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May 2009

May 31, 2009

コンビニ、公取動くか、単品管理、新たな局面に!

   5/28の日経に、「セブンイレブン排除命令へ、公取委、加盟店の値引き制限」という見出しの記事が掲載された。内容は、公正取引委員会が5/28、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)を認定して、セブンイレブンジャパンに対して排除措置命令を出す方針を固めたもようだということである。現時点では、公正取引委員会から排除命令は出ていないが、すでに、日経を含め、各報道機関が報じているので、確度の高い情報といえ、近々に、排除命令がでるものと思われる。

   今回の問題がコンビニ業界にとって重要なポイントはコンビニの価格政策が揺らぎ、これまでの定価販売による一律価格の慣行が崩れ、コンビニ同士はもちろん、他業態との競争が激化し、コンビニの売上に影響がでるのではないかということもあるが、それ以上に大きなインパクトはコンビニ本部の収入減への影響といえよう。

   今期のセブンイレブンの決算を見ると、セブンイレブン本部の営業総収入は大きく2つに別れており、ひとつは加盟店からの収入であり、もうひとつが自営店からの売上である。その金額は加盟店からの収入が3,948.63億円(昨対106.8%)であり、自営店からの売上は1,409.89億円(92.1%)であり、これにその他の営業収入が若干加わり、合計5,407.73億円(102.4%)である。一般にはコンビニの売上は自営も含め、全店舗の売上であると思われている場合があるが、コンビニ本部の営業収入は加盟店からの収入+自営+αであり、日本では圧倒的に加盟店からの収入が多く、セブンイレブンの場合でも全体の73%を占めているのが実態である。

   しかも、これは、いわゆる粗利分配方式により、ロイヤルティの比率にもとづく収入であり、加盟店の売上がそのままコンビニ本部の売上になるわけではない。今期セブンイレブンの決算数値をもとに単純計算すると、今期のセブンイレブンの加盟店からの収入3,948.63億円を加盟店の売上2兆6,215.67億円で割ると、15.06%であり、仮に粗利が30%であると、ロイヤリティは約50%となる。これがコンビニ本部の売上の構造である。したがって、セブンイレブンジャパンのセブン&アイHへの売上貢献度は5,407.73億円であり、今期のグループの決算数字、5兆6,499.48億円の約10%弱である。ただし、セブンイレブンはアメリカにもあるので、コンビニ全体として、これが加算され、2兆3,957.01億円となり、アメリカのセブンイレブンの方が圧倒的な売上貢献度である。

   さて、今回の公正取引委員会の問題は、この加盟店からの収入3,948.63億円(昨対106.8%)に直接影響がでる可能性が高く、そのインパクトがどのくらいになるかが読み切れないところにある。今回、公正取引委員会が問題にしているのは、デイリー商品、特に弁当などの廃棄対象商品に対する値引き販売への制限の禁止である。これまで、一般的にコンビニ本部では廃棄対象商品については値引いて販売することは、値崩れを起こすので、価格体系をできるだけ維持するよう推奨し、そのため加盟店は廃棄を余儀なくされてきたきらいがあった。

   問題は、この時、本部側の収入と加盟店側の収入がどうなるかであるが、契約では廃棄商品の原価は加盟店側がもつことになっており、結果、粗利の中に廃棄商品の原価は含まれず、販売された商品のみの原価で計算されることになり、そこから本部へのロイヤリティが計算されることになる。したがって、廃棄した場合でも、本部側のロイヤリティは売上に応じた一定の率が維持されるが、加盟店側は、その率から廃棄分の原価のマイナスが発生することになる。これは見方を変えれば、加盟店側にマイナスチャージが発生しているともとれ、いわゆる、ロスチャージ問題となる。

   したがって、これが加盟店には不利な会計方式であるということになり、今回の公正取引委員会の排除命令後には、廃棄がでないように加盟店が独自に見切り販売が可能となることになる。その場合、売上、原価が通常の会計と同様に計算されるので、見切りが増えれば増えるほど、その分、粗利が減り、本部のロイヤリティティが減ることになる。当然、加盟店側は廃棄の損を解消するために限界まで値引きを入れることが予想され、商品によっては粗利が激減することも避けられないといえよう。

   これは、これまで以上に、コンビニにおける単品管理の精度が要求されることになるといえる。特に、これまでは、価格と数量の関係はあまり考えなくてよかったが、今後は、いくら値引いたら、どのくらい売れるかを予測し、さらに、その時の粗利はどのくらいになるかを瞬時に計算することが加盟店側で必要といえ、次元の違う単品管理が要求されることになろう。まさに、商売そのものといえ、加盟店のオーナーにとっては、有利であるが、デイリー商品の単品管理の精度がそのまま粗利の差に反映され、加盟店格差が広がるのではないかと思われる。また、本部にとっては、加盟店の粗利収入減の影響が懸念され、それがそのまま、ロイヤリティ収入に直結するので、営業収入へ響く可能性がある。

   各社報道によると、公正取引委員会のセブンイレブンへの排除命令はほぼ確実といえ、今後は、コンビニ業界全体が、価格政策を再検討し、粗利対策を再構築する必要に迫られるといえよう。これまで、培ってきたコンビニの単品管理の販売技術に価格、粗利を組み込み、さらに進化した新単品管理ノウハウの開発が収益の決め手となるのではないかと思われる。いずれにせよ、ここ数週間、公正取引委員会、そして、コンビニ各社の動向に注目である。

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May 30, 2009

西友、巣鴨店、店舗改装真近の売場を見る!

   西友が昨年後半からKY(価格安く)キャンペーンを本格的にはじめ、西友の価格優位が浸透しはじめているといえよう。最近では、他店ちらしを持ち込めば同じ価格で販売という究極の地域最安値価格戦略も定着し、TVでのCMも価格に重点をおいた内容になるなど、徹底的に価格にこだわったものとなっている。毎月、公表されるアメリカのウォルマートの月次売上速報の中でも、最近は西友のコメントに変化が表れており、低価格政策が業績に反映されはじめ、特に食品が堅調な数字であるという内容が多い。実際、西友の食品売場は大きく変化しており、ここへきて、GMSの食品売場を脱却し、食品スーパーマーケットの原点を追求する売場づくりが本格的にはじまったといえよう。その典型的な売場づくりが、現在進行形で東京の巣鴨店で行われており、その売場を見る機会があった。

   西友巣鴨店はこの6月中旬に改装オープンする予定であり、現在ほぼ、食品売場は原型が整い、食品を含め、全館24時間の営業を続けながら、改装へ向けて準備が進んでいる。改装オープン後に、再度、本ブログでも取り上げてみたいと思うが、食品売場はほぼ売場が出来上がっており、品揃えも充実し、KY(価格安く)も随所に見られ、現時点でも、西友がこれまでとどう変わったか、変わろうとしているかが、一目でわかる売場となっている。そこで、現時点で見た西友巣鴨店の状況から、西友が今後何を目指そうとしているのかをうらなってみたい。

   西友巣鴨店を見ての第一印象は、原点回帰である。何への原点回帰かであるが、食品スーパーマーケットの本来の姿への原点回帰であり、脱GMSの食品売場といえよう。いままでの西友のイメージは全くなくなった印象であり、食品スーパーマーケットとして、完成度の高い売場、品揃え、価格訴求となった印象である。

   西友巣鴨店は地下が食品売場となっており、エスカレータで地下へ下りると、全体の縦方向がかなり長い長方形の売場であり、食品スーパーマーケットのレイアウトとしてはひと工夫が必要である。以前はエスカレータよりの長方形の短い横の方にレジを配置し、全体が窮屈になり、かなり買いにくい売り場であった。ところが、今回の改装では、レジが縦側のエスカレータよりに移動し、売場全体がすっきりした回遊性の高いレイアウトに変わった。長方形を最大限に活かすには、この方が商品面からも、顧客面からも合理的な選択であるといえよう。

   その結果、縦長の長方形を活かした食品スーパーマーケットの原点を追求した商品レイアウトを組むことが可能となり、事実、そのようなレイアウトへとまさに生まれかわったといえよう。食品スーパーマーケットにおいて、レイアウトを組む時の最大のポイントは、生鮮3品+惣菜の配置、PI値最高部門のひとつ日配の位置、グロサリーのエンド本数、酒の配置、そして、これらと客導線とをどう有機的に結びつけるかがポイントであり、そのために、全体を縦横斜めから見て、PI値で可能な限り、シンメトリーにしてゆくことが、結果から見て、作業と顧客満足度を同時に満たす最適バランスとなる。今回の西友巣鴨店のレアイウトはまさに、限りなく、理想に近いレイアウトとなっており、仮に、私が図面を引いたら、このようなレイアウトになったと思う。

   まず、入口から入って、長方形の縦長を活かして、左壁面に青果、そして、6尺ぐらいの平台が壁面と平行に配置され、その後に、青果の続きから、鮮魚、精肉が長方形の横正面一杯まで配置され、冷蔵平台什器も青果の平台に沿って置かれ、生鮮強化型のレイアウトとなっている。そして、長方形の反対側の縦の先頭に惣菜が配置され、レジへと続くレイアウトである。したがって、壁面は生鮮3品+惣菜となる。問題のPI値の高い日配であるが、鮮魚、精肉と向かい合う形で長方形の奥側の縦に和洋日配、冷凍食品、パンが配置され、ちょうど、長方形の奥の縦のゾーンは鮮魚、精肉、惣菜に日配が囲まれたゾーンとなっており、すっきりしたレイアウトとなった。そして、グロサリーであるが、縦長ということで、縦に10本ぐらい配置され、その結果、エンドが青果側に約10本、レジ側に約10本出来上がった。さらに、酒のコーナーはエスカレータ寄り、日配とは反対側の長方形の横にゾーン展開され、品揃えも充実したものとなった。これを売場の中央に立って、縦横斜めに見てみると、まさに食品スーパーマーケットとして理想的なレイアウトに仕上がったのではないかと思う。

   さらに、ここに、KY(価格安く)政策が商品の随所に導入され、食品スーパーマーケットの使命ともいえる、いかに、顧客の家計を助けるかという、ほとんどの重点商品での価格訴求が徹底したといえる。恐らく、これだけ、広い売場で、買いやすく、しかも、品揃えが豊富で、価格が安い食品スーパーマーケットは都心部の駅前立地では他にないといえ、この完成度が今後増してくれば、間違いなく、西友の食品は復活するのではないかという期待がもてる売場に仕上がったように思う。6月中旬の西友巣鴨店の全館リニュールオープンに期待したい。

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May 29, 2009

ユニバース、2009年4月期決算、増収増益、堅調!

   ユニバースが5/25、2009年4月度の決算を公表した。食品スーパーマーケット、上場企業約60社の中では4月決算はユニバースのみである。その結果であるが、売上高955.61億円(101.5%)、営業利益33.86億円(101.4%:売上対比3.5%)、経常利益34.79億円(101.5%:売上対比3.6%)、当期純利益18.77億円(136.2%:売上対比2.0%)となり、増収増益の堅調な決算となった。売上が101.5%となった要因は昨年8月に営業権を取得したマルエス主婦の店2店舗をUマートとして改装オープンしたことに加え、この4月に44店舗目となる紫波店(岩手県)を新規オープンしたためである。

   ユニバースは早くから、店舗の大型化に挑戦しており、44店舗の合計の売場面積は今期95,477平米であり、1店舗当たり2,170平米(658坪)となり、通常の食品スーパーマーケットが400坪前後であるので、全体として、一回り大きい売り場面積を誇っている。結果、売場、通路幅等ゆったりとれ、品揃えも豊富に揃えられ、大型カートでの買い物も可能である。したがって、まとめ買いの顧客も多く、結果、金額PI値(客単価)は今期2,192円となり、その中身はPI値(1人当たり買上点数)が1,160%(11.6個)、平均単価が188円となり、通常の食品スーパーマーケットよりも、PI値がかなり高いのが特徴である。チェーンストア全体の平均PI値が1,160%(11.6個)は極めて高い数字であり、通常は1,000%(10.0個)前後であり、最近では、900%(9.0個)ぐらいの食品スーパーマーケットも多い状況であり、ユニバースのPI値は極めて高い数値であり、マーチャンダイジング上の強みといえよう。

   そのマーチャンダイジング力であるが、今期の原価は74.46%(昨年73.55%)と、昨年と比べ約1ポイント弱上昇がみられる。これは、特に、昨年10月以降、消費環境が激変し、価格競争が激しくなり、ユニバースも段階的に価格を下げざるをえなくなったことが大きかったといえよう。ユニバースは当初は、「この価格のままでご奉仕します」というスローガンであったが、これが、「価格を引き下げ、ご奉仕します」に変わり、さらに、今年に入り、「安さに挑戦!家計応援価格」となり、1,800品目のプライスダウンを断行しており、これらを含め、昨年後半からの価格訴求が原価に影響を与えたといえよう。結果、売上総利益は25.54%(昨年26.45%)と下がり、昨年と比べやや厳しい粗利となった。一方、販売費及び一般管理費であるが、21.99%(昨年22.90%)と、原価とは反対に約1ポイント強改善が進んだ。

   したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は3.55%(昨年3.55%)となり、昨年と同じ比率となった。今期は原価の上昇分を経費の削減でカバーしたことになり、マーチャンダイジング力を維持した結果となった。また、昨年後半から、ユニバースがあいつで価格訴求が可能であった要因も、この経費比率の低さにあるといえ、平均658坪という大型食品スーパーマーケットとしては、21.99%は抑制された経費比率といえ、ここもユニバースの強さのひとつといえよう。ただ、通常は店舗面積が大きくなると、坪売上が下がり、経費比率が上昇傾向になりがちであるが、ユニバースは、全体の売上を引き上げ、経費を相対的に下げる方向を打ち出している。ユニバースの1店舗当たりの平均売上は今期21.7億円であり、これは通常の食品スーパーマーケットが15億円前後であるので、極めて高い売上といえよう。この売上の高さが、経費比率を引き下げる要因のひとつと考えられるが、今後、坪売上329万円をさらに、引き上げると、経費比率はさらに改善できるのではないかと思われ、まだまだ、経費比率の改善は可能なようにも思われる。

   一方、財務の方であるが、今期の自己資本比率は60.6%(昨年56.0%)と、昨年よりも改善している。その要因を負債面から見てみると、有利子負債が32.71億円(昨年51.27億円)と激減しており、総資産365.95億円に占める割合は8.9%となり、10%を下回り、有利子負債の削減が進んだ。実際、キャッシュフローの財務面を見ると、長期借入金の返済による支出が19.86億円と返済が進んでおり、しかも、昨年も21.71億円返済している。この2年間で約40億円、長期借入金を削減しており、結果、自己資本比率が60%台と安定的な数字となった。

   これに対して、出店にかかわる資産面であるが、土地、建物、差入保証金の合計は240.41億円(1店舗当たり5.46億円)となり、総資産の65.6%である。1店舗当たり、5.46億円は通常の食品スーパーマーケットと比べると、やや多い出店にかかわる資産であるといえるが、658坪という大型食品スーパーマーケットとして見ると、むしろ低い資産といえよう。結果、出店余力は-5.0%となり、ほぼ有利子負債の分がそっくり、マイナス分といえ、若干、負債に依存する出店構造であるが、来期も同様に有利子負債の返済が進めば、来期から出店余力はプラスに転じるので、来期以降は安定した出店余力を確保できることになろう。

   ユニバースは中長期的に年商1,200億円を目指しており、そのためには安定的な新規出店が不可欠であり、今後、さらに有利子負債を削減し、いかに自己資本比率を引き上げるかが財務的な経営課題といえよう。また、当然、1,200億円の年商を目指すには、M&Aも必要といえ、株価を引き上げ、企業価値を高めることも課題といえ、そのためにも、財務の安定化は不可欠である。

   このように、2009年4月度のユニバースの決算は増収増益となった。特に、後半以降の原価の上昇を、経費削減で乗り切り、マーチャンダイジング力を昨年同様に維持し、安定したキャッシュフローを確保した。結果、財務的にも有利子負債を削減し、自己資本比率を引き上げ、出店余力が増し、今後の安定した成長戦略を目指す基盤が整いつつあるといえよう。今後、ユニバースがいつ積極的な新規出店、そして、M&Aに打ってでるかに注目である。

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May 28, 2009

PLANT、中間決算、2009年9月度、増収営業増益!

   PLANTが5/18、2009年9月期の第2四半期の決算概要を公表した。すでに、4/30に決算短信を公表しているので、これが確定数字となる。その結果であるが、決算短信をもとに、決算概要も参考にしながら見てみたい。売上高426.02億円(111.0%)、営業利益4.87億円(129.8%:売上対比1.1%)、経常利益2.85億円(84.1%:売上対比0.7%)、当期純利益1.64億円(98.8%:売上対比0.4%)となり、増収営業段階までは増益であったが、経常利益、当期純利益は減益となった。特に、増収となった要因は、既存店は97.8%であるので、新店によるところが大きく、今期、3店舗、大熊店(福島県、2008年3月)、福知山店(京都府、2008年5月)、鏡野店(岡山県、2008年7月)の出店が寄与した。

   これを部門別に見ると、全体の66.2%の売上構成比を占めるフーズは113.1%(既存店100.4%)と好調であったが、24.5%の売上構成比のハウスキーピングニーズが全体は110.6%と新店効果により好調であったが、既存店が96.4%と、伸び悩んだ。また、売上構成比の4.2%のホームニーズは104.2%(既存店90.0%)、売上構成比4.3%のエンジョイニーズは92.9%(既存店79.4%)と、苦戦した。こう見るとPLANはますます食品の売上構成比が増しているといえ、業態はスーパーセンターであるが、食品が売上の根幹を占める、食品スーパーマーケットに近い業態であるといえよう。

   一方、利益の方であるが、原価は80.8%(昨年81.2%)と、0.4ポイント下がっており、原価の改善が進んでいる。結果、売上総利益は19.2%(昨年18.8%)と上昇しており、粗利が改善した。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、18.1%(昨年17.8%)と、0.3ポイント上昇し、差し引き、マーチャンダイジング力、PLANTの場合は営業利益と同じになるが、1.1%(昨年1.0%)となった。昨年よりは若干であるが、マーチャンダイジング力が改善した。ただ、まだ、1%前半であり、今後、いかに、マーチャンダイジング力を強化するかが、当面の課題といえよう。なお、営業利益は増益となったが、経常利益が減益となった理由は、シンジケートローン手数料が1.17億円計上されるなど、営業外費用が大きかったことによる。

   PLANTは今期、自己資本比率が16.7%と、極めて厳しい状況にあり、負債に80%以上依存する財務構造となっている。そして、その大半が有利子負債であり、その金額は、205.16億円であり、総資産369.03億円の55.6%にもなる。したがって、今期、支払い利息が1.93億円となり、先のシンジケートローンの手数料とともに、経常利益を圧迫し、営業段階での増益が、経常、当期純利益段階で減益となる要因となった。今後、多額の支払い利息を支払いながら、さらに元本の返済も重くのしかかっており、財務的には厳しい状況がつづくといえよう。

   ちなみに、出店にかかわる資産である、土地、建物であるが、169.74億円であり、総資産の45.9%である。この中には、差入保証金の明細が第2四半期決算では未公表であるので、わからないが、さらに、出店にかかわる資産に加算されるので、45.9%よりも大きくなるといえる。これを自己資本比率16.7%から差し引いた出店余力は-29.2%であり、極めて厳しい状況であり、負債、特に有利子負債に大きく依存した出店構造といえる。今期は、新店効果により、当面増収が続くと思われるが、今後の安定的な成長を維持してゆくにはかなり厳しい財務状況である。

   そこで、今期のキャッシュフローの流れを見てみると、営業キャッシュフローは2.1億円と極めて厳しい状況である。本来、キャッシュフローの流れは、マーチャンダイジング力の強化により、営業キャッシュフローを増やし、そこから投資キャッシュフローを賄い、さらに、その余力で、有利子負債の返済などを賄うのが理想であるが、この第2四半期のPLANTの営業キャッシュフロー2.1億円では、投資、財務両キャッシュフローを賄うには十分ではなく、厳しいキャッシュの状況である。したがって、投資キャッシュフロー、-8.8億円を賄うことができず、フリーキャッシュフローは-6.7億円となった。

   そして、財務キャッシュフローであるが、長期借入による収入172億円を計上し、ここから、有利子負債155.69億円を削減し、さらに配当0.67億円を行い、結果、15.63億円の財務キャッシュフローとなった。本来、営業キャッシュフローで賄うべきところを、財務キャッシュフローで賄っており、結果、有利子負債がさらに増加することになった。キャッシュフロートータルでは、8.93億円増加したが、その増加は有利子負債の増加によるものであり、財務的にはいっそう厳しい状況になったといえよう。

   このように、PLANTの今期の第2四半期決算の結果は増収、営業段階までは増益となったが、有利子負債が経営に重くのしかかっており、経常、当期純利益段階では減益となる厳しい結果となった。また、有利子負債がさらに増え、自資本比率も16.7%と厳しい状況となり、今後、新規出店による成長戦略を描くにはかなり厳しい状況となった。当面、いかに既存店の活性化を軌道に乗せるかが最優先の経営課題といえ、そのためにも、すべてのキャッシュの原点であるマーチャンダイジング力をいかに強化するかが課題といえよう。次の第3四半期決算において、どこまでマーチャンダイジング力が改善し、結果、財務内容が改善されるかに注目したい。

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May 27, 2009

DS好調、大黒天物産、2009年度、第3四半期決算!

