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July 18, 2009

ドミー、2009年5月期本決算、増収減益、個別赤字!

   愛知県、三河地区を中心にドミナント展開している食品スーパーマーケット、ドミーが2009年5月期の本決算を公表した。5月決算の上場食品スーパーマーケットは、マルミヤストア、大黒天物産、そして、ドミーの3社のみのであり、食品スーパーマーケットとしては珍しい決算月である。結果は、営業収入327.78億円(102.8%)、営業利益4.18億円(108.0%:営業収益比1.27%)、経常利益3.44億円(119.9%:営業収益比1.04%)、当期純利益0.76億円(46.3%:営業収益比0.23%)となり、営業、経常段階では増収増益となったが、当期純利益は大きく減益となり、厳しい決算となった。しかも、個別決算では、当期純利益が-0.06億円の赤字となった。

   当期純利益が減益となった要因は、たな卸資産評価損が1.2億円発生したことが大きく、今期、小売業界は多くの企業で棚卸資産の評価に関する会計基準の適用により、評価損が発生しており、これが、今回のドミーのように利益に直撃し、減益となるケースが多い。ドミーの在庫金額は11.81億円であり、これは総資産の6.2%となる。食品スーパーマーケットの平均的な数字は5%前後であるので、さほど高いとはいえない。ただ、それでも、1.2億円、単純計算で在庫金額の約10%となり、今後、食品スーパーマーケットとしては、在庫金額の10%前後は評価損が発生することも考慮しての利益計画が必要といえ、当期純利益に直接響くだけに大きな課題といえよう。

   一方、営業収益が102.8%と堅調な数字となった要因は、ドミーの地元、愛知県三河地区のドミナントの強化が進んだためである。昨年10月に大浜店、12月につつじが丘店を新規オープンしたことに加え、今年3月には東浦店を建て替えオープンし、さらに、4月には高浜店の全面改装を実施したことが大きかったといえよう。食品スーパーマーケットの成長戦略は新店の出店と既存店の活性化のバランスが鍵を握っており、今期、ドミーはバランスのよい成長戦略であったといえよう。

   これに対して、営業収益以上に108.0%と、数字が伸びた営業利益であるが、原価は74.4%(昨年74.5%)と、0.1ポイント下がっており、結果、売上総利益は25.6%(昨年25.5%)と改善した。一方、経費であるが、27.4%(昨年27.3%)と、残念ながら、0.1ポイント上がった。結果、差し引き、マーチャンダイジング力は-1.8%(昨年-1.8%)と同じ数字とはなったが、マイナスであり、経費比率の高さが、マーチャンダイジング力を弱めているといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が、3.1%(昨年3.1%)加わり、結果、営業利益が1.3%(昨年1.3%)と同じ数字となり、売上増の分、営業利益も増加した。

   実際の数字は営業収入が102.8%、営業利益が108.0%と、その差が大きいが、これは、小数点以下の数字に差があり、四捨五入では営業利益が1.3%となるが、今年は1.31%、昨年は1.25%であり、これを割ると104.8%となるためである。ただ、増益とはなったが、営業利益が1%台であり、厳しい利益率であるといえ、今後、原価、経費の改善、特に、どう経費を引き下げるかが利益を確保する上で重要な経営課題といえよう。

   これを受けて気になるのはキャッシュフローである。まず営業キャッシュフローであるが、8.7億円となり、厳しい数字である。その中身も、当期純利益が厳しかっただけに、当期純利益からの営業キャッシュフローはわずか、1.52億円であり、減価償却費からの収入が5.65億円と大半をしめた。したがって、十分な投資の原資が不足したが、それでも、成長への投資は積極的に行い、投資キャッシュフローは-12.23億円と営業キャッシュフローを大きく上回り、結果、フリーキャッシュフローは-4.16億円のマイナスとなり、逆流のキャッシュフローとなった。

   したがって、財務キャッシュフローでカバーすることになるが、今期は5.51億円のプラスである。その中身であるが、有利子負債の返済を117.78億円行ったが、それ以上に124.91億円の有利子負債を調達し、有利子負債が7.13億円増加しており、これで、フリーキャッシュフローのマイナスを相殺し、さらに、配当-1.35億円へキャッシュを配分しており、苦しいキャッシュフローの流れであるといえよう。トータル1.35億円のプラスにはなったが、有利子負債が増加しており、結果、負債の増加になり、経営が重くなった。

   実際、自己資本比率は17.5%と昨年の19.2%からもダウンしており、80%以上を負債に負う経営状況であり、今後、負債を削減し、いかに自己資本比率を安定させるかが、経営の最優先課題となった。このまま、自己資本比率が改善しないと、今後の新規出店は厳しいといえ、成長戦略が思い通りに描けない状況となろう。

   このようにドミーの今期決算は営業、経常段階までは増収増益となったが、当期純利益が、在庫の評価損等が発生し、大きく減益となった。そのため、キャッシュフローの流れがスムースにいかず、有利子負債をさらに増やし、結果、自己資本比率を下げ、経営が負債に大きく依存する状況を招き、厳しい結果となった。この逆回転を順回転にするには、まずは、当期純利益、そのもととなる営業利益、さらには、マーチャンダイジング力の強化が最優先であるといえよう。その中でも、特に、経費比率を引き下げることが急務といえ、今後、ドミーが経費比率をどのように引き下げるか、その動向に注目したい。

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