No.2、中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算
前回の中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算その1に続き、中堅食品スーパーマーケット、北海道の北雄ラッキー、長野のマツヤ、四国のマルヨシセンター、3社の2009年2月期度の決算結果を見てみたい。前回は、営業利益に焦点当て、利益構造について見たので、今回は財務構造について焦点を当ててみたい。
食品スーパーマーケットにとって、財務上、最も重要な課題は、新規出店余力であるといえる。既存店は数年は伸び続けるが、やがて、限界に達し、成長が止まる。したがって、食品スーパーマーケットが成長をしてゆくには、新店を出店してゆく以外になく、そのためには、新規出店が可能な財務余力をいかに確保するかが経営課題であるといえる。では、財務余力はどこにあらわれるか、それが自己資本比率である。自己資本比率は自己資本÷総資産で表される数字であり、この数字が高いほど、財務的に安定しており、逆に低いほど、財務状況が苦しいといえる。
自己資本と対となるのが他人資本であり、これが負債であり、自己資本比率が高いということは負債が低いことであり、逆に、自己資本比率が低いといいことは負債が高いという関係になる。先般問題になった投資ファンドはまさに、この自己資本比率が極めて低く、負債を何倍、何十倍、何百倍にしたレバレッジ経営を行っていたがゆえに、歯車が狂うと、いっきに経営危機となるという結果になった。
では、食品スーパーマーケットではどのくらいの自己資本比率が望ましいだろうか。成長力のある優良食品スーパーマーケットの数字を見ると、70%を超える場合もあるが、安定的な成長を支える財務状況としては50%から60%は目指したいところである。このような観点から、今回の中堅食品スーパーマーケット、3社の自己資本比率を見てみると、北雄ラッキー21.5%(昨年21.2%)、マツヤ21.5%(昨年21.9%)、マルヨシセンター11.3%(14.2%)という状況であり、いずれも、かなり低い自己資本比率であることがわかる。したがって、現状の経営が大きく負債に依存する状況となっており、財務的には厳しい状況にあるといえよう。
これだけ、自己資本比率が低いと、経営が資産を増やすよりも、負債を圧縮する方に、目が向いてしまい、食品スーパーマーケットにとって最も重要な経営戦略である出店戦略が十分に組めない状況となり、食品スーパーマーケットの成長が止まりかねない。では、その負債の中身を見てみたい。北雄ラッキーであるが、総資産189.65億円の内、負債が148.83億円(総資産の78.4%)である。その内、最大の項目が有利子負債であり、87.82億円(総資産の46.3%)である。マツヤは総資産が148.71億円であり、負債が116.75億円(総資産の78.5%)である。有利子負債は77.93億円(総資産の66.7%)である。マルヨシセンターは総資産が221.47億円であり、負債が196.40億円(総資産の88.6%)である。有利子負債は139.14億円(総資産の62.8%)である。いずれも、大きく負債、その中でも有利子負債に依存している財務構造であることがわかる。
ちなみに、出店にかかわる資産である土地、建物、敷金保証金等の合計は、北雄ラッキーが136.28億円(総資産の71.8%)、マツヤが87.00億円(総資産の58.5%)、そして、マルヨシセンターが154.76億円(総資産の69.8%)であるので、いずれも、総資産の大半を占めており、食品スーパーマーケットにとって、新規出店がいかに多額の資産が必要であり、しかも、資産の大半を占めているかがわかる。
見方を変えれば、食品スーパーマーケットは出店戦略=成長戦略=財務戦略であり、安定的な新規出店を継続してゆくには財務戦略が不可欠であり、その根幹が自己資本比率の充実にあるといえる。しかも、この自己資本比率は、増資には限界があるため、増やす方法はマーチャンダイジング力を高め、営業利益を増加させる以外にないといえ、財務戦略=マーチャンダイジング戦略ともいえ、P/LとB/Sが表裏一体となった関係となっていることがわかる。その1では、このマーチャンダイジング力を取り上げたが、いずれもこの中堅食品スーパーマーケット3社は、今期厳しい状況であり、今回取り上げた財務状況も、かなり厳しい状況であることがわかる。
ここから、もう一歩進め、出店余力、すなわち、自己資本の範囲内でどこまで出店にかかわる資産をカバーしているかを見ると、北雄ラッキー-50.3%、マツヤ-37.0%、そしてマルヨシセンター-58.5%と、いずれも大きくマイナスであり、極めて厳しい出店構造であるといえよう。
このように、今期の代表的な中堅食品スーパーマーケット、北雄ラッキー、マツヤ、そして、マルヨシセンターの財務状況を見てみたが、3社とも同様に厳しい財務状況にあるといえる。その1で解説した利益構造に加え、食品スーパーマーケットにとっても最も重要な成長戦略を支える財務構造も厳しい状況にあるといえ、今後、さらに競争が激化する状況の中で、どのような財務改善を行うかが課題といえよう。ただ、食品スーパーマーケットにとっての基本はマーチャンダイジング力を高め、出店余力を生み出し、成長戦略を打ち出すことであるので、まずは、今期、この3社のマーチャンダイジング力の動向に注目したい。
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