   食品スーパーマーケットの2009年、2月度、3月度の決算の公表が終わったが、全体的に今期決算は増収減益が多かったのが特徴といえる。あと、2009年度で残っている決算は、4月度1社、5月度3社、9月度4社、そして、12月度1社であるが、その中で、5月度決算となる、大黒天物産の第3四半期が4/8に公表されているので、大黒天物産の今期決算を占う上で、見てみたい。特に、大黒天物産は、食品スーパーマーケット業界の中でもDS、ディスカウント業態であり、昨年後半から、消費環境が激変し、節約志向に本格的に突入した中でのDSの状況を見る上でも象徴的な食品スーパーマーケットといえよう。

   まず、大黒天物産の第3四半期決算、2008年6月1日から2009年2月28日までの結果であるが、売上高536.31億円(113.8%)、営業利益26.88億円(149.0%:売上対比5.0%)、経常利益26.54億円(149.6%:売上対比4.9%)、当期純利益14.05億円(147.8%:売上対比2.7%)と、増収増益の、しかも、大幅な増益となる好決算であった。また、残された、3ケ月を含む、通期予想であるが、売上高710.00億円(110.3%)、営業利益32.60億円(118.1 %:売上対比4.6%)、経常利益32.00億円(117.8%:売上対比4.5%)、 当期純利益17.00億円(120.6%:売上対比2.4%)と、同様に大幅な増収増益予想である。

   では、これだけ決算が好調な要因を営業構造から見てみたい。まず、原価であるが、76.9%(昨年76.8%)と、僅かではあるが上昇しているが、ほぼ同じ原価率といえよう。結果、売上総利益は23.1%(昨年23.2%)となった。一方、販売費及び一般管理費であるが、18.1%(昨年19.4%)と、1.3ポイントと大幅に下げており、激減している。結果、18%前半という、食品スーパーマーケットとしては、驚異的な経費比率となった。

   これだけ、経費比率が下がる要因としては、単純な経費の削減では難しいといえ、既存店の大幅な売上増による固定費の相対的な削減が寄与したのではないかと推測される。今期、大黒天物産の新店は移転、リニューアルを除くと、10月のラ・ムー米子北店、11月のラ・ムー赤穂店の2店舗であり、この決算時には全店52店舗であるので、売上113.8%は、既存店の押し上げが相当大きいと推測される。事実、大黒天物産は、この11月まで月別の売上速報を公表していたが、その11月度の売上速報では、全体の売上が110.2%、既存店が107.5%、累計では113.7%、既存店が104.8%という状況であり、前半よりも、後半の方が既存店の売上が伸びている状況であった。したがって、この第3四半期決算においても、既存店の売上の伸びは大きいと推測され、その結果、経費比率が18%台前半と驚異的な数字となったと推測されよう。

   結果、差し引き、マーチャンダイジング力、大黒天物産の場合は営業利益とイコールになるが、5.0%(昨年3.8%)と、5%台と高い数字を達成した。原価も通常の食品スーパーマーケットと比べると5%程度低いが、経費はさらに低い数字であり、この経費比率の低さが、DS、ディスカウントストアの最大の特徴といえ、結果、仕入コストを下げることはもちろん、粗利も下げて売ることも可能となり、競合店が太刀打ちできない圧倒的な価格差を出すことが可能となる。

   では、この結果、キャッシュフローがどのような状況であったかを見てみたい。まず、営業キャッシュフローであるが、18.68億円(昨年9.56億円)と、約2倍の営業キャッシュフローとなり、豊富なキャッシュとなった。その要因は、税金等調整前四半期純利益が26.46億円(昨年17.73億円)と、約10億円増加していることが大きい。こう見ると、やはり、キャッシュフローはマーチャンダイジング力にあるといえ、この数字をいかに改善するかが、食品スーパーマーケットにとっては最も重要な要素であることがわかる。

   次に、投資キャッシュフローであるが、24.24億円(昨年12.18億円)と、約10億円増加しており、今期は有形固定資産の取得による支出は8.03億円(昨年10.20億円)と昨年よりは少なかったが、定期預金の預入による支出が15.00億円(昨年0)と大きく、結果、フリーキャッシュフローは-5.56億円(-2.62億円)と昨年同様、マイナスとなったが、営業キャッシュフローが大きく増加し、定期預金へ大部分が移ったといえる。

   そして、財務キャッシュフローであるが、フリーキャッシュフローがマイナスとなり、現金及び現金同等物を14.92億円取り崩すことになったが、借入等は増やすことなく、逆に、長期借入金の返済6.39億円、配当金1.69億円、自己株式の取得1.1億円等に充てている。結果、自己資本比率は52.8%(昨年48.1%)と上昇しており、借入金比率が減り、財務的にも改善が見られた。

   このように、この第3四半期の大黒天物産の決算結果は絶好調であり、大幅な増収増益となり、特に、ディスカウントストアの本領でもある経費比率が18%台前半まで削減できたことが大きく、マーチャンダイジング力、大黒天物産の場合は営業利益とイコールであるが、5.0%となった。そして、これが、結果として、自己資本比率の改善にもつながり、財務の改善も進んだ。すでに、5月も残すところ数日であり、本決算に入ることになるが、今期、大黒天物産の決算はこの第3四半期決算同様、好決算が期待できよう。改めて、食品スーパーマーケット業界のDS、ディスカウントストアの好調さを裏付ける結果といえよう。

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May 26, 2009

コンビニ売上速報、2009年4月度、106.5%、堅調!

   コンビニの2009年4月度の売上速報が日本フランチャイズチェーン協会から5/20に公表された。この統計は、加盟11社、エーエム・ピーエム・ジャパン、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの売上を集計したものであり、総店舗数は42,070店舗にもなり、ほぼ、日本のコンビニ全体をカバーしている規模の数字である。その結果であるが、全体では106.5%、既存店も104.3%とtaspo効果が継続しており、依然として堅調な売上を維持している。

   ただ、この1年間の流れを見ると、昨年4月2.0 %、5月5.8%、6月6.4%、7月14.0%、8月7.5%、9月8.9%、10月10.5%、11月9.9%、12月8.5%、そして、今年1月9.6%、2月4.8%、3月6.5%、4月6.5%という状況である。7月は猛暑のため異常値であるが、これを除くと、ピークは10月の10.5%であり、その後、しばらくは10%弱で推移したが、ここへ来て、6.5%となり、徐々に失速しつつあるといえよう。当面、しばらくは、堅調な売上がtaspo効果により、継続されると思われるが、数ケ月後には、taspo効果も薄れ、低成長を余儀なくされる可能性が高く、この数ケ月がコンビニ、各社にとって、次の成長を目指す上の仕込み期間といえよう。

   この4月度の売上106.5%の要因を客数、客単価、そして、商品構成で見てみると、まず、客数であるが、1,122,636,000人(108.7%)と、大きく伸びている状況である。ちなみに、1店舗当たりでは889人であり、平均的な食品スーパーマーケットの約半分弱である。さらに、既存店の客数を見てみると、1,044,523,000人(106.4%)と、同様に大きく伸びており、全体の客数の伸びが既存店に支えられた伸びであることがわかる。まさに、taspo効果といえ、約40,000店舗全体の既存店を押し上げる結果となったといえよう。

   次に、客単価であるが、574.5円(98.0%)と下がっており、増加した客数が客単価の押し上げにはいたらなかったということであり、客単価には若干マイナスに働いたといえよう。これは、既存店の数字も同じ98.0%であるので、同様の結果であり、taspoの売上増効果は、客数に鮮明に表れ、客単価は逆に若干マイナスに作用したといえる。公表資料では、ここから先、すなわち、PI値、平均単価の状況はわからないが、おそらく、たばこ+アルファのtaspo関連の顧客が増加したと考えられるので、平均単価よりも、PI値ダウンの方が大きかったのではないかと想定される。

   そして、商品構成であるが、コンビニは日配食品、加工食品、非食品、サービスに分かれるが、この4月度の商品売上構成比はそれぞれ33.6%、29.6%、32.5%、4.3%であり、日配食品、加工食品、非食品が拮抗している状況である。ちなみに、たばこは非食品に入り、ここの数字がtaspo効果の反映される部門であるが、その伸び率を見ると、123.0%と異常値となっており、まさに、taspo効果がもろに現われているといえよう。その他の伸び率を見ると、日配食品99.1%、加工食品100.3%、サービス105.2%と、サービスは伸びているが、売上構成比はわずかであり、主力部門の日配、加工食品の伸びは全く見られないのが現状である。

   したがって、taspo効果を総括すると、既存店の客数を飛躍的に押し上げたが、その押し上げた新規顧客は、たばこ+アルファの消費しかしていない状況であり、主にたばこの売上がコンビニ全体の売上を底上げしている状況といえよう。少し、これは意外な数字であり、たばこの購入顧客はコンビニの商品をあまり買わない顧客ということになり、コンビニの客層と合わない、逆にいえば、コンビニの品揃えがtaspo顧客の消費動向と合わないということであろう。

   ここで、仮に、この非食品の増加分の大部分がたばこであると仮定すると、全体の売上が6,450億円であり、非食品の売上構成比が32.5%であるので、金額にして2,096.25億円となる。これが123.0%伸びた数字であるので、もとの数字は1,704.26億円である。したがって、差し引き、391.99億円がたばこの売上となり、これを単純に年間計算すると4,703.88億円となる。これが全額ではないにせよ、このかなりの部分が、本来自動販売機でたばこを購入していた顧客がコンビニで購入したことになり、自動販売機の売上が激減したといえよう。

   また、同様に、既存店の増加した客数をたばこ購入客と想定すると、既存店の客数は延べ62,753,000人、1日当り2,091,000人、約200万人が自動販売機から、コンビニに流れたことになる。この数字がすべて、taspo顧客ではないと思うが、かなりのボリュームが雪崩を打って自動販売機から、コンビニに流れたことは事実であり、コンビニにとってはこの1年間まさに特需、自動販売機は悪夢であったといえよう。

   このように、この4月度もコンビニの売上は既存店の客数、非食品の売上が大きく伸び、全体の数字が堅調に推移した。ただ、昨年のピーク時、10月度と比べると、伸び率は失速気味で推移しており、来月ぐらいからはtaspo導入1年を迎え始めるので、伸び率はさらに鈍化し、やがては、昨対ぎりぎりまで、下がることが予想される。その意味で、ここ数ケ月がコンビニにとって正念場といえ、各社がどのような経営戦略を打ち出すかに注目である。

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May 25, 2009

売上速報、食品スーパーマーケット4月度、102.2%!

   食品スーパーマーケット、上場企業約20社の2009年4月度の売上速報をまとめた。現在、食品スーパーマーケット業界では約60社が上昇しているが、その内、月度の売上速報を公表しているのは、約20社である。その結果であるが、単純平均で、102.2%と低調な数字となった。やはり、ここへきて、消費環境が大きく変化しており、さすがの食品スーパーマーケットも売上がやや厳しい数字となったといえよう。この数ケ月間の売上の推移をみると、3月度101.5%、2月度102.3%、1月度104.7%、昨年12月度104.0%、11月度106.2%、10月度103.9%であるので、今年に入り、低調な売上が続いているといえる。

   このような中で、110%以上の売上を達成した食品スーパーマーケットが3社あった。No.1はスーパーバリュー、113.7%(既存店101.3%)と絶好調であり、昨年11月の川口前川店、12月の入間春日町店の新店のオープンが大きく売上増に貢献しており、現在8店舗であるので、2店舗の新店は全体の売上を飛躍させる原動力となっている。また、スーパーバリューは既存店も101.3%と好調であり、既存店が100%を超えた食品スーパーマーケットはこの約20社のうち、わずか3社であり、この4月度は好調な売上であったといえる。その既存店が100%を超えた3社であるが、スーパーバリューに加え、九九プラス、106.1(既存店103.4%)、オオゼキ102.9%(既存店100.7%)の2社である。この3社のみが、この4月度、公表約20社の中で、既存店が100%を超えた食品スーパーマーケットであり、4月度は売上が厳しかったといえよう。

   次に、110%超え、No.2となったのはハローズであり、111.5%(既存店99.0%)と既存店はやや伸び悩んだが、全体の売上は好調であった。ハローズも昨年来新店が多く、昨年6月には四国、香川県1号店となるハローズ丸亀店、11月にはハローズ六条店、12月にはハローズ笠岡店、そして、今年に入り、2月にハローズ総社店、4月にハローズ岡南店と次々に新店をオープンしており、これら新店が全体を牽引し、好調な売上となった。当面、こられ新店の効果により、2桁の売上が維持されると思われる。今後は、いかに、既存店を活性化するかが課題といえよう。

   そして、もう1社、この4月度110%を超えた食品スーパーマーケットはマックスバリュ東海であった。111.3%(既存店94.2%)と、既存店はかなり厳しい状況となったが、全体の売上は昨年8月に吸収合併したシーズンセレクトの売上が貢献しており、全体の売上を押し上げたといえよう。マックスバリュ東海は売上以外にも、その中身である、客単価、PI値、平均単価を公表しているが、既存店の数字が伸び悩んだ要因は客数が99.3%であったのに対し、客単価が94.9%と大きく落ち込んだことが大きかった。特に、PI値96.1%、平均単価98.8%と、双方落ち込んでおり、今後、既存店の活性化が急務といえよう。

   こう見ると、食品スーパーマーケットの売上は新店かM&Aによる貢献が大きいといえ、今後、売上を引き上げて行くには、新店戦略をしっかり構築するとともに、さらに、M&A戦略をいかに進めるかが大きなポイントといえよう。

   一方、この4月度、全体の売上が95%を下回った食品スーパーマーケットが2社ある。マックスバリュ北海道91.9%(既存店88.7%)、マックスバリュ東北94.9%(既存店91.5%)である。どちらもマックスバリュグループであり、マックスバリュグループは、No.3のマックスバリュ東海113.3%(既存店94.2%)、No.4のマックスバリュ西日本107.1%(既存店98.7%)、そして、No.13のマックスバリュ中部101.6%(既存店96.9%)と、明暗が分かれており、東高西低の傾向が鮮明である。特に、マックスバリュ北海道、東北は既存店も88.7%、91.5%と厳しい状況であり、今後の動向が気になるところである。

   以下、No.4以下の4月度の食品スーパーマーケットを見てみると、No.4は先ほども言及したマックスバリュ西日本107.1%(既存店98.7%)、No.5ダイイチ106.3%(既存店98.1%)、No.6九九プラス106.1%(既存店103.4%)、No.7カスミ103.3%、No.8CFSコーポレーション食品部門103.3%(既存店95.9%)、No.9オオゼキ102.9%(既存店100.7%)、No.10PLANT102.6%(既存店93.0%)、同じくバロー102.6%(既存店97.3%)、そして、No.11ユニバース102.4%(既存店98.8%)であり、以上が、この4月度102.0%以上の食品スーパーマーケットである。さらに、101%まで見てみると、No.13マックスバリュ中部101.6%(既存店96.9%)、No.14マルエツ101.2%(既存店99.4%)、No.15イズミ101.0%(既存店95.0%)となる。

   このように、この4月度の食品スーパーマーケット上場企業で売上速報を公表している企業約20社の数字は、ここへきて、売上が伸び悩みはじめたといえる。特に、既存店の伸びがみられなくなり、それに加え、積極的な新規出店、M&Aを実施する食品スーパーマーケットが限られた企業のみになり、各社が投資を控えはじめたといえる動きが見える。今後も消費環境はより、厳しさが予想され、大手GMSが本格的な価格競争に走りはじめた。そして、これに対抗するディスカウント指向の食品スーパーマーケットが対抗価格を打ち出し、価格競争が全国的に激しさを増す中、既存の食品スーパーマーケットが苦戦しはじめたという構図となり、既存店が厳しい状況に追い込まれつつあるといえる。5月以降、売上、特に、既存店がどのような数字で落ち着くか、しばらくは予断を許さない状況が続くといえよう。

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May 24, 2009

酒類産業新聞700号でインタビュー記事掲載!

   昨年と今年、2回に渡り、酒類産業新聞から取材を受けた内容が5月臨時号、700号で6、7ページの2面に渡り、大きく取り上げられた。これほど、大きく取り上げられるとは思っていなかったので、びっくりである。見出しは、「本格的な価格競争に入ったスーパー業界と焼酎の役割」と題し、焼酎についてのインタンビュー内容である。焼酎に関しては、依然からチェンーンストアエイジでもPI値分析の記事を投稿しており、私にとっても関心の高いテーマである。記事の概要は、食品スーパーマーケット業界のここ最近の動向をもとに、GMSの本格的な価格戦略の発動、これがどのように、小売業界に影響を与えるかなどを述べた後に、焼酎について詳しく、現状と今後の動向を述べたものである。

   特に、今回は家計調査データの独自の分析結果をもとに酒全般と焼酎の特徴を解説しており、その一覧表も掲載されたので、焼酎だけでなく、酒全体についても現状を分かりやすく解説できたと思う。食品スーパーマーケット最新情報のブログではおなじみであるが、家計調査データは客数PI値を算出することができる。これは家計調査データを眺めていて偶然発見したことであるが、金額PI値(全世帯)=客数PI値×金額PI値(購入世帯)という、数式に分解でき、以前は、これを客単価3D分析の一歩手前として解説していたが、最近では、客単価3D分析を包み込む新マーチャンダイジング理論がほぼ確立したため、新マーチャンダイジング方程式の一環として説明している。

   ここでいう客数PI値とは、購入世帯数を全世帯数で割って算出した数字であり、金額PI値(購入世帯)が購入金額÷購入世帯であるので、この2つを掛けると、購入金額÷全世帯となり、全世帯を分母にした平均的な数字となる。したがって、全世帯には購入世帯も、未購入世帯も含まれているが、購入世帯には未購入世帯は含まれてはいず、その項目を消費した世帯のみの数字となる。

   そして、酒において、この客数PI値が重要な点は、酒類産業新聞でも述べたが、食品の中では唯一、客数PI値が極端に低くなる項目である点である。今回の記事のデータを見ても、食品全体の客数PI値は100%であり、食品を1ケ月に1度も購入しなかった世帯はない状況である。記事の中ではデータを省略しているが、食品の大分類はほとんどが90%を優に超える分類である。ところが、酒は客数PI値が58.8%と約6割であり、約4割は1ケ月に1度も酒を購入しない世帯が存在するのが実態である。これは食品スーパーマーケットの売場でみれば、酒のみ来店顧客の6割の方を対象としている商品であるということであり、来店客全員を対象にする他の商品はとマーチャンダイジングの仕方が違うということである。

   特に、酒の中でもウィスキー、ぶどう酒(ワイン)が極端に客数PI値が低く、これについで、発泡酒、焼酎、清酒と続き、最も高いのがビールとなる。ただ、それでも、ビールの客数PI値は25.0%であるので、けっして高い方ではない。ちなみに、このデータは家計調査データの数字であるが、これをID-POSデータ、新マーチャンダイジング方程式にもとづいて分析すれば、さらに詳細な動向がわかる。

