大黒天物産、2009年5月度決算、大幅増収増益!
大黒天物産が7/14、2009年5月期の決算を公表した。これで、上場食品スーパーマーケットの5月決算までのすべての企業の本決算が公表され、2009年度の食品スーパーマーケット業界の決算が出そろったといえる。結果は、売上高734.51億円(114.1%)、営業利益35.85億円(129.9%:売上対比4.9%)、経常利益35.50億円(130.7%:売上対比4.8%)、当期純利益18.02億円(127.9%:売上対比2.5%)となり、いずれも2桁増となる大幅な増収増益となる決算であり、好調な決算となった。
まず、増収の要因であるが、昨年8月にディオ玉島店(岡山県倉敷市)を移転出店したのを皮切りに、11月にはラ・ムー米子北店(鳥取県米子市)、12月にはラ・ムー赤穂店(兵庫県赤穂市)、そして、今年に入り3月にはラ・ムー大蔵海岸店(兵庫県明石市)の4店舗を新規出店した。現在、大黒天物産は53店舗であるので、4店舗は店舗数で107.5%の伸びとなり、これに、既存店の好調さも加わり、114.1%という2桁の増収となった。食品スーパーマーケットの成長戦略は新店と既存店のバランスで決まるが、今期の大黒天物産はバランスが良い成長戦略が達成できたといえ、売上は極めて好調な推移であったといえよう。
これに対して、利益面であるが、原価は77.1%(昨年76.7%)と、0.4ポイント上昇しており、結果、売上総利益は、22.9%(23.3%)と、0.4ポイント下がっている。これは、特にここ数ケ月、大手GMSをはじめ、各食品スーパーマーケットが本格的な価格競争に突入しており、売価が予想以上に下がっているためと思われる。大黒天物産も、今期、「平成20年4月より購買頻度の高い商品約100品目を2割から5割値下げした「生活応援宣言セール」を実施し、・・」というように、価格政策を強化し、これ以外にも様々な売価を下げる価格戦略を発動している。したがって、これらの売価が崩れ始めたことが原価に響き、粗利を圧迫したのではないかと思われる。
一方、経費面であるが、販売費及び一般管理費は18.0%(昨年18.8%)と0.8ポイント下がっており、率にして5%のダウンと大きく改善した。18.0%は食品スーパーマーケット業界の中でも屈指の経費比率であり、ベスト5に入る低い数字であり、価格競争が広まる経営環境の中では有利に経営が展開できる最大の武器ともいえよう。その数字が、昨年よりもさらに下がっており、競争力が一段と増したといえる。
結果、差し引き、マーチャンダイジング力は4.9%(昨年4.5%)となり、マーチャンダイジング力も各段と向上している。大黒天物産はその他営業収入が0であるので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、今期の営業利益は4.9%(昨年4.5%)と、0.4ポイント、率にして約9%改善し、これに、売上高の伸びがあいまって、昨対129.9%と、驚異的な営業利益の改善につながった。さすがに、原価は、価格競争の影響と思われ、改善ができなかったが、その分、売上を引き上げ、経費を大きく改善できたので、大幅な営業利益改善へとつながったといえよう。
これを受けて、財務も好転しており、自己資本比率が49.7%(昨年48.1%)と上昇しており、特に、負債面では有利子負債が26.00億円(昨年36.5億円)と約10億円削減され、総資産218.79億円に占める割合は11.9%にまで下がった。無借金経営も時間の問題といえ、経営への負担はごくわずかとなったといえよう。また、大黒天物産の出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金等の合計は87.43億円であり、これは総資産の39.9%と通常の食品スーパーマーケットと比べるとかなり低い数字である。実際、これを店舗数の53店舗で割ってみると、わずか1.6億円であり、通常の食品スーパーマーケットの1/2から1/3という出店にかかわる資産であり、いかに、大黒天物産が資産を極限まで減らした出店構造となっているかがわかる。
大黒天物産の急成長の背景にはこの出店にかかわる資産の低さが大きいといえ、しかも、今期は有利子負債が削減され、自己資本比率が向上し、営業利益が大きく増加しているので、今後も高成長が期待できる財務状況であるといえよう。実際、自己資本比率から出店にかかわる資産を差し引いた出店余力は9.8%とプラスであり、負債に依存せずに新規出店が可能な財務構造であるといえる。
そこで、今期の投資キャッシュフローを見ると、営業キャッシュフローの40.9億円の63%に当たる25.7億円を投資に振り向けており、その内、10.0億円を出店にかかわる資産の取得に振り向けている。1店舗当たり1.6億円の出店にかかわる資産で単純に割ると6店舗近い新規出店が可能であり、来期以降も安定的な成長が可能といえよう。
このように大黒天物産の2009年5月期の決算は大幅な増収増益となり、極めて好調な決算であったといえよう。厳しくなる消費環境に対し18.0%という経費比率の低さを武器に、果敢に価格競争に挑み、消費者から支持を得た結果といえよう。多くの食品スーパーマーケットが減益となる中、大黒天物産は大きく増益となっており、改めて、ディスカウント路線を鮮明にしたことが好決算につながったといえ、今後、さらに、どのような価格戦略に踏み切るか、その動向に注目といえよう。
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