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June 24, 2009

トライアルカンパニー、2009年3月期決算を公表!

   トライアルカンパニーが2009年3月期の決算を公表した。今期決算で大きく昨年と変化したのは資本金である。昨年のトライアルカンパニーの資本金は4.49億円と売上規模の割合には小さく、純資産も合計27.01億円と総資本455.23億円のわずか5.9%であり、負債に95%弱依存する厳しい経営が続いていた。ところが、今期公表された決算を見ると、資本金が19.49億円と約4倍となり、それに伴い、純資産も61.20億円となり、総資産521.13億円の11.7%と10%を超えるまでになった。それでも、依然として、90%弱負債に依存している状況は変わらず、厳しい経営状況ではあるが、資本金が大きく増加したことは今後の成長戦略を描く上でも、大きな改善といえよう。

   では、その資本をどこから調達したかであるが、昨年の12月に第三者割当方式により、日本政策投資銀行にA種優先株を発行し、約30億円資金調達したことによる。結果、資本金はその内、半分の約15億円を組み込み、これまでの4.49億円から19.49億円となり、大きく資本金、そして、純資産が増加したといえる。

   これに関して、トライアルカンパニーは、「従来、当社では今年度の株式上場を展望しておりましたが、サブプライム問題の影響による株式市場の混乱と、景気後退により当社が得意とする低価格市場の成長性が高まっている局面において、経営の自由度を維持するため、当面上場を延期することを決定し、それに代替する資本増強の手段として、本優先株式の発行を行うことといたしました。」と、コメントしており、本来は、今期上場し、資金調達を実施する予定であったが、経済情勢等を考慮し、代替案としての資本増強であるとしている。今回はA種優先株であり、議決権等はないと思われ、経営権が移ることはないと思われるが、資本としては大きな変化である。

   トライアルカンパニーは、資本が増強したとはいえ、約90%弱を負債に依存している状況であり、その中身は買掛金が200.01億円(昨年161.44億円)と最も大きく、総資産の38.3%、ついで、有利子負債の174.27億円(昨年189.30億円)であり、総資産の33.4%となる。したがって、資産の約70%を買掛金と有利子負債で回している経営状況といえ、資本の増強は最大の経営課題であったといえよう。

   その資産の状況であるが、出店にかかわる資産である土地、建物、資金及び保証金の合計は212.18億円(昨年189.55億円)と総資産の40.7%である。これにディスカウントストア特有の在庫が136.78億円(昨年112.47億円)と総資産の何と26.2%もあり、これも出店関連の資産に含めると、総資産の66.9%となる。したがって、純資産比率11.7%から差し引いた出店余力は、-55.2%であり、ほぼ大半を負債で補う出店構造であり、経営的にはかなり厳しい状況といえよう。

   ちなみに、トライアルカンパニーの現在の店舗数は97店舗であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は3.59億円、在庫を抜くと2.18億円であり、在庫を入れても、通常の食品スーパーマーケットより少ない出店にかかわる資産であり、在庫を抜いた場合はさらに少ない資産での出店が可能な独特な出店構造であるといえる。これは、これまで、居抜き出店が多く、現在でも居抜き出店を出店戦略に据えているためと思われる。トライアルカンパニーが急激に店舗数を増やし、急成長した要因はここにあるといえ、出店にかかわる資産を居抜き出店を基本にし、極力抑え、買掛金と有利子負債に依存した成長戦略をとってきたためと思われる。その意味で、今後の成長を安定的に進めてゆくためには、資本の増強が避けて通れない経営課題といえ、今回、日本政策投資銀行にA種優先株を引き受けてもらうことになったと思われる。

   そこで、今期の決算結果であるが、売上高1,711.00億円(昨対113.76%)であり、積極的な新規出店により、急成長を遂げているが、営業利益は9.46億円(昨対36.4%:売上対比0.56%)と、大きく減益となった。経常利益10.04億円(昨対39.12%:売上対比0.58%)、当期純利益4.18億円(32.7%:売上対比0.24%)も減益であり、しかも、営業利益は、売上対比0.5%と今期は極めて厳しい決算であったといえよう。

   営業利益が大きく減益になった要因であるが、原価が84.35%(昨年83.80%)と、上昇がみられる。結果、売上総利益は15.65%(昨年16.20%)と、減少しており、今期は、原価の上昇が大きかったといえる。それにしても、売上総利益15.65%はかなり低い利益といえ、いかに、トライアルカンパニーがディスカウント業態であるかがわかる。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、16.34%(昨年15.15%)であり、経費にも上昇がみられる。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は、-0.69%(昨年1.05%)とマイナスとなった。原価、経費双方が上昇しての厳しい営業状況であったといえよう。これに、不動産収入等の営業収入が1.25%(昨年0.68%)のり、結果、営業利益は0.56%(昨年1.73%)と大きく減益となり、売上高の113.76%でもカバーできなかった状況である。

   このように、2009年3月期のトライアルカンパニーは売上高は好調に推移したが、営業利益が原価、経費、双方の上昇がみられ、大きく減益となり、厳しい決算結果となった。また、予定していた上場が見送りとなり、A種優先株を発行し、新たな資金調達を行ったが、まだ純資産比率は11.7%と低い状況であり、今後、一層の財務の改善が課題といえよう。今後、北海道のカウボーイへの資本参加を含め、積極的な新規出店も計画されているが、いかに、収益を回復し、財務基盤を固めるかが優先課題といえ、今後のトライアルカンパニーの動向に注目したい。

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