   このような特徴を踏まえて、特に、焼酎についてみると、焼酎は甲類、乙類、混和にわかれるが、この3つの焼酎のマーチャンダイジングが全く違い、同じマーチャンダイジングでは売上を伸ばすことができないのが特徴であり、この点を詳しく、記事の中で解説した。酒類そのもののマーチャンダイジングが他の食品とは客数PI値の点で大きく異なる上に、さらに、焼酎では、もっとマーチャンダイジングが違ってくるので、この点をしっかり抑えた上でのマーチャンダイジングが必要になるという点である。

   いくつか記事の内容にそってポイントを述べれば、記事の小見出しがその特徴を述べているので、その小見出しを掲げてみると、「PB化で見直される本格焼酎」、「客数PI値は低いが商品へのこだわり強く」、「品揃えの深さが売り上げを左右」、「乙類へのシフトは混和の売り方次第」というものであり、今後の焼酎の鍵は乙類をいかに伸ばせるかにかかっており、そのためのポイントが混和の存在であるということである。事実、最近のデータでは混和の伸びはすさまじく、混和が焼酎全体の活性化に寄与しはじめているといえよう。ただ、混和で終わってしまっては焼酎全体は伸びず、全体を伸ばすためには、大容量低価格の甲類、甲類の低価格と乙類の本格焼酎の良さを兼ね備えた混和、そして、価格は高めであるが、本格的な香りを味わえる本格焼酎、乙類、特に、その品揃えがポイントであり、この3つのバランスをとりながら、混和をどう焼酎全体の活性化のキー商品に仕上げるかがポイントである、とまとめた内容である。

   それにしても、予想もしなかった大きな扱いであり、しかも、ほぼ、インタビューの内容を網羅しており、内容的にも焼酎の現状と今後をうまくまとめることができたと思う。機会があれば、是非、ご一読いただければと思う。

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May 23, 2009

日経MJ、新製品ランキング5/22、菓子100円の時代へ

   日経MJ、新製品週間ランキングが5/22公表された。先月からポテトチップスが絶好調であり、今週は何と、菓子部門ベスト4をカルビーのポテトチップス関連が独占した。その最大の要因は60gにあるといえ、容量を減らし、価格を100円以内に抑えたことであろう。ここ数年、菓子売場は100円コーナーが乱立し、各社が、100円均一に参入し、菓子は、この100円均一を中心に動いているといっても過言ではない状況であった。ところが、菓子部門の最重点商品のポテトチップスは、この100円にはまる商品がなく、微妙に100円を上回り、特売時のみ100円、あるいは、それ以下を小売り主導で打ち出していたのが実態であったといえよう。それが、ここへ来て、60gのポットチップスが開発されたことにより、この100円の値頃にぴたりはまり、今回の上位独占をもたらしたといえよう。

   その上位4品であるが、1位がカルビー、ポテトチップスうすしお味60g、金額PI値212円、2位が今週初登場の四季ポテトはましお味58g、金額PI値211円、3位がポトチップスコンソメパンチ60g、金額PI値168円、そして、4位が今週初登場の四季ポテト夏のバーベキュー味58g、金額PI値161円である。なお、60gは8位、18位に湖池屋、Mサイズポテトチップスのり塩60g、金額PI値106円、Mサイズポテトチップスうすしお味60g、金額PI値77円も入り、ここへ来て、60g、100円以下がポテトチップスの攻防戦となってきたといえよう。

   菓子部門についで、今週の注目ポイントは、その他食品部門である。1位に先週同様、日清食品、カップヌードル77gが入った。カップヌードルは昨年はPBにおされ、重点商品から外れることが多かったが、ここへきて、今回のリニューアルの新製品が好調といえ、重点商品に返り咲けるかどうかが気になるところである。ただ、カバー率はさすがに96.4%と対象45チェーン、250店舗のほとんどに入ったが、金額PI値390円と先週比152円のダウンであり、どの辺で落ち着くかが課題といえよう。また、これはまさに新製品であるカップヌードルのしお76gが先週36位から、今週10位へと躍進し、金額PI値156円で入っており、先週比も50円アップであり、どこまで順位を上げるかが興味深いところである。

   さて、今週の全新製品の中でNo.1であるが、飲料部門の森永乳業、まきばの空1,000ml、金額PI値1,773円であり、ダントツである。No.2が同じく飲料部門の日本コカ・コーラ、爽健美茶2L、金額PI値649円であるので、1,773円がいかに高いかがわかる。PI値を逆算すると、平均単価が162円であるので、1,773円(÷1,000人)÷162円=1.09%であり、1%を超える水準である。1%以上の商品は食品スーパーマーケットの約10,000品の中に、生鮮食品を含め200品ぐらいしかないので、この数字は新製品としては、異常値といえ、最重点商品として導入したい数字である。

   ただ、カバー率が35.7%と小さいが、これは、牛乳のカテゴリーにはPI値1%以上の商品が3から5品あるため、バランスを考えた上でのバイヤーの判断が働いているためと思われる。まさに、これは、CRMのテーマといえ、まきばの空が既存商品とどのような相関関係にあるか、ID-POSでの分析をし、判断すべき課題といえよう。仮に相関が弱ければ、導入することにより、牛乳の全体の売上が上がる可能性があるといえよう。

   そして、No.3は冷凍食品部門の味の素、ギョーザ12個、金額PI値592円である。2/19初登場の新製品であるが、先週比87円と、この時点でも金額PI値が上昇しており、しかも、500円を超えるAランクは冷凍食品としては極めて高い数字である。味の素の冷凍食品は冷凍食品部門2位、3位も独占しており、プリプリのエビシューマイ12個156g、金額PI値361円、カップに入ったエビのグラタン4個120g、金額PI値286円が入った。

   No.4は麒麟麦酒、フリー350ml、金額PI値547円であり、先週比201円のダウンが気になるが、カバー率は92.4%と高い数字である。そして、No.5は日本コカ・コーラの爽健美茶500mlペットボトルが入った。以上が、金額PI値Aランクの500円を超える今週の全新製品である。こう見ると、今週の新製品の中では、飲料の金額PI値が全体的に上がってきており、やはり、気温の上昇を踏まえた飲料の季節となってきたといえよう。今週登場の新製品も4品と菓子の6品についで多く、今後、飲料の動向には注目といえよう。

   このように今週の新製品は菓子部門のポテトチップスがカルビー、湖池屋ともに満を持してといって良いと思うが、60g、100円に参入し、いよいよ、菓子部門は100円均一の本格的な時代へと突入したといえよう。この火付け役となったのは、ダイソーなどの100円ショップであったといえるが、食品スーパーマーケットも菓子部門に関しては100円均一コーナーが好調であり、今後、ポテトチップスがこのプライスラインに参入したことにより、さらに、活性化するのではないかと思う。それにしても、100円が食品スーパーマーケットにとって極めて重要なプライスラインであることが、改めて実証されたといえよう。

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May 22, 2009

スーパー大栄、2009年3月決算、増収増益、当期減益!

    食品スーパーマーケットの3月度、上場企業、最後となるスーパー大栄の決算が5/18、公表された。食品スーパーマーケット業界の上場企業は約60社であるが、その約70%は2月度決算である。3月度は、今回のスーパー大栄を含め9社であり、約15%である。そのスーパー大栄の決算結果であるが、売上高298.39億円(103.8%)、営業利益3.19億円(135.4%:売上対比1.06%)、経常利益2.74億円(152.8%:売上対比0.91%)、当期純利益1.39億円(66.1%:売上対比0.46%)と、増収増益の好決算となったが、当期純利益は投資有価証券の評価損、固定資産の減損処理などがあり、減益となった。

   特に、今期は営業利益、経常利益が2桁を超える大幅な伸びを示している。ただ、売上対比で見ると、率は約1%であるので、もう少し、率を引き上げたいところである。その利益の構造であるが、今期の原価は78.6%(昨年78.6%)と、昨年同様の原価となった。今期決算企業の多くが原価上昇がみられる中、昨年同様の原価を維持し、結果、売上総利益は21.4%(昨年21.4%)となった。この数字を見ると、かなり、粗利が低く、ディスカウント傾向が強いといえよう。実際、ここ最近のスーパー大栄は、生鮮ディスカウント業態の「鮮ど市場」を主体に新規出店しており、平成15年以降、すべて、新店は「鮮ど市場」での出店である。昨年も8月に「鮮ど市場上津店」を新規出店した。

   一方、経費の方であるが、今期の販売費及び一般管理費は、21.7%(昨年22.0%)と0.3ポイント改善しており、経費の削減が進んだ。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-0.3%(昨年-0.6%)と、依然としてマイナスではあるが、その幅は縮まっており、今後、どこまで、マーチャンダイジング力を改善できるかが、利益のさらなる上昇につながろう。ただ、この経費比率21.7%はかなり低い数字であり、今後、マーチャンダイジング力を引き上げるには、経費そのものを削減するよりも、売上、特に、坪売上を引き上げ、固定費を相対的に削減することがポイントであるといえよう。

   そして、これに、営業収入が1.4%(昨年1.4%)のり、最終的に営業利益が1.1%(昨年0.8%)となり、売上103.8%とあいまって、営業利益が大幅な増益となった。こう見ると、営業利益は確かに、昨年対比では、大幅な増益であるが、その中身は、マーチャンダイジング力のマイナスを不動産収入等でカバーしての数字であり、しかも、営業利益率は約1%であり、今後、さらに、マーチャンダイジング力の改善が課題といえよう。

   では、今期のスーパー大栄の財務面を見てみたい。まず、自己資本比率であるが、34.0%(昨年31.6%)と、昨年よりは若干増加しているが、30%強と、負債に70%弱依存している財務構造であり、厳しい状況といえよう。スーパー大栄の自己資本比率は、ここ5年間の推移を見ても、30%前後で推移しており、自己資本比率の改善が今後の大きな経営課題である。

   その負債面であるが、有利子負債の状況を見ると、36.90億円(昨年43.95億円)と、昨年よりも約7億円削減されているが、総資産110.86億円に占める割合は33.2%と、ほぼ自己資本と同じ比率であり、有利子負債が経営に重くのしかかっている状況といえる。したがって、食品スーパーマーケットにとって、最も重要な経営戦略、出店戦略であるが、出店にかかわる資産が79.35億円と総資産の71.5%となり、ちょうど、自己資本+有利子負債比率でバランスが取れる構造となっており、差し引き、出店余力は-37.5%と大きくマイナスの状況である。出店が負債に大きく依存する財務構造であり、今後、安定的な新規出店を果たしてゆくには、自己資本比率の充実が今後の大きな経営課題であるといえる。

   そこで、今期のキャッシュフローを見てみると、営業キャッシュフローは7.58億円(昨年-0.08億円)と、昨年からは大幅に増加している。ただ、その中身は、当期純利益、減価償却費が大きく増加したわけではなく、昨年は仕入債務の減少が-5.97億円と大きく、今期は0.11億円となったことが大きかったといえる。そして、投資キャッシュフローであるが、-3.56億円と新規出店がらみと思われる有形及び無形固定資産の取得による支出が5.55億円ある。結果、フリーキャッシュフローは4.02億円のプラスとなり、好決算がキャッシュフローを順流にもたらしたといえよう。ただ、財務キャッシュフローが長期借入金の返済14.85億円が大きく響き、-7.44億円とフリーキャッシュフローを大きく超え、結果、現金及び現金同等物を3.42億円とり崩すという結果となった。負債依存度の高さが、キャッシュフローを圧迫しており、今後、自己資本比率の改善は、スーパー大栄にとって、重要な経営課題である。

   このように、今期のスーパー大栄の決算は、当期純利益は減収となったものの、営業、経常段階では、2桁の増益となり、好決算であった。ただ、自己資本比率が30%台と、負債に大きく依存する財務構造が続いており、新規出店が安定的には難しい状況であるといえる。また、増益にはなったが、依然として、売上対比の営業利益率は約1%であり、今後、いかにマーチャンダイジング力を引き上げ、営業利益率を2%、そして、3%台へ引き上げてゆくことも必要といえよう。来期も厳しい経営環境が続くが、スーパー大栄のマーチャンダイジング力の動向に注目したい。

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May 21, 2009

ヤマナカ、2009年3月期決算、増収減益、厳しい決算!

   ヤマナカが5/1、2009年3月期の決算を公表した。結果は営業収益1,149.01億円(102.5%)、営業利益9.69億円(80.8%:営業収益比0.84%)、経常利益11.55億円(82.6%:営業収益比1.00%)、当期純利益-2.08億円と、増収とはなったが、減益、特に、当期純利益は厚生年金基金脱退に伴い、特別掛金11.20億円の特別損失の計上が響き、赤字決算となった。ヤマナカは食品スーパーマーケット以外に、スポーツクラブ事業、その他事業を連結しているが、その売上構成比は10%以下であり、食品スーパーマーケット70店舗の展開が事業構造の中心である。

   ヤマナカが今期、減益になった要因であるが、原価が74.8%(昨年74.7%)と、約0.1ポイント上昇している。今期は特に、後半、小売業全体が空前の価格競争に突入し、さらに、地元愛知県ではトヨタ自動車をはじめ、現地産業が厳しい経営に陥るなど、ヤマナカのドミナト商圏、愛知県は価格競争が厳しかったといえよう。ヤマナカも、「節約志向・低価格志向に対応し、「チャレンジプライス商品」としてお買い得品を増やすとともに、「価格変えません厳選200品目」や「生活応援 値下げ宣言」と銘打ち、生活必需品を中心にお値打ち品を提供し、・・」と、価格政策を強く打ち出したという。その結果の今期の原価であるが、0.1ポイントの上昇にとどめており、善戦といえよう。したがって、売上総利益は25.2%(昨年25.3%)となった。

   一方、経費面であるが、今期の販売費及び一般管理費は29.0%(昨年28.8%)と、0.2ポイント上昇した。人件費の上昇に加え、地代家賃、水道光熱費、減価償却費の上昇がみられる。既存店が98.7%にとどまったことも、相対的に固定費を上げる要因となったことも大きかったといえよう。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-3.8%(昨年-3.5%)と、マイナス幅が広がった。この数字を見る限り、食品スーパーマーケットとしては、経費比率が30%近い、高い数字であり、逆に、売上総利益が25%前半と低い数字であり、本来、正反対の数字が食品スーパーマーケットとしては、望ましいといえ、まずは、経費構造をいかに見直すかが喫緊の課題といえよう。

   そして、これに、営業収入が4.7%(昨年4.6%)のり、最終的に営業利益は0.9%(昨年1.1%)とプラスにはなったが、1%を切る厳しい状況であり、しかも、営業収入でマーチャンダイジング力を大きくカバーする営業構造といえ、食品スーパーマーケットというよりも、GMSに近い営業構造といえよう。

   ちなみに、食品スーパーマーケットのみの個別決算のマーチャンダイジング力、営業利益の構造であるが、原価77.5%(昨年77.5%)、売上総利益22.5%(昨年22.5%)、販売費及び一般管理費26.1%(昨年26.1%)、結果、差し引き、マーチャンダイジング力は、-3.6%(昨年-3.6%)である。一方、営業収入は4.4%(昨年4.5%)であり、営業利益は0.8%(0.9%)であり、さらに、粗利が下がり、食品スーパーマーケットとしては、かなり低い粗利構造であり、ディスカウント業態に近い、価格志向のマーチャンダイジングを強く打ちだしているといえよう。

   一方、さらに気になるのは財務面であり、特に、自己資本比率が32.8%(昨年38.7%)と30%台である点である。ヤマナカの自己資本比率は過去5年間30%台であり、負債に大きく依存する経営が続いており、苦しい財務状況である。その負債の有利子負債の状況であるが、198.18億円(昨年210.13億円)と昨年よりも若干削減されてはいるが、総資産473.33億円に占める割合は41.8%と重くのしかかっており、有利子負債をいかに軽減するかが大きな財務問題であり、経営課題といえよう。

   したがって、出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金の合計は306.95億円となり、これは総資産の64.8%となる。したがって、差し引き、出店余力、自己資本比率-出店にかかわる資産は、-32.0%と、負債に大きく依存する出店構造であり、しかも、その大半を有利子負債に負う状況といえよう。今後、安定した成長戦略をとってゆくには、かなり、厳しい財務状況といえ、いかに、有利子負債を削減し、自己資本比率を向上させるかが、急務といえよう。

   今期のキャッシュフローを見ると投資キャッシュフローでは、新規出店のためと思われる有形固定資産の取得による支出を16.13億円(昨年13.85億円)しており、新規出店への備えは積極的である。ただ、今期は特に、営業キャッシュフローが12.24億円(昨年18.40億円)と厳しい状況であり、しかも、財務キャッシュフローも-14.54億円(昨年-7.75億円)と有利子負債の削減、配当等がかさみ、結果、現金及び現金同等物を13.77億円取り崩すという状況である。今後、有利子負債を削減し、安定した成長戦略を描く上においても、マーチャンダイジング力の改善により、営業キャッシュフローをいかに充実させるかが課題といえよう。

   このように、今期、ヤマナカは特損が響き、当期純利益が赤字決算となる厳しい状況となった。ただ、特損は一時的なものであるが、現状のマーチャンダイジング力、出店余力を見る限り、構造的に厳しい状況にあるといえよう。今後、ヤマナカとしては、まずは、マーチャンダイジング力の充実、特に、食品スーパーマーケットの競争が厳しく、粗利が取りにくい経営環境の中、経費構造をどう見直すかが利益を捻出するための課題といえよう。そのためには、既存店の数字の引き上げが最優先課題といえ、今後のヤマナカの既存店の動向に注目したい。

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May 20, 2009

バロー、2009年3月期決算、増収減益、個別も同様!

   バローが2009年3月期の決算を公表した。バローは食品スーパーマーケットを主体とした企業ではあるが、傘下に子会社18社、関連会社4社、関連会社の子会社1社で構成される一大企業グループである。そのグループには、食品スーパーマーケットをはじめ、食品メーカー、不動産業などをかかえ、さらに、小売業でも業種が多岐に渡り、ホームセンター、ドラックストア、スポーツクラブなどがある。そこで、本ブログでは、連結決算よりも、個別決算、すなわち、食品スーパーマーケットとホームセンターを中心に今期決算を見てゆきたい。

   まず、連結決算の結果であるが、営業収益3,363.42億円(105.8%)、営業収入97.95億円(93.4%:営業収益比2.9%)、経常利益101.86億円(94.0%:営業収益比3.0%)、当期純利益33.87億円(81.9%:営業収益比1.0%)と、増収減益となった。また、本業の個別決算は、営業収益2,261.14億円(105.1%)、営業利益52.95億円(84.1%:営業収益比2.3%)、経常利益64.20億円(88.1%:営業収益比2.8%)、当期純利益24.98億円(85.8%:営業収益比1.1%)と、同様に増収減益となる、厳しい決算となった。連結、個別を比較すると、営業収益比で67.2%、営業利益で54.0%となるので、個別の位置づけは、今期、約70%の売上で約50%の利益を生み出しているという状況といえ、個別の本業の方がやや利益が厳しかったといえよう。

   そこで、個別の営業利益が減益となった要因を見てみたい。まず、原価であるが、75.25%(昨年75.45%)と、0.20ポイント削減された。結果、売上総利益は24.75%(昨年24.55%)と上昇した。今期、バローは新規PBとして、Vセレクト、Vクオリティ、Vオーガニックを2008年4月に立ち上げ、6月にはPBを統括する子会社Vソリューションを設立しているが、これらのPBが原価を引き下げた要因のひとつであろう。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、27.85%(昨年26.57%)となり、経費が1.28ポイントと大幅に増加している。特に、配送費、人件費、賃借料、減価償却費などに増加が見られる。

   結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-3.10%(昨年-2.02%)と1.08ポイント下がっており、しかも、-3%台とかなり、大きなマイナスである。原価は改善できたが、経費が上昇したことにより、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力がマイナスとなった状況である。これに不動産賃貸収入、運送収入等の営業収入が5.63%(昨年5.18%)のり、結果、営業利益は2.53%(昨年3.16%)と、プラスにはなったが、経費増が大きく、昨年よりも下がり、売上増でカバーできなかった状況である。ちなみに、不動産収入と運送収入であるが、今期の数字は運送収入の方が大きく、営業収入の中で57.4%と約60%弱であり、運送収入の利益貢献度が高いといえよう。

   営業構造を見る限り、バローはGMSによく似た構造であり、マーチャンダイジング力、特に、経費増によるマイナスを多額の営業収入でカバーするという構造である。ちなみに、営業関連の収入を比較すると、売上高104.6%、不動産賃貸収入113.0%、運送収入114.5%となり、伸び率で見ると、運送収入の伸びが大きく、ついで、わずかな差で不動産賃貸収入であり、バローの営業利益への営業収入、特に、運送収入の貢献度が大きくなりつつあるといえよう。

   一方、少し気になるのが財務面、特に自己資本比率である。今期の個別の自己資本比率は34.7%(昨年36.4%)と、30%台であり、連結では32.0%(昨年32.4%)と、さらに低い点である。約70%が負債に依存している財務構造といえ、今後、この自己資本比率をいかに引き上げるかが優先度の高い経営課題であるといえよう。

   では、その約70%を占める負債の構造であるが、特に、有利子負債の状況を見ると、今期は534.01億円(昨年445.97億円)という状況であり、昨年よりも約90億円増加しており、総資産1,291.52億円に占める割合は41.3%とかなりの比重を占めている点である。したがって、食品スーパーマーケットにとって、最も重要な出店構造を見ると、まず、出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金の合計は645.33億円となり、これは総資産の49.9%となり、自己資本比率を大きく超える状況となる。ここから、差し引き、出店余力を見ると、自己資本比率-出店にかかわる資産は、-15.2%となり、負債に依存した出店構造であり、今後、安定した新規出店を図ってゆくには、厳しい財務構造といえよう。

   このように、今期、2009年3月期のバローの決算は、連結、個別ともに、増収減益という厳しい決算となり、借入依存度が総資産対比で49.9%となり、自己資本比率も30%台と財務的にも厳しい状況である。ただ、来期の個別の通期予想は営業収益3,590.00億円(106.7%)、営業利益107.00億円(109.2%:営業収益比3.0%)、経常利益108.00億円(106.0%:3.0)、当期純利益38.00億円(112.2%:営業収益比1.0%)と増収増益予想であり、今期の状況が一転する好決算が予想される。現状の厳しい状況を改善するためにも、まずは、マーチャンダイジング力、特に、今期、上昇した経費比率をいかにおさえ、プラスに近づけるかが喫緊の課題といえよう。今後、バローがどのようにマーチャンダイジング力を改善してゆくかに注目したい。

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May 19, 2009

ヤマザワ、2009年3月期決算、増収減益、厳しい決算!

