ID-POSデータ、客は商品にしかつかない!
時代は明らかにID-POSデータの活用に動き始めている。現在、POSデータには大きく2種類のデータがある。ひとつは純粋な商品販売データであり、これは商品ごとの販売金額と販売点数のデータであり、通常のPOS分析で、一般に活用されているデータである。そして、もうひとつは、IDがついた商品販売データであり、ID-POSデータといわれるものであり、いま最も小売業界、メーカー等で注目されているPOSデータである。どこが違うのか、ひとことでいえば、商品ごとにIDが付与されているか否かであるが、IDが付与されると、そんなに違いがあるのかということになるが、実際に使ってみると、違いというよりも、次元が違うという印象であり、単純に比べること自体が難しいといえよう。
なぜか。通常のPOSデータは商品の売上金額、売上数量までしか把握することができないので、そこから判断できるのは、商品の売上金額、売上数量の大小である。いわゆるABC分析の延長となり、ごく簡単にいえば売れ筋、死に筋の判断が最大の活用方法といえよう。ここから、死に筋、いわゆるZ商品をカットし、新商品と入れ替えることによって、売れ筋だけを残そうというのが単品管理の極意といえる。また、PI値を活用したPOS分析では、逆に売れ筋を重点商品としてピックアップし、この商品に経営資源を集中し、限界まで重点商品を伸ばそうというのがPI値分析の極意といえる。この場合、死に筋は、放っておくか、勝手に消えるのを待つことになる。ひょっとすると、いつか重点商品に転換するかもしれないからである。
いずれにせよ、従来のPOS分析ではこの辺までが限界といえ、商品の販売動向を売上金額と売上数量から判断し、マーチャンダイジング、マーケティングへ活用してゆくことがポイントとなる。
では、その商品にIDが付与された場合はどうなるかであるが、商品の見方が売上金額、売上数量から見るのではなく、まず、その商品の購入IDがどのような購買をしているのかを最初に見ることになる。そして、次に、可能な限り、そのIDにどのような特徴があるかを明らかにしてゆくことになる。したがって、単純な商品の売上金額、売上数量はあまり意味がなく、重視するのは、IDから見た場合という、必ず、枕詞にIDから見た場合という言葉がつくことになり、視点が商品からID、すなわち、顧客に移ることになる。
余談だが、小売業の格言のひとつに、「店は客のためにある」という言葉がある。また、私が約20年前にコンサルティングをスタートした時に、当時の上司から、「客は商品にしかつかない」という言葉を教わり、いまでも、これは大切にしている。いま、思えば、どちらも、顧客と商品の関係を端的に表しており、まさにID-POSのテーマであるといえよう。ところが、これまで小売業が活用してきたデータは商品からの一方通行のものだけであり、顧客からのという視点が欠けていたといえる。商品の売上金額、売上数量は詳細なデータが把握できるが、肝心のその商品を購入している顧客、すなわち、IDデータはつい最近まで実践に活用されることはごく一部の企業を除き、ほとんどなかったといえよう。
これは、日本中の小売業の中核組織が商品部にあり、その延長線上に店舗があり、店長をはじめ、各従業員が商品部の延長となっていることからも明らかである。現段階では小売業の組織上に、顧客、IDを管理する部門がほとんど存在しないのが実態である。本来、その最前線に店長がいて、店長と店舗スタッフが一丸となって、その店舗の来店顧客へ、商品を通じて最大のサービスを提供すべく、動くことが小売業の本質であり、商売の原点であると思われるが、どうも、そうならかなったところに、小売業の格言とのずれが生じているように思える。
その意味で、ID-POSは本来の小売業の原点にもどるための手段のひとつであり、商品を売上金額、売上数量からだけで見るのではなく、まず、その商品の購入IDの視点にたって見直し、その商品の購入IDにとって、もっとも購入しやすい、できうる限りの最高のサービスをもって、その商品を提供し、また、そのような商品を提供する環境、空間を作ることを、店長を中心に店舗スタッフ全員で議論し、実践してゆくことが本質であるように思える。
ID-POSはまだはじまったばかりといえ、今後、取り組みはじめた小売業、そして、そのデータを活用するメーカーで、様々な創意工夫がなされ、徐々に実践投入され、完成度を増してくるものと思われる。ただ、最も大切なことは、顧客からの視点にたった商品の分析を行い、その結果を顧客に返し、それを繰り返すことによって、顧客と商品の関係を強固なものとし、顧客にとって、その商品を購入するには最適な環境、空間となる店舗を作り上げることであるといえよう。
電子マネーも急激な勢いで普及しはじめており、さらに、食品スーパーマーケット各社も、この数年で独自のポイントカードを本格導入しはじめ、ID-POSデータを分析する環境は整いつつあるといえる。今後、このID-POSを活用し、顧客と商品との関係が見直され、どのように小売業、そして、メーカーが新たなマーチャンダイジング、マーケティング戦略を打ち出すかに注目したい。
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