PI値を商談に活用するには、その1!
一般にPI値は小売業のマーチャンダイジングの検証のための指標のひとつであり、小売業が自社のマーチャンダイジング改善のために活用してきた経緯がある。したがって、これをメーカーが活用する場合、なかなか、活かしづらいというのが現状といえよう。そこで、ここでは、メーカーにとって、PI値をどのように活用すれば、効果的な活用ができるかを考えてみたい。
まず、PI値のおさらいであるが、PI値はPOSデータから算出することが可能な指標である。POSデータはつきつめれば、金額、数量、客数(レシート枚数)の3つの情報から構成されている販売データであり、それ以上でもそれ以下でもない。ここからPI値を算出するには、金額、数量を客数で割ればよい。金額を客数で割ったものが金額PI値であり、数量を客数で割ったものが数量PI値である。そして、この2つの関係は、金額PI値=数量PI値×平均単価という数式で結ばれることになる。金額PI値=金額÷客数、数量PI値=数量÷客数であるので、数量PI値×平均単価は、=(数量÷客数)×平均単価となり、=(数量×平均単価)÷客数と変形でき、(数量×平均単価)は売上(金額)であるので、=金額÷客数となり、左右、同等となるからである。
以上がPI値の基本である。そこで、メーカーがこのPI値をどう活用するかであるが、ここでは、商談への活用について考えてみたい。商談とは何かであるが、その目的は大きく2つに絞ることができよう。ひとつは、自社の商品の新規採用であろう。そして、もうひとつはすでに採用されている自社の商品の活性化をはかる、すなわち、さらななる売上アップを提案することであろう。そこで、ここでは、この2つの商談への活用について、考えてみたい。
まず、自社の商品の新規採用についてであるが、これは、可能な限り、自社の商品を他社の商品と比べ、そのポジション、差別化を明確にする必要がある。そして、そのためにPI値をどう活用するかが課題となるが、そのためには、可能な限り、客観的なPI値の分析データが必要となる。それが、食品スーパーマーケット各社を集計したPI値分析データである。店舗数は多ければ多いほど客観性があるが、とりあえず、数百店舗あれば、それなりの説得力はあるといえよう。
そして、この時、自社の商品をPI値で客観的に示すことになるが、その時、新たに加わるPI値が客数PI値である。これは、全店舗の総客数を分母にし、自社の商品が導入されている店舗のみの客数を分子にし、双方を割って算出した、導入店舗の客数÷全店舗の客数で表される指標、客数PI値のことである。いわゆるカバー率に近い指標であるが、カバー率よりも、正確にどのくらいの顧客が販売対象になっている商品であるかを示す指標であり、客観性は高いといえよう。
たとえば、客数PI値10%は、全店舗の客数の10%の顧客を対象にして得られた数字であることを意味しており、客数PI値50%は全店舗の客数の50%の顧客を対象にして得られた数字であることを意味している。したがって、その範囲内でPI値を算出すれば、PI値の客観性がより、増すことになり、精度の高い自社の商品のPI値をもとに、商談することが可能となる。
ここで、客数PI値と金額PI値との関係であるが、金額PI値の客数を全店の客数とした時の金額PI値を金額PI総店とし、客数PI値、たとえば、10%の客数で見た場合の金額PI値を金額PI扱店とすれば、金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店となる。なぜなら、金額PI扱店=金額÷扱い店舗の客数であり、客数PI値=扱い店舗の客数÷全店の客数であるので、双方を掛けると扱い店舗の客数が約分され、=金額÷全店舗の客数となるからである。
したがって、メーカーが商談、特に、自社の商品を新規に導入する時に活用するためのPI値は金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店であり、さらに、もう一歩落とし込めば、金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店(=数量PI扱店×平均単価)であるといえる。
では、このPI値の公式を活用し、どのような自社の商品の採用提案を行うかであるが、ポイントは、自社の商品の客数PI値がどのくらいの顧客から評価された商品であるかをまず示すことが必要である。客数PI値が高ければ高いほど、より多くの顧客から評価を受けた商品であり、逆に少なければ少ないほど、まだ、顧客からの評価を受けていない、客観的な数字をもった商品ではないからである。これは、まさに、金額PI値の信頼度を表しているといえ、ある一定以上の客数PI値の商品であれば、その金額PI値は、より信頼性の高いものといえ、しかも、その数字が高ければ、自信をもって商談にあたることができるからである。
ただ、実際の様々な商品を分析してみると、客数PI値が高く、金額PI扱店の高いAランクの商品は稀であり、多くの場合は、客数PI値が高くて、金額PI扱店は低いか、逆に、客数PI値は低く、金額PI扱店が高いという商品になるのが通常である。また、客数PI値が低く、金額PI扱店が低い商品は、まさに海のものとも山のものともわからない商品であるといえ、客観性に乏しいが、その中でも、さらに細分化し、客数PI値と金額PI扱店で分けてみると、客観性は乏しいながら、商品のポジションはある程度明確になるはずであるし、特に、そこに、昨年、先月との比較を入れると、どちらに向かっている商品であるかがわかり、提案がしやすくなるのではと思う。
このように、まず、自社の商品を新規導入する場合には、まず、できるだけ多くの店舗のPI値データをもとに、金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店で自社の商品を特に、客数PI値の観点から位置づけ、新規導入を提案してゆくことが、商談への活用のスタートといえよう。なお、続きは、稿を改めて、解説したい。
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