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July 21, 2009

食品スーパーマーケットの粗利と経費を考えてみる!

   食品スーパーマーケットが利益を出すには経費コントロールと粗利政策(売価政策)が重要な鍵を握っている。ごく単純な計算式を示せば、3%利益を出すには、経費率+3%の粗利設定で良い。同様に、5%の利益を出すには、経費率+5%の粗利設定で良いといえる。粗利設定とは、売価-原価のことであるので、原価が仕入れ交渉により決まれば、自然、売価が決まり、その意味で、粗利は売価コントロールといっても良く、一旦、決めた売価通り商品が売れれば、理論的には、粗利は安定することになる。

   余談だが、コンビニが売価コントロールにこだわっているのは、=粗利コントロールがその目的であり、粗利を安定させる最大の政策が売価コントロールにあると認識しているからであるといえよう。今回の公正取引委員会のセブンイレブンへの排除命令により、廃棄ロスの値引き15%を本部が持ち、さらに、ここ最近の報道では、値引きを認める方向で詰めが進んでいるようであるが、いずれも、売価を崩すテーマであり、結果、粗利に直結することになる。

   食品スーパーマーケットの上場企業は、現在約50社強であるが、この経費と粗利、すなわち、売上総利益の関係を、一部非上場の食品スーパーマーケットも交えて、見ると、興味深い結果が浮かび上がる。横軸に経費率、縦軸に粗利率(売上総利益)をとり、散布図を作ってみると、全体がy=xの右上がりの直線上に並ぶが、当然、y=xでは利益がプラスマイナス0となるので、企業心理としては、y=xの上を狙うことになる。すなわち、少しでも傾きをプラスにしようという心理が働く。ちなみに、全体の経費と粗利率の関係は経費率25.7%、粗利率25.3%であるので、ほぼy=xで動いていることになり、ざっくりいえば、プラスマイナス0、すなわち、収支トントンというのがこの2009年度決算の結果である。

   ところが、細かく見ると実に興味深い事実が浮かび上がり、まさに、この平均25%前後で食品スーパーマーケットの経費と粗利の関係ががらっとかわるのである。すなわち、経費が25%以下でコントロールしている食品スーパーマーケットはy=xよりも傾きを大きくし、利益をプラスにもってゆく意思が鮮明となる。ところが、経費が25%を超えるとy=xよりも傾きが小さくなり、利益をプラスにもってゆくことはあきらめてしまうようであり、プラスとなる食品スーパーマーケットはごくわずかとなる。

   すなわち、食品スーパーマーケットの経費コントロールの分岐点(閾値)は経費25%であるといえ、ここを境に、食品スーパーマーケットの経営戦略ががらっと変わるという事実が浮かびあがる。

   実際の約50社の内訳であるが、経費比率25%以下の食品スーパーマーケットは25社であり、経費比率25%以上の食品スーパーマーケットは30社である。この中には総合小売業のイオン、セブン&アイHも含めているが、もちろん、この2社は25%以上の経費比率である。そして、経費比率25%以下でy=xよりも下側に来る食品スーパーマーケットは5社であり、25%以上で上に来る食品スーパーマーケットはわずか5社であり、まさに、この経費比率25%が、食品スーパーマーケットの経費比率と粗利との関係の分岐点であるといえよう。

   ちなみに、この25%以下の経費比率の全食品スーパーマーケットは、オーケー14.9%、トライアルカンパニー16.3%、アオキスーパー16.8%、大黒天物産18.0%、PLANT18.1%、オオゼキ18.2%、マルキョウ18.5%、マルミヤストア18.8%、スーパーバリュー18.8%、アークス19.4%、タイヨー19.8%、スーパー大栄21.7%、ユニバース22.0%、ダイイチ22.3%、丸久22.3%、イズミ22.6%、ハローズ22.6%、マックスバリュ西日本23.2%、東武ストア23.7%、マックスバリュ東海24.1%、ヨークベニマル 24.1%、関西スーパーマーケット24.1%、ジョイス 24.3%、原信ナルスH24.3%、マルヨシセンター25.0%の25社である。
   
   この中で、y=xの下側に来る食品スーパーマーケットが5社あるが、その企業は、トライアルカンパニー16.3%、アオキスーパー16.8%、スーパー大栄21.7%、イズミ22.6%、関西スーパーマーケット24.1%である。この中ではトライアルカンパニーとアオキスーパーが16%台の経費比率であるにも関わらず、粗利がそれ以下と、まさに、ディスカウントの極致をいっているが、本来、経費+αにしても、十分ディスカウント性はとれるのではないかと思われるが、経営方針として、経費比率以下の粗利率にこだわっているのではないかと推測される。
   
   このように、食品スーパーマーケットにとって、経費比率は最も重要な経営指標であるといえ、まさに、25.0%がある意味黄金比であるともいえ、ここを境に25%以下の経費比率の食品スーパーマーケットは高収益に、25%以上の食品スーパーマーケットは厳しい低収益構造になってゆくことになるといえよう。ちなみに、25%以上で5社、y=xの上に来る食品スーパーマーケットがあるが、それはベルク25.5%、ヤマザワ25.8%、アークランドサカモト26.3%、サンエー26.6%、マルエツ27.4%である。

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