イオン九州、2009年度2月期の決算を見る!
本ブログでは、2009年度の上場食品スーパーマーケットの決算については、ほぼすべてを取り上げて解説してきたが、まだ、取り上げていない企業が1社ある。今回取り上げるイオン九州である。イオン九州は全店舗数が99店舗であるが、この内、GMSが46店舗、スーパーセンター、HCが53店舗であり、食品スーパーマーケットというより、GMS主体の企業であるので、食品スーパーマーケット業種に加えるか難しいところであるが、食品の売上構成比が41.8%と比較的高く、食品を柱にした企業でもあるので、食品スーパーマーケット業種として、取り上げてみたい。本ブログでは、同様な観点から、PLANT、アークランドサカモトも同様に食品スーパーマーケット業種の範疇として、集計しているので、今後、イオン九州も食品スーパーマーケット業種の中で解説してゆきたいと思う。
さて、その2009年度2月期決算の結果であるが、営業収益2,689.61億円(111.9%)と好調であったが、営業利益4.71億円(48.3%:営業収益比0.18%)、経常利益3.79億円(43.1%:営業収益比0.14%)、当期純利益 4億円(0.8%:営業収益比0.15%)と、利益は極めて厳しく、大幅な減益となった。
営業収益が好調であった要因は46店舗を展開するGMS部門の既存店が食品は堅調ではあったが、衣料品、住居余暇商品が伸び悩み99.9%となったにもかかわらず、2008年12月に「イオンモール筑紫野」(福岡県筑紫野市)の核店舗として、GMSのジャスコ筑紫野店を開店したことが大きく、GMS全体で112.2%となったことである。また、スーパーセンター、HCを53店舗を展開するスーパーセンター・HC部門は既存店は97.0%と厳しかったが、2008年4月にイオンスーパーセンター大木店(福岡県三潴郡)を新規オープンしたことが寄与し、全体では107.6%となったことが大きい。したがて、GMS、スーパーセンター・HC部門ともに、既存店は昨対をクリアーできなかったが、新店の貢献が大きく、営業収益を大きく伸ばすことができたことが増収の要因といえる。
ただ、この営業収益とは対照的に利益の方が、極めて厳しい状況となり、その要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、72.5%(昨年72.5%)と、昨年と同じ数字となり、価格競争が厳しい中にもかかわらず、原価の上昇は見られず、結果、売上総利益は27.5%(昨年27.5%)となった。一方、経費の方であるが、33.8%(昨年33.1%)と0.7ポイント上昇し、率にして102.1%の上昇となった。したがって、差し引き、マーチャンダイジング力は-6.3%(-5.6%)と、大きくマイナスとなり、厳しい結果である。イオン九州はGMS主体の企業であるため、経費比率が30%を超えるという極めて高い数字であり、結果、マーチャンダイジング力は大きくマイナスとなる構造的な課題がある。したがって、これをカバーするのが、不動産収入、物流収入等のその他営業収入であるが、今期は、その他営業収入が6.5%(昨年6.0%)と0.5ポイント上昇し、マーチャンダイジング力のマイナス分をカバーし、結果、営業利益が0.2%(昨年0.4%)と、わずかであるが、プラスとなった。ただ、その比率は0.2%であり、昨年と比べると半減しており、これが今期、大きく営業利益が下がった要因であるといえよう。
それにしても、経費比率33.8%はかなり経営を圧迫しているといえ、その分を、その他営業収入でまかなわざるをえず、厳しい、営業構造であるといえよう。今期、イオン九州はトップバリュを積極的に導入し、金額では昨対180%以上の180億円を超え、売上金額2,524.98億円の7.1%にまでなった。ただ、売上総利益、すなわち粗利が昨年同様の数字27.5%であり、厳しい価格競争の中、粗利が下がらなかったことによる貢献はあったと思われるが、粗利を押し上げるところまでは至っておらず、今後、さらに、トップバリュの構成比を増やすか、場合によっては、NBの仕入れ改革、物流改革も課題となろう。
一方、イオン九州の財務状況であるが、自己資本比率が14.6%(昨年15.7%)と、昨年よりも下がり、しかも、極めて低い水準であり、厳しい財務状況である。出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金の合計は620.15億円と総資産1,207.64億円の51.4%であり、その大部分を負債に頼っている構造である。差し引き、出店余力も-36.8%であり、新規出店が思うようにできにくい状況である。その有利子負債であるが、466.66億円と総資産の38.6%とかなりの比重を占めており、まさに、出店余力のマイナス分をカバーする構造であり、イオン九州としては、有利子負債に頼らざるをえない出店構造となり、今後、いかに、負債を圧縮するかが、経営の最優先事項といえよう。
このように、イオン九州の2009年2月期決算は大幅な増収とはなったが、利益は逆に大幅な減益となる厳しい決算となった。マーチャンダイジング力が経費の上昇により、大きくダウンしたことが大きく、結果、財務的にも厳しい状況がより厳しい状況となり、有利子負債に頼らざるをえない経営状況となり、自己資本比率がわずか14.6%と厳しい財務構造となった。今後は、まずは負債を圧縮することが最優先の経営課題といえるが、そのためにも、マーチャンダイジング力の改善、特に、経費比率をいかに下げる営業構造をつくり上げられるかが課題といえよう。イオン九州が今後、マーチャンダイジング力の改善、特に、経費の改善にどのような対策を打ちだすかに注目したい。
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