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July 30, 2009

流通BMSへ期待、粗利PI値の時代か?

   流通BMSが軌道にのりはじめたといえよう。先日、7/27の日経MJで取りあげられた「イオン、一括管理に移行、来月完了、グループへ適用検討」、「スーパーの生鮮食品」という見出しの記事の中で、イオンが流通BMSを本格採用したことが取り上げられていた。イオン1,200店舗の生鮮食品の統一管理システムを流通BMSを基盤に構築し、この8月には導入が完了するとのことである。生鮮食品だけでなく、花きの仕入れや在庫管理にも活用できるという。

   流通BMSは、「ビジネス、メッセージ、スタンダード」の略をとったものであり、次世代のEDIの仕組みといえる。EDIとは「エレクトロニック、データ、インターチェンジ」のことで、企業間の受発注データのやり取りの仕組みのことである。これまでは、JCA手順がチェーンストア協会の推奨の仕組みだったが、次の世代は、流通BMSという仕組みに変えてゆこうと、経済産業省が音頭をとり、流通業界全体に働きかけ、その成果が、大手小売業、そして、最近では食品スーパーマーケット、さらには、ドラックストア、HC等へと徐々に普及がはじまっている。JCAとBMSの最大の違いは、インターネット回線を使うところにあるといえ、速さ、処理量等、質、量の面で各段の違いがあるといえる。

   流通BMSについては、http://www.mj-bms.com/index.htmlに詳しい解説、事例が掲載されているので、そちらをご覧いただければと思うが、特に、このホームページの中で、興味深かったのは、近商ストアの事例である。流通BMSは次世代EDIであるといえるので、受発注に焦点が当てられるが、実は、受発注が現在よりも、各段と質、量の点で向上するので、これまで、十分に活用できなかったPOSデータともリンクが容易になる。近商ストアではここに着眼し、流通BMSとPOSとをリンクさせ、自動発注の仕組みを取り入れ、「1個売れたら1個補充するという「セルワン・バイワン」方式を導入」したことである。自動発注の仕組みは、既存のPOSデータを活用しての仕組みが多くのチェーンストアで開発、実践投入されているが、流通BMSを基盤にしての仕組みは、まだ、珍しいといえ、これが今後、問題なく動くようであれば、マーチャンダイジングの飛躍的な改善につながる可能性が高いといえよう。

   日経MJの記事の中でも、イオンは生鮮MDシステムに流通BMSを採用しており、
6月時点で青果の7割強、精肉、鮮魚は2割程度であるというが、今後、導入を加速するとのことである。さらに、7月からは豆腐などの日配食品等にも導入が始まったという。これが完成すれば、受発注から納品までのデータを本部が一元管理でき、取引にかかる時間の短縮や業務全体の効率化につながるという。当然、POSデータのリンクも視野に入っていると思われ、ごく近い将来、自動発注も可能となろう。記事では、会計システムとのリンクも検討しているとのことで、粗利だけでなく、経費を組み込んだ、まさに、マーチャンダイジングの究極の仕組みが単品レベルで将来は可能となろう。

   では、実際、POSデータと流通BMSがつながった場合は、マーチャンダイジング的にはどのようなことが可能となるかであるが、自動発注、さらには、自動棚割等へのまさに、ウォルマートがたどった実践的な方向が可能になることはもちろんであるが、もうひとつ、注目すべきは、これまでPOSデータの分析に活用してきたPI値の活用が飛躍的に進化する可能性を秘めていることである。POSデータから得られるデータは売上金額、売上数量、客数(レシート枚数)の3つが基本であるが、流通BMSがリンクすると、これに、原価データと在庫データを単品レベルで加えることができるようになる。

   これが可能となると、従来の金額PI値=PI値×平均単価で止まっていたPI値分析が、原価(粗利)、在庫を組み込んだPI値分析まで可能となる。結論からいえば、これまでは、理論的には可能であったが、実務的にはなかなか難しかった、粗利PI値=在庫PI値×交差比率の公式が実践投入できることになる。したがって、金額PI値×粗利率=粗利PI値でもあるので、これまでのPOSデータだけでは、マーチャンダイジングの目的が実務的には金額PI値最大化しか目指せなかったところが、粗利PI値最大化も同時に追求することが実務的にでき、しかも、粗利PI値を引き上げるには、在庫PI値(顧客当たりの在庫)と交差比率(在庫当たりの粗利高)をいかに引き上げるかという、在庫と粗利(原価)の問題に踏み込むことができ、マーチャンダイジングの究極の目的に大きく近づくことが可能となる。

   さらに、会計システムとリンクすれば、経費を組み込み、P/L上では計算可能なマクロのマーチャンダイジング力を単品レベルで検証することも可能となる。この時のPI値は経費PI値が活躍し、マーチャンダイジングPI値=粗利PI値-経費PI値となり、マーチャンダイジングの最終到達系が理論的にも、実務的にも完成することになろう。

   これについては、流通BMSの普及動向をみながら、順次、理論、実践面で検証してゆき、本ブログでもまさに、食品スーパーマーケットの最新情報として取り上げてゆければと思う。その意味で、流通BMSはごく近い将来、マーチャンダイジングを理論的にも実践的にも飛躍的に改善する可能性を秘めた仕組みといえ、今後の普及が楽しみな、久しぶりの流通業界にとって朗報といえよう。

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