   ヤマザワが5/13、2009年3月期の決算を公表した。結果は、売上高911.78億円(100.2%)、営業利益22.31億円(87.6%:売上対比2.4%)、経常利益22.68億円(88.2%売上対比2.5%)、当期純利益7.89億円(52.3%:売上対比0.9%)と、増収、大幅な減益となる厳しい決算となった。なお、個別決算も、営業収益808.33億円(100.2%)、営業利益21.12億円(79.3%:営業収益比2.6%)、経常利益21.51億円(79.8%:営業収益比2.7%)、当期純利益9.40億円(64.0%:営業収益比1.2%)であり、同様に大幅な減益であり、今期は厳しい決算となった。ヤマザワは子会社にドラックのヤマザワ薬品、惣菜、日配等の商品供給を行うサンコー食品があるが、連結、個別どちらも厳しい状況であり、特に、今期は食品スーパーマーケットが厳しい状況であったといえよう。

   では、減益となった要因はどこにあったかを、連結決算で見てみたい。まず、原価であるが、71.8%(昨年71.4%)と0.4ポイント上昇している。このひとつの要因は、今期、ヤマザワは販促面に力を入れており、生活応援セール(月間特売)、月のはじめの元気市(イベント)、おどろきのびっくり価格(超特売)、水曜均一セール(均一)、メーカー値上げ対抗の価格凍結に加え、今期からは新たに8の日のヤマザワハッピーDayを実施するなど、販促面が強化された。この中には、メーカーとタイアップし、原価を下げられる企画もあるが、ヤマザワが自ら原価を下げざるをえない企画もあり、これらが原価を圧迫した要因も大きいといえよう。

   また、ヤマザワはポイントカードの活用に積極的であり、すでに、約60万人のIDカードを保有している。店舗数が60店舗であるの、1店舗約1万人のIDとなり、この顧客への特別値引きも大きいといえよう。今期、ポイント費用引当金繰入額は3.65億円(昨年3.38億円:107.9%)と増加しており、売上に占める割合は0.4%であり、原価に直接反映されることはないにしても、間接的に、ポイントカードの顧客がセール品の購入比重が増加すれば、結果として、原価を引き下げる要因となろう。

   一方、経費の方であるが、今期は25.8%(昨年25.3%)と、こちらも0.5ポイント上昇しており、原価と合わせると、0.8ポイントの上昇となった。原価、経費ともに上昇がみられ、ダブルで粗利を引き下げており、結果、売上総利益は28.2%(昨年28.6%)となり、ここから、差し引き、マーチャンダイジング力=営業利益は、2.4%(昨年3.3%)となり、昨年と比べ大幅なダウンとなった。特に経費面では先ほどのポイントカード関連も大きいが、光熱費等の上昇も見られる。

   ちなみに、ヤマザワの今期の単体の部門別の原価を見ると、生鮮食品は過去3年間で最も低い数字であり、結果粗利率は29.4%と高め水準であった。ただ、これ以外のすべの部門の原価上昇がみられ、特に、販促と密接に絡む、売上構成比も高い日配食品、加工食品の原価上昇が大きかったといえよう。

   では、財務面の方であるが、今期の自己資本比率は62.7%(昨年62.4%)と0.3ポイント上昇している。今期は厳しい決算であったにも関わらず、自己資本比率は上昇しており、しかも、60%を超えるという食品スーパーマーケットとしては安定した数字である。その要因を負債面、資産面から見てみると、まず、負債であるが、固定負債が削減されており、特に、長期借入金が昨年は5.0億円であったが、今期は0となり、有利子負債は短期のみに絞られた形である。その短期の有利子負債であるが、20.50億円(17.78億円)と若干増加、長期合計では20.50億円(昨年22.78億円)と削減している。したがって、有利子負債は削減され、総資産397.88億円の5.2%と経営には大きな負担とならない状況となった。

   これに対して、資産面であるが、特に、食品スーパーマーケットにとって、最も重要な出店にかかわる資産、土地、建物、敷金及び保証金の合計であるが、269.21億円(昨年254.58億円:1店舗当たり4.48億円)と、昨年よりも若干増加しているが、総資産に占める割合は67.7%とやや重い状況である。したがって、自己資本比率が62.7%と高いにもかかわらず、差し引き、出店余力は5.0%と、ちょうど、有利子負債5.2%分、負債に依存する出店構造となっているが、ほぼ、自己資本の範囲内での出店が可能な状況といえよう。したがって、マーチャンダイジング力が改善し、営業利益がプラスに転じれば、ほぼ自己資本の範囲内で新規出店が可能財務構造となろう。

   ちなみに、今期のキャッシュフローの投資面を見てみると、出店にかかわる投資といえる有形固定資産の取得による支出は26.80億円(16.39億円)と大きく増加しており、今後、出店を増やしてゆくものと思われる。ただ、来期の通期予想は利益の回復は予想されるもの売上は100.4%であるので、依然として、成長は厳しい状況が続くと思われる。

   このようにヤマザワの今期決算は増収とはなったが、伸び率はわずかであり、しかも、大きく減益となる厳しい決算となった。特に、原価、経費双方の上昇がみられ、ダブルでマーチャンダイジング力を引き下げている。売上が厳しい状況の中で、原価、経費が上昇するという局面にあり、まずは、既存店の活性化が先決であろう。既存店の数字を引き上げる中で、相対的に固定費を削減し、その後、原価の改善に入るということになろうか。いずれにいせよ、来期も厳しい消費環境が予想され、今後、ヤマザワがどのような経営戦略を打ち出すかに注目といえよう。

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May 18, 2009

Chain Store Age、5/15号、ガムのPI値分析記事を投稿!

   チェーンストアエイジ、5/15、最新号にガムのPOSデータ、PI値分析を投稿した。前回、4/15号ではそのさわりのコラムを投稿したが、その続編である。POSデータはTOPNAVI-NET提供の約400店舗の1年間の膨大なデータである。1年間のデータを分析するのはかなりボリュームがあり、まとめるのにひと苦労した。客数(レシート枚数)も延べ、約2億6千万人であり、これだけの客数でのPI値分析は初めてである。述べ1億人までは経験があるが、2億人以上は私にとっても未知の世界であり、それなりの結果がでるのか不安だったが、これまでの数ケ月ぐらいの分析よりも、より安定したPI値分析の結果となったと思う。

   今回は、特に、ガムのベストバランスというキーワードがテーマである。述べ客数が約2億6千万人ということでもあり、まさに、現状の日本の消費者のガムの消費実態を表しているといえ、ここから得られるPI値分析結果は、ガムのマーチャンダイジングを考える上において基盤となる結果を導けたのではないかと思う。ちなみに、ここでいうベストバラスとは、重点商品と品揃えのバランスに加え、新商品と定番商品のバランスのことである。今回の投稿記事の最後に、そのベストバランスのイメージ図を数値を加えて示しているので、これをもとに、現状のガム売場との比較をすると、今後のマーチャンダイジングの改善に即つながると思うので、ぜひ、実践に活用して欲しいところである。

   今回は、さらに続編が続く予定であり、実際のガム売場のチェーン店での分析をする試みである。現在、そのチェーン店を投稿記事の中にもあるが、募集しており、私が自ら、PI値分析をさせていただくので、ぜひ、興味のあるチェーンのバイヤー、店長の方は検討してみていただければと思う。もちろん、ベースは、今回の結論、ガムのベストバランスと比較し、その違いを明確にし、さらに、数値改善ができるマーチャンダイジングの仮説を導き、実際に検証してみる予定である。

   そのため図1の恒例の重点商品を導くPI値分析の一覧表をより、詳しく解説しているので、参考にして欲しい。今回は特に、新商品とのベストバランスということもあり、各ランクごとの新商品の内訳を明示しているので、新商品と各ランクの中での位置づけ、そして、全体の中での位置づけがよく理解できると思う。

   結論からいうと、ガムの重点商品は約500品強の中でわずか27品であり、その売上構成比(金額PI総店)は39.7%、約40%であるということである。しかも、この中に10品新商品が入っており、新商品を重点商品の中でどう位置づけるか、そのバランスが極めて重要であるいうことである。さらに、残り、約60%は品揃え商品であり、しかもその品揃えは膨大な数があり、その膨大な品揃えから、新商品を含めて、限られた売場スペースの中でどこまで品揃えするかがポイントとなる。そして、その入れ替えをどのくらい、どのようなタイミングで実施するかが、もうひとつのポイントであり、その最適バランスを追求することが、まさに、ガムのマーチャンダイジングそのものであるということである。

   今回の投稿記事の中に、ABCランクの重点商品全品を図2で掲げているので、参考にしていただければと思う。この重点商品のリストと現状の売場を照らし合わせるだけで、簡単なガムの診断もできるので、即、実践に活かして欲しいと思う。いくつか注意点であるが、本文の中でも触れているが、Aランクが客数PI値、金額PI扱店最高の商品であり、見事に、ボトルガムのオンパレードである。ガムは金額PI値で見る限り、完全にボトルガムの市場となったといえよう。

   ちなみに、5/15の日経MJに、「やわらかガム若者つかむ、ロッテ、「フィッツ」5割増産」という見出しの記事が掲載された。そのフィッツが同じ、日経MJの新製品週間ランキングに載っているが、金額PI値は121円であり、発売当日が、200円強であった。今回の図2の重点商品の数字と比べると、200円はトップクラスであり、121円はやや重点商品を下回る数字であるが、新商品としては勢いのある数字であり、今後、増産がはじまり、金額PI値200円前後で落ち着けば、Aランクに入ることが予想される現状といえよう。

   そして、図3では、冒頭にも述べたが、今回のPI値分析結果を踏まえて、ガムのベストバランスのイメージ図を掲げてあるので、現状のガムのマーチャンダイジングをこれをもとに、自社のデータと照らし合わせて比べてみて欲しい。素直にPI値分析のデータを解釈すると、このようなイメージに自然落ち着くのではないかと思う。

   このように、今回のチェーンストアエイジのPOSデータのPI値分析はガムの過去1年間を取り上げてみたが、膨大な新商品が毎月毎月登場するガム市場であるが、新商品に目を奪われると、顧客が安定的にリピート購買している重点商品の管理がおろそかになり、結果、ガムの売上を落としかねないことになる。マーチャンダイジングはバランスが命であり、再度、今回のガムのPI値分析結果をもとに、自社のマーチャンダイジングの最適バランスを導き出し、数字改善につなげてもらえればと思う。

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May 17, 2009

日経MJで第三のビールを特集、節約志向に乗る!

   日経MJ、先週5/11号で、第三のビールの特集記事が組まれた。バイヤー調査、ヒット分析という特集記事であり、見出しは、「のどごし<生>が圧倒、ブランド力など高評価」であり、84社のバイヤーアンケートをまとめたものである。内容は、大きく2つに分かれ、ブランド採点表とメーカー採点表にまとめられている。その結果、ブランド採点表では、のどごし<生>(キリンビール)が332点でトップ(満点は420点)、メーカー採点表ではアサヒビールが289点でキリンビールの287点と小差でトップとなった。

   ここ最近、第3のビールは絶好調であり、POSデータで見ると、発泡酒を抜き、ビールにつぐ数字となっている食品スーパーマーケットもあり、極端なケースでは、ビールをも上回る場合すらある。各社も、ここに照準を絞って力を入れており、新商品があいついで投入され、TVCMに積極的である。
第三のビールが伸びた最大の要因は、日経MJでも指摘しているように、節約志向の高まりから価格が安い第三のビールに需要がシフトしたとうのが正解であろう。実際、実勢価格を代表的な350ml×6缶パックで見てみると、ビールが1,100円ぐらいであるのに対し、発泡酒は750円ぐらい、そして、第三のビールは650円ぐらいである。したがって、第三のビールはビールの半値であり、発泡酒よりも100円安いという状況であり、価格的には絶対的な優位性を確保している状況である。

   さて、ブランド採点表の結果であるが、総合評価では、のどごし<生>(キリンビール)が332点でトップであったが、特に、評価の高かった項目は、ブランド力94点、テレビCMなどの広告・宣伝の92点、リピート購入率91点が、90点以上の高評価だった。今回、評価対象のブランドは各社13ブランドであり、評価は13ブランド×評価項目13項目=169通りあるが、90点以上を獲得したのは、この3つのみであり、この3項目がのどごし<生>のバイヤーの評価ポイントといえよう。ちなみに、80点以上は、総合評価300点で2位のクリアアサヒ(アサヒビール)のリピート率、総合評価289点で3位の金麦(サントリー酒類)の味のみであり、のどごし<生>は80点台はなく、あとの10項目は
すべて70点以下となる。

   逆に、のどごし<生>にも課題があり、利益率が何と6点しかなく、厳しい評価である。ただ、この利益率の最高得点は、金麦(サントリー酒類)の31点であるので、全バイヤーが売上は伸びているが、利益が取りにくいということで一致している評価であるといえよう。これ以外の項目でバイヤーが厳しい評価を下している項目としては、最高得点が45点を獲得したのどごし<生>(キリンビール)のPOPなど店頭販促物、52点を獲得した総合評価244点で3位の麦とホップ(サッポロビール)の素材・製法、54点を獲得したのどごし<生>(キリンビール)の消費者キャンペーン、イベント、同じく、54点を獲得したのどごし<生>(キリンビール)と金麦(サントリー酒類)の商品価値と価格バランスがあり、これらの項目が比較的バイヤーから第三のビールへの評価が低い項目である。

   また、ちょっと意外な結果がでているのが、総合評価2位となったクリアアサヒ(アサヒビール)にトップ項目がひとつもなかったことである。No.2となった項目では、テレビCMなどの広告・宣伝、リピート購入率、素材・製法、消費者キャンペーン、イベント、POPなど店頭販促物など13項目中4項目あるが、No.1はなく、まさに、総合的に2位を獲得した形である。

   一方、メーカー採点表であるが、2点の僅差、289点でトップとなったアサヒビールであるが、トップ項目は商品供給体制の73点、売場での販促策の提案・店舗応援の66点のみである。逆に、287点で2位となったキリンビールは10項目中6項目でトップであり、特に、企業イメージ87点、ブランド育成力80点、新商品の開発力73点、商品構成(ラインアップ)73点がバイヤーから高く評価された項目である。また、253点で3位となったサントリー酒類であるが、取引条件(仕入れ価格など)66点、営業担当者61点でトップ項目であった。特に、取引条件(仕入れ価格など)は、ブランド採点表の利益率とも連動しており、キリンビールは10点、アサヒビールも19点と低く、サントリー酒類が圧倒的な評価であることがわかる。

   最後に、ブランド採点表の中で仕入基準の高い項目であるが、テレビCMなど広告・宣伝が74%、味が70%と高く、ついで、リピート購入率、ブランド力と続く。意外な項目としては、利益率が7番目であり、低い仕入基準であることである。バイヤーが利益よりも、消費者に目を向けており、売上を重視しているといえよう。また、この特集記事の最後に、「相次ぐ新商品の投入に困惑するバイヤーが多いようだ」と結んでいるが、実際、第三のビールは新商品の投入が多く、競争が激しいジャンルといえ、バイヤーとしては、定番の確立と新商品のバランスをどうとるかが、重要なマーチャンダイジングの課題といえよう。

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May 16, 2009

いなげや、2009年3月期決算、増収増益、ドラック堅調!

   いなげやが5/12、2009年3月期の決算を公表した。営業収益2,281.91億円(100.4%)、営業利益39.60億円(101.9%:営業収益比1.73%)、経常利益42.21億円(100.1%:営業収益比1.84%)、当期純利益16.80億円(135.9%:営業収益比0.73%)となり、増収増益ではあったが、微増の決算であった。いなげやは、連結では食品スーパーマーケットのいなげやに加え、ドラックストアのウェルパーク等が加わっており、今期の売上は特に、ドラックストアの堅調な数字が加わり、増収を達成している。そこで、P/L、B/Sについてはドラックストアを抜いたいなげや本体の個別決算を主にし、連結は必要に応じて参考に見てみる。
  
   その個別決算結果であるが、営業収益1,787.39億円(99.8%)、営業利益26.64億円(100.9%:営業収益比1.49%)、経常利益28.70億円(90.7%:営業収益比1.60%)、当期純利益12.04億円(119.8%:営業収益比0.67%)となり、減益となった。ただ、経常利益は減益とはなったが、営業利益、当期純利益は増益であった。ちなみに、いなげやとドラックストアのウェルパークの店舗数であるが、いなげやは127店舗、ウェルパークは84店舗であり、連結では合計211店舗となる。
  
   では、個別決算をもとに、いなげやの営業状況を見てみると、原価は74.1%(昨年73.8%)と0.3ポイント原価の上昇がみられる。結果、売上総利益は25.9%(昨年26.2%)となった。一方、販売費及び一般管理費であるが、29.5%(昨年29.4%)と、こちらも、0.1ポイント上昇している。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は-3.6%(昨年-3.2%)と、0.4ポイント下がった。それにしても、この-3.6%のマーチャンダイジング力は、食品スーパーマーケットとしては、かなり厳しい数字であるといえよう。特に、経費比率が売上対比30%近い数字となっており、ここまで上昇すると、食品スーパーマーケットの商品構成の中では粗利で相殺できるカテゴリーは惣菜ぐらいであり、厳しい数字である。いなげやとしては、まず、この経費比率をいかにひき下げるかが、経営の最優先課題といえよう。
   
   したがって、このマーチャンダイジング力をプラスにもってゆくには、不動産収入、物流手数料収入等で相殺するしかなく、今期のこれらを合計した営業収入は5.2%(昨年4.8%)と、昨年より0.4ポイント上回った。食品スーパーマーケットで営業収入が5%を超えるのは珍しく、かなり大きな金額である。結果、営業利益は1.6%(昨年1.6%)と差し引き、昨年と同様の数字とはなったが、今期は原価、経費双方が上昇しており、これを営業収入で相殺した形であり、利益を捻出するのが厳しい1年であったといえよう。
   
   一般に経費比率が高めになる要因としては、食品スーパーマーケットは装置産業といわれるように、多額の資産を必要とする。今期のいなげやの出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金の合計は356.88億円であり、1店舗当たり2.81億円となる。通常の食品スーパーマーケットと比べると、比較的低い数字ではあるが、総資産に占める割合は52.3%となる。そして、この中の土地を抜いた資産には減価償却費がかかり、これが経費比率を高める要因となり、店舗面積が大きくなればなるほど、経費比率が自然上昇することになり、その分、その店舗面積に見合う売上、利益を確保する必要がある。
  
   いなげやの今期の店舗当たりの売場面積は440.6坪であり、食品スーパーマーケットとしては標準的な数字であるといえよう。問題は、1坪当たりの売上であり、これを見ると、341.88万円であり、この数字が低く、結果、減価償却費をはじめ、固定費等の経費比率を相対的に引き上げているといえる。したがって、今後、経費比率を引き下げるためには、粗利の改善も重要なマーチャンダイジングの課題であるが、それ以上に、この坪売上をいかに引きあげるかを、マーチャンダイジング面だけでなく、店舗開発そのものについても見直す必要がありそうである。仮に、現状の売上を前提に売場面積を350坪にすると、坪売上は430万円、300坪にすると502万円となり、格段と坪売上が向上、当然、固定費が劇的に下がることになる。
  
   一方、いなげやの今期の自己資本比率であるが、54.4%(昨年55.0%)とやや下がってはいるが、50%を超えており、財務的には、出店にかかわる資産の合計が52.3%であり、出店余力が差し引き1.3%となり、バランスがとれており、負債に依存することなく、出店が可能な財務構造であるといえる。今後、負債の有利子負債129.7億円、総資産の16.5%が削減されてくると、出店余力はさらにまし、成長戦略を有利に展開できることになる。
  
   このように、いなげやの今期の決算は連結ではドラックストアが寄与し、増収増益とはなったが、個別では減収となる結果となった。ドラックストアは比較的好調であったが、いなげや本体が厳しい状況であったといえ、今後、新規出店をどのように果たし、増収を確保するかが課題といえよう。ただ、そのためには、原価、経費バランスが悪く、現状の経費が異常に高い状況である。まずは、既存店の経費比率をいかに引き下げるか、そのためにもマーチャンダイジングの改善だけでなく、店舗開発そのものの見直しも課題といえよう。ちょうど、来月からは改正薬事法が施行されるので、この追い風にのり、ウェルパークと連携し、いなげの中に薬売場を入れ、グロサリーを再編することも一考であろう。今期のいなげやの特に既存店の店舗改装の動向に注目したい。

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May 15, 2009

九九プラス、2009年3月期決算、増収減益、来期回復!

