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May 31, 2009

コンビニ、公取動くか、単品管理、新たな局面に!

   5/28の日経に、「セブンイレブン排除命令へ、公取委、加盟店の値引き制限」という見出しの記事が掲載された。内容は、公正取引委員会が5/28、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)を認定して、セブンイレブンジャパンに対して排除措置命令を出す方針を固めたもようだということである。現時点では、公正取引委員会から排除命令は出ていないが、すでに、日経を含め、各報道機関が報じているので、確度の高い情報といえ、近々に、排除命令がでるものと思われる。

   今回の問題がコンビニ業界にとって重要なポイントはコンビニの価格政策が揺らぎ、これまでの定価販売による一律価格の慣行が崩れ、コンビニ同士はもちろん、他業態との競争が激化し、コンビニの売上に影響がでるのではないかということもあるが、それ以上に大きなインパクトはコンビニ本部の収入減への影響といえよう。

   今期のセブンイレブンの決算を見ると、セブンイレブン本部の営業総収入は大きく2つに別れており、ひとつは加盟店からの収入であり、もうひとつが自営店からの売上である。その金額は加盟店からの収入が3,948.63億円(昨対106.8%)であり、自営店からの売上は1,409.89億円(92.1%)であり、これにその他の営業収入が若干加わり、合計5,407.73億円(102.4%)である。一般にはコンビニの売上は自営も含め、全店舗の売上であると思われている場合があるが、コンビニ本部の営業収入は加盟店からの収入+自営+αであり、日本では圧倒的に加盟店からの収入が多く、セブンイレブンの場合でも全体の73%を占めているのが実態である。

   しかも、これは、いわゆる粗利分配方式により、ロイヤルティの比率にもとづく収入であり、加盟店の売上がそのままコンビニ本部の売上になるわけではない。今期セブンイレブンの決算数値をもとに単純計算すると、今期のセブンイレブンの加盟店からの収入3,948.63億円を加盟店の売上2兆6,215.67億円で割ると、15.06%であり、仮に粗利が30%であると、ロイヤリティは約50%となる。これがコンビニ本部の売上の構造である。したがって、セブンイレブンジャパンのセブン&アイHへの売上貢献度は5,407.73億円であり、今期のグループの決算数字、5兆6,499.48億円の約10%弱である。ただし、セブンイレブンはアメリカにもあるので、コンビニ全体として、これが加算され、2兆3,957.01億円となり、アメリカのセブンイレブンの方が圧倒的な売上貢献度である。

   さて、今回の公正取引委員会の問題は、この加盟店からの収入3,948.63億円(昨対106.8%)に直接影響がでる可能性が高く、そのインパクトがどのくらいになるかが読み切れないところにある。今回、公正取引委員会が問題にしているのは、デイリー商品、特に弁当などの廃棄対象商品に対する値引き販売への制限の禁止である。これまで、一般的にコンビニ本部では廃棄対象商品については値引いて販売することは、値崩れを起こすので、価格体系をできるだけ維持するよう推奨し、そのため加盟店は廃棄を余儀なくされてきたきらいがあった。

   問題は、この時、本部側の収入と加盟店側の収入がどうなるかであるが、契約では廃棄商品の原価は加盟店側がもつことになっており、結果、粗利の中に廃棄商品の原価は含まれず、販売された商品のみの原価で計算されることになり、そこから本部へのロイヤリティが計算されることになる。したがって、廃棄した場合でも、本部側のロイヤリティは売上に応じた一定の率が維持されるが、加盟店側は、その率から廃棄分の原価のマイナスが発生することになる。これは見方を変えれば、加盟店側にマイナスチャージが発生しているともとれ、いわゆる、ロスチャージ問題となる。

   したがって、これが加盟店には不利な会計方式であるということになり、今回の公正取引委員会の排除命令後には、廃棄がでないように加盟店が独自に見切り販売が可能となることになる。その場合、売上、原価が通常の会計と同様に計算されるので、見切りが増えれば増えるほど、その分、粗利が減り、本部のロイヤリティティが減ることになる。当然、加盟店側は廃棄の損を解消するために限界まで値引きを入れることが予想され、商品によっては粗利が激減することも避けられないといえよう。

   これは、これまで以上に、コンビニにおける単品管理の精度が要求されることになるといえる。特に、これまでは、価格と数量の関係はあまり考えなくてよかったが、今後は、いくら値引いたら、どのくらい売れるかを予測し、さらに、その時の粗利はどのくらいになるかを瞬時に計算することが加盟店側で必要といえ、次元の違う単品管理が要求されることになろう。まさに、商売そのものといえ、加盟店のオーナーにとっては、有利であるが、デイリー商品の単品管理の精度がそのまま粗利の差に反映され、加盟店格差が広がるのではないかと思われる。また、本部にとっては、加盟店の粗利収入減の影響が懸念され、それがそのまま、ロイヤリティ収入に直結するので、営業収入へ響く可能性がある。

   各社報道によると、公正取引委員会のセブンイレブンへの排除命令はほぼ確実といえ、今後は、コンビニ業界全体が、価格政策を再検討し、粗利対策を再構築する必要に迫られるといえよう。これまで、培ってきたコンビニの単品管理の販売技術に価格、粗利を組み込み、さらに進化した新単品管理ノウハウの開発が収益の決め手となるのではないかと思われる。いずれにせよ、ここ数週間、公正取引委員会、そして、コンビニ各社の動向に注目である。

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