原信ナルスH、2009年3月期決算、増収減益!
原信ナルスHが2009年3月期決算を5/7公表した。結果は、売上高1,162.19億円(104.2%)、営業利益32.20億円(98.7%:売上対比2.8%)、経常利益30.54億円(98.0%:売上対比2.6%)、当期純利益10.64億円(9.4%:売上対比0.9%)と、増収減益となる厳しい決算となった。今期の食品スーパーマーケットは原信ナスルHの決算が象徴しているように、増収減益となるケースが多いのが特徴である。
減益となる食品スーパーマーケットの状況を見てみると、原価が上昇するケース、経費が上昇するケース、そして、双方が上昇するケースの3つに分かれるが、今期は、どちらかというと、経費の上昇により、減益となるケースが多いように思える。ただ、意外なことに、今期は各食品スーパーマーケットが積極的なPBを開発投入し、原価の削減を図り、粗利アップを目指したが、多くの企業で、さほど、原価の改善が進んでいない状況も見られ、経費上昇を原価改善で補えないケースが多いのも特徴といえよう。
さて、原信ナスルHの営業減益の要因であるが、原価は72.9%(昨年72.5%)と0.4ポイント上昇しており、まず、原価の上昇が起こっている。結果、売上総利益は27.1%(昨年27.5%)となり、粗利が下がっているのが気になるところである。
原信ナルスHは営業部門が原信とナルスに分かれるが、今期の原信の売上は902.95億円(105.4%:47店舗)、ナルスは198.19億円(99.8%:16店舗)となり、原信は堅調な売上であったが、ナルスがやや苦戦した状況である。また、1店舗当たりの状況は原信が客数2,947人、金額PI値(客単価)1,786円、PI値1,033%、平均単価172.8円に対し、ナルスは客数1,820人、金額PI値(客単価)1,863円、PI値1,105%、平均単価168.5円である。原信はSSM、NSCタイプの店舗フォーマットが主力であるので、小中域商圏の食品スーパーマーケットであるのに対し、ナルスは小商圏のSMタイプが店舗フォーマットの主力であるので、小商圏の食品スーパーマーケットと違いが明確である。
ただ、本来であれば、カテゴリーも広く扱え、品揃えも豊富に持てる原信の方が金額PI値(客単価)が高くても良いように思えるが、逆に、PI値が70%という決定的な差が生じており、原信の方がまとめ買いが少なく、高頻度来店の店舗となっているようである。逆に見れば、ナルスのPI値が通常の食品スーパーマーケットと比べても高いともいえ、商圏上の特性によるところも大きいと思われる。いずれにせよ、売上の80%以上を占める原信の客数約3,000人は十分であるが、金額PI値(客単価)アップは課題であるといえよう。結果、坪売上は、今期合計の店舗面積が1,817平米(550.6坪)とやや大きめの食品スーパーマーケットであるため、321.75万円と低くなり、結果、固定費が相対的に高めになるといえ、客数よりも、金額PI値(客単価)をいかに増やし、坪売上を上げるかが当面の課題といえよう。
一方、販売費及び一般管理費であるが、24.3%(昨年24.2%)と0.1ポイント上昇している。残念ながら、今期の原信ナルスHは原価、経費双方の上昇がみられ、結果、売上総利益=マーチャンダイジング力は2.8%(昨年3.3%)と0.5ポイントと大幅に下がってしまい、減益となった。原信ナルスHは営業収入が決算上では発生しておらず、売上総利益=営業総利益=営業利益=マーチャンダイジング力であり、結果、マーチャンダイジング力はプラスにはなったが、決算自体は、原価、経費双方の上昇が見られ、厳しい結果となった。
ちなみに、経費の上昇であるが、その要因を見ると、減価償却費の増加が大半であり、ここ数年の原信、ナルスの経営統合による物流センター、情報システム等への投資が今期、減価償却費となって費用計上されたためといえよう。結果、営業キャッシュフローは、この減価償却費のプラス分が増加し、46.63億円(昨年31.26億円)と約15億円増加しており、キャッシュフローには余裕がある。
そのキャッシュフローであるが、営業キャッシュフローが46.63億円(昨年31.26億円)、投資キャッシュフローが-26.10億円(昨年-47.65億円)と、投資キャッシュフローは昨年よりも減少しており、経営統合がキャッシュフローの面からも一段落したことが伺える。ちなみに、投資キャッシュフローは、昨年がピークであり、今後は経営統合への投資から、食品スーパーマーケット経営の本流である新規出店、すなわち成長戦略へ向けることができ、来期以降、積極的な新規出店を期待したいところである。結果、フリーキャッシュフローは20.53億円(昨年-16.39億円)とプラスに転じた。そして、財務キャッシュフローであるが、-22.82億円(昨年13.87億円)と、昨年は借入で賄ったが、今期は社債、借入を若干返済しており、キャッシュフローが好循環となった。
このように、原信ナルスHはP/L面では増収減益となる厳しい決算とはなったが、財務面では昨年までの経営統合による大型投資が一段落し、キャッシュフローの逆流が止まり、順流となり、好循環が生じはじめた。今後は、原信の金額PI値(客単価)をいかに引き上げるかというマーチャンダイジング上の課題はあるが、財務状況は好転しており、営業キャッシュフローを新店開発等の成長戦略に振り向けることが可能となるので、来期以降の原信ナルスHの成長戦略に大いに期待したいところである。
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