   九九プラスが5/12、2009年3月期決算を公表した。結果は、営業総収入1,342.46億円(109.1%)、営業利益2.61億円(65.2%:営業総収入比0.19%)、経常利益3.16億円(88.6%:営業総収入比0.23%)、当期純利益-5.04億円)となる、増収減益、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。ただ、四半期別に営業利益の推移をみると、昨年の第4四半期に最大の赤字を計上してから、業績がV字回復しており、今期、第3四半期には黒字転換、第4四半期も黒字幅を拡大と、業績は確実に上向いている。

   したがって、来期の通期予想は営業総収入1,233.00億円(119.2%)、営業利益13.60億円(632.6%:営業総収入比1.10%)、経常利益13.80億円(464.6%:営業総収入比1.12%)、当期純利益14.00:前期は赤字)と大幅な増収増益予想であり、業績が急回復する見通しである。ただ、営業総収入比でみると、営業利益は1.10%と依然として、低い状況であり、今後、さらに、マーチャンダイジング力の改善が課題といえよう。なお、営業総収入が119.2%と大幅な伸びとなるが、この中には、新店による増収もあるが、それ以上に、この5/1からバリュローソンを吸収合併し、ローソンストア100が70店舗加わることが大きい。

   さて、今期、減収となった要因を営業構造から見てみると、まず、原価であるが、ここからはすべて、売上対比の数字で見たてみたい。九九プラスは、直営以外に、FCもあり、営業総収入は、売上に加盟店からの収入や、その他の営業収入が加わったものであるので、純粋に商品売買から得られるマーチャンダイジングの実態を表しているとはいえない。そこで、商品売買による営業力、すなわち、マーチャンダイジング力を見るために、ここでは売上を基本にすえての営業構造を見てみる。

   原価は75.9%(昨年73.3%)となり、2.6ポイントと大幅な上昇となった。九九プラスの平均単価はまさに100円であるので、100円の商品の75.9円が原価であるということであり、昨年はこれが73.3円であったということである。結果、売上総利益、粗利は24.1%(昨年26.7%)と厳しい結果となった。これまで、見てきた食品スーパーマーケットの決算と比べても、この原価の上昇は異常であり、特に、今期前半の物価上昇が九九プラスを直撃した結果といえよう。

   一方、経費の方であるが、販売費及び一般管理費を見てみると、25.8%(昨年26.4%)となり、0.4ポイント削減した。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-1.7%(昨年0.4%)と、昨年の黒字が一気に赤字になり、経費の削減が原価の大幅上昇に追いつかず、マーチャンダイジング力が大きくマイナスになった状況である。これに、加盟店収入、不動産、物流手数料などの営業収入が1.9%(昨年0)のり、最終的には営業収入が0.2%(昨年0.3%)とわずかなプラスにはなったが、原価の上昇が大きく経営に響いたといえよう。なお、九九プラスは、今期から営業収入に加盟店収入、その他収入を計上しており、昨年はその他の営業収入はなく、売上高のみであり、計上方法の変更があったようである。

   それにしても、原価がここまで上昇するのは、構造的な問題があったといえよう。売価が100円で抑えられている100円ショップという業態であるため、原価が上昇しても売価を変えるわけにはいかず、中身の見直し、すなわち、容量の変更、原材料の見直しなど、まさに、マーチャンダイジングの全面的な政策見直しが必要といえ、そのスピードが、原価の上昇スピードについていけなかったと推測される。逆にいえば、昨年、特に前半は異常な速さでの原価上昇が起こったといえよう。

   ただ、これだけ厳しい、原価に振り回された経営状況であったにもかかわらず、キャッシュフローを見ると、営業キャッシュフローは22.65億円(昨年16.02億円)と昨年より、上昇している。これは減価償却費のプラス分が大きかったといえ、当期純利益のマイナスを十分にカバーした。そして、投資キャッシュフローであるが、-17.21億円(昨年-22.32億円)と、投資額は減っているが、新店にかかわる有形固定資産の取得による支出は増加しており、今後も新店が期待できそうである。結果、フリーキャッシュフローは5.44億円(昨年-6.30億円)と、昨年の逆流が順流となっており、余裕が生まれている。そして、財務キャッシュフローであるが、-27.68億円(昨年-5.39億円)と、今期は長期借入金を26.53億円返済し、財務基盤の強化をはかっている。トータルでは-22.25億円(昨年-11.69億円)と、連続で現金及び現金同等物を取り崩してはいるが、財務体質は、改善されている。自己資本比率も、以前の30%台から41.0%(昨年40.1%)と上昇がみられる。

   このように、今期、2009年3月期の九九プラスの決算は増収減益、当期純利益は赤字となる厳しい決算とはなったが、その要因は大幅な原価高にマーチャンダイジング力がついてゆけなかった前半の状況を引きずっての結果であり、後半以降は原価も落ち着き、むしろ下げに転じ、利益の急回復がみられる。また、財務状況はむしろ好転しており、借入の返済も進み、自己資本比率の上場も見られ、財務基盤も健全化が進みつつあるといえよう。来期はいよいよ、ローソンとの資本業務提携の効果が本格的に表れてくることが期待され、攻めの積極的な経営が求められるといえる。今後、九九プラスがどのような積極策を打ち出すかに注目である。

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May 14, 2009

原信ナルスH、2009年3月期決算、増収減益!

   原信ナルスHが2009年3月期決算を5/7公表した。結果は、売上高1,162.19億円(104.2%)、営業利益32.20億円(98.7%:売上対比2.8%)、経常利益30.54億円(98.0%:売上対比2.6%)、当期純利益10.64億円(9.4%:売上対比0.9%)と、増収減益となる厳しい決算となった。今期の食品スーパーマーケットは原信ナスルHの決算が象徴しているように、増収減益となるケースが多いのが特徴である。

   減益となる食品スーパーマーケットの状況を見てみると、原価が上昇するケース、経費が上昇するケース、そして、双方が上昇するケースの3つに分かれるが、今期は、どちらかというと、経費の上昇により、減益となるケースが多いように思える。ただ、意外なことに、今期は各食品スーパーマーケットが積極的なPBを開発投入し、原価の削減を図り、粗利アップを目指したが、多くの企業で、さほど、原価の改善が進んでいない状況も見られ、経費上昇を原価改善で補えないケースが多いのも特徴といえよう。

   さて、原信ナスルHの営業減益の要因であるが、原価は72.9%(昨年72.5%)と0.4ポイント上昇しており、まず、原価の上昇が起こっている。結果、売上総利益は27.1%(昨年27.5%)となり、粗利が下がっているのが気になるところである。

   原信ナルスHは営業部門が原信とナルスに分かれるが、今期の原信の売上は902.95億円(105.4%:47店舗)、ナルスは198.19億円(99.8%:16店舗)となり、原信は堅調な売上であったが、ナルスがやや苦戦した状況である。また、1店舗当たりの状況は原信が客数2,947人、金額PI値(客単価)1,786円、PI値1,033%、平均単価172.8円に対し、ナルスは客数1,820人、金額PI値(客単価)1,863円、PI値1,105%、平均単価168.5円である。原信はSSM、NSCタイプの店舗フォーマットが主力であるので、小中域商圏の食品スーパーマーケットであるのに対し、ナルスは小商圏のSMタイプが店舗フォーマットの主力であるので、小商圏の食品スーパーマーケットと違いが明確である。

   ただ、本来であれば、カテゴリーも広く扱え、品揃えも豊富に持てる原信の方が金額PI値(客単価)が高くても良いように思えるが、逆に、PI値が70%という決定的な差が生じており、原信の方がまとめ買いが少なく、高頻度来店の店舗となっているようである。逆に見れば、ナルスのPI値が通常の食品スーパーマーケットと比べても高いともいえ、商圏上の特性によるところも大きいと思われる。いずれにせよ、売上の80%以上を占める原信の客数約3,000人は十分であるが、金額PI値(客単価)アップは課題であるといえよう。結果、坪売上は、今期合計の店舗面積が1,817平米(550.6坪)とやや大きめの食品スーパーマーケットであるため、321.75万円と低くなり、結果、固定費が相対的に高めになるといえ、客数よりも、金額PI値(客単価)をいかに増やし、坪売上を上げるかが当面の課題といえよう。

   一方、販売費及び一般管理費であるが、24.3%(昨年24.2%)と0.1ポイント上昇している。残念ながら、今期の原信ナルスHは原価、経費双方の上昇がみられ、結果、売上総利益=マーチャンダイジング力は2.8%(昨年3.3%)と0.5ポイントと大幅に下がってしまい、減益となった。原信ナルスHは営業収入が決算上では発生しておらず、売上総利益=営業総利益=営業利益=マーチャンダイジング力であり、結果、マーチャンダイジング力はプラスにはなったが、決算自体は、原価、経費双方の上昇が見られ、厳しい結果となった。

   ちなみに、経費の上昇であるが、その要因を見ると、減価償却費の増加が大半であり、ここ数年の原信、ナルスの経営統合による物流センター、情報システム等への投資が今期、減価償却費となって費用計上されたためといえよう。結果、営業キャッシュフローは、この減価償却費のプラス分が増加し、46.63億円(昨年31.26億円)と約15億円増加しており、キャッシュフローには余裕がある。

   そのキャッシュフローであるが、営業キャッシュフローが46.63億円(昨年31.26億円)、投資キャッシュフローが-26.10億円(昨年-47.65億円)と、投資キャッシュフローは昨年よりも減少しており、経営統合がキャッシュフローの面からも一段落したことが伺える。ちなみに、投資キャッシュフローは、昨年がピークであり、今後は経営統合への投資から、食品スーパーマーケット経営の本流である新規出店、すなわち成長戦略へ向けることができ、来期以降、積極的な新規出店を期待したいところである。結果、フリーキャッシュフローは20.53億円(昨年-16.39億円)とプラスに転じた。そして、財務キャッシュフローであるが、-22.82億円(昨年13.87億円)と、昨年は借入で賄ったが、今期は社債、借入を若干返済しており、キャッシュフローが好循環となった。

   このように、原信ナルスHはP/L面では増収減益となる厳しい決算とはなったが、財務面では昨年までの経営統合による大型投資が一段落し、キャッシュフローの逆流が止まり、順流となり、好循環が生じはじめた。今後は、原信の金額PI値(客単価)をいかに引き上げるかというマーチャンダイジング上の課題はあるが、財務状況は好転しており、営業キャッシュフローを新店開発等の成長戦略に振り向けることが可能となるので、来期以降の原信ナルスHの成長戦略に大いに期待したいところである。

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May 13, 2009

マックスバリュエクスプレス、川口末広店を見る!

   イオンの小型食品スーパーマーケットの戦略店舗、マックスバリュエクスプレス1号店、川口末広店を見る機会があった。すでに、3/24にオープンしており、約1ケ月後という、オープン景気も終わり、落ち着いた段階での夕方の視察となった。店舗面積は927平米(280坪)、24時間の小型食品スーパーマーケットであり、改正薬事法にも対応した薬売場もあり、しかも、店頭に惣菜を配し、対コンビニを意識した都市型食品スーパーマーケットである。

   埼玉県川口市は、いま、食品スーパーマーケット業界でも最も注目度の高い地区のひとつである。ここには、オーケー、ザ・プライス2店舗、ビックAのディスカウント業態がすでにオープンしており、これに加え、アリオの食品部門、ヤオコー、ベルク、マルエツ、サミット、コモディイイダ等の食品スーパーマーケットがひしめき合っており、大激戦地区となっている。

   この中で、マックスバリュエクスプレスはJR川口駅からは少し離れ、駅で一番近い駅は埼玉スタジアムに通じている埼玉高速鉄道の元郷駅が最も近い駅であり、ここから徒歩5、6分ぐらいのところである。この近くにはヤオコーとサミットがあり、少し、JR川口駅の方へもどるとビックAもあるが、比較的、ディスカウントエリアからは離れており、ここ一角だけ、価格がやや高めの食品スーパーマーケットが競合し、川口駅前や、さらに、西川口とは商圏的に一線を画したエリアである。

   川口駅周辺にはオーケー、ザ・プライスがあり、また、西川口周辺にもザ・プライスがあるので、この周辺にマックスバリュエクスプレスが出店していたら、価格競争の面でかなり厳しい状況になったと思われるが、この元郷駅周辺ということで、やや価格競争からは離れた位置での出店となった。ただ、逆に、生鮮、惣菜の強いヤオコー、グロサリーの充実したサミットとは、ほぼ直の競合となっており、マックスバリュエクスプレスの優位性をどう確立するかが問われるといえよう。

   さて、川口商圏における価格競争の現状であるが、ちょうど視察した、この日のザ・プライスのちらし価格であるが、この日はゴールデンウィークでもあり、83円均一セールがメインであった。これに対して、マックスバリュエクスプレスは、この情報を事前にキャッチしていたと見え、5円安い78円均一セールを打ち出していた。プライスの価格をかなり、意識しているといえる。ただ、たまごに関しては、プライスが10個パック73円で打ち出しているのに対し、マックスバリュエクスプレスは98円であり、さらに、ザ・プライスが冷凍食品半額を超目玉として打ち出しているのに対し、マックスバリュエクスプレスは冷凍食品はちらしには掲載していない。これ以外にも、ザ・プライスは圧倒的な価格面での単品ちらし訴求を打ち出しており、ちらしを見る限り、マックスバリュエクスプレスがかなり押され気味である。

   また、ザ・プライスと真っ向から価格でぶつかっているオーケーであるが、西友のKY(価格安く)キャンペーン同様、「ナショナルブランド商品については、地域一番の安値を保証しています。当店の通常売価が、競合店の価格(特売品、目玉商品も含む)より高い場合、私たちは値下げし、「競合店に対抗して値下げしました」の表示をつけて販売しています。」と、ちらしで宣言しており、実際、売場の随所にこのPOPが張られ、川口ではおそらく、ザ・プライスと並び、プライスリーダーとなっている。チラシでは、さらに、メーカー希望小売価格、商談時使用売価よりも、30%から40%、中には50%以上安い価格のナショナルブランドの商品が100品以上掲載されており、際立った安さを醸し出している。

   価格政策を見る限り、このように、マックスバリュエクスプレスはナショナルブランドよりも、トップバリュで安さを打ち出しているので、オーケー、ザ・プライスとは対照的な価格政策であり、これが、川口の顧客にどこまで受け入れられるかが今後の大きな課題であろう。

   こう見ると、マックスバリュエクスプレスはコンビニの24時間サービスを取り入れ、コンビニにない生鮮と日配、グロサリーの品揃えを充実させている点では、コンビニには十分な対抗力があるといえるが、食品スーパーマーケットとして見た場合は、一部商品を除き、価格面ではトップバリュ中心では対抗が厳しく、また、品揃え面では絞り込まれており、十分でない。コンビニ的な食品スーパーマーケットのみの商圏では十分な力が発揮できると思うが、本格的な食品スーパーマーケットの競合の多い、今回の川口のような商圏では、どのような特徴を顧客に打ち出すかが難しいのではないかと思われる。ただ、食品スーパーマーケットとしての新しい試みとして、改正薬事法への本格的な対応がなされており、薬剤師、登録販売者をおいた医薬品、H&BCコーナーは小型店としてはモデルとなるコーナーが出来上がっており、完成度も高い売り場である。

   今後、このマックスバリュエクスプレスが首都圏の都市部で本格展開ができるかどうかは、日本を代表する本格的な様々なタイプの食品スーパーマーケットがひしめき合う、この川口でどこまで、消費者に受け入れられるかにかかっているといえよう。まだオープンまもない時期であるが、今後、6ケ月後、1年後の状況がどのような結果となるか気になるところである。

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May 12, 2009

関西スーパー、2009年3月期決算、増収減益、純利増益!

