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May 22, 2009

スーパー大栄、2009年3月決算、増収増益、当期減益!

    食品スーパーマーケットの3月度、上場企業、最後となるスーパー大栄の決算が5/18、公表された。食品スーパーマーケット業界の上場企業は約60社であるが、その約70%は2月度決算である。3月度は、今回のスーパー大栄を含め9社であり、約15%である。そのスーパー大栄の決算結果であるが、売上高298.39億円(103.8%)、営業利益3.19億円(135.4%:売上対比1.06%)、経常利益2.74億円(152.8%:売上対比0.91%)、当期純利益1.39億円(66.1%:売上対比0.46%)と、増収増益の好決算となったが、当期純利益は投資有価証券の評価損、固定資産の減損処理などがあり、減益となった。

   特に、今期は営業利益、経常利益が2桁を超える大幅な伸びを示している。ただ、売上対比で見ると、率は約1%であるので、もう少し、率を引き上げたいところである。その利益の構造であるが、今期の原価は78.6%(昨年78.6%)と、昨年同様の原価となった。今期決算企業の多くが原価上昇がみられる中、昨年同様の原価を維持し、結果、売上総利益は21.4%(昨年21.4%)となった。この数字を見ると、かなり、粗利が低く、ディスカウント傾向が強いといえよう。実際、ここ最近のスーパー大栄は、生鮮ディスカウント業態の「鮮ど市場」を主体に新規出店しており、平成15年以降、すべて、新店は「鮮ど市場」での出店である。昨年も8月に「鮮ど市場上津店」を新規出店した。

   一方、経費の方であるが、今期の販売費及び一般管理費は、21.7%(昨年22.0%)と0.3ポイント改善しており、経費の削減が進んだ。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-0.3%(昨年-0.6%)と、依然としてマイナスではあるが、その幅は縮まっており、今後、どこまで、マーチャンダイジング力を改善できるかが、利益のさらなる上昇につながろう。ただ、この経費比率21.7%はかなり低い数字であり、今後、マーチャンダイジング力を引き上げるには、経費そのものを削減するよりも、売上、特に、坪売上を引き上げ、固定費を相対的に削減することがポイントであるといえよう。

   そして、これに、営業収入が1.4%(昨年1.4%)のり、最終的に営業利益が1.1%(昨年0.8%)となり、売上103.8%とあいまって、営業利益が大幅な増益となった。こう見ると、営業利益は確かに、昨年対比では、大幅な増益であるが、その中身は、マーチャンダイジング力のマイナスを不動産収入等でカバーしての数字であり、しかも、営業利益率は約1%であり、今後、さらに、マーチャンダイジング力の改善が課題といえよう。

   では、今期のスーパー大栄の財務面を見てみたい。まず、自己資本比率であるが、34.0%(昨年31.6%)と、昨年よりは若干増加しているが、30%強と、負債に70%弱依存している財務構造であり、厳しい状況といえよう。スーパー大栄の自己資本比率は、ここ5年間の推移を見ても、30%前後で推移しており、自己資本比率の改善が今後の大きな経営課題である。

   その負債面であるが、有利子負債の状況を見ると、36.90億円(昨年43.95億円)と、昨年よりも約7億円削減されているが、総資産110.86億円に占める割合は33.2%と、ほぼ自己資本と同じ比率であり、有利子負債が経営に重くのしかかっている状況といえる。したがって、食品スーパーマーケットにとって、最も重要な経営戦略、出店戦略であるが、出店にかかわる資産が79.35億円と総資産の71.5%となり、ちょうど、自己資本+有利子負債比率でバランスが取れる構造となっており、差し引き、出店余力は-37.5%と大きくマイナスの状況である。出店が負債に大きく依存する財務構造であり、今後、安定的な新規出店を果たしてゆくには、自己資本比率の充実が今後の大きな経営課題であるといえる。

   そこで、今期のキャッシュフローを見てみると、営業キャッシュフローは7.58億円(昨年-0.08億円)と、昨年からは大幅に増加している。ただ、その中身は、当期純利益、減価償却費が大きく増加したわけではなく、昨年は仕入債務の減少が-5.97億円と大きく、今期は0.11億円となったことが大きかったといえる。そして、投資キャッシュフローであるが、-3.56億円と新規出店がらみと思われる有形及び無形固定資産の取得による支出が5.55億円ある。結果、フリーキャッシュフローは4.02億円のプラスとなり、好決算がキャッシュフローを順流にもたらしたといえよう。ただ、財務キャッシュフローが長期借入金の返済14.85億円が大きく響き、-7.44億円とフリーキャッシュフローを大きく超え、結果、現金及び現金同等物を3.42億円とり崩すという結果となった。負債依存度の高さが、キャッシュフローを圧迫しており、今後、自己資本比率の改善は、スーパー大栄にとって、重要な経営課題である。

   このように、今期のスーパー大栄の決算は、当期純利益は減収となったものの、営業、経常段階では、2桁の増益となり、好決算であった。ただ、自己資本比率が30%台と、負債に大きく依存する財務構造が続いており、新規出店が安定的には難しい状況であるといえる。また、増益にはなったが、依然として、売上対比の営業利益率は約1%であり、今後、いかにマーチャンダイジング力を引き上げ、営業利益率を2%、そして、3%台へ引き上げてゆくことも必要といえよう。来期も厳しい経営環境が続くが、スーパー大栄のマーチャンダイジング力の動向に注目したい。

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