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June 13, 2009

ポイント、どう企業経営に位置づけるか?

   前回のブログでヤマダ電機の食品のポイント戦略についてとりあげたが、たまたま、6/12の日経新聞に、ポイントに関する記事が掲載された。その見出しは、「ポイントやマイレージ、会計処理、海外で厳格化」、「国内導入なら、航空会社の減収要因に」であり、まさに、ポイントの会計処理の記事である。内容は、今後、ポイント処理の国際基準が導入されると、会計上では、売上、負債に影響が出る可能性があり、企業の経営状況を判断する上で、特に、初年度は前年度と比べ大きな違いが出る可能性があるとのことである。なお、このポイントの国際会計基準を導入するかどうかは、2012年度に最終決定されるとのことで、当面、各社、まちまちの会計処理が続くが、数年後には、ポイントの会計処理がいずれにせよ、統一されると思われ、いまの内から、食品スーパーマーケット業界でも準備が必要といえよう。

   確かに、現在、食品スーパーマーケットはもちろん、各小売業のポイントの会計処理に関してはまちまちであるといえよう。P/L上では、ポイントを売上から引く場合、経費に計上する場合があり、この2つは計上位置が正反対であり、売上から引けば、当然、売上減となり、減収になる可能性がある。逆に、経費に計上すれば、経費増となり、営業利益に響き、減益となる可能性があるが、差し引き、0となるので、実質、営業利益は変わらないといえば、変わらないと思われるが、経費増が気になるところであろう。

   B/S上ではどうかであるが、これも、使われずに残ったポイント分を算定し、負債のポイント引当金に計上することが多いが、その金額の計上額が、各社まちまちであり、心理上、低く見積もる傾向があり、実際の金額よりも小さい場合が多い。

   日経の記事の中では、国際会計基準を適用した航空会社の事例が2つ紹介されている。ひとつは、エールフランスの2009年3月期決算であり、今期、約1,115億円の最終赤字になり、その原因がポイント計上をさかもどって適用した結果、売上高の4%にもあたる負債が増え、資本の部が大きく減少したという。そして、もうひとつは、カンタス航空であり、未使用時のマイレージの負債を売上の12%に当たる金額を計上した結果、純利益が7%減少したという。いずれも、国際会計基準に則って、厳格にポイント金額を適用したことによる経営へのダメージであるという。

   では、国際基準ではどうなるかであるが、まず、P/L上では、ポイントは売上への計上に一本化されることになる。したがって、ポイント対象商品が売れた瞬間に、そのポイント相当分が売上から引かれることになり、実質、値引き処理と同等の会計が適用されることになる。したがって、ポイントがこれまでのように、企業の会計から隠れてしまい、見えなくなることがなくなる。企業としては、確実に、ポイント分の売上が減少することになるので、従来の売上と比較する場合、しばらくは、その分を差し引いて見る必要があろう。また、同時に、ポイントが使われようが、使われまいが、ポイント全額が負債に計上されることになる。したがって、この金額がその時点での、未使用ポイント総額となるので、企業におけるポイントの金額が明確になる。

   そこで、ポイントが実際使用された時はどうなるかであるが、従来は、費用として計上するのが一般的であったが、これが、国際会計基準では売上として計上されることになる。また、同時に、その相当額が負債から削減されることになる。見方を変えれば、ポイント分のお金をいったんお客様に貸し、その分を負債に計上し、お客様がポイント分のお金を使った時点で、売上に計上し(返済?)、負債がその分、削減されるという構造であり、その意味ではすっきりした会計処理であるといえよう。

   まさに、ポイントが第2の通貨という位置づけになり、企業としては、その通貨をお客様への商品の販売と同時に、一定額を発行し、その通貨の使用を様々な販促手段を通じて促し、その企業とお客様の間でその通貨が流通するという世界ができあがるというイメージといえよう。

   こう見ると、国際会計基準適用後は、各企業がポイント文化圏を独自に作ることになり、日銀のやっている金融政策と同様な様々な政策がとられることになろう。たとえば、マネーサプライ、すなわち、通貨発行量を調整し、インフレ、デフレを誘導をするとか、交換レートを変更し、顧客の販売促進を促すとか、他社の通貨(ポイント)との交換を促し、為替相場を設定するとか、強制的に通過を買い上げたり、売ったりする公開市場操作とか、円だけでなく、ドル、元との交換等も可能になろう。また、このような中央銀行だけでなく、様々なポイント専用の銀行が新たに生まれ、新ビジネスも登場するのではないかと思われる。

   いずれにせよ、ポイントは会計処理を含めて、まだまだ流動的な段階ではあるが、今後、電子マネーの勢いを見るまでもなく、確実に小売業界に深く、広く浸透しはじめてゆくと思われる。食品スーパーマーケットとしては、国際会計基準がいずれ適用されることを前提に、ポイントの経営戦略を検討しておきたいところである。

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