   関西スーパーが2009年3月期決算を5/8、公表した。結果は、営業収益1,090.92億円(103.2%)、営業利益19.50億円(83.9%:営業収益比1.78%)、経常利益22.09億円(82.3%:営業収益比2.02%)、当期純利益9.53億円(172.4%)と、当期純利益は増益とはなったが、営業、経常段階では増収減益となるやや厳しい決算となった。今朝、5/11の日経流通に関西スーパーの創業者北野祐次会長が取締役を退任し、経営の第1線から退くという記事が掲載されていたが、この7月には創業50周年を迎えるとのことで、50年間日本の食品スーパーマーケット業界を牽引してきた方だけに感慨深いものがあるといえる。

   さて、今期、関西スーパーが減益になった要因を原価、経費の両面から見てみたい。まず、原価であるが、76.0%(昨年75.6%)と、0.4ポイント原価の上昇がみられる。結果、売上総利益は24.0%(24.4%)となった。一方、販売費及び一般管理費であるが24.1%(昨年24.1%)と昨年と同じ比率となった。したがって、差し引き、商品売買から得られる粗利、マーチャンダイジング力は、-0.1%(昨年0.3%)と、わずかではあるが、マイナスとなった。原価の上昇が粗利を圧迫したといえ、今期は原価の上昇が響いたといえる。これに、営業収入が1.9%(昨年1.9%)のり、最終的に営業利益が、売上対比で1.8%(昨年2.2%)となり、減益となった。昨年より、売上対比で、0.4ポイント営業利益が下がっており、原価上昇が利益を圧迫した形である。

   この数字をみると、営業利益が減益となった要因は明らかに、原価の上昇にあるが、ただ、売上総利益、すなわち、粗利が24.0%という数字は、食品スーパーマーケット業界としては、やや低めであり、経費比率は逆にやや高めであるとはいえるが、それでも25.0%を下回っており、粗利率がもう数%高ければ、高収益となる利益構造である。今後、原価を引き下げ、粗利率をいかに改善するかが当面の優先課題といえよう。

   その関西スーパーの今期の部門別の状況を見てみると、今期、粗利の高い海産、そして、何といっても食品スーパーマーケットのいまや利益の源泉ともいえる惣菜の構成比が落ちているのが気になるところである。海産は10.9%(昨年11.6%)、惣菜7.9%(昨年8.1%)という状況である。しかも、惣菜の構成比が7.9%と惣菜の強い食品スーパーマーケットと比べると5%近く低い数字であり、全体として粗利が取りにくい商品構成であるといえよう。関西スーパ-の生鮮の構成比の中では青果が15.2%(昨年15.0%)と最も大きく、ついで、精肉12.9%(昨年12.7%)であり、青果、精肉が生鮮部門を牽引しているマーチャンダイジングといえ、利益よりも、売上重視の商品戦略が、今期は、結果として実施されたといえよう。

   実際、今期の関西スーパーの客数は1店舗当たり3,192人(昨年3,162人)と増加しているが、逆に金額PI値(客単価)は1,688円(昨年1,675円)と減っており、客数増、金額PI値(客単価)減となっており、商品構成を裏づける数字である。ちなみに、ここから、売上を逆算すると、1日当り538.8万円、年間では約20億円となり、食品スーパーマーケットとしては、理想的な売上規模であるといえよう。

   では、なぜ、これで、営業利益が、今期1.8%と2.0%を切ってしまうかであるが、その要因は先にあげた商品戦略、すなわち、マーチャンダイジング力による、粗利率の問題もあるが、それと同様に、もうひとつの課題が経費の問題といえ、それが、坪売上にあると思われる。関西スーパーの今期の店舗面積は74,925平米であり、店舗数は54店舗であるので、1店舗当たり420.4坪である。これを年商約20億円から割ると、476万円であり、郊外型であればそれなりの数字であるが、関西スーパーは都心部に多く出店しており、あと2割から3割は坪売上を上げ、相対的に経費比率を引き下げたいところである。

   一方、今期の財務状況であるが、自己資本比率は49.0%(昨年45.9%)と、もう1%で50%に届くまでに改善している。ただ、その要因は純資産が増加しての自己資本比率の上昇ではなく、負債が削減しての、上昇である。その主な要因は昨年計上した厚生年金基金脱退損失引当金が約12億円、未払法人税等が約5億円等であり、これに有利子負債が98.00億円(昨年104.00億円)と、6億円削減した結果である。その有利子負債は、総資産510.06億円の19.2%と、まだ負債を圧迫している状況といえ、今後、一層の削減が課題といえよう。したがって、出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金等の合計313.09億円(1店舗当たり5.79億円)は総資産の61.3%であるので、自己資本比率から引いた出店余力は-12.3%となり、負債に、率にして、約20%依存する出店構造である。今後、安定的な出店を果たして行くにためにも、さらに、財務状況の改善が必要といえよう。

   このように、関西スーパーの2009年3月期の決算結果は、原価の上昇がみられ、粗利を圧迫し、営業利益が売上対比で減益となる、増収減益のやや厳しい決算となった。また、財務状況は自己資本比率の改善が見られるものの、その中身は純資産が増加しての改善ではなく、昨年、一時的に発生した負債項目がなかったことが大きいといえる。有利子負債は若干削減されたものの、依然とし、総資産の約20%である。今後、関西スーパーが高収益を確保し、安定的な成長戦略をとってゆくためには、商品構成の改善、有利子負債の削減が当面の経営課題といえ、今期、どのようなマーチャンダイジングの改善と、財務の改善を打ち出すかに注目である。

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May 11, 2009

ウォルマート売上速報、2009年4月度、102.4%!

   ウォルマートが5/7、2009年4月度の売上を公表した。前月の3月度がイースター祭が今月へずれたため、昨対では-1.9%(98.1%)となり、厳しい売上となった。その翌月、この4月度の売上がどのような数字となるか注目されたが、結果は102.4%と、伸び率は低く、わずかな伸びにとどまった。ちょうど、この4月で、13週、第1四半期を終えるが、13週累計では100.9%であるので、ここ数ケ月の中では、この4月度は伸び率が大きかったといえるが、まだ、回復とまではいかず、依然として厳しい売上が続いているといえよう。

   ただ、ウォルマート本体は107.7%と、前月の102.6%と比べ、上昇幅が大きく、回復基調といえ、アメリカ国内の動向は堅調であったといえよう。問題は海外部門とサムズクラブ部門であり、特に、この4月度は、この両部門の落ち込みが大きかった。その海外部門であるが、93.0%と、依然として、厳しい状況が続いている。それでも、13週累計では88.8%であるので、やや上向きにはなっているようであるが、この海外部門は現在、売上構成比が23.6%と約1/4であるので、7%の落ち込みは全体への影響も大きいといえよう。ウォルマートの海外部門は、実際の数字は113%と好調であるが、為替変動の影響が約20%あり、差し引き、7%の影響が生じたと説明しており、需要が下がっているのではなく、為替の問題であると強調している。

   実際のこの4月度の海外状況であるが、イギリスのアズダは好調であり、イースター祭の影響もあり、既存店の客数が特に伸びたという。精肉、グロサリーの数字が特に良かったとのことで、また、ジョージブランドなど衣料品も、特に女性関連が良かったという。また、新型インフルエンザ、H1N1が猛威をふるっているメキシコでは115.8%の売上となり、既存店も107.8%と好調であったという。客数だけでなく、客単価の伸びも見られたという。ただ、この2週間は、メキシコのウォルマートもメキシコ政府と協力し、H1N1対策に奔走し、メキシコシティの店舗40ケ所の駐車場に移動式の臨時医療センターを設置するなどしたという。また、ウォルマートカナダ、そして、ブラジルは堅調な伸びにとどまったという。カナダに関しては今後スーパーセンターに力を入れて行くという。

   そして、日本であるが、既存店は伸び率は低いが堅調な数字であったという。西友のEDLPの商品が好調でありジョージブランドも良かったという。ただ、衣料品、住関連用品が、消費者の節約志向の中で苦戦しているという。最後に、中国であるが、海外部門の中では最も苦戦しているという。デフレの影響がでており、客単価のダウンが見られ、客数もかんばしくなく、厳しい状況であるという。

   このように、ウォルマートの海外部門は一部、中国などを除き、売上は好調ないしは、堅調な数字であり、為替変動の影響が極めて大きく、この4月度は93.0%となった状況である。今後、世界経済がどこまで回復するかにもよるが、当面は、このドル高基調が続くと思われ、ウォルマート全体は低成長が続くのではないかと思われる。

   さて、もうひとつの今月の課題となったサムズクラブ部門であるが、全体の売上構成比は11.5%と海外部門の23.6%の約半分であるが、この4月度は95.7%と約5%落ち込んでおり、13週累計が100.4%であるので、気になるところである。その最大の要因は、ガソリンである。昨年は、サムズクラブはガソリン等、エネルギー関連の売上貢献度が、資源エネルギーへの投機が起こり、相場が暴騰し、大きく寄与しており、今期は、一転、金融不安により、相場が下がり、ガソリン等、エネルギー関連の売上貢献が大きく下がったからである。

   実際、サムズクラブとウォルマートの既存店のガソリン等、エネルギー関連の売上貢献度を見てみると、サムズクラブのこの4月度は-5.4%であり、これを抜いた売上は100.3%とわずかであるが上昇している。これに対して、ウォルマート本体であるが、貢献度は0.0%と、0であり、ガソリン等、エネルギー関連には影響されない売上構造である。サムズクラブは逆に、この影響をもろにうける売上構造であるため、このような大きな影響が生じたものといえよう。

   さて、これに対し、ここ数日のウォルマートの株価の動きであるが、5/7(48.89ドル)、5/8(50.14ドル)と上昇気味に推移しており、概ね、投資家は買いと見ているようである。ただ、ここ数ケ月のウォルマートの株価は4月はじめには54ドル弱まで上昇し、その後、4/27には47ドルまで下げており、そこからじわじわと上昇し、この数日は50ドル近辺でもみ合っていた状況であるので、今後、この売上速報を契機に上昇するか見極めがつきにくい状況である。また、そろそろ、第1半期決算が公表されるので、その結果を待っている状況ともいえよう。

   このように、ウォルマートのこの4月度の売上速報は102.4%と堅調な数字となり、先月の98.1%のマイナスからはプラスに転じ、ひとまず、息をついた数字といえよう。イースター祭のずれによる売上増もあったが、海外の売上が為替の影響で売上は厳しい状況にあるが、現地は概ね好調であり、13週累計と比べでも下げ幅がせばまりつつある。今後はメキシコだけでなく、アメリカでも新型ウィルス、H1N1の影響が懸念されるが、5月以降、ウォルマートの売上がどのような数字で推移するか気になるところである。

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May 10, 2009

ヤオコー、2009年3月決算、増収増益、2,000億円へ!

    いよいよ、この連休明けから、食品スーパーマーケット業界の2009年3月期の決算の公表が始まった。先週、今週の2週間がピークであり、大半の食品スーパーマーケットの決算の公表が行われる予定である。その中でも注目の食品スーパーマーケットの1社、ヤオコーの2009年3月期の本決算が5/7に公表された。概要は、営業収益2,082.86億円(103.0 %)、営業利益81.68億円(104.5%:営業収益比3.92%)、経常利益81.42億円(104.3%:営業収益比3.90%)、当期純利益47.06億円(111.3%:営業収益比2.25%)と、増収増益となる好決算となった。

   食品スーパーマーケットの決算では、決算概要として、ヤオコーのように営業収益で公表する場合と、売上高で公表する場合と2通りある。営業収益とは売上高+その他営業収益のことであり、この、その他営業収益は、不動産収入、物流手数料収入等のことである。本来の食品スーパーマーケットの営業成績を純粋に見るのであれば、まずは、売上高、そして、次が販売費及び経費、そして、ここから差し引き、マーチャンダイジング力を示し、これに、その他営業収益を足し、営業利益を算出することが望ましいし、食品スーパーマーケットの実態をよく表しているといえよう。

   ここで、あえて、このマーチャンダイジング力に言及したのは、ヤオコーは、この4/1から5/11まで、「おかげさまで売上2,000億円達成、お客様感謝キャンペーン」を実施しており、営業収益ではなく、売上高を意識しているからである。営業収益では、すでにヤオコーは、昨年の3月度決算で2,022.53億円と2,000億円を達成しており、企業全体としては、2,000億円を超えている。ところが、売上高では、今期決算時は1,997.32億円とほんのわずか、微妙に2,000億円に達していない。当然、昨年の売上高は1,942.83億円であり、2,000億円には達していない。これに、85.54億円のその他営業収益が加わり、営業収益が2,000億円を超え、今期は2,082.86億円となるからである。営業収益よりも、売上高の方が食品スーパーマーケットの根幹指標であるという意識が感じられるキャンペーンであるといえよう。

   さて、そのマーチャンダイジング力であるが、今期の原価は71.18%(昨年71.21%)とわずかであるが、改善した。結果、売上総利益は28.81%(昨年28.78%)と粗利の改善がわずかではあるが、進んだ。一方、販売費及び一般管理費であるが、29.00%(昨年28.86%)と、わずかに上昇した。今期は、経費の改善が若干であるが、厳しかったようである。ただ、29.00%はかなり、高い経費比率であるといえ、当然、この高い経費比率では、マーチャンダイジング力は差し引き、-0.19%(昨年-0.08%)とマイナスとなり、商品売買から得られる粗利で、経費がまかなえない営業構造である。これに、不動産収入、物流手数料等の営業収入が4.28%(昨年4.10%)のり、結果、営業利益は売上対比で4.08%(昨年4.02%)とわずかであるがプラスになり、これに売上高増があいまって、営業利益が昨年対比で104.5%となった。

   確かに、営業利益は104.5%と増益となり、堅調な結果であったが、少し気になるのは、もともと高めの経費比率が今期はさらに若干上昇し、結果、原価の改善が相殺され、差し引き、マーチャンダイジング力のマイナス幅が微妙に広がったことである。ヤオコーとしては、まさに、売上、しかも、既存店、さらには、坪当たりの売上を今後いかに引き揚げ、経費を絶対的に引き下げるだけでなく、相対的に固定費を引き下げるマーチャンダイジング力の強化が一層必要であろう。

   一方、今期のヤオコーの財務バランス、自己資本比率を見てみたい。今期は43.5%(昨年43.3%)である。これに対して、食品スーパーマーケトにとって最も重要な出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金等の合計であるが、480.79億円であり、これは総資産738.00億円(1店舗当たり7.38億円)の65.1%となり、結果、自己資本比率でどれだけまかなえっているかの出店余力を見ると、差し引き-21.6%であり、かなりの出店にかかわる資産を負債に負う財務構造である。その負債であるが、有利子負債が109.87億円と総資産の14.8%であり、これ以外の負債にも負っている財務構造であり、この財務構造を見る限り、今後、成長余力を高めるためにも、一層の自己資本比率の充実、理想は20%アップの60%以上であろうが、当面は50%以上が経営課題といえよう。

   このように、2009年3月期のヤオコーの決算は増収増益と堅調な結果となったが、依然として、マーチャンダイジング力は若干であるが、マイナスであり、特に、経費比率を今後、いかに下げるかが課題であるといえよう。また、財務的には、自己資本比率が43.5%と食品スーパーマーケットが安定成長を目指す上にはやや低めの数字であり、もう10%、できれば20%の改善をし、安定的な成長戦略を描きたいところである。これも、マーチャンダイジング力が改善されれば、自然、キャッシュフローが増大し、借入を削減し、自己資本の充実が図れるので、まずは、マーチャンダイジング力をいかに高められるかが喫緊の課題であるといえよう。今期は売上高で年商2,000億円を超えることが確実となったが、同時に、利益バランス、財務バランスを一段と高めたいところである。今期、ヤオコーが、今期決算を踏まえて、どのような戦略を打ち出すかに注目したい。

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May 09, 2009

日経MJ新製品ランキング、5/8、活況!

   久しぶりに、日経MJ新製品週間ランキングを取り上げてみたい。今週は、何といっても、全体の解説にも取り上げられているカルビー、ポテトチップスうすしこ味60g、金額PI値270円(一人当たり0.27円)である。先週14位から、一気に菓子部門1位となり、先週比金額PI値172円アップと急上昇である。カバー率も対象45チェーン250店舗の76.3%となり、今後、おそらく限りなく100%に近づくのではないかと思われる。

   この商品は何といっても、従来のポテトチップスうすしお味を60gにし、結果、平均単価が、今週は95円と100円を切ったところにポイントがあるといえ、100円という食品スーパーマーケットの相対的な安さを感じさせる値頃にぴたりはめたことである。食品スーパーマーケットで100円がなぜうけるかであるが、そのひとつの理由は、食品スーパーマーケットの全約1万品の平均単価は約200円であり、100円はその半値となる。したがって、100円は食品スーパーマーケットという平均約200円で囲まれた約1万品の空間の中では、直感的に50%offの感覚が発生し、思わず手にとってしまう心理的な誘因を引き出すからであると思われる。

   価格には絶対価格と相対価格がある。絶対価格とは競合店と比べての価格であり、これは顧客が買い回りしていることを前提に成立する価格である。これに対して、相対価格は売場の中で発生する価格であり、特に棚割の中で、大パックと小パック、NBとPBなどを併売することにより、大のお得感やPBのお得感を価格差をつけることによって醸し出す心理価格である。よく、大リーグで150km/hの速球の後に、120km/hのチェンジアップを投げ、三振に取る場面を見るが、まさに、この30km/h(約20%)のスピードの差がバッターのタイミングをずらすことができるのと似ている。これは、120km/hと95km/hでも同じ効果が期待でき、球が遅くとも心理的な速さの違いをだすことができ、絶対的な速さ同様、相対的な速さも効果が期待できる事例である。価格も全く同じであり、マーチャンダイジングは絶対的な価格よりも、相対的な価格を重視すべきであり、今回のカルビー、ポテトチップスはまさにここにぴたりはまる商品といえる。

   菓子部門は同じ、ポテトチップス60gシリーズがコンソメパンチ3位、金額PI値202円、ペッパー4位、金額PI値180円と上位に入っており、60gは絶好調である。ちなみに、菓子部門2位はロッテ商事プチプッセ<スイートストロベリー>8個、金額PI値211円である。

   これについで、ここ最近冷凍食品部門ではアイスクリームよりも、冷凍食品部門の復活が顕著であり、今週もベスト10の内、7品が冷凍食品で占められた。1位は味の素、ギョーザ12個、金額PI値568円であり、何と、金額PI値Aランク500円を超える高い数字である。2/19初登場の新製品であるので、そろそろ3ケ月となり、ランキングをはずれるが、金額PI値568円は冷凍食品としては極めて高い数字である。2位、3位も味の素であり、プリプリのエビシューマイ12個156g、金額PI値378円、カップに入ったエビのグラタン4個120g289円である。4位に、アイスクリームではトップとなった明治乳業、エッセルスーパーカップ超バニラ200mlが金額PI値215円で入ったが、5位も味の素、お弁当あらびきジューシーハンバーグ6個、金額PI値213円であり、以上が金額PI値200円Cランク以上の新製品である。

   もう1部門、今週の注目部門はその他食品であり、1位、2位は明治乳業、ブルガリアヨーグルトLB81プレーン450g、金額PI値1,720円、プロビオヨーグルトLG21 112g、金額PI値713円といずれも、金額PI値Aランクである。ここ最近のこの上位2品は不動となっているが、今週は3位に異変が起きた。先週11位から急浮上した日清食品、カップヌードル77gである。テレビ宣伝も本格化し、チャーシューの角切りを入れたリニューアル商品であるが、金額PI値は先週比322円アップの620円とAランクを超えた。ここのところ、PBに押されカップめんトップの座を譲っていたカップヌードルが攻めに転じ、結果を出し始めたといえる高い金額PI値となり、来週以降、どのような数字となるかが注目といえよう。

   これ以外では、飲料も、気温があがり、各新製品の金額PI値が上昇しはじめ、500円以上のAランクが5品、300円以上のBランクが9品、Cランクの200円以上が6品と全20品すべてCランクを超える高い金額PI値となった。また、家庭用品では、先週と順位の変動はあまりないが、金額PI値Aランクが2品、Bランクが1品、Cランクが4品と、全体的に金額PI値の高い新製品で占められた。

   このように、今週の新製品は5月に入り、春から初夏が見え始めた時期となり、新製品がアクティブに動きはじめたといえよう。特に、菓子部門のポテトチップス、冷凍食品部門の味の素ギョーザ、その他食品のカップヌードル等の動向が顕著であり、来週以降の動きが気になるところである。また、気温も上昇し、飲料部門の金額PI値も急激に上昇しており、来週以降、どのような新製品が投入されるかも注目といえよう。本ブログでも、再度、新製品情報に注目し、最新動向をいち早く取り上げてゆきたい。

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May 08, 2009

No.3、中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算

   1回で完結するつもりで、取り上げたテーマであったが、とうとう3回目となった。No.1では、中堅食品スーパーマーケット、北雄ラッキー、マツヤ、マルヨシセンターの利益構造、マーチャンダイジング力について、No.2では、財務構造について、特に、食品スーパーマーケットの経営の根幹指標ともいえる自己資本比率に焦点当て、出店余力について取り上げた。そこで、No.3では、残された決算の重要な要素、キャッシュフローについて、取り上げてみたい。

   食品スーパーマーケットにとってキャッシュフローの重要性は、成長戦略と直結する投資キャッシュフローにあるといえる。この投資キャッシュフローの中で、成長への投資、すなわち、出店にかかわる資産への投資がなされていない場合は、成長戦略が次年度以降十分に描けていないということになる。

   通常、食品スーパーマーケットは中期計画として3ケ年から5ケ年、長期計画として、10ケ年から30ケ年ぐらいを立てることになるが、その経営計画が確実に実施されているかは、まさに、この投資キャッシュフローに現われるといえ、この中の有形固定資産の取得による支出、差入保証金の増加による支出がほぼ出店にかかわる投資といえる。通常、1店舗への投資額は4億円前後であるので、この合計金額がどのくらいかで、また、ここ数年間の累計を見れば、次年度以降の出店が何店舗ぐらい想定しているかが見える。これを経営計画と照らし合わせれば、その実行度合い、そのペースも見ることが可能となる。

