餃子の王将、にわかに存在感増す、株価急騰!
6/14の日経ヴェリタス、最新号で、餃子の王将が12、13ぺージすべてのぺージを割いて、全面特集が組まれた。見出しは、「王将フード、個店連邦の強み、店長にメニュー・接客の裁量権、客層広げる」であり、大東社長のインタビューを含め、他外食産業との違い、様々な経営数値の分析、特にキャッシュ創出力に注目するなど、盛り沢山の餃子の王将の特集記事である。日経ヴェリタスが注目するのも、当然といえば当然であり、現在、王将の株価は5月の決算発表以来、急騰を続けており、株価が加熱気味で推移している。しかも、業績に裏付けられファンダメンタルな面が評価されていると思われ、投機的な急騰ではないと思われる点である。
また、2009年3月期の決算発表が5/13であるが、その後、間を置かず、5/18に220万株の自己株式の取得を表明しており、この株数は発行済株式数が約2,328万株であるので、約10%となり、金額でも33.24億円となる規模である。しかも、翌5/19には189.2万株を取得している。結果、自己株式が334万株となり、発行株式総数の15%強となり、これも株価を引き上げる大きな要因となったといえよう。
王将の株価は、この5月の決算発表があるまでは1,500円前後で推移しており、売買高も低く、あまり変動のない状況であった。ところが、まさに、この5/13の決算発表の翌日、5/14、通常の約10倍の大商いとなり、株価が急騰、前日の1,492円が1,551円となり、その後は、ほぼ右45度の急角度で上昇を続けており、現在、1,800円前後で推移している。まさに、株価急騰の異常状態といえ、その要因がどこにあるのか、その答えを探るべく特集されたのが、6/14の日経ヴェリタスの記事につながったといえよう。
そこで、王将の経営の現状を、2009年3月期の決算を含め、改めて確認してみたい。まず、ここ最近の王将の経営指標の中で注目すべきは、売上速報であろう。5月度の売上が全体では124.1%となったことであり、しかも、昨年も110.1%と伸びているにも関わらず、売上が大きく伸びたことである。5月が異常値ではなく、4月度も118.0%であり、しかも、昨年も105.4%であるので、安定した成長軌道に乗っているように思える数字の劇的な伸びといえる。さらに、驚くことに、通常、ここまで数字が伸びる場合は、新店によるところが大きいが、王将の場合は、既存店が大きく伸びていることである。5月度の既存店は121.2%であり、4月度の既存店も114.9%であり、全体の力強い売上の伸びは既存店に支えられた伸びであることが明らかである。さらに、その中身であるが、5月度は、客数が121.6%、客単価は横ばい、4月度もほぼ同様である。したがって、王将の好調さは既存店に支えられ、しかも、客数が大きく伸びているのが実態であり、小売業としては理想的な売上の伸びであるといえよう。
次に、5/13に公表された本決算の状況を見てみたい。まず、結果であるが、売上高549.86億円(110.5%)、営業利益60.88億円(116.2%:売上対比11.1%)、経常利益61.90億円(117.9%:売上対比11.3%)、当期純利益32.16億円(118.5%:売上対比5.8%)と2桁の増収増益であり、通期予想もほぼ同様の増収増益であり、好調な決算結果である。
そこで、次に、営業利益が好調であった原因を原価、経費の状況で見てみると、原価は30.9%(昨年30.7%)であり、結果、売上総利益は69.1%(昨年69.3%)と、原価が若干増加し、粗利が0.2ポイント下がっているが、ほぼ、横ばいといえよう。それにしても、食品スーパーマーケットの数字と比較すると全く正反対といえ、改めて外食の原価の低さが際立っているといえる。これに対して、販売費及び一般管理費であるが、58.0%(昨年58.8%)と、0.8ポイント下がっており、結果、差し引き、営業利益は11.1%(10.5%)と、0.6ポイントの上昇となり、これに売上の大幅な伸びと相まって、営業利益が大きく増加した。今期は、原価よりも、経費の削減が進んだといえ、それも、既存店の好調さが相対的に固定費を引き下げ、好決算に結びついたといえよう。
一方、財務面であるが、自己資本比率は50.1%(49.0%)と若干改善しているが、まだ、負債に約50%負っている状況といえる。その要因は、有利子負債が163.2億円(昨年156.06億円)と、昨年よりは若干増加しており、総資産502.95億円の32.4%とかなりの比率を占めているためである。
そこで、キャッシュフローを見てみると、営業キャッシュフローは63.52億円(昨年52.11億円)と約10億円増加しており、投資活動のキャッシュフロー、-27.76億円(昨年-36.47億円)を賄い、結果、フリーキャッシュフローは、35.76億円(昨年15.64億円)と大きく増加している。そして、財務キャッシュフローであるが、ここで有利子負債を削減しても良かったと思われるが、実際は-1.58億円(昨年-24.29億円)と、今期は、フリーキャッシュフローの活用をせず、結果、トータル34.14億円(昨年-8.65億円)と、内部留保に充てたといえる。そして、これが、その後の自社株買いに充てられたのではないかと思われる。
こう見ると、王将は増収増益という好調な決算、そこから生み出された豊富なキャッシュフローを今期は財務改善よりも、投資家向けに活用したといえ、もう少し、財務改善に活用してもよかったのではないかとも思うが、今後、東証への上場等を考えると、株主対策を優先したのではないかと思われる。ただ、この好調さが続けば、5年ぐらいで自己資本は大きく改善するといえよう。今後、この豊富に生み出されるキャッシュをもとに経営の選択肢が大きく広がったといえ、王将の今後の動向に注目である。それにしても、小売業の経営は既存店の活性化が極めて重要であることを、王将が改めて実証したといえよう。
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