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July 26, 2009

天満屋ストア、ジョイス、マルヤの2009年度決算を見る!

   食品スーパーマーケットの決算も2009年度に関しては5月度までのすべての上場企業の公表が終了した。本ブログでは、決算速報に関しては優先的に取り上げてきたが、まだ、解説をしていない食品スーパーマーケットが数社ある。そこで、ここではその中の3社について、同時に取り上げてみたい。3社とは、岡山の天満屋ストア、岩手のジョイス、そして、埼玉のマルヤである。いずれも、2月決算の各地区の中堅食品スーパーマーケットであり、店舗数は天満屋ストアが26店舗、ジョイスが41店舗、そして、マルヤが54店舗である。

   まず、売上高であるが天満屋ストア895.79億円(98.0%)、ジョイス497.85億円(103.3%)、マルヤ290.59億円(84.2%)と明暗が分かれた。特に、マルヤは売上高が大きく減少したが、これは、不採算店舗11店舗を閉めた結果であり、厳しい売上状況である。また、現在マルヤは54店舗であるが、売上高を単純に割ると1店舗当たり5.3億円と規模がかなり小さい食品スーパーマーケットであることがわかる。ちなみに、規模については、天満屋ストアは1店舗当たり33.0億円と、食品スーパーマーケットとしては、極めて大きく、SC主体の食品スーパーマーケットであるためである。また、ジョイスは12.1億円であり、最も平均的な食品スーパーマーケットに近いといえよう。

   次に、利益面であるが、原価と粗利、売上総利益は天満屋ストア75.2%(売上総利益24.8%)、ジョイス75.6%(売上総利益24.4%)、そして、マルヤ78.8%(売上総利益21.2%)である。天満屋ストアとジョイスは良く似た構造であるが、マルヤは、原価が高く、売上総利益、すなわち、粗利がかなり低い、ディスカウント業態に近い数値である。そして、経費であるが、天満屋ストア26.6%、ジョイス24.3%、そして、マルヤ30.7%と、3社差が開く結果となった。ジョイスが経費を最も抑えた経営となっており、天満屋ストアがSC業態が主体ということもあり、やや高めである。そして、マルヤは30.7%と異常に高い数値であり、今期はこの数字を見ても、経費が重く経営にのしかかっているといえる。昨年も29.0%と高い経費比率であり、今期は、さらに、経費比率が上昇している。

   したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は、天満屋ストア-1.8%、ジョイス0.0%、マルヤ-9.5%とジョイスがぎりぎりイーブンであり、天満屋ストアは若干マイナス、マルヤは大きくマイナスとなる状況である。これに、不動産収入、物流収入等がのるが、その数字を見ると、天満屋ストア4.4%、ジョイス1.4%、マルヤ5.1%とマルヤの5.1%が突出しているが、結果、営業利益は、天満屋ストア2.6%(昨対-27.6%)、ジョイス1.4%(昨対199.4%)、そして、マルヤ-4.4%(営業赤字)と利益でも明暗が分かれた。ジョイスは売上対比では、食品スーパーマーケット業界の平均2.6%にまでは届いてはいないが、昨対では大きく改善しているのに対し、天満屋ストアは減益、マルヤは赤字という厳しい状況となった。また、最終利益、当期純利益であるが、天満屋ストア0.7%(昨対-6.7%)、ジョイス0.2%(昨対-32.9%)、マルヤ-5.8%(赤字)と、3社とも厳しい数字であり、営業段階では昨年と比べ好調であったジョイスも一転、当期純利益は厳しい数字となった。

   一方、財務面であるが、まず、自己資本比率、ここでは純資産比率を見ると、天満屋ストア20.6%、ジョイス40.6%、マルヤ57.3%と、今期赤字と最も厳しい決算となったマルヤが最も安定した純資産比率であり、3社の中では最も負債に依存しない経営状況である。したがって、負債の主要項目である有利子負債の状況を総資産対比でみると、天満屋ストア56.3%、ジョイス25.7%、マルヤ23.2%という状況であり、天満屋ストアの負債依存度が異常
に高い状況である。

   では、資産、特に、出店にかかわる資産である土地、建物、敷金・保証金の合計はどうかを総資産対比で見てみると、天満屋ストア73.6%、ジョイス62.2%、マルヤ84.1%という状況であり、意外に、マルヤが最も高い比率となった。ここから1店舗当たりの出店にかかわる資産を見てみると、天満屋ストア20.13億円、ジョイス3.28億円、そして、マルヤ2.55億円となり、やはり、天満屋ストアの出店にかかわる資産がSC主体であるため莫大な数字となり、これを有利子負債で賄っているため、結果、純資産比率が下がり、厳しい経営状況となっているといえよう。

   そして、純資産から出店にかかわる資産を引いた出店余力であるが、天満屋ストア-53.1%、ジョイス-21.6%、マルヤ-26.7%といずれも厳しい数字であり、特に、天満屋ストアは新規出店余力が極めて厳しい財務構造であるといえる。

   このように、SC主体の食品スーパーマーケット天満屋ストア、典型的な食品スーパーマーケットのジョイス、小型食品スーパーマーケット主体のマルヤの決算は、当期純利益が減益、マルヤは赤字となる厳しい決算となった。また、財務面でも、マルヤの純資産比率は高いものの、出店余力はいずれも大きくマイナスであり、有利子負債に大きく頼らざるを得ない財務状況である。今後、ますます厳しくなる経済情勢の中、まずは、3社ともに、収益構造と財務構造の同時改革が急務といえ、今期、どこまで抜本的な経営改革に取り組んでゆくのか、その動向に注目である。

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