   そこで、まず、北雄ラッキー、マツヤ、マルヨシセンターの投資キャッシュフローを見てみたい。北雄ラッキーの有形固定資産の取得による支出は-7.76億円、差入保証金の増加による支出は-3.41億円であり、合計-11.17億円であり、来期以降、2店舗ぐらいの新規出店の意図が見える。マツヤは合計-12.59億円であり、3店舗ぐらいの計画であろう。そして、マルヨシセンターの合計であるが、-5.74億円であるので、1店舗の新規出店であるといえよう。No.1、No.2で見たように、各社とも、厳しい、経営状況の中ではあるが、確実な新規出店を目指しており、食品スーパーマーケットにとって、出店戦略がいかに重要であり、優先度が高い経営戦略であるかがわかる。結果、投資キャッシュフローは北雄ラッキー-5.48億円、マツヤ-15.72億円、そして、マルヨシセンター-8.15億円である。

   そこで、この投資キャッシュフローの財源が問題になるが、食品スーパーマーケットとしての理想はマーチャンダイジング力を充実させ、営業利益を高め、営業キャッシュフローを可能な限り増大させ、投資のマイナス分をカバーし、さらに、余力で財務キャッシュフローをも賄うことである。また、営業キャッシュフローは減価償却費も大きなプラス要素であり、食品スーパーマーケットは出店にかかわる資産が大きいがゆえに、減価償却費も大きくなるが通常である。

   北雄ラッキーであるが、税金等調整前当期純利益4.84億円、減価償却費3.13億円、その他を含め、営業キャッシュフローは9.86億円である。マツヤは税金等調整前当期純利益0.97億円、減価償却費5.65億円、その他を含め、12.79億円である。そして、マルヨシセンターであるが、税金等調整前当期純利益-6.72億円、減価償却費7.60億円、その他を含め26.06億円である。特にマルヨシセンターは、今期当期純利益が赤字となったが、営業キャッシュフローは黒字であり、その要因のひとつが、この減価償却費である。これ以外にも、マルヨシセンターは、減損損失3.48億円、買掛金の増加16.22億円等が加わり、P/Lでは当期純利益が赤字でも営業キャッシュフローは大幅なプラスとなり、キャッシュは結果、大きく増加している。ここがキャッシュフローでなければ経営の本質が見えないところであり、P/Lだけでなく、本当のキャッシュの動きをキャッシュフローでつかんでおきたいところである。

   そして、財務キャッシュフローであるが、その前に、投資キャッシュフローを営業キャッシュフローで賄えているか、すなわち、フリーキャッシュフローを見てみたい。北雄ラッキーは4.38億円、マツヤは-2.93億円、そして、マルヨシセンターは17.91億円となり、マツヤがマイナスのフリーキャッシュフローとなった。そこで、財務キャッシュフローであるが、北雄ラッキー-2.88億円、マツヤ-3.62億円、マルヨシセンター-12.85億円であり、トータル、現金及び現金同等物の増加は、北雄ラッキー1.49億円、マツヤ-6.55億円、マルヨシセンター5.05億円となった。マツヤが厳しいキャッシュフローの状況であるが、北雄ラッキー、マルヨシセンターはプラスとなった。

   このように、No.1、No.2、No.3と思いがけず、3回にわたってしまったが、代表的な中堅食品スーパーマーケット、北雄ラッキー、マツヤ、マルヨシセンターの2009年2月期の決算を見ると、3社とも厳しい営業状況、そして、財務状況といえ、いかに、経営環境、特に競争の激化が厳しいことがうかがわれる今期決算であったといえる。来期も厳しい経営環境が想定されるが、すべての基本は、食品スーパーマーケットはマーチャンダイジング力にあるといえ、今後、各社がどのようなマーチャンダイジングの改善をはかってゆくかに注目したい。

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May 07, 2009

No.2、中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算

   前回の中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算その1に続き、中堅食品スーパーマーケット、北海道の北雄ラッキー、長野のマツヤ、四国のマルヨシセンター、3社の2009年2月期度の決算結果を見てみたい。前回は、営業利益に焦点当て、利益構造について見たので、今回は財務構造について焦点を当ててみたい。

  食品スーパーマーケットにとって、財務上、最も重要な課題は、新規出店余力であるといえる。既存店は数年は伸び続けるが、やがて、限界に達し、成長が止まる。したがって、食品スーパーマーケットが成長をしてゆくには、新店を出店してゆく以外になく、そのためには、新規出店が可能な財務余力をいかに確保するかが経営課題であるといえる。では、財務余力はどこにあらわれるか、それが自己資本比率である。自己資本比率は自己資本÷総資産で表される数字であり、この数字が高いほど、財務的に安定しており、逆に低いほど、財務状況が苦しいといえる。

  自己資本と対となるのが他人資本であり、これが負債であり、自己資本比率が高いということは負債が低いことであり、逆に、自己資本比率が低いといいことは負債が高いという関係になる。先般問題になった投資ファンドはまさに、この自己資本比率が極めて低く、負債を何倍、何十倍、何百倍にしたレバレッジ経営を行っていたがゆえに、歯車が狂うと、いっきに経営危機となるという結果になった。

  では、食品スーパーマーケットではどのくらいの自己資本比率が望ましいだろうか。成長力のある優良食品スーパーマーケットの数字を見ると、70%を超える場合もあるが、安定的な成長を支える財務状況としては50%から60%は目指したいところである。このような観点から、今回の中堅食品スーパーマーケット、3社の自己資本比率を見てみると、北雄ラッキー21.5%(昨年21.2%)、マツヤ21.5%(昨年21.9%)、マルヨシセンター11.3%(14.2%)という状況であり、いずれも、かなり低い自己資本比率であることがわかる。したがって、現状の経営が大きく負債に依存する状況となっており、財務的には厳しい状況にあるといえよう。

  これだけ、自己資本比率が低いと、経営が資産を増やすよりも、負債を圧縮する方に、目が向いてしまい、食品スーパーマーケットにとって最も重要な経営戦略である出店戦略が十分に組めない状況となり、食品スーパーマーケットの成長が止まりかねない。では、その負債の中身を見てみたい。北雄ラッキーであるが、総資産189.65億円の内、負債が148.83億円(総資産の78.4%)である。その内、最大の項目が有利子負債であり、87.82億円(総資産の46.3%)である。マツヤは総資産が148.71億円であり、負債が116.75億円(総資産の78.5%)である。有利子負債は77.93億円(総資産の66.7%)である。マルヨシセンターは総資産が221.47億円であり、負債が196.40億円(総資産の88.6%)である。有利子負債は139.14億円(総資産の62.8%)である。いずれも、大きく負債、その中でも有利子負債に依存している財務構造であることがわかる。

  ちなみに、出店にかかわる資産である土地、建物、敷金保証金等の合計は、北雄ラッキーが136.28億円(総資産の71.8%)、マツヤが87.00億円(総資産の58.5%)、そして、マルヨシセンターが154.76億円(総資産の69.8%)であるので、いずれも、総資産の大半を占めており、食品スーパーマーケットにとって、新規出店がいかに多額の資産が必要であり、しかも、資産の大半を占めているかがわかる。

  見方を変えれば、食品スーパーマーケットは出店戦略=成長戦略=財務戦略であり、安定的な新規出店を継続してゆくには財務戦略が不可欠であり、その根幹が自己資本比率の充実にあるといえる。しかも、この自己資本比率は、増資には限界があるため、増やす方法はマーチャンダイジング力を高め、営業利益を増加させる以外にないといえ、財務戦略=マーチャンダイジング戦略ともいえ、P/LとB/Sが表裏一体となった関係となっていることがわかる。その1では、このマーチャンダイジング力を取り上げたが、いずれもこの中堅食品スーパーマーケット3社は、今期厳しい状況であり、今回取り上げた財務状況も、かなり厳しい状況であることがわかる。

  ここから、もう一歩進め、出店余力、すなわち、自己資本の範囲内でどこまで出店にかかわる資産をカバーしているかを見ると、北雄ラッキー-50.3%、マツヤ-37.0%、そしてマルヨシセンター-58.5%と、いずれも大きくマイナスであり、極めて厳しい出店構造であるといえよう。

  このように、今期の代表的な中堅食品スーパーマーケット、北雄ラッキー、マツヤ、そして、マルヨシセンターの財務状況を見てみたが、3社とも同様に厳しい財務状況にあるといえる。その1で解説した利益構造に加え、食品スーパーマーケットにとっても最も重要な成長戦略を支える財務構造も厳しい状況にあるといえ、今後、さらに競争が激化する状況の中で、どのような財務改善を行うかが課題といえよう。ただ、食品スーパーマーケットにとっての基本はマーチャンダイジング力を高め、出店余力を生み出し、成長戦略を打ち出すことであるので、まずは、今期、この3社のマーチャンダイジング力の動向に注目したい。

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May 06, 2009

No.1、中堅食品スーパーマーケット苦戦、2009年2月決算

   地方の代表的な中堅食品スーパーマーケット、北海道の北雄ラッキー、長野のマツヤ、四国のマルヨシセンター、3社の2009年2月期決算を見ると、いずれも、今期は厳しい決算となった。現在、地方の中堅食品スーパーマーケットは2つの競合にさらされている。ひとつは、イオン、セブン&アイH等のナショナルチェーンとの競合であり、そして、もうひとつは地元の有力食品スーパーマーケットとの直競合である。この2つの競合の中で、競争に打ち勝ち、売上を上げ、利益を出すのは至難の技であり、ここへきて、厳しい経営が続いているといえよう。

   まず、それぞれの決算の概要を見ると、北雄ラッキーであるが、売上高451.12億円(99.9%)、営業利益3.92億円(76.7%:売上対比0.86%)、経常利益2.69億円(71.1%:売上対比0.59%)、当期純利益3.34億円(344.2%:売上対比0.74%)と、当期純利益は増益であったが、営業経常段階では減収減益となった。マツヤは売上高357.28億円(108.7%)、営業利益4.57億円(79.1%:売上対比1.27%)、経常利益3.42億円(77.7%:売上対比0.95%)、当期純利益0.08億円(2.4%:売上対比0.02%)と増収、大幅な減益となった。そして、マルヨシセンターであるが、営業収益456.01億円(100.6%)、営業利益7.33億円(133.8%:営業収益比1.6%)、経常利益3.83億円(227.3%:営業収益比0.83%)、当期純利益-5.37億円と、営業経常段階では増収増益とはなったが、当期純利益が赤字という厳しい決算となった。
   
   この3社は、いずれも地方の中堅食品スーパーマーケットであり、売上規模も年商400億円前後とほぼ同じであり、まさに、地元の中堅食品スーパーマーケットであるといえる。現在、食品スーパーマーケットの年商規模は今期決算ではイズミの5,000億円強を頂点に、2,000億円から3,000億円規模の有力食品スーパーマーケットが各地区で群雄割拠している状況である。そして、その有力食品スーパーマーケットと激しく競合しているのが、年商500億円から1,000億円規模の中堅食品スーパーマーケットであるといえる。

   その代表的な3社が、北雄ラッキー、マツヤ、マルヨシセンターであるといえるが、今期決算結果は、マツヤは比較的堅調な売上であったが、利益に関しては、いずれも厳しい状況といえ、しかも、営業利益が売上対比1%前後という低い利益率である。競合状況が売上以上に、利益に直に影響が出ているといえ、利益を生み出すのが、いかに厳しい状況であるかが伺われる決算結果といえよう。

   そこで、この3社の営業利益算出の構造を見てみたい。まず、北雄ラッキーであるが、原価は75.1%(昨年751%)と昨年同様の原価となり、結果、売上総利益は24.9%(昨年24.9%)となった。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、26.4%(昨年26.2%)となり、0.2ポイント経費が上昇している。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は-1.5%(昨年-1.3%)と、マイナス幅が広がり、これに不動産、配送手数料等の営業収入が2.4%(昨年2.4%)のり、営業利益を0.9%(昨年1.1%)とプラスにもっていったが、経費の上昇が今期の営業利益を下げた結果となった。

   これに対し、マツヤであるが、原価は75.7%(昨年75.2%)と大きく上昇し、結果、売上総利益は24.3%(昨年24.8%)と下げた。一方、販売費及び一般管理費であるが、26.0%(昨年26.3%)と、こちらは0.3ポイント削減しており、結果、マーチャンダイジング力は差し引き-1.7%(昨年-1.5%)とマイナス幅がさらに広がった。これに営業収入が3.0%(昨年3.2%)のり、結果、営業利益は1.3%(昨年1.7%)と下げる結果となった。そして、マルヨシセンターであるが、原価は74.5%(昨年75.0%)と0.5ポイント改善した。結果、売上総利益は25.5%(昨年25.0%)と改善した。一方、販売費及び一般管理費であるが、25.0%(昨年25.0%)と昨年同様の数字となり、マーチャンダイジング力は差し引き0.5%(昨年0%)とプラス0.5%となった。これに営業収入が1.1%(昨年1.2%)のり、営業利益は1.6%(1.2%)と上昇した。

   こう見ると、いずれも、マーチャンダイジング力がマイナスか、わずかなプラスという状況であり、不動産収入、物流手数料収入等で営業利益を押し上げている構造であり、本来の食品スーパーマーケットとしての商品売買から得られる利益で経費を賄うマーチャンダイジング力が競争の激化により、大きくプラスにもっていけない状況にあるといえる。特に、3社ともに、経費比率が25.0%前後であり、この経費比率をいかに下げられるかが課題といえよう。そのためにも、経費削減以上に、販売効率、特に坪売上をいかに引き上げ、相対的に経費比率を下げるマーチャンダイジング戦略が課題といえよう。

   このように、ここでは、北雄ラッキー、マツヤ、マルヨシセンター、3社の2009年2月期の営業構造を見てみたが、いずれも、経費比率が25.0%前後と高め水準となり、原価の改善で利益を出すのが難しい状況にあるといえる。したがって、営業利益の源泉が不動産収入、物流手数料収入等に頼らざるを得ない利益構造となり、マーチャンダイジング力が問われる営業構造となっているといえよう。まずは、経費比率、そして、原価改善をはかり、営業収入に頼らない、マーチャンダイジング力をいかに高めるかが喫緊の課題といえよう。

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May 05, 2009

エコス、2009年2月期決算、減収減益、厳しい決算!

   エコスが4/15、2009年2月期決算を公表した。結果は営業収益1,180.16億円(95.9%)、営業利益6.20億円(88.8%:営業収益比0.52%)、経常利益5.50億円(88.4%:営業収益比0.46%)、3.38億円(1,031.4%:営業収益比0.28%)となり、当期純利益はわずかに増益となったものの、営業、経常段階では減収減益となる厳しい決算となった。また、自己資本比率も15.2%(昨年13.9%)となり、昨年よりは若干改善したが、なお、厳しい状況が続いており、今後、営業面だけなく、財務面の改革も急務といえ、今期は、一段と経営改革に踏み込む必要があろう。

   その今期の通期予想であるが、営業収益1,121.20億円(95.0%)、営業利益10.00億円(161.1%:営業収益比0.89%)、経常利益9.30億円(169.0%:営業収益比0.82%)、当期純利益3.50億円(103.3%:営業収益比0.31%)であり、依然として、減収となる予想ではあるが、利益に関しては増益を予想しており、今期は成長性よりも、利益を重視した経営戦略を打ち出すものといえよう。ただ、営業利益率は営業収益比で0.89%という予想であり、今後、いかに、営業利益率を引き上げるかも課題といえよう。

   では、エコスの営業構造を見てみたい。今期の原価であるが、74.1%(昨年74.6%)となり、昨年よりも原価は0.5ポイントと大きく改善されている。結果、売上総利益は25.9%(昨年25.4%)と上昇した。一方、販売費及び一般管理費であるが、27.4%(昨年26.9%)と0.5ポイント上昇しており、今期は経費の上昇がみられ、利益を圧迫している状況である。その要因は、経費の総計は-7.85億円と減少しているが、売上が減収となったため、率では上がるという結果となったためである。経費比率は絶対額を下げることではなく、売上とのバランスで引き下げることがポイントであることがわかる。その結果、差し引きマーチャンダイジング力は-1.5%(昨年-1.5%)と、昨年と同じ比率となったが、依然として、マイナスの状況であり、利益の確保が厳しい状況である。

   これに、営業収入が2.0%(昨年2.1%)のり、営業利益は0.5%(昨年0.6%)となり、売上の減収とあいまって、88.8%という営業利益の減少となった。原価は改善したが、経費が売上のダウン以上に改善できなかったために、相対的に経費増となり、さらに、営業収入も0.1ポイント下がったために、収益が減収となった構図である。特に、気になるのは、経費自体は絶対額ではほとんどの項目がマイナスとなっているが、減価償却費のみ大きくプラスになっており、出店にかかわる資産が財務だけでなく、営業面にも影響がでていることである。

   その出店にかかわる資産の状況、土地、建物、敷金保証金等の状況を見てみたい。今期の数字は227.5億円(昨年234.2億円)であり、これは総資産378.00億円の60.1%である。この数字を見る限り、他の食品スーパーマーケットと比べても極端に高い数字ではないが、問題は、この資産の原資である。現在、エコスの自己資本比率は15.2%であり、ここから差し引き、出店余力を計算すると、-44.9%となる。これは、出店の大半を負債に負う財務構造となっているということであり、自己資本の範囲内では、新規出店が難しい状況であり、成長戦略を打ち出すことが財務上厳しい状況にあることである。

   その負債の状況であるが、有利子負債が168.21億円(昨年175.69億円)と多額な金額であり、総資産に占める割合は44.5%となり、負債の中では52.7%と半分以上であり、経営に重くのしかかっている状況である。経営構造がレバレッジとなっており、負債、その中でも有利子負債に依存する財務構造となっており、新規出店余力が厳しい状況であり、成長戦略を打ち出しにくい財務構造である。

   このような今期の厳しい結果を踏まえ、4/15、エコスは組織改革を断行し、営業戦略の強化を打ち出している。その内容は、商品部の再編成と店舗運営部の活性化である。商品部の再編については、社長自ら営業本部長を兼ね、率先して営業の指揮を執ることである。そして、そのもとに、商品部を生鮮食品部(売上構成比45.1%)とグロサリー部(売上構成比54.6%)の2つに分け、しかも、販売促進担当を店舗運営部から分離し、営業本部長の直轄のもとで、商品部と店舗が一体となって販促効果の強化を行うという。一方、エリア区分もこれまでの8エリアから5エリアへ再編し、エリア単位での活性化を進めるとともに、エリアマネジャーの役割を高め、執行責任と利益責任を明確にするという。事実上、社長が直接、現場の指揮を執る社長直轄の組織体制への転換であり、非常時の体制に入ったといえよう。

   このように、エコスの今期、2009年2月期の決算は、当期純利益では増収を確保したものの、営業、経常段階では減収減益の決算となり、自己資本比率も15.2%という厳しい経営状況にあるといえる。食品スーパーマーケットの経営の根幹はマーチャンダイジング力の強さにあるが、現在、このマーチャンダイジング力がエコスでは-1.5%のマイナス状況であり、ここをいかにプラスにもってゆけるかが、最優先課題であるといえよう。そのため、来期は、社長自らが陣頭指揮をとる、非常時の組織体制をつくって臨むことになるが、その効果がいつ数字に表れるか、まずは、次の第1四半期、そして、中間決算の数字に注目である。

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May 04, 2009

家計調査データ速報、2009年3月度、伸び悩む!

