまた来てくれるかね?」、オオゼキの創業者、佐藤達雄夫妻の言葉であり、オオゼキの創業の精神を象徴的に表した言葉であるが、この言葉ほどCRMの本質をついている言葉はないといえよう。オオゼキは早くから、ポイントカードを導入し、商品の値引きだけでなく、顧客に対していかに利益を還元するかに取り組んできた。その理由は、恐らく、この創業の精神を具体的に商売に活かす手段のひとつがポイントカードの活用であると判断したためと思われる。
これまで、各食品スーパーマーケットでは、この顧客への還元政策、すなわち、ポイントカードを活用したCRMが経営に対してどのようなインパクトがあるかが、中々実証できずに、理念先行型でポイントカードを導入したり、競合店への対抗策としてやむをえず導入したりしてきたのが実態かと思う。この疑問に答える実証結果のひとつが、今期のオオゼキの決算で、明らかになった。
オオゼキはこれまで、決算書ないしは決算説明会資料の中で、ポイントカードの活用事例と効果について、その一部を公開してきたが、今期の決算説明会の資料の中では、もう一歩踏み込んだポイントカードの実証結果が公表された。まさに、オオゼキの創業の精神が正しかったことを実証する結果となっており、改めて、ポイントカードを活用したCRMの目的、経営的な意義が明確になったといえよう。
その内容であるが、オオゼキのポイントカードの顧客と各店舗の利益との相関関係を分析した結果、常連客と店舗営業利益率との間には、明らかな正の相関があったという今期の決算結果である。ここで常連客とは、買上頻度が週1回以上の顧客のことであり、新マーチャンダイジングでいえば、ID客数PI値が週1.0回/IDの顧客のことである。
今回の公表内容では、まず、この常連客がレジ客数とどのような関係にあるかが分析されている。これも新マーチャンダイジングでいえば、IDとレシートとの関係であり、まさに、ID客数PI値を算出していることになるが、その結果は、28%の常連客が77%のレジ客数の構成比であったとのことである。これを新マーチャンダイジングの観点から、再解釈すると、全レシート枚数の77%は常連客28%のレシートであるということであり、23%が非常連客72%のレシートであるということである。
仮に、レシート枚数が1,000枚発生すると、その内の770枚が常連客のレシートであり、その常連客は1,000枚のレシートをもたらした顧客の内、わずか28%であるという事実である。仮に、カード使用者が100人であったとすると、28人が770枚のレシートをもたらし、72人が230枚のレシートをもたらしていることになる。ID客数PI値を計算すると、常連客は770枚÷28人=27.5枚/人であり、非常連客は230枚÷72人=3.19枚/人ということになり、約10倍、ID客数PI値が違うことがわかる。常連客はこの期間に27.5回平均して来店しているが、非常連客は3.19回来店しているということになる。期間を約3週間と考えるとほぼぴたりであり、常連客は1週間に平均27.5÷3=9.1回、非常連客は3.19÷3=1.0回となり、これがかなり実態に近い数字ではないかと思われる。
これは実証データであるので、オオゼキの常連客は非常連客の約10倍来店回数が多かったということであり、しかも、この28%の常連客の平均は1週間に約10回来店される顧客であることになる。そして、各店舗の常連客の人数と営業利益率の相関図を作成してみたところ、全29店舗がy=xの直線上に並ぶという結果になったという。常連客の高い店舗ほど営業利益率が高く、常連客の少ない店舗ほど営業利益率が低い結果となったという。
まさに、オオゼキの創業の理念が実証されたけ結果であるといえ、常連客を大切にし、常連客を増やした店舗がオオゼキに結果的に利益をもたらしたといえる今期の決算結果となったことになる。CRMは、これまで、その目的がいまひとつ明確にならなかった点に加え、その実証事例があまりに少ないという問題もあり、単なるポイントカードで留まってしまった感がいなめないが、今回のオオゼキの実証結果は、CRMは常連客を大切にし、増やすことであり、その結果、企業に大きな利益をもたらすものであるということを明確にしたといえよう。
これを新マーチャンダイジングの方程式に当てはめれば、ID金額PI値(粗利)=ID客数PI値×金額PI値(粗利)の中で、金額PI値よりも、ID客数PI値がCRMではより重要な指標であり、いかに、ID客数PI値を高めることが、ID金額PI値を高めることだけでなく、利益率をも高めることになるということが実証されたといえよう。
当然、次のテーマとしては、ID客数PI値の高い顧客、すなわち、常連客の好みの商品は何かを見つけ出し、その商品を通じて、個別に還元してゆくなど、もう一歩踏み込んだポイントカードの政策も考えられることである。以前から、オオゼキは個店主義が徹底しており、常連客の要望する商品に対し、店長権限でその店舗だけ品揃えに加えることも実施していたが、まさに、これは常連客の来店動機を促し、ID客数PI値を引き上げる政策のひとつでもあったといえる。オオゼキが今回の実証結果を受け、今後、どのようなCRM戦略を打ち出すかに注目である。
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