セブンイレブン、公正取引委員会、何が問題か?
6/22、公正取引委員会から、セブンイレブン・ジャパンに排除措置命令がだされた。すでに、新聞、テレビ、雑誌等のマスコミで大きく取り上げられているが、改めて、セブンイレブン・ジャパンの何が問題なのか、そして、今後、どのような方向にコンビニ業界が動いてゆくかのについて考えてみたい。
まず、公正取引委員会の排除措置命令であるが、主文は全部で6項目である。その要約を改めて見てみると、デイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせている行為の取りやめ(主文1)、取締役会で決議(主文2)、加盟店、従業員へ周知徹底(主文3)、今後も禁止(主文4)、行動指針の改定、資料の作成、定期的な研修および監査(主文5)、公正取引委員会への実施状況の3年間報告(主文6)である。
問われているのは、セブンイレブン・ジャパンの優越的地位を乱用して、デイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせていることであり、これにより、セブンイレブン・ジャパンの加盟店が不利益をこうむっているとのことである。どのくらいの不利益があるかも、排除措置命令書には具体的に示されており、「加盟者が得る実質的な利益は,売上総利益からロイヤルティの額及び加盟店で廃棄された商品の原価相当額を含む営業費を差し引いたものとなっているところ,平成19年3月1日から平成20年2月29日までの1年間に,加盟店のうち無作為に抽出した約1,100店において廃棄された商品の原価相当額の平均は約530万円となっている。」とのことである。
仮に、12,000店舗で計算すると636億円となる。今回の排除措置命令にもとづき、すでに、セブンイレブン・ジャパンがアクションを起こし、15%の廃棄ロス分をこの7月から本部が負担するとのことであるが、15%は同様に計算すると95.4億円にあたり、約100億円の本部負担費用の増加となる。ただ、残り、約500億円強は依然として、加盟店側の負担となり、今後、さらに、加盟店側との駆け引きが続くものといえよう。
では、なぜ、ここまで公正取引委員会が踏み込んで、セブンイレブン・ジャパンに排除措置命令を出しているかについてであるが、その背景には、コンビニ独特の廃棄ロスの会計上の処理の問題があり、現状では、加盟店側に不利であるとの認識があるためと思われる。公正取引委員会も、参照条文の注4でその仕組みを説明している。「コンビニエンスストアのフランチャイズ契約においては,売上総利益をロイヤルティの算定の基準としていることが多く,その大半は,廃棄ロス原価を売上原価に算入せず,その結果,廃棄ロス原価が売上総利益に含まれる方式を採用している。この方式の下では,加盟者が商品を廃棄する場合には,加盟者は,廃棄ロス原価を負担するほか,廃棄ロス原価を含む売上総利益に基づくロイヤルティも負担することとなり,廃棄ロス原価が売上原価に算入され,売上総利益に含まれない方式に比べて,不利益が大きくなりやすい。」とのことであるが、一読して、分かりにくい説明である。
そこで、この問題がつい最近、最高裁まで争われた事案のなかで用いられた数式を見ると、以下のようになる。チャージ金額=本件売上総利益×チャージ率=(売上高-本件純売上原価)×チャージ率={売上高-(本件総売上原価-廃棄ロス原価-棚卸ロス原価-仕入値引高)}×チャージ率である。
問題は売上総利益が何であるかであるが、通常の小売業の会計では、いわゆる、原価を期首棚卸+期中仕入-期末棚卸を原則として、計算するので、廃棄ロスの原価は期中仕入の中に含まれており、原価として計算される。ところが、上記数式のチャージ金額のところを見ると、本件純売上原価の中身は、本件総売上原価と廃棄ロス原価は別であり、販売された商品の原価は原価として組み入れられるが、廃棄ロス原価は販売された商品の原価から引かれるため、売上高-のマイナスが廃棄ロス原価の-と掛け合わされ、プラスとなり、売上高に足されることになる。上記、数式をもう一歩展開すると、売上高×チャージ率-本件総売上原価×チャージ率+廃棄ロス×チャージ率+棚卸ロス原価×チャージ率+仕入値引高×チャージ率であり、廃棄ロスはもちろん、値下げロス、棚卸ロス原価を含めチャージがかかることになり、これがいわゆるロスチャージ問題である。
したがって、制度上、定価で売りきることが前提となった仕組みであるといえ、これまでコンビニが定価販売にこだわってきたのは、このように制度上、値崩れをふせぐ独特の強い仕組みが背後にあったことも大きい要因といえよう。この観点から、今回の排除措置命令を見ると、ロスチャージ問題には直接踏み込んでいないが、事実上、廃棄ロス×チャージ率を値引きを認めることで0に近づけようとする命令であるといえ、事実上のロスチャージ問題を解決しようという意図が見える。ただ、仕入値引高×チャージ率等は依然としてかかり、根本的なロスチャージ問題は残っているといえる。
今回の公正取引委員会のセブンイレブン・ジャパンへの排除措置命令は、コンビニ業界として、このロスチャージ問題を改めて検討せざるをえない状況に入ったともいえ、公正取引委員会は、それを事実上、今回の排除措置命令を出すことで、暗に要求しているように思える。その意味で、今回の排除措置命令は、これで終わりではなく、これから新たな課題が、コンビン業界全体に問われたといえ、セブンイレブン・ジャパンだけではなく、コンビニ業界全体がどう対応するか、業界としても明確な方針を打ち出す必要があるように思える。
有料版プレミアム、決算と新MD特集!今週の内容! お申し込みはこちら!
週間!食品スーパーマーケット最新情報、まぐまぐ! 資料集
Mixi(ミクシィ)に食品スーパーマーケット最新情報のコミュニティを創設!
« トライアルカンパニー、2009年3月期決算を公表! | Main | コンビニ売上速報、2009年5月度、失速! »
« トライアルカンパニー、2009年3月期決算を公表! | Main | コンビニ売上速報、2009年5月度、失速! »
Comments