PI値と棚割、ベイシア実験!
日経流通に、「販売数と陳列、完全連動、ベイシア、商品補充を効率的に」という記事が掲載された。内容は、ベイシアが、販売点数の割合に応じて各商品の陳列数を決める売場作りを始めるというものであり、納豆を事例に解説している。記事には売場写真も掲載されており、その写真を見ると、ちょうど、納豆売場の下段に販売点数首位のおかめ納豆(タカノフーズ)が、売場の5割を占めているシーンとなっている。これにより、ベイシアでは、販売点数の高い商品は「商品の回転率が高く1日3回は補充しなければいけなかったが、今後は1回ですむ」とのことで、今後、新店や既存店でもこの棚割を導入する方針であるという。
これは、まさに、PI値の棚割への応用事例の問題といえ、特に、作業性を重視した観点からの棚割への応用といえよう。通常、食品スーパーマーケットは客数が約2,000人であり、最新の家計調査データ、2009年4月度で見ると、納豆は金額PI値9.90円、約10円である。もちろん地域差があり、5円にも満たない、地域から、ベイシアの地元、北関東では20円、30円の地域もあろう。仮に、金額PI値が10円であったとすると、納豆の平均単価は100円ぐらいであるので、PI値は逆算すると10円÷100円=10%となる。ベイシアでは納豆のNo.1商品が5割を占めるというので、PI値は5%ということになる。
これを客数2,000人で計算すると、No.1の納豆は、2,000人×PI値5%=100個ということになる。写真を見ると、ざっと下段の10フェースぐらい売場を占めており、4段積みぐらいであろうか。棚の表面は奥行き2列であるが、さらに、見えない下段の奥の場所に2列2段ぐらいありそうであるので、在庫量は表10フェース×2列×4段+奥10フェース×2列×2段=120個ぐらいであろう。120個は多いか少ないかであるが、客数2,000人、PI値5%で見れば、約2割増であり、仮に、3,000人であれば、150個となるので、80%となる。
当然、食品スーパーマーケットにおいては、客数、PI値ともに、内部要因、外部要因で変動することになり、上下20%の変動は日常茶飯事で起こるのが実態である。したがって、正確に販売数量を予想するのは極めて難しく、この変動要因をどのくらいで読むかが大きな課題となる。これは、統計学的には、標準偏差の問題であり、平均値+標準偏差、平均値-標準偏差の範囲で約70%が理論的にはカバーできるので、この標準偏差をできれだけ小さくする努力、逆に見れば、平均値に近づけるマーチャンダイジングが安定した予想には不可欠となる。
ベイシアでは、早くからEDLPを採用しており、実は、これが最もPI値の変動要因を小さくする最良の方法である。先にあげたように、変動要因は内部要因、外部要因があるが、この中で最も影響を当たるのは価格である。価格が通常の何%になるかによって、PI値は大きく変動する。実際、PI値と価格との相関グラフを作ってみると、ほとんどの商品でy=1/xの双曲線に近い分布図となり、価格とPI値はまさに負の相関関係にあるといえ、PI値を安定させる最良の方法は価格を変えないことであることがわかる。したがって、EDLP政策はPI値安定のための最良の政策といえ、結果、客数が大きく変動しなければ、あるいは、客数の予測精度が上がれば、販売数量は安定し、在庫予想が容易になり、結果、作業量も平準化されることになる。
世界最大の小売業、ウォルマートがEDLPを頑なに守り通すのは、このためであるといえよう。したがって、自然、自動発注も可能となり、その延長線上の自動棚割も可能となる。ただ、ウォルマートの場合は、企業があまりに巨大化したため、小売業の在庫変動がメーカーの生産計画にも大きな影響を与えるまでになり、流通全体の最適バランスをたもつためにやむを得ず、採用した面も大きかったといえよう。その意味で、EDLPはマーチャンダイジングというよりも、ロジスティックスにかかわるテーマといえ、小売業側から見ると、発注、陳列作業量の軽減、人件費の削減、経費の削減というEDLC(エブリデーローコスト)政策の決め手ともいえよう。
ちなみに、今回のベイシアの納豆など、PI値の極めて高い商品において、ベスト3の発注予想は、客数予想×PI値予想×130%ぐらいの在庫を確保することが望ましい。先ほど、シミュレーションしたように、プラスマイナス20%ぐらいの誤差は出て当たり前といえるので、最重点商品であるPI値の高い商品は予想の30%以上在庫を持てば、欠品はまずなくなり、機会ロスが限りなく0に近づくからである。また、売れ残っても、翌日の午前中には売れる数量であり、場合によっては、値引きすれば、PI値が高い商品であり、いくらでも調整が可能で、打つ手が多いからである。これがPI値の低い商品では、ここまで余裕を持つことは難しく、自然、ぎりぎりの線を狙うことになり、欠品気味とならざるを得ないが、このPI値の低い商品の方が圧倒的に多いのが商品の実態であり、ここは結果、安全在庫を確保した上での補充発注に限りなく近い手法をとらざるをえないといえよう。
販売数量の予想は小売業にとって古くて新しい問題であり、この精度をいかにあげられるかが、マーチャンダイジング力強化のスタートともいえ、すべては、ここから始まるといえる重要なテーマである。今後、ベイシアの取り組みに大いに期待したい。
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