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July 14, 2009

食品スーパーマーケットのキャッシュフロー、その2

   前回のブログで食品スーパーマーケットの全体のキャッシュフローについて取り上げた。2009年1月、2月、3月度の上場食品スーパーマーケット約40社強の全体の合計についてであった。そこで、今回は、その2として、個々の食品スーパーマーケットのキャッシュフローの現状を取り上げてみたい。特に、投資キャッシュフローは、今期、2010年以降の成長性を決定づけるものでもあり、今期の業績を占う上でも重要な数値といえよう。

   まず、前回取り上げた全体像であるが、営業キャッシュフロー2,796.23億円(100%)、投資キャッシュフロー-2,082.24億円(74.5%)、結果、フリーキャッシュフロー713.99億円(25.5%)、そして、財務キャッシュフロー-556.89億円(19.9%)となり、トータル合計157.10億円(5.6%)であった。( )内は営業キャッシュフローを100%とした時の比率である。

   また、前回、セブン&アイHについても、参考に取り上げたが、その数字は営業キャッシュフロー3,100.07億円(100%)、投資キャッシュフロー-1,395.68億円(45.0%)、財務キャッシュフロー-1,697.55億円(54.6%)、トータル、微調整が入り、6.84億円(0.2%)という結果であった。びっくりすることに、対象食品スーパーマーケット約40社強の合計とセブン&アイHの営業キャッシュフローがほぼ同じであり、いかに、セブン&アイHが巨大小売業であるかがわかる。

   さて、今回は、この全体を構成する個々の食品スーパーマーケットの状況についてであるが、まずは、投資キャッシュフローを見てみたい。投資キャッシュフローは、まさに、食品スーパーマーケットの将来への投資金額であり、この数字を見ることによって、成長性を推し量ることができる。No.1はイズミであり、-394.51億円(109.3%)である。何と営業キャッシュフローの金額を超えた積極的な投資となっており、その大半が新規出店関連であり、フリーキャッシュフローは、結果、-33.51億円とマイナスとなった。当然、不足分を財務キャッシュフローで補うこととなり、財務キャッシュフローは36.83億円となり、調達は有利子負債である。少し、リスクをおかしてでも、成長性を重視する意思が鮮明である。

   イズミに限らず、投資キャッシュフローの上位の食品スーパーマーケットはこのような傾向が強いといえ、No.2のバローも投資キャッシュフローは-159.29(139.6%)、No.3のオークワは-152.54億円(200.0%)と、何と200%であり、営業キャッシュフローの2倍を投資している。ベスト3の投資キャッシュフローの高い食品スーパーマーケットがすべて、営業キャッシュフローを超える積極的な投資キャッシュフローであり、全体の74.5%を裏付ける、まさに旺盛な成長性重視の積極的な経営戦略であることがわかる。

   これに対して、No.4のライフコーポレーション、No.5の平和堂を見ると、投資キャッシュフローが抑制されているのがわかり、全体的には積極的な投資がなされてはいるが、個々の食品スーパーマーケットを見ると、抑制された投資キャッシュフローの企業もある。そのライフコーポレーションの投資キャッシュフローであるが、-123.75億円(36.6%)と、かなり抑制された投資キャッシュフローといえ、結果、フリーキャッシュフローは214.70億円となり、ここから、財務キャッシュフローで有利子負債を-148.42億円返済しており、財務キャッシュフローに経営の重点が移っていることがわかる。ライフコーポレーションは、有利子負債削減を最優先したキャッシュフローの配分といえ、経営の意思が強く表れているといえよう。

   同様に、平和堂も投資キャッシュフローが-116.16億円(62.5%)とライフコーポレーションほどではないが、抑制気味であり、財務キャッシュフローをやや重視し、フリーキャッシュフロー69.61億円、財務キャッシュフロー-55.50億円という配分となり、その内、有利子負債が-73.01億円返済し、有利子負債削減を優先したキャッシュフローの配分といえよう。

   ちなみに、配当が10億円以上の食品スーパーマーケットは、6社であり、イズミ、平和堂、アークス、オークワ、ライフコーポレーション、イズミヤである。食品スーパーマーケットで、配当を10億円以上出すのがいかに難しいかがわかる。また、財務キャッシュフローの中で株価対策の一環として、自社株買いを積極的に実施した食品スーパーマーケットは3社であり、イズミヤ24.83億円、オオゼキ13.65億円、バロー9.89億円であり、この3社が突出して自社株買いを実施している。

   このように、前回に続き、今回は、個々の食品スーパーマーケットに焦点を当て、キャッシュフローの流れを見てみたが、まさに、キャッシュフローは経営者の息使いが聞こえるような経営の意思を表した数字といえよう。営業キャッシュフローの内、どのくらいを成長戦略に充てるか、ここで大きな決断が必要になる。特に、今回のトップ3社はいずれも、営業キャッシュフローを超える投資を決断しており、その意思の強さが感じられる。また、有利子負債削減が経営の優先課題である場合には、投資キャッシュフローを抑制し、財務キャッシュフロー、特に有利子負債削減を最優先にした配分をせざるをえず、じっと耐えることも必要である。キャッシュフローはその意味でまさに、経営戦略、経営者の意思を表した経営指標といえ、今期、各社が、今回の結果を踏まえ、どのような経営戦略を打ち出すかに注目したい。

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