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July 25, 2009

食品スーパーマーケット、貸借対照表、資産の意義?

   食品スーパーマーケットの決算を見て、特に、貸借対照表において、他の業種と際立った違いがあるとすれば、それは、資産にあるといえよう。食品スーパーマーケットにとって、最大の資産は店舗である。店舗なくして、商売は成り立たないし、店舗なくして、成長もありえないからである。したがって、店舗関連の資産が食品スーパーマーケットにとっては、資産の、ひいては、経営の生命線であるといえる。食品スーパーマーケットの資産は経営規模が大きくなる、すなわち、成長するたびに大きくなってゆくという特徴がある。しかも、その中の店舗関連の資産が急激に増えるのが最大の特徴であり、ここを原資を含めどうコントロールするかが、食品スーパーマーケットの経営そのものともいって良いといえよう。

   では、店舗関連の資産とは何か。結論からいうと、食品スーパーマーケットの店舗関連資産は3つに限定して良いように思う。ひとつは建物、2つめが土地、そして、3つ目が敷金・保証金である。ここに4つ目、在庫を加えても良いが、在庫は生鮮食品の売上構成比が高い食品スーパーマーケットでは、他の小売業と比べるとわずかな金額であり、加えても加えなくても大勢に影響はないので、どちらでもかまわない。ただし、スーパーセンター、ドラックストア、ホームセンター、GMS等は在庫の金額が極めて大きいため、店舗関連資産に加える必要がある。したがって、食品スーパーマーケットの店舗関連資産は、建物、土地、敷金・保証金の3つに限定できるといえよう。

   ではいったい、この3つは食品スーパーマーケットにとって、どのくらいの金額になるかであるが、上場約50社の最新の決算、2009年度をもとに集計してみると、建物が総資産の27.3%(1兆494億円)、土地が24.5%(9,425億円)、そして、敷金・保証金が11.5%(4,405億円)である。ちなみに、在庫は8.6%(3,289億円)であるが、GMS系の食品スーパーマーケットを抜くと約7%となり、さらに、生鮮構成比が高い食品スーパーマーケットを見ると、のきなみ5%を切っているので、あえて店舗関連に集計しなくとも、大勢には影響がないといえよう。そして、この3つの店舗関連の資産を合計すると、63.3%となる。いかに、店舗関連の資産が食品スーパーマーケットでは大きいかがわかる。

   したがって、食品スーパーマーケットにとっては、企業経営、特に成長してゆくには必要不可欠な資産である店舗関連の資産をいかにコントロールできるかが、経営の根幹ともいえる。

   ここで、コントロールとは何かであるが、まずは、資産を可能な限り圧縮することである。そして、次が、その原資を可能な限り、自己資本、すなわち、純資産内で収めることであるといえよう。特に、原資の問題は、安定成長を持続してゆく上においては、重要な経営課題であり、これが、負債に依存するようになると、当然、資産の拡大、すなわち、成長よりも、負債の圧縮、すなわち、返済が優先され、いつのまにか、商売が逆回転をはじめ、返済のための商売となってしまい、やがて、成長が止まることになる。したがって、いかに、自己資本の範囲内で資産をコントールできるかが食品スーパーマーケットの経営にとっては、将来の成長を考えた場合、必須の経営課題といえよう。

   そこで、現状の食品スーパーマーケットの自己資本比率、特に、純資産比率を見てみると、40.6%であり、残念ながら、店舗関連の資産63.3%を相殺できていないのが実情である。大半の食品スーパーマーケットが約20%分を負債に依存した出店を行っているといえる。大雑把にいえば、店舗関連の資産の2/3は純資産で賄っているが、1/3は負債に依存しているといえ、これが、現状の食品スーパーマーケットのベストバランスともいえよう。したがって、負債依存度が1/3を超えるようであれば、平均的な成長105.2%を持続することは難しいということでもあり、負債依存度をいかに減らすかが、食品スーパーマーケットにとっては、大きな経営課題といえよう。

   ちなみに、食品スーパーマーケットおいて、負債の中の主要項目は有利子負債であるが、その有利子負債の総資産の比率は、27.9%であり、店舗関連の負債依存度20%を超えており、ほぼ、店舗関連の純資産の不足分全額を負債に依存している状況といえよう。したがって、いかに、有利子負債27.9%を削減するかが、そのまま、純資産比率を引き上げ、店舗関連資産の負債依存度を減らし、安定成長路線に転換できるかのポイントといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットの現状の資産における意義を考えてみると、店舗関連の資産である建物、土地、敷金・保証金、すなわち、食品スーパーマーケットの成長に直接影響する資産が総資産の63.3%を占め、最重要の経営事項であることがわかる。しかも、この資産の原資が現状では2/3しか、純資産で賄われておらず、今後、安定成長をするためには負債、その大半を占める有利子負債の圧縮が経営の鍵を握っているといえる。その意味で、食品スーパーマーケットとしては、再度、資産、特に、店舗関連をもとに経営戦略の再構築が、安定成長を図ってゆくためにも、当面、重要な経営課題といえよう。

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