   家計調査データの最新、2009年3月度が5/1、総務省統計局から公表された。全体の金額は1日1世帯当たり10,021.94円(昨対99.4%)、外食を除く食品は1,942.03円(99.2%)となり、双方ともに、わずかに昨対を下回り、この3月度は消費が伸び悩んだ結果となった。また、外食を含む食品も2,370.58円(98.1%)と、さらに数字は下がり、ここへきて、家計は消費を抑制しはじめたといえよう。ちなみに、この数字をもとにエンゲル係数を算出してみると、2370.58円÷10,021.94円=23.6%となり、日本国民は現在、食品に約2割強費やしていることになる。また、この中には、外食が含まれているので、食品小売比率を算出すると、1942.03円÷10,021.94円=19.3%となり、わずかに2割を切る状況であり、およそ、消費の20%が食品小売業への支出といえる。

   このような中で、食品スーパーマーケットで取り扱う消費項目の状況を見てみると、伸びた項目は、油脂・調味料107.94円(102.0%)、穀類219.52円(101.7%)、菓子類237.06円(101.4%)、酒類110.45円(100.9%)、飲料113.81円(100.1%)の5項目であるが、いずれも、伸び率はわずかであり、消費が伸び悩んでいる状況が鮮明である。逆に、消費が下がった項目を見てみると、魚介類228.39円(95.5%)、果物87.81円(96.3%)、野菜・海藻268.71円(97.4%)、調理食品251.97円(99.0%)、乳卵類106.87円(99.8%)、肉類209.55円(99.8%)という状況であり、特に、生鮮関係が厳しい状況であった。昨年まで好調であった肉類もここへきて、伸び悩んでおり、消費環境が大きく変わりつつあるといえよう。

   そこで、この3月度、その他を除き、伸び率の高かった細目を見てみると、No.1はウィスキー3.90円(155.1%)であり、ダントツである。ここ最近、ウィスキーは絶好調であり、2月度3.75円(141.2%)、1月度2.87円(158.9%)、昨年12月度4.39円(122.5%)、11月度3.77円(125.6%)、10月度3.61円(140.0%)、9月度3.03円(95.9%)、8月度3.45円(125.9%)、7月度3.03 袁(104.4%)、6月度3.63円(109.0%)、5月度2.87円(88.1%)、4月度2.63円(61.7%)、そして、3月度2.52円(60.0%)という、状況である。昨年が大きく、落ち込んでおり、その反動もあると思われるが、それを加味しても、明らかに伸びているといえよう。

   No.2はバナナ16.13円(140.8%)であり、これも異常値が続いており、逆に、この高い数字が定着したといえよう。昨年中盤のバナナダイエットがはやって以来、数字が落ちることなく続いており、しかも、消費額が16円台と極めて高い数字である。ここで取り上げている消費額は1世帯1日当りに換算した数字であるので、ほぼ、食品スーパーマーケットの金額PI値と同じ数字となっている。したがって、10円を超えるカテゴリーは重点カテゴリーといえ、バナナの16.13円は極めて高い超重点カテゴリーといえる高い数値である。

   以下、ベスト10まで見てみると、No.3. キウイフルーツ2.00円(134.8%)、No.4冷凍調理食品13.42円(128.8%)、No.5かに2.87円(123.6%)、No.6ぎょうざ5.48円(119.7%)、No.7かき(貝)2.61円(119.1%)、No.8スパゲッティ4.52円(116.7%)、No.9ぶどう0.23円(116.7%)、そして、No.10さやまめ5.13円(114.4%)となる。こう見ると、昨年前半の冷凍餃子、冷凍食品問題の反動や値上げ関連商品等が伸びているといえ、これらの消費額が伸びているというよりも、もどったか、値上げにより底上げされた感が強いといえる。

   これに対して、特に、消費額が下がった細目を見てみると、みかん5.16円(69.3%)、カステラ2.52円(75.0%)、干しいわし1.00円(77.5%)、干ししいたけ1.42円(78.6%)が80%以下である。ついで、90%以下を見てみると、はくさい漬1.77円(80.9%)、魚介のつくだ煮2.68円(81.4%)、あじ4.03円(81.7%)、乾うどん・そば3.29円(82.9%)、煮干し1.03円(84.2%)、たらこ7.13円(85.0%)、いか7.03円(86.9%)、ほうれんそう6.26円(87.4%)、ねぎ6.81円(87.6%)、ピーマン4.39円(87.7%)、ぶどう酒5.35円(87.8%)、もち2.45円(88.4%)、にんじん5.97円(88.9%)、調理パン9.77円(89.1%)、うなぎのかば焼き4.29円(89.9%)である。

   やはり、全体の傾向を反映し、伸びた細目よりも、下がった細目の方が多く、しかも、幅広く、様々な分類に及んでおり、この結果を見ても、この3月度の消費額は厳しい状況であるといえよう。昨年前半から続いていた資源、エネルギー関連の相場高による値上げ関連商品の好調さは、昨年後半の金融危機により、一変し、一転、インフレからデフレに転じ始めた動きが明らかであるといえる。当時はその影響でPBが空前のラッシュとなり、トップバリュ、セブンプレミアム等が存在感を増し、消費者からの強い支持を受けたが、この状況を見ると、明らかに、NBの価格が下がり始めており、PBの価値が相殺されつつあるといえ、消費環境が変わりつつあるといえよう。

   この家計調査データと同時に公表されたCPI(消費者物価指数)も、昨対を割り、明らかにデフレ感が漂いはじめているといえ、これまでとも違い、昨年とも大きく違う消費環境に突入したといえ、食品スーパーマーケットとしても、この数字を冷静に受け止め、マーチャンダイジング戦略をここで再構築する段階にきたといえよう。4月移行の数字がどういう結果となるかを見極める必要があるが、この時点で消費の潮目が変わったといえそうである。

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May 03, 2009

CPI、2009年3月度、昨対割れ、デフレか?

   総務省統計局が5/1、2009年3月度のCPI(消費者物価指数)を公表した。5/2の日経新聞でも取り上げられているが、「デフレの影再び、消費者物価、1年半ぶり下落」、「小売り値下げ競争、今月電気代下げ、「夏に2%低下」見方」多く」という見出しの記事であり、デフレの懸念を伺わせる記事内容である。CPIの指数は、大きく、3つの公表数字がある。総合指数、生鮮品を除く総合指数、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数である。この3月度は、いずれの指数も昨年対比では下落傾向となった。

   実際、総務省が公表したコメントは、「(1) 総合指数は平成17 年を100 として100.7 となり、前月比は0.3%の上昇。前年同月比は0.3%の下落となった。(2) 生鮮食品を除く総合指数は100.7 となり、月比は0.3%の上昇。前年同月比は0.1%の下落となった。(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は98.8 となり、前月比は0.3%の上昇。前年同月比は0.3%の下落となった。」というものであり、CPIの下落傾向が鮮明であるといえよう。

   総務省では、この3つの数字をグラフで示し、過去3年間と比較している。これを見ると、特に、(3)の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数が今年に入り、3ケ月連続で最も低い数字となっており、食料品、エネルギー以外は明確なデフレ傾向であるといえる。(1)の総合指数、(2)の生鮮食品を除く総合指数は、この3月度は昨年を下回ってはいるが、過去2年間と比べると、まだ上回っている。しかも、昨年は過去2年間と比べ、大きく上回っていることからも、昨年の食料品、エネルギーが異常値であったことがわかる。また、この(1)、(2)のグラフを見ると、昨年9月が転機となっており、9月までは、CPIが上昇傾向にあったが、9月以降下がりはじめ、特に、11月から急降下であるので、まさに、9.15のリーマンブラザースショックがCPIの転機となったといえよう。

   では、この3月度の10大費目の前年同月比と寄与度を見てみたい。最も、大きく下がった費目は交通・通信であり、-5.4%(寄与度-0.76%)である。ついで、教養・娯楽-1.1%(寄与度-0.12%)、生鮮食品-2.1%(寄与度-0.09%)となり、この3つの費目が全体への影響度の大きかった。少し意外だったのは、光熱・水道であり、1.6%(寄与度0.11%)と、値下げが5月ということで、3月度は、まだ、プラスとなっており、5月以降は、この費目も下がってくると思われ、さらに、CPIは下落傾向が鮮明になるのではと予想される。

   逆に、この3月度、10大費目で上昇したものを見てみると、生鮮食品を除く食料が2.9%(寄与度0.65%)と最も大きく、食品の値上げの影響が、この3月度はまだ大きいといえる。これも、ここ最近、特に、小売業側から、強い値下げが起こりはじめており、一部、メーカーも値下げに踏み切るなど、動きがあり、4月移行は、下がり始めるのではないかと予想される。ついで、先にあげた光熱・水道1.6%(寄与度0.11%)となり、教育0.8%(寄与度0.03%)となる。

   こう見ると、この3月度はCPIが下落傾向にはなっているが、そもそも、昨年4月頃から鮮明になった、資源エネルギーへの投機による異常な高騰による、食品の値上げラッシュの影響がまだ尾を引いているといえ、今後、その影響が急激に弱まると予想されるので、次回、4月以降、この3月以上に下落傾向が鮮明になるのではないかと予想される。日経新聞の見出しにあるように、「デフレの影再び」がまさに懸念される状況といえよう。

   さて、では、ここで、さらに、詳細な状況を、特に、食品スーパーマーケットの取扱い商品を中心に見てみたい。まずは、中分類の状況であるが、下落したのは、他の光熱-31.0%、教養娯楽用耐久財-21.0%、自動車等関係費-9.6%、生鮮野菜-4.1%、家庭用耐久財-3.9%である。逆に上昇したのは、電気代8.1%、教科書・学習参考教材7.6%、菓子類6.7%、ガス代6.1%、乳卵類5.6%である。

   次に、詳細な状況であるが、ねぎ-24.2%、さといも-21.0%、れんこん-17.4%、にんじん-15.5%、だいこん-15.1%、さやいんげん-13.9%、り んごB-13.3%、レモン-13.1%、はくさい-11.5%、キャベツ-11.4%、キウイフルーツ-10.6%が、10%以上昨年対比がマイナスになった項目であり、すべて青果となった。ついで、5%以上下落した項目はえのきだけ-9.8%、アスパラガス-9.7%、かれい-9.4%、グレープフルーツ-9.2%、さんま-8.9%、生しいたけ-8.9%、ミネラルウォーター-8.7%、かぼちゃ-8.5%、風味調味料-8.4%、レタス-6.6%、オレンジ-6.6%、牛肉B-5.8%、調理カレー-5.7%、たこ-5.5%、かつお-5.0%、たまねぎ-5.0%である。生鮮食品がほとんどであるが、一般食品も一部見られる。

   このように、この3月度のCPI(消費者物価指数)は下げ基調が定着しつつあるといえる。昨年の4月から、資源エネルギー価格の高騰に端を発した食品等の値上げにより、大幅に上昇傾向となったCPIも4月以降は、ここ最近の小売業の動き、メーカーの動き、そして、政府の動向を見ると、さらに下げ基調が加速されるのではないかと予想される。今後は、むしろ、日経新聞の記事のように、デフレ懸念の方が心配される状況といえ、この数ケ月で明らかにCPIはインフレからデフレ基調に反転したといえよう。

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May 02, 2009

丸久、2009年2月期決算、増収増益、好調、財務が課題!

   丸久が2009年2月期の決算を4/8、公表した。結果は営業収益760.04億円(112.3%)、営業利益37.50億円(108.7%:営業収益比4.9%)、経常利益35.87億円(111.1%:営業収益比4.7%)、当期純利益16.70億円(115.4%:営業収益比2.2%)となる、増収増益となる好調な決算となった。しかも、営業利益率も4.9%と高く、今期決算を公表した食品スーパーマーケット業界の中でも高収益の決算となった。

   丸久の営業収益が2桁を超えた要因は、4店舗の新規出店が大きかったといえる。昨年6月にアルク彦島店(山口県)、8月にアルク桜木店(山口県)、11月にアルク廿日市店(広島県)、そして、今年1月にアルク港町店(山口県)を出店しており、その結果、現在、丸久本体は53店舗となった。なお、連結では、子会社のサンマート、かいたが加わり、合計78店舗となる。特に、今期、丸久の4店舗の新店は53店舗のほぼ10%に当たり、しかも、アルクというSSMタイプの業態であり、全体への売上貢献が大きかったといえる。しかも、丸久は今期、既存店も堅調に推移しており、売上は103.3%であった。特に、全体の売上の約80%を占める生鮮食品と加工食品が103.4%、104.3%と好調であったことが大きかったといえよう。

   一方、営業収益だけでなく、営業利益においても高収益をもたらした要因を見てみたい。今期の原価は75.0%(昨年74.8%)となり、昨年よりも0.2ポイント上昇した。結果、売上総利益は、25.0%(昨年25.2%)となった。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、22.3%(昨年22.5%)と、0.2ポイント削減しており、経費の方は改善している。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は、2.7%(昨年2.7%)となり、昨年同様の数字となった。原価の上昇を、経費の削減で相殺しており、マーチャンダイジング力を昨年同様の数字とし、しかも、2.7%と食品スーパーマーケット業界のマーチャンダイジング力としては、高い数字である。そして、これに、不動産収入、その他収入の営業収入が2.4%(昨年2.5%)とのり、結果、営業利益は5.1%(昨年5.2%)と、わずかに、0.1ポイント下がったが、5%を超える高収益となり、売上とあいまって、営業利益が大きく上昇した。なお、この数字は売上対比であり、冒頭に掲げた数字は営業収益対比であるので、比率に若干の誤差が生じているが、売上対比では5%を超える、高収益であった。

   丸久は、この売上対比の営業利益が5%を超えるという、食品スーパーマーケット業界の中でも、高収益であり、マーチャンダイジング力と不動産、その他の営業収入とのバランスもよいのが特徴である。特に、経費比率を22%前半で抑えていることが、高収益をもたらしているといえ、食品スーパーマーケットにとって、経費比率を20%前後に抑えられるかどうかが、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、結果、営業利益を高い水準で維持できるかどうかのポイントであることが、丸久の数字を見るとわかる。

   では、今期、順調に新規出店を果たした丸久の出店余力を見てみたい。まず、丸久の自己資本比率であるが、27.1%(昨年24.0%)と、昨年より改善しているが、まだ低い数値であり、負債に70%以上依存している財務構造となっている。その負債の主要項目である長短借入金等の合計であるが、158.86億円(昨年159.61億円)となり、総資産341.47億円の46.5%であり、経営に重くのしかかっている状況である。したがって、資産に目を転じると、出店にかかわる資産である土地、建物、差入敷金保証金等の合計は239.02億円であり、総資産の69.9%であるので、出店余力は差し引き、-42.8%となり、負債に大きく依存する財務構造である。今期、長短借入金の増加なしに、4店舗の新規出店を果たしてはいるが、出店余力は、厳しいものがあり、今後、一層の自己資本比率の改善が急務といえよう。

   ちなみに、丸久の今期のキャッシュフローの流れを見てみると、営業キャッシュフローは29.26億円、投資キャッシュフローは-21.74億円であり、その内訳は固定資産の取得による支出、すなわち、新店関連が大半を占めている。結果、フリーキャッシュフローは7.52億円となり、順流である。そして、財務キャッシュフローであるが、-7.80億円であり、その内訳をみると、若干であるが、長短借入金等を削減している。その結果、トータルのキャッシュフローは、-0.28億円と、わずかに現金及び現金同等物を取り崩してはいるが、ほぼ営業キャッシュフローの範囲内で回っており、長短借入金等の削減はあまり改善されなかったが、新規出店はキャッシュフローの範囲内であることがわかる。

   このように、丸久の今期の決算は増収増益の好決算となり、新規出店もキャッシュフローの範囲内で4店舗の出店を果たすことができた。ただ、残念ながら、自己資本比率は27.1%と脆弱であり、負債、特に長短借入金等が財務に重くのしかかっている状況である。今期は、財務の改善よりも、成長戦略に重きを置いた経営戦略であったが、今後は、財務改善のバランスをとることも、中長期的には避けて通れない課題であるといえ、丸久が、来期以降、どのようなバランスのとれた経営戦略を打ち出すかに注目である。

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May 01, 2009

Olympic、2009年2月期決算、減収減益、純利増益!

   Olympicが4/14、2009年2月期決算を公表した。結果は、営業収益1,142.86億円(87.1%)、営業利益7.86億円(82.3%:営業収益比0.68%)、経常利益7.42億円(84.8%:営業収益比0.64%)、当期純利益3.96億円(454.5%:営業収益比0.34%)となり、当期純利益はプラスとなったが、営業、経常段階では減収減益となる厳しい決算であった。

   Olympicは売上の約70%弱がハイパーマーケットであり、純粋な食品スーパーマーケットは10%を下回り、食品スーパーマーケットというよりも、GMS業態に近い小売業である。食品の売上構成比も40%強であるが、最も、売上構成比が高い部門は一般食品の約30%弱であり、一般食品が大きな柱となっている。ついで、ホビー、家庭雑貨がいずれも15%弱で、一般食品についで、大きな売上構成比である。衣料品は5%以下であるので、こう見ると、HCに近い業態ともいえ、衣料品よりも、住居関連商品に重点をおいた食品強化型の小売業といえよう。

   今期、減収となった要因は、売上構成比約70%を占めるハイパーマーケットが97.9%になったことに加え、約10%のハイパーストアも94.0%になったことが大きかったといえる。食品スーパーマーケットは102.0%であったので堅調な売上ではあったが、売上構成比が10%を下回るため、全体を押し上げるまでにはいかなかった。また、商品別に見ると、生鮮食品の100.7%(売上構成比12.6%)、その他の120.5%(売上構成比0.9%)を除き、すべての部門が昨年を下回り、厳しい状況であった。特に、スポーツ、カルチャー、衣料品が95%前後となったことが大きかったといえる。

   一方、利益の方であるが、原価は71.6%(昨年72.2%)と0.6ポイント下がっており、売上が伸び悩んだ中、原価の改善が進んだ。結果、売上総利益は28.4%(昨年27.8%)と上昇しており、利益率は改善した。また、販売費及び一般管理費であるが、32.7%(昨年32.8%)と、こちらも0.1ポイント改善した。ただ、32.7%は、かなり高めの経費比率であり、結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-4.3%(昨年-5.0%)と0.7ポイント改善したが、マイナス幅は大きく、今後、経費比率をどう引き下げるかが課題といえよう。

   一般に、GMS業態は経費比率が高い傾向があり、商品売買から得られる粗利である売上総利益から、販売費及び一般管理費を差し引いた粗利(マーチャンダイジング力)がプラスなることはまずないのが実態である。セブン&アイ、イオン等の大手小売、GMSタイプの食品スーパーマーケットも押し並べて、30%前後、企業によっては、30%強となる場合もあり、この経費比率を30%弱、できれば、25%前後まで落とせるかどうかが、共通の経営課題といえよう。

   では、このマーチャンダイジング力のマイナスをどうカバーし、利益を出しているかであるが、それが、営業収入であり、この部分がGMSやGMSタイプの食品スーパーマーケットは極めて高く、ここが営業利益のプラスの源泉になっているのが実態である。その中身は、企業により、まちまちであるが、大きくは不動産収入と物流収入に分かれる。特に、ここ最近は、物流収入の構成比がますます上がっており、仕入の集約、売上の増加によって、この部分の収入をいかに増やすかが経営戦略の柱となりつつある。ただ、この部分はいずれの収入も、売上に連動するので、いかに、増収を確保するかが、営業利益の鍵を握っているといえる。

   では、Olympicの今期の営業収入を見てみたい。今期は、5.0%(昨年5.8%)と、0.8ポイント昨年よりも下がっているが、5%という、通常の食品スーパーマーケットではありあえない高い数値である。ただ、今期、この収入が下がったため、営業利益は0.7%(昨年0.8%)と減収の要因となった。原価、経費の改善は進んだにもかかわらず、営業収入の減収が響き、減益という厳しい結果となった。

   さて、ここ最近、Olympicは安定した新規出店による増収が確保できない状況が続いているが、今期の出店余力を見てみたい。まず、自己資本比率であるが、41.6%(昨年40.2%)と若干の上昇がみられる。したがって、負債比率は約60%であり、その主要項目である長短借入金等は233.20億円であり、総資産675.94億円に占める割合は34.5%と、負債の半分以上を占めている。一方、出店にかかわる資産である土地、建物、差入敷金、差入保証金等の合計は458.41億円(1店舗当たり9.9億円)であり、総資産の67.8%である。したがって、差し引き、出店余力は-26.2%であり、負債に大きく依存する出店構造となっている。Olympicはハイパーマーケットが約70%であるので、出店にかかわる資産も1店舗当たり約10億円と大きい。したがって、自己資本の範囲内で安定的に新規出店を行うのは難しい業態ではあるが、今後、さらに、自己資本比率を引き上げ、出店余力を高める必要があろう。

   このように、今期のOlympicは減収減益となる厳しい結果となったが、営業面では、主力のハイパーマーケットが住関連商品の低迷により、厳しい結果とはなったが、原価、経費は改善されており、マーチャンダイジング力は昨年よりも、一段と増している状況である。ただ、売上が上がらないと、営業収入が伸び悩んでしまい、マーチャンダイジング力の改善が相殺されてしまいかねない。今期はまさに、これが原因で営業利益が減収となったといえる。今後、経済情勢はますます混迷を極めることが予想されるが、Olimpicがどのような経営戦略、特に、増収確保の戦略を打ち出すかに注目したい。

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