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July 13, 2009

キャッシュフローで見る食品スーパーマーケットの現状!

   2009年度の食品スーパーマーケット業界、上場企業約50社の決算特集が、現在、各業界誌で特集されている。それぞれ、様々な角度から決算分析が取り組まれているが、ここでは、ちょっと珍しい角度、キャッシュフローの観点から、2009年度の食品スーパーマーケット業界の決算結果を見てみたい。食品スーパーマーケット業界の決算月は2月が最も多く、37社、ついで3月11社であり、これ以外に、5月、9月、1月に数社あるが、ここでは、1月、2月、3月決算の食品スーパーマーケットについて見てみたい。

   キャッシュフローは、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローに分かれ、この3つの関係は、営業キャッシュフローで稼ぎ出したキャッシュをもとに、投資、食品スーパーマーケットではその大半が成長戦略、すなわち、新規出店への投資であるが、を行い、その余剰キャッシュ、フリーキャッシュフローで財務キャッシュフローを補い、その残りを内部留保するという流れになる。

   したがって、このキャッシュフローに食品スーパーマーケットとしての経営戦略が強く表れているといえ、経営者の意思、息遣いが感じられるともいえ、キャッシュフローは経営を肌で感じられる指標ともいえる。特に、投資キャッシュフローには将来の成長をどう見ているかが表れ、財務キャッシュフローでは返済をどのくらい行へば良いか、投資家をどのくらい重視すべきか、将来のためにどのくらい資金を残すべきかなど、ぎりぎりの経営判断の決断が求められ、経営者の心理が反映さているといえよう。

   では、そのキャッシュフローの現状を見てみたい。まず、2009年度決算、約50社弱の食品スーパーマーケットの全体のキャッシュフローの状況であるが、営業キャッシュフローは2,796.23億円、投資キャッシュフローは-2,082.24億円、したがって、フリーキャッシュフローは713.99億円である。全体としては、順流のキャッシュフローであり、営業キャッシュフローの約75%を投資に振り向け、約25%のフリーキャッシュフローをもったことになる。この比率はもちろん企業によりまちまちであるが、ごく大雑把にいえば、財務状況にもよるが、投資、特に食品スーパーマーケットにとっては新規出店は成長戦略の要であるため、50%以上は投資キャッシュフローに回したいところであろう。

   この投資の中で、固定資産、敷金等への新規出店関係が-2,431.72億円であるので、そのほとんどが新規出店関係である。投資キャッシュフローの項目には有価証券などのプラス項目もあるので、今回のようにトータルでは出店関係の投資を下回ることになるが、この数字を見る限り、積極的な新店への投資がなされているといえ、成長意欲が旺盛であるといえよう。また、営業キャッシュフローの中身であるが、当期純利益が1,392.29億円、減価償却費が1,220.08億円とほぼ拮抗しており、食品スーパーマーケットは装置産業といわれるように、減価償却費の占める割合が、営業キャッシュフローでは大きいといえる。

   そして、財務キャッシュフローであるが、-556.89億円となり、結果、トータル157.10億円である。財務キャッシュフロー-556.89億円は営業キャッシュフローの約20%であり、したがって、内部留保は約5%である。その財務キャッシュフローの中身であるが、最も大きな項目が返済であり、-2,714.18億円となるが、同時に借入を2,427.09億円行っており、合計すると-287.09億円の返済となり、営業キャッシュフローの約10%となる。そして、配当がこれに続き、-182.88億円となり、営業キャッシュフローの約7%である。ちなみに、自社株買いであるが、-65.72億円であり、営業キャッシュフローの約2%である。

   したがって、2009年度の食品スーパーマーケットの経営者の意思、経営心理を読み取ると、主に当期純利益と減価償却費で得た営業キャッシュフローの内、約75%を新規出店関連の投資に回し、残り25%の営業キャッシュフローから、10%を返済に充て、7%を配当に回し、その他3%を自社株買い等に充て、5%を内部留保するという配分であることがわかる。これが、上場食品スーパーマーケットの経営者の2009年度の経営判断であるといえる。全体的に見ると、成長戦略に重きをおいたキャッシュフローの配分であるといえ、成長意欲が旺盛であったといえよう。

   参考に、小売業日本一のキャッシュフロー、セブン&アイHの配分を見ると、営業キャッシュフロー3,100.07億円(100%)、投資キャッシュフロー-1,395.68億円(45.0%)、財務キャッシュフロー-1,697.55億円(54.6%)、トータル、微調整が入り、6.84億円(0.2%)となる。どちらかというと財務キャッシュフローに重きをおいており、その最大の項目は自社株買いの1,581.22億円(51.0%)であり、今期は自社株買いに大半のキャッシュフローを当てたといえる。

   このように、キャッシュフローには、経営の意思がそのまま数字に表れているといえ、営業活動で得られたキャッシュを投資と財務のどのような項目にどのくらい配分したかがわかり、これは、まさに、経営判断そのものを表しているといえよう。経営は当期純利益が確定して終わりではなく、ここから、本当の経営がはじまるといえ、決算を見るときには、キャッシュフローの流れもしっかり、確認したいところである。

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