« 餃子の王将、にわかに存在感増す、株価急騰! | Main | 日本の食品マーケットを概観してみる! »

June 18, 2009

ID-POSデータ、客は商品にしかつかない!

   時代は明らかにID-POSデータの活用に動き始めている。現在、POSデータには大きく2種類のデータがある。ひとつは純粋な商品販売データであり、これは商品ごとの販売金額と販売点数のデータであり、通常のPOS分析で、一般に活用されているデータである。そして、もうひとつは、IDがついた商品販売データであり、ID-POSデータといわれるものであり、いま最も小売業界、メーカー等で注目されているPOSデータである。どこが違うのか、ひとことでいえば、商品ごとにIDが付与されているか否かであるが、IDが付与されると、そんなに違いがあるのかということになるが、実際に使ってみると、違いというよりも、次元が違うという印象であり、単純に比べること自体が難しいといえよう。

   なぜか。通常のPOSデータは商品の売上金額、売上数量までしか把握することができないので、そこから判断できるのは、商品の売上金額、売上数量の大小である。いわゆるABC分析の延長となり、ごく簡単にいえば売れ筋、死に筋の判断が最大の活用方法といえよう。ここから、死に筋、いわゆるZ商品をカットし、新商品と入れ替えることによって、売れ筋だけを残そうというのが単品管理の極意といえる。また、PI値を活用したPOS分析では、逆に売れ筋を重点商品としてピックアップし、この商品に経営資源を集中し、限界まで重点商品を伸ばそうというのがPI値分析の極意といえる。この場合、死に筋は、放っておくか、勝手に消えるのを待つことになる。ひょっとすると、いつか重点商品に転換するかもしれないからである。

   いずれにせよ、従来のPOS分析ではこの辺までが限界といえ、商品の販売動向を売上金額と売上数量から判断し、マーチャンダイジング、マーケティングへ活用してゆくことがポイントとなる。

   では、その商品にIDが付与された場合はどうなるかであるが、商品の見方が売上金額、売上数量から見るのではなく、まず、その商品の購入IDがどのような購買をしているのかを最初に見ることになる。そして、次に、可能な限り、そのIDにどのような特徴があるかを明らかにしてゆくことになる。したがって、単純な商品の売上金額、売上数量はあまり意味がなく、重視するのは、IDから見た場合という、必ず、枕詞にIDから見た場合という言葉がつくことになり、視点が商品からID、すなわち、顧客に移ることになる。

   余談だが、小売業の格言のひとつに、「店は客のためにある」という言葉がある。また、私が約20年前にコンサルティングをスタートした時に、当時の上司から、「客は商品にしかつかない」という言葉を教わり、いまでも、これは大切にしている。いま、思えば、どちらも、顧客と商品の関係を端的に表しており、まさにID-POSのテーマであるといえよう。ところが、これまで小売業が活用してきたデータは商品からの一方通行のものだけであり、顧客からのという視点が欠けていたといえる。商品の売上金額、売上数量は詳細なデータが把握できるが、肝心のその商品を購入している顧客、すなわち、IDデータはつい最近まで実践に活用されることはごく一部の企業を除き、ほとんどなかったといえよう。

   これは、日本中の小売業の中核組織が商品部にあり、その延長線上に店舗があり、店長をはじめ、各従業員が商品部の延長となっていることからも明らかである。現段階では小売業の組織上に、顧客、IDを管理する部門がほとんど存在しないのが実態である。本来、その最前線に店長がいて、店長と店舗スタッフが一丸となって、その店舗の来店顧客へ、商品を通じて最大のサービスを提供すべく、動くことが小売業の本質であり、商売の原点であると思われるが、どうも、そうならかなったところに、小売業の格言とのずれが生じているように思える。

   その意味で、ID-POSは本来の小売業の原点にもどるための手段のひとつであり、商品を売上金額、売上数量からだけで見るのではなく、まず、その商品の購入IDの視点にたって見直し、その商品の購入IDにとって、もっとも購入しやすい、できうる限りの最高のサービスをもって、その商品を提供し、また、そのような商品を提供する環境、空間を作ることを、店長を中心に店舗スタッフ全員で議論し、実践してゆくことが本質であるように思える。

   ID-POSはまだはじまったばかりといえ、今後、取り組みはじめた小売業、そして、そのデータを活用するメーカーで、様々な創意工夫がなされ、徐々に実践投入され、完成度を増してくるものと思われる。ただ、最も大切なことは、顧客からの視点にたった商品の分析を行い、その結果を顧客に返し、それを繰り返すことによって、顧客と商品の関係を強固なものとし、顧客にとって、その商品を購入するには最適な環境、空間となる店舗を作り上げることであるといえよう。

   電子マネーも急激な勢いで普及しはじめており、さらに、食品スーパーマーケット各社も、この数年で独自のポイントカードを本格導入しはじめ、ID-POSデータを分析する環境は整いつつあるといえる。今後、このID-POSを活用し、顧客と商品との関係が見直され、どのように小売業、そして、メーカーが新たなマーチャンダイジング、マーケティング戦略を打ち出すかに注目したい。

有料版プレミアム、決算と新MD特集!今週の内容!   お申し込みはこちら!
週間!食品スーパーマーケット最新情報、まぐまぐ  資料集
Mixi(ミクシィ)に食品スーパーマーケット最新情報のコミュニティを創設!

« 餃子の王将、にわかに存在感増す、株価急騰! | Main | 日本の食品マーケットを概観してみる! »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ID-POSデータ、客は商品にしかつかない!:

« 餃子の王将、にわかに存在感増す、株価急騰! | Main | 日本の食品マーケットを